ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

タグ:アッバス・キアロスタミ ( 4 ) タグの人気記事

ライク・サムワン・イン・ラブ -2-
Like someone in love

f0165567_639777.jpg

©EUROSPACE All Rights Reserved.

暗い場所で光が点滅すれば、本能的にそれを追ってしまいます。
その光が時間の経過とともに変化すれば、さあどうなるのだろうと見つめてしまいます。
そして、音楽が伴えば、映像に意味を与えてしまいます。
無声映画の時代は欧米では音楽伴奏がつきものだったし、
日本では弁士がせりふをつけました。
(はい、祖父がその弁士をやっていました)

だからといって、今の時代、暗い中でスクリーンに映像が流れ、
音声が聞こえてきさえすればいいというものではありません。
ある情景を2時間近く映していれば映画一本できあがり、
というのであれば映画監督なんていりません。
じゃあ、素晴らしいストーリーがあればいいのでしょうか。
必ずしもそうとはいえません。

って――
いったい何を言いたいんだ。わたし。

ストーリー、テーマ、俳優、音楽、撮影・・・・・
この内のひとつが欠けても映画は成り立たないと思っていました。
それは確かにそうなんですけれど、どうも、そうとはいえないような――


ゴジャゴジャ言うより、まずは、どんなお話なのか覗いていただきましょうか。


f0165567_622748.jpg

ストーリー
80歳を超え、現役を引退した元大学教授タカシ。
彼は亡くなった妻に似た若い女性・明子をデートクラブを通じて自宅に呼びます。
タカシは彼女のためにテーブルをしつらえ、シャンパンとサクラエビのスープを用意。
しかし、明子は「サクラエビは嫌いなの」と手をつけようともしません。
そして、自分からベッドに向い、タカシを誘います。
当惑するタカシ――

しかし、彼女の頭にあるのは、わざわざ田舎から上京していた祖母に会えなかったこと。
本当はタカシのところになど来たくはなかったのです。

翌朝、明子の通う大学まで車で送ったタカシの前に、彼女の婚約者だというノリアキが現れます。
彼はタカシを明子の祖父と勘違いし、タカシの車の不調を自分の整備工場で無料で修理したりするのですが……

もう17、18年前から日本で映画を撮りたいと考えていたアッバス・キアロスタミ監督ですが、
そのきっかけは六本木で見た光景だったそうです。
監督は六本木の路上でウェディングドレスを着てひとりで立っている若い女性を見ました。
ガイドに彼女のことを訊ねた監督。
彼女が娼婦だと教えられたときの驚きが本作につながりました。

意味ありげな人物が登場し、意味ありげなバーが映し出されるので、きっと何かが起こるにちがいない、と、
ことの展開を待ちうける観客の期待とはうらはらに、なじみ深い都会の夜景が車窓を流れていくだけ。
やがてタクシーは目的地に着き、趣味の良い元大学教授の書斎に導かれていきますが、
そこでも観客が予想するような事態は起こりません。

淡々と<時>は流れ、当然訪れるべき結末は訪れますが、それへの回答は示されないまま、映画は終わります。
いえ、きっと終わってはいないと思います。その後も粛々と<時>は流れていくのですから。
<時間>を切り取ってスクリーンに映し出した、という始まりもなければ終りもない映画です。

前作「トスカーナの贋作」でも感じた当惑に今回も襲われました。
http://mtonosama.exblog.jp/15412531/ http://mtonosama.exblog.jp/15429462/

自分が想像しうる形で展開しない映画です。
前作でも、本作でも、もっともらしいストーリーを紹介してはいますが、
ストーリーがわかってもとまどいは消えません。

人生の一場面を切り取って見せても、それは何の意味もない時の流れに過ぎないかもしれない――

それ以前の時の流れ、そして、それ以後の時の流れによって、
観客にとってはまったく違う展開が見えてくるのでしょう。
だからこそ、この映画は自分の目で確かめて観る必要があります。
そう、観客が自分でつくる映画ということがいえるかもしれません。

心の揺らぎにも似たこのとまどい。とのは「あぁ、こういうのもありなんだな」と思えるようになりました。
皆さんはどうお思いになるでしょうか。

光、音、時間。映画の要素は単純かもしれませんが、
その組み合わせはとんでもない作品をつくり出してくれます。





今日もポチッとお願いできたら嬉しいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆9月10日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ライク・サムワン・イン・ラブ
監督/アッバス・キアロスタミ、プロデューサー/堀越謙三、マリン・カルミッツ、監督補・通訳/ショーレ・ゴルバリアン、助監督/田澤裕一、飛田一樹、廣原暁、撮影/柳島克己
出演
奥野匡/たかし、高梨臨/明子、のりあき/加瀬亮、でんでん/ひろし
9月15日(土)渋谷ユーロスペースにてロードショー、他全国順次ロードショー
2012年、日本・フランス共同製作、109分
http://www.likesomeoneinlove.jp/

by Mtonosama | 2012-09-10 06:32 | 映画 | Comments(10)
ライク・サムワン・イン・ラブ -1-
Like someone in love

f0165567_5172046.jpg

©EUROSPACE All Rights Reserved.

