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ザ・トライブ
-2-
The tribe

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(C) GARMATA FILM PRODUCTION LLC, 2014 (C) UKRAINIAN STATE FILM AGENCY, 2014


聾唖者を描いた映画だからせりふがない。
当たり前かもしれませんが、
この素直さこそがこの映画を映画たらしめた画期的な点かもしれません。

一人の主人公が聾唖であるだけでなく、彼をとりまく周囲の人間がすべて聾唖――
そんな発想で映画を撮ることができるほど映画は自由な表現方法なのでした。
実験といっていいかもしれません。

普通、実験っていうとあまり面白くないもののような気がします。
でも、面白かったです。
目を奪われました。
ま、せりふがない分、目が頼りですから、目を奪われるのは当然ですが。

電車の中で時折見掛ける手話。
車内ゆえ、そのアクションは多少控えめではありましょう。
しかし、手話がわからなくても、控えめな動作でも、話に興じているのはわかります。

だから、映画の中で主人公たちが見せる感情を露わにしたボディアクションは
せりふ以上に多くのことを語るわけです。

さあ一体どんなお話でしょうか。

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ストーリー
セルゲイは聾唖者のための寄宿学校に入学する。
そこでは小さな子から大きな子まで含めた公式祝賀会が開かれていた。
どう見ても学校にしか見えないが、
その裏では犯罪や売春を行う悪の組織=族(トライブ)が形成されている。
入学するとすぐセルゲイも彼らによる手荒い仕打ちを受けるのだった。
リーダーを中心とする学生たちがみつめる中、
セルゲイは数人を相手に殴り合いを強要されるが、なかなか屈強な戦いぶりを見せる。
そして、彼もトライブに組み入れられていく。

トライブの主要な財源は売春だ。
セルゲイも先輩につき添い、
毎夜リーダーの愛人であるアナと同室の女生徒の二人を車に乗せ、
長距離トラックが駐車している場所に送り届ける。
凍りつくような寒さの中、何十台ものトラックの間を歩き、フロントガラスを叩き、
運転手たちにアナたちを見せ、交渉開始。
交渉が成立すれば彼女達は運転席に乗り込み、仕事をする。

ある夜、先輩が後方のトラックの発車に気づかず轢き殺されてしまった。
その後任に収まるセルゲイ。
要領よく仕事をこなし、夜ごとアナたちを仕事場へ送り届け、連れ帰るセルゲイだったが、
その内、アナを愛するようになる。
彼は悪事で稼いだ金を組織に上納せず、アナに貢ぎ、関係を持つようになる。

一方、アナは同室の女生徒とウクライナから逃げ出し、イタリアへ行くことを夢見ていた。
リーダーは出入国管理局でふたりのパスポートを入手した。

だが、アナへの想いを抑えきれないセルゲイは売春の元締めである教師の部屋を襲う。
金を奪い、それをアナに差し出し、
売春を止め、イタリア行きを取りやめるよう懇願するのだった。
アナは激しく拒絶する。

そして、リーダーたちからリンチを受け、傷だらけになったセルゲイは……

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その背景は、どこからか黴のにおいが漂ってきそうな古い校舎、
排気ガスが立ち込める長距離トラックの駐車場、
東欧の裏さびれた廃墟のような雰囲気に満ちた作品です。

とのはゲームはしませんが、
この雰囲気、この暴力、廃墟にうごめく若い無言の青年たちを観て
これはゲーム的世界観かもしれないと思ってしまいました。

1974年生まれのスラボシュピツキー監督。ゲーム世代です。

でありながら、作品中に漂うリアル感。

キエフで行われた本作の撮影は
ヤヌコビッチ政権に対する反政府デモの前に始まり、
ロシアによるクリミア支配の後に終わったということです。

その緊迫した空気感が映り込んでいたのかもしれません。

静かでやかましい映画であります。





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ザ・トライブ
脚本・監督/ミロスラヴ・スラボシュピツキー、撮影/ヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ、サウンド・デザイン/セルギー・ステパンスキー
出演
グレゴリー・フェセンコ、ヤナ・ノヴィコヴァ、ロザ・バビー、オレクサンダー・アサドッチイ、オレクサンダー・シデリニコフ、サシャ・ルサコフ、デニス・グルバ、ダニア・ブコビイ、レニア・ピサネンコ、オレクサンダー・パニヴァン、キリル・コシク、マリナ・パニヴァン、タティアナ・ラドチェンコ、リュドミラ・ルデンコ
4月18日(土)よりユーロスペース、新宿シネマカリテ他にてロードショー
2014年。ウクライナ、カラー、132分、字幕無、手話のみ
提供/ミモザフィルムズ、彩プロ、配給/彩プロ、ミモザフィルムズ、後援/ウクライナ大使館
http://thetribe.jp/

by Mtonosama | 2015-04-10 06:24 | 映画 | Comments(6)
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                  (C)nonfictionplanet

