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駆ける少年 -2-
DAVANDEH
THE RUNNER

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(C)kanoon

時代は70年代初頭。
舞台はイラン。ペルシャ湾沿岸の港町です。
11歳のアミル少年は、浜辺に放置された廃船でひとり、小さなひよこと暮らしています。
甲板には海風が吹きこみ、あくまでも青い海と空が拡がっています。
少年はゴミ捨て場から空き瓶を拾ってきたり、
港を行き交う外国船の船員たちが海に捨てた瓶を、
仲間の少年たちと拾い集めたり(サメに気をつけなくてはならないのですけど)、
靴磨きや水売りもして生計を立てています。

え?可哀想で、元気になれない?

いえいえ。それがね――
「あんた、もうちょっとテンション下げたら?」
と声をかけたくなるほど、元気なアミル少年なのでして。

世話をしてくれる親もなく、ひとり廃船で暮らしているのですけれど、
海風が吹き抜ける船の上で小さな黄色いひよこに話しかけたり、
パン屑を分けたりしながら、結構楽しげに生きています。

アミルには好きなものも多いんです。
特に好きなのは飛行機。
飛行場の金網にしがみついて、どこか遠くへ飛んでいく姿を見ると
知らない内にニコニコしてしまうし、
飛行機の轟音に負けじと大声でわめいたりします。
英語どころか自分の国の文字も読めないけれど、外国のきれいな写真も好き。
廃船の壁にもいっぱい貼りつけています。
そうそう映画も好きです。
チャップリンの真似をして友だちとゲラゲラ笑い転げたり。
あ、友だちも大好きです。
仕事だって一緒にやるし、列車と競争して線路の上を走ったりもします。
だけど、一番好きなのは走ること。
走るって、自分の力だけで自分を動かすことができるからかな。
駆動力は自分。道具もいらない。
11歳という若さを表現するには、走ることが最もてっとり早い。
それに、なんといっても走ることは楽しい。

でも、ある日、そんなアミルが大変なことに気づきました。
もう11歳。学校へ行ってる歳なのに、字を読むことも書くこともできない。
文字を読むことは、世界を知ることだというのに……

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あ、ご案内もしないまま、ストーリーを話してしまいました。
でも、ストーリーといっても、これという話はないのですから、まっいいか、ってことで。

本作には監督自身の体験が強く反映しています。
父親は監督が生まれる前に亡くなり、母親も6歳の時に他界していて、
アミール・ナデリ監督は兄と共に叔母夫婦にひきとられ、教育は12歳までしか受けていません。
そして、叔父さんが恐い人だったので顔を合わせないため、
いつも外に出て映画のアミル少年のように暮らしていたというのです。

しかし、なんといっても目玉は、ストーリーを超える圧倒的な映像。
そして、エネルギー、自然です。
ラストで、アミルたちが炎を吹き上げるガス田の中を全力で氷に向って疾駆する場面は
圧巻というしかないエネルギッシュな映像です。
映画ってこんなに力強いものだったのか、とあらためて感動するはず。

求めよ、さらば与えられん。
欲しいものがあったら、それに向って突っ走れ!

こんな先の見えない時代、アミル少年の韋駄天走りが勇気と希望を与えてくれるに違いありません。
あきらめずにもう少し頑張ってみるかという気持になれると思います。
いえ、なれます。頑張りましょう。





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☆12月21日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

駆ける少年
監督・脚本/アミール・ナデリ、撮影/フィールーズ・マレクザエ、編集/バハラム・ベイザイ、製作/児童青少年知育協会
出演
マジッド・ニルマンド/アミル、ムサ・トルキザデエ/ムサ、アッバス・ナゼリ/ゴラムおじさん
12月22日(土)オーディトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー
1985年、イラン映画、カラー、91分、字幕翻訳/ショーレ・ゴルバリアン、土肥悦子、石田泰子
http://runner-movie.net/

by Mtonosama | 2012-12-21 07:40 | 映画 | Comments(8)
ペルシャ猫を誰も知らない 
                         -2-

      Kasi Az Gorbehayeh Irani Khabar Nadareh
           No One Knows About Persian Cats

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本作を監督したバフマン・ゴバディ氏はクルド人です。
酔っぱらった馬の時間」(‘00)
わが故郷の歌」(‘02)
亀も空を飛ぶ」(‘04)
Half Moon(半月)」(‘06)日本未公開
とこれまでにクルドを舞台にした4本の長編映画を撮っていますが、
「Half Moon」の撮影後、新作の撮影許可がおりず、
ヤキモキした監督は自分でカメラを買ってしまいました。

ゴバディ監督は言っています。
「(イランでは)映画撮影のための35ミリカメラやその機材はすべて当局に帰属し、
それを使うには当局の撮影許可を得なくてはならないのです」。
許可がおりなければ、いつまで経っても映画は撮れません。