映画の三大要素。
すごく大まかに分けたら光と音と時間ではないでしょうか。
あ、これは未検証ですから試験の答案には書かないでくださいね(笑)。

でも、いつも思うのですが、「映画の父」と呼ばれるリュミエール兄弟の姓・リュミエールが
光を意味するフランス語だというのは本当に象徴的です。

暗い映画館でスクリーンに光が踊る――
もうそれだけで興奮しますものね。
150歳のとのが幼い頃は「わ~い、幻燈だ~!」と
小学校の講堂に張られたスクリーンに写真が映るだけで興奮しまくったものです。

幻燈・・・・・
何やらなつかしい言葉。
今の時代では「幻燈」で検索すると「燐光幻燈館」などというこれまたそそる項目がヒットしますが。
とのの幼い頃は映画会のようなものであったと記憶しております。

さて「ライク・サムワン・イン・ラブ」。
これまた超有名なジャズスタンダード。
本作ではエラ・フィッツジェラルドが歌っていますが、いいですねぇ。
(とのはチェット・ベイカーのボーカルが好きだったのですが、なんたって思い込みは世間を狭めます)



すいません。なかなかこの映画にたどり着けません。

本作「ライク・サムワン・イン・ラブ」はアッバス・キアロスタミ監督が母国イランを離れ、
海外で撮影した第2作目です。
それも日本を舞台とし、俳優も日本人なら、使用言語も日本語という作品です。
俳優はすべてオーディションで選ばれました。
84歳にして初の主役を演じる奥野匡、
TVドラマやバラエティ番組にも出演する高梨臨、
「それでも僕はやっていない」(‘07)他、多くの話題作に出演し、
最近では「永遠の僕たち-レストレス-」(‘11 ガス・ヴァン・サント監督)に出演するなど
国際的な俳優としても活躍する加瀬亮、
などが出演しています。

オーディションの段階では映画の内容もキアロスタミ監督の映画だということも知らされず、
撮影に入っても当日分の台本しか渡されないということで、俳優さんにとっては当惑の連続だったらしいです。

当日分の台本しか渡されないとなると、その登場人物の経歴や家族、性格もわからないということですから、
俳優たちは演じるための材料がないところで演じないといけない・・・・・
試験勉強をしないで期末試験を受けるようなものです。
さぞ困ったことでありましょう。

f0165567_5241169.jpg

しかし、当惑は俳優たちのものだけではなかったんです。

日本人俳優、見慣れた日本の風景、日本語の会話。
とんがった台詞も、ぶっとんだ場面展開などもありません。
いわゆる前衛的な映画でもないし、芸術的すぎて困るという映画でもありません。
退屈したり、わかったふりなんかすることなく、最初から最後までスクリーンに釘付けになってもいます。

なのに感じるこのとまどい。
う~ん、一体なんなんでしょう。

さあ、どんなお話なのでしょうか。アッバス・キアロスタミ監督はどんな魔法をかけてくれるのでしょう。
続きは次回までお待ちくださいませ。



今日もポチッとお願いできれば嬉しゅーございます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆9月7日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

ライク・サムワン・イン・ラブ
監督/アッバス・キアロスタミ、プロデューサー/堀越謙三、マリン・カルミッツ、監督補・通訳/ショーレ・ゴルバリアン、助監督/田澤裕一、飛田一樹、廣原暁、撮影/柳島克己
出演
奥野匡/たかし、高梨臨/明子、のりあき/加瀬亮、でんでん/ひろし
9月15日(土)渋谷ユーロスペースにてロードショー、他全国順次ロードショー
2012年、日本・フランス共同製作、109分
http://www.likesomeoneinlove.jp/

by Mtonosama | 2012-09-07 05:38 | 映画 | Comments(6)
          トスカーナの贋作 -2-
                    Copie Conforme

f0165567_6122714.jpg

                   (C)Laurent Thurin-Nal / MK2

前回、わかりにくい映画などと言ってしまいました。
でも、舞台はトスカーナ。
登場人物はトスカーナ地方の小さな村でギャラリーを経営するフランス人女性と
その村に講演に訪れたイギリス人の作家。
設定にはどこもおかしなところはありません。きわめてノーマルです。
ところが、「あれ?ちょっと待って。え?え?」という展開になっていくんですねぇ。