ピリぺンコさんの手づくり潜水艦
MR.PILIPENKO AND HIS SUBMARINE

ウクライナに暮らす62歳の年金生活者ピリぺンコさんが自作の潜水艦で
黒海に潜る夢をかなえるというドキュメンタリー映画。

その内容もなんかワクワクさせてくれますし
タイトルもそそります。

ところが

ドキュメンタリーにもいろいろありますが
これはまたとてもインチキくさいドキュメンタリーです。
とても愛すべき映画なんですけどね。

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ドキュメンタリーとはいうものの、先にストーリーありき、の展開ですし
近所の池での潜水実験であんなに水漏れする潜水艦で、黒海まで行くかい?
ウクライナ政府はピリぺンコさんの行おうとしている危険な冒険をすんなり認めたのかい?
わずかな年金で造ったであろう潜水艦なのに、こんな可愛いデザインにする余裕があるのかい?
と、疑問は次から次へと湧いてきます。

まずは、疑り深い現代の都会人の心を離れて、ちょっとウクライナまで飛んでみましょうか。

ストーリー
現役時代(ソ連の時代ということです)、ウラジミール・ピリぺンコは集団農場でクレーン車の運転手をしていました。
62歳のピリぺンコさんは年金生活者になり、エヴゲイニフ村で妻と二人
静かに暮らしています。
しかし、70年代に読んだ雑誌「水中スポーツマン」の記事に触発され
納屋で潜水艦を作り始めていたのです。
ピリぺンコさんに潜水艦の専門知識などはありません。
参考書は「水中スポーツマン」。
自家栽培の野菜とスペアパーツを交換し、年金をつぎこみ、怒る妻からお金を出してもらい
VWビートルのような、空飛ぶ円盤のような、不思議な潜水艦を作り上げました。
30年前の夢がようやく実現しようとしていました。
ウクライナの草原の真ん中から400Km離れた黒海まで
ピリぺンコさんは無事にたどり着け、そして、潜水することができるのでしょうか…


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                       (C)Andrew Testa

ヴィットリア・デ・シ―カ監督の「ひまわり」(‘70)で
ソフィア・ローレン演ずるジョヴァンナがマルチェロ・マストロヤンニ演ずるアントニオを探して
さまよい歩いたウクライナの小さな村を覚えておいでですか?
(あの音楽を思い出すだけでもうウルウルしてしまいます)

「ひまわり」から、もう40年も経っているのに
ピリぺンコさんの住む村はあの頃ジョヴァンナが歩いた村とほとんど変わっていません。
雨が降ればドロドロになるに違いない未舗装の道をアヒルやら猫やらがうろちょろしています。
そんな村でピリぺンコさんや村人たちは仲良くのんびりと暮らしています。
ひまわりこそ咲いてはいませんが、黄金の小麦畑の中を
黄緑色の小さな可愛い潜水艦がトラックに乗せられて進みます。

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                       (C)Andrew Testa

だから、多少の演出があったっていいんじゃない?って感じ。
村に映画撮影隊がやってきたと、はりきっている村人たちを観ているだけで
怒らせていた肩がすとんと落ちます。

いいなぁ、こんな暮らしがあるんだ。
暮らすにはちょっと退屈かもしれないけれど、ピリぺンコさんみたいな人が
なんかおかしなことをやって笑わせてくれるかもしれないし。
ワッハッハと笑ったり、黄金色の草原を見て深い呼吸をして
心のエクササイズができるのほほんとした映画です。

ピリぺンコさんの手づくり潜水艦
監督/ヤン・ヒンリック・ドレーフス、レネー・ハルダー、製作/イェンス・フィンテルマン、トーマス・ゼーカンプ、撮影/フロリアン・メルツァー、水中撮影/マルコ・フォン・デル・シュレンブルグ、クリスチャン・コピア
出演
ウラジーミル・アンドレイェヴィチ・ピリペンコ、アーニャ・ミハイロヴナ・ピリペンコ、セルゲイ・セミョーノヴィチ・ホンチャロフ、イルカ号、協力/エヴゲイニフカ村の皆さん
ドイツ、2006年、ロシア語・ウクライナ語、カラー、90分
10月下旬、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
http://www.espace-sarou.co.jp/pilipenko/index.html


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by mtonosama | 2009-09-24 06:55 | Comments(12)