自分のカメラを手に入れたゴバディ監督は無許可で撮影を開始しました。
そういう事情ですから「ペルシャ猫を誰も知らない」はゲリラ撮影でした。
すばやく撮影現場に移動し、警官が現れない内にパパッと撮影し、
姿を消さないといけません。この映画は17日間で撮り終えたそうです。

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主人公たちは好きな音楽をやりたいだけ。
監督も彼らを撮影したいだけ。
どこか問題があるのでしょうか。
前作「Half Moon(半月)」も、本作も、イランでは公開できませんでした。

本作の中で、自由な表現への強い想いをこめて主人公は空を飛び、
ゴバディ監督も本当にイランを離れました。

実は、監督は先月この映画のプロモーションのため、来日することになっていましたが、
急遽中止になってしまいました。
監督からのお詫びと中止の理由が記されたメッセージが
ありますので、ご紹介させていただきます。

親愛なる日本の皆様へ
『ペルシャ猫を誰も知らない』の日本公開を控えて、日本に行けないことがとても
残念です。日本へ行くための私のパスポートは、査証ページがなくなっているため、
その再発行(増補)を、在外のイラン大使館・領事館にお願いをしていました。
しかし結局、どこのイラン大使館でも「イランに戻らなければ発行しない」という
返事しかもらえませんでした。

今の私がイランに戻るということは、刑務所に入れられるか、
二度とイランの外へ出られないかを意味しています。
そのために今回は残念ですが、日本へ行くことを諦めなくてはなりませんでした。

今、私はイラクのクルド人自治区にいます。そこを第二の母国として、新しい国籍
のパスポートを得たいと思っています。そうすればまた旅ができるようになります。
また日本の皆さんに会えますように。

日本での映画の公開が成功することを祈っています。

本作の配給会社によれば、
「映画の完成後に大統領選挙があり、その新政権による文化の規制がますます厳しくなり、
映画に関しても今まで以上に撮りたいものが撮れなくなったということだと思います。
今回の映画がきっかけになって、国を出ざるを得ない状況になったのではないでしょうか」
ということでした。

さて、ストーリーです。

ストーリー
録音スタジオで男性が歌っています。はっきり言ってヘタです。
調整卓に向っているエンジニアに「彼に2時間でいいから順番を譲ってと言って」
と女性が頼み込みます。
するとエンジニアは
「彼、かわいそうなんだよ。新作映画は撮影許可がおりず、旧作は海賊版が出回るだけ。
ここで歌うのが憂さ晴らしなのさ」と応えるのです。
そう、歌っているのはバフマン・ゴバディ監督でした。

ネガルとボーイフレンドのアシュカンはミュージシャン。
”テイク・イット・イージー・ホスピタル“というバンド名でロックをやっています。
アシュカンは無許可でケーブルTVに出演し、演奏したために逮捕され、
今朝釈放されたばかり。
バンドはバラバラになっていました。
2人は演奏許可が下りないテヘランを離れ、ロンドンで公演することを夢見ています。
でも、そのためには違法にパスポートを取得しなければなりません。
そして便利屋のナデルを頼るのですが…

            ♪あなたと歩いて行きたい 霧の街を抜けて
             緑の枯れない国へ
             〈中略〉
             手巻きの時計は壊れて動かない
             毎日が今日のままで 明日が恐くないように♪

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自由に歌えない、自由に表現できない。つらいですね。
以前、イラン映画に子供映画の秀作が多いのは子どもが主人公なら検閲が入りにくいから、
ということを聞いた覚えがあります。

ゴバディ監督の前作「亀も空を飛ぶ」も子どもが主人公のとてもつらい結末の映画でした。
本作は若いミュージシャンを主人公にテヘランで演奏活動をする実在のミュージシャンを
追った興味深い作品です。

監督はイランから出ていってしまったし、映画もハッピーエンドではありませんが、
イランという国は日本とは違って若者の数が多いのだそうです。
政府だって、そうそう若者の不興を買うような文化政策をとってはいられないでしょう。

いつの日かクルドのゴバディ監督も自由に出入国し、
好きなだけ映画を撮れる日が訪れるに違いありません。

                        

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♪7月10日に更新しました。いつも応援していただき、ありがとうございます♪

ペルシャ猫を誰も知らない
監督/バフマン・ゴバディ、脚本/バフマン・ゴバディ、ロクサナ・サベリ、ホセイン・アプケナール、撮影/ハイェデー・サフィヤリ
出演
ネガル・シャガギ/ネガル、アシュカン・クーシャンネジャード/アシュカン、ハメッド・べーダード/ナデル、その他テヘランのミュージシャンたち
8月7日(土)ユーロスペースほか全国順次ロードショー、他全国順次公開
2009年、イラン、カラー、106分、配給/ムヴィオラ
http://www.persian-neko.com/

by mtonosama | 2010-07-10 05:43 | 映画 | Comments(6)