いやぁ、アッバス・キアロスタミ監督、イラン出身だけにペルシャの魔法をかけたんでしょうか。

ストーリー

f0165567_694510.jpg

とある講堂で「贋作」という本を刊行したイギリス人作家ジェームスの講演が
始まろうとしています。
それを聴きにきていた一人の女性と反抗期の息子。
彼女は講演に関心を持っていましたが、息子が空腹を訴えたため、連絡先を言付けて中座。
ハンバーガーショップで息子に
「電話番号を教えたのはジェームスと恋人になりたいから?」とからかわれ、
「本のことで訊きたいことがあっただけよ」とたしなめる女性。

翌日、彼女の経営するギャラリーにジェームスが訪れました。
「良いところに案内するわ」
「ありがとう。でも、9時には帰らないといけない」

糸杉のある美しい街道をドライブしながら、2人は会話を交わします。
美術館では本物と贋作について議論をします。
話し疲れた2人が立ち寄った一軒のカフェ。
ジェームスが席を立ったとき、彼女にカフェの女主人が話しかけます。
「良い旦那ね」
戻ってきたジェームスに「夫婦に間違えられたわ」と楽しげに告げる女。
「僕たちはお似合いなんだね」。
ここから“夫婦”を演じ始める2人。

f0165567_5522988.jpg


古い街並みを歩きながら、夫婦としての会話を続ける2人。
それも年月を重ね、擦れ違い始めた夫婦のような会話を。
「大事なのは作品の技術や評判ではなく、その見方のはずだわ」
「君の話を聞いていると、芸術も本物も偽物も、この彫像も君のこともなにもかも嫌いになる」

空腹を感じた2人はレストランに入ります。
しかし、ウエイターはなかなかやってこず、やっと注文したワインは最悪で、
苛立ったジェームスは彼女を責めたてた揚句、店を出て行ってしまいました。
その後、教会へ向かう2人。ジェームスは本当の妻をいたわるように彼女に謝ります。
そして……


f0165567_6144534.jpg


これはラブストーリー?
美しい風景、そして、魅力的な男女。
ラブストーリーを成立させるお膳立てはしっかり整ってはいるんですけど。
でも、どこかに時空の歪みみたいなものが発生して、すっとはぐらかされるというか、
不思議な感覚に襲われてしまいます。

見知らぬ男女が出会い、お互いに関心を抱き、出かけた先で夫婦と間違えられる―――

間違えられた夫婦=贋物夫婦。
本人たちがそのふりをしていると、周囲だけでなく、
その内、自分たちもわからなくなってしまうのが贋物だとしたら、
本物と贋物の区別って意味があるのでしょうか。

本物?贋物?
「トスカーナの贋作」が醸すこの微妙な揺らぎに飲み込まれて、
船酔いにも似た感覚にフラフラしてしまったとのでした。
                                

トスカーナの贋作
監督/アッバス・キアロスタミ、オリジナル脚本/アッバス・キアロスタミ、脚色/マスメ・ラヒジ、撮影監督/ルカ・ビガッツィ、製作総指揮/ガエターノ・ダニエル、製作/マラン・カルミッツ、ナタニエル・カルミッツ、シャルル・ジリベール、アンジェロ・バルバガッロ
出演
ジュリエット・ビノシュ/彼女、ウィリアム・シメル/ジェームズ・ミラー、ジャン=クロード・カリエール/広場の男、アガット・ナタンソン/広場の女、ジャンナ・ジャンケッティ/カフェの主人、アドリアン・モア/息子、アンジェロ・バルバガッロ/通訳、アンドレア・ラウレンツィ/ガイド、フィリッポ・トロイアーノ/花婿、マニュエラ・バルシメッリ/花嫁、ルチニャーノの住民
2月19日(土)より、ユーロスペースにて公開!(全国順次)
2010年、フランス・イタリア合作、106分、配給/ユーロスペース
http://www.toscana-gansaku.com/


ブログランキングに参加しています。
ここまで来たらばポチッ☆とね(^_-)
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♪2月1日に更新しました。今日から2月です☆いつも応援ありがとうございます♪
by mtonosama | 2011-02-01 06:25 | 映画 | Comments(6)
           トスカーナの贋作 -1-
                     Copie Conforme

f0165567_5265279.jpg


                   (C)Laurent Thurin-Nal / MK2

よくわからない映画でした……

と、いきなり観る気をそぐようなことを言って申し訳ありません。
いえ、映画って、
一体なにを言いたいのかよくわからないのだけれど、
やけに印象に残るものがあるなぁ、と思いまして。

とのの場合はこの「トスカーナの贋作」がよくわからないけれど印象に残る映画という
カテゴリーに加わりました。今までここに属していたのは「去年マリエンバートで」です。

    「去年マリエンバートで」の内容については、ヨーロッパのお城のようなどこかの庭園で
    男と女が訳のわからないことを話しているよ、という位の記憶しかありません。
    しかし、その階段風の庭園の光と影がやたら印象的で、今もパッと脳裏に花開きます。

Wikipediaによればモノクロ映画だったらしいのですが、
そうは思えないほど色彩を感じさせ、明暗のはっきりした作品でした。
言ってみれば、せりふつきの絵画ですか。
去年マリエンバートで」(L'Année dernière à Marienbad)は、1961年公開のフランス・
イタリア合作映画。アラン・ロブ=グリエによる脚本をアラン・レネが監督したモノクロ映画である。1961年、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。日本公開は1964年5月。
脚本のロブ=グリエ自身の言によれば、黒澤明監督の『羅生門』に触発されて作られた作品である。より正確に言うならば、芥川龍之介の『藪の中』を下敷きにした作品群の一つといえる。
ココ・シャネルが衣装をデザインしたことでも有名。(Wikipediaより)

     え~?!「羅生門」?「藪の中」?そんなふうにはまったくもって見えませんでした!
     もう一度観るともっと響いてくるものがあるかもしれません。
     でも、最初観たときに「拒絶されてしまった」感を持ってしまったので、
     敬して遠ざけさせていただくこととします。
     ま、いずれに日にかもう一度観ることもあるかもしれませんが。

f0165567_5441123.jpg


トスカーナの贋作」はアッバス・キアロスタミ監督が母国イランを離れ、
初めてイタリアで撮影した作品です。
このトスカーナという地名にひっぱられて鑑賞したとのが浅はかでした。
キアロスタミ監督の投げかけてくるテーマは、
舞台が、イランの岩山からトスカーナの田園に移ろうとなんら変わることはなく、
常に変化球なのです。
受け止めることはなかなかに大変です。
(原題の“Copie Conforme”は「認証された贋作」という意味だそうで、
トスカーナなんて言葉はどこにもありませんし)

キアロスタミ監督は2003年に小津安二郎生誕100年を記念した
「5 five~小津安二郎に捧げる」を撮っていますが、
本作では小津の手法を活用しているそうですよ。
「去年マリエンバートで」も「トスカーナの贋作」も、
日本の作品や監督から影響を受けているようですが、
日本という国が発するシグナルは外国人の目を通すと随分変わってしまうものですね。
ま、これもCool Japanということで良しとしますか。

イラン人のキアロスタミ監督イタリア・トスカーナを舞台に
フランスの女優ジュリエット・ビノシュイギリス人バリトン歌手ウィリアム・シメル
起用した「トスカーナの贋作」。なんともグローバルではありませんか!
一体どんなお話なのでしょう?乞うご期待であります。 
                             

トスカーナの贋作
監督/アッバス・キアロスタミ、オリジナル脚本/アッバス・キアロスタミ、脚色/マスメ・ラヒジ、
撮影監督/ルカ・ビガッツィ、製作総指揮/ガエターノ・ダニエル、製作/マラン・カルミッツ、ナタニエル・カルミッツ、シャルル・ジリベール、アンジェロ・バルバガッロ
出演
ジュリエット・ビノシュ/彼女、ウィリアム・シメル/ジェームズ・ミラー、ジャン=クロード・カリエール/広場の男、アガット・ナタンソン/広場の女、ジャンナ・ジャンケッティ/カフェの主人、アドリアン・モア/息子、アンジェロ・バルバガッロ/通訳、アンドレア・ラウレンツィ/ガイド、フィリッポ・トロイアーノ/花婿、マニュエラ・バルシメッリ/花嫁、ルチニャーノの住民
2月19日(土)より、ユーロスペースにて公開(全国順次)
2010年、フランス・イタリア合作、106分、配給/ユーロスペース
http://www.toscana-gansaku.com/

ブログランキングに参加しています。
今日もポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♪1月29日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます♪
by mtonosama | 2011-01-29 06:04 | 映画 | Comments(6)