ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

タグ:エミール・クストリッツァ ( 2 ) タグの人気記事

フェアウェル
さらば,哀しみのスパイ -2-
L’AFFAIRE FAREWELL
                 
f0165567_20591889.jpg


                 © 2009 NORD-OUEST FILMS

フェアウェル(farewell)と聞くとすぐ
♪So long,farewell.Aufwiedersehen,good-by♪と
「サウンド・オブ・ミュージック」の”So long,farewell”を
思い出してしまう殿です。

farewell [ fare(旅をせよ)+well(良き)]
間投詞:さらば、さようなら、ごきげんよう
★good-byより古風で、長旅など長い別れのあいさつに用いる
名詞:いとまごい、告別のあいさつ、送別会
(ジー二アス英和大辞典)


f0165567_20563447.jpg


20世紀最大のスパイ事件のひとつといわれたフェアウェル事件。
これは1980年代初頭ブレジネフ政権下のソ連で起こりました。
KGB(ソ連の政治警察。国家保安委員会Komitet gosudarstvennoi bezopasnostiの略)
のグレゴリエフ大佐(実名:ウラジミール・ヴェトロフ)が起こした事件です。

KGB
ソヴィエト連邦の諜報・治安機関。1954年設立。反ソヴィエト的活動を取り締まるとともに、
対外諜報活動も統括。
一応、冷戦時代を舞台とするスパイ物の小説・映画などではCIAのライバルとされるが、
規模・権限とも、それを遙かに凌ぐ巨大組織だった。
ある意味ではソヴィエト体制そのものだと言える。
アンドロポフやプーチンを筆頭に、国家の上層部にも人材を送り込んでいる。1991年解体。

大変な時代でした―――

なんて、わかったように言ってますが、
同時代に生きていながら、あの嵐の時代を他人ごとみたいに横目で眺めて
通り過ぎてきてしまいました。

嵐の中で生きるということ、というか、嵐をひきおこすということ。
主人公であるフェアウェルことグレゴリエフ大佐は何を考え、
どう行動したのか。
20年前の歴史の転換期を今、改めて思い起こさせる映画です。

ストーリー
1981年4月、ブレジネフ政権下のモスクワ。ソ連崩壊から8年前のことです。
KGBの幹部セルゲイ・グレゴリエフ大佐は情報処理の責任者として
国家の中枢部にいました。
その責任に見合った十分な収入と生活、美しい妻、
思春期を迎え何かにつけて父親に逆らうけれど優秀な息子。
グレゴリエフ大佐はエリートとして十分満ち足りた日々を送っていました。
しかし、初めて人類を宇宙に送った栄光のソ連も80年代に入ると、
科学技術の分野でも、経済面でも、かげりを見せ始めました。

グレゴリエフ大佐は諜報部員であればこそ、
そのことをより確実なものとして感じ取っていました。
「世界を変える」
それをやり遂げなければ、ソ連の未来も、愛する息子の未来もありません。
彼はソ連の内部機密をフランスに漏洩することを決意しました。

f0165567_20581548.jpg

そして、彼はフランスの家電メーカー技師ピエール・フロマンと接触します。
フランスの国家保安局からピエールの上司を経て、彼らは顔を合わせました。
相手が保安局の人間ではなく、
一般人であることに失望したグレゴリエフでしたが、
なぜかピエールには親近感と信頼を覚え、内部機密を手渡すのでした。

当時、フランスは政権交代したばかり。
アメリカは左翼のミッテラン政権に不満を感じていました。
81年オタワ・サミットで米・レーガン大統領は
仏・ミッテラン大統領が共産主義者を大臣に起用したことを不服とし、
組閣の見直しを要求。

「内政干渉だ」と対応しつつ、ミッテランがレーガンに差し出したもの―――
それがグレゴリエフの情報でした。
そこにはNASAやCIA、ホワイトハウスで働くスパイの情報が。
そして、その表紙には"フェアウェル“というコードネームが記されていたのでした…


f0165567_20593844.jpg


大きく揺れる現代史の波間に漂う家族愛、友情を描き、
骨太でありながら、情愛あふれる秀作です。
思わず前のめりになってしまうほど緊張感あふれるピエール一家の逃走シーン。
逮捕されたグレゴリーエフが面会に訪れた息子を抱きしめる場面には
思わず嗚咽を漏らしてしまいました。
そして、CIAの非情さに歯ぎしり。

歴史を動かした事件の裏にあるのは
人間としての、夫としての、父としての義務と責任と情愛。
そして国を超えた友情です。
決して、英雄でも偉人でもない2人の男の友情が胸を打ちます。

この映画をアメリカでもロシアでもなくフランスがつくったことは大正解。
だって、アメリカはバランス・オブ・パワーの当該国ですし、
もう一方のロシアにとって、グレゴリエフ大佐は裏切り者です。
アメリカやロシアが映画化するとしたら、
ものすごく偏った映画になっていたことでしょう。

映画の中でも、両大国の間でこずるく(いえ、賢く)立ち回る
ミッテラン大統領が描かれていますが、
当時、フランスは客観的であることが冷戦下を生き抜くための姿勢であったし、
現在では、客観性こそがこの映画をつくるために必要な姿勢となっています。

が、しかし、
エミール・クストリッツァの多才さにはただただ脱帽。
偉大な監督とは、偉大な俳優でもあります。
夏休みの一本はこれで決まりです。

                           fin

ブログランキングに参加しています。
どうぞ、ポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♪6月27日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♪

フェアウェル さらば,哀しみのスパイ
クリスチャン・カリオン/監督・脚本、クリストフ・ロシニョン、ベルトラン・フェーブル、フィリップ・ボファール/プロデューサー、エリック・レイノー/原案脚本、「ボンジュール・フェアウェル」/原作、クリント・マンセル/音楽、ウォルター・ヴァン・デン・エンデ/撮影
出演
エミール・クストリッツァ/グリゴリエフ大佐、ギヨーム・カネ/ピエール・フロマン、アレクサンドラ・マリア・ララ/ジェシカ、インゲボルガ・ダプコウナイテ/ナターシャ、アレクセイ・ゴルブノフ/ショーホフ、ディナ・コルズン/アリーナ、フィリップ・マニャン/ミッテラン大統領、ニエル・アレストリュプ/ヴァリエ、フレッド・ウォード/レーガン大統領、デヴィッド・ソウル/ハットン、ウィレム・デフォー/フィニーCIA長官、エフゲニー・カルラノフ/イゴール、ヴァレンチン・ヴァレツキー/アナトリー
7月31日(土)、シネマライズほか全国順次ロードショー
2009年、フランス映画、113分、提供/ロングライド + マイシアター、配給/ロングライド
www.farewell-movie.jp

by mtonosama | 2010-06-27 21:21 | Comments(12)
フェアウェル 
さらば,哀しみのスパイ 
 -1-
L’AFFAIRE FAREWELL

f0165567_5523372.jpg

                  © 2009 NORD-OUEST FILMS

世界には、私たちの知らない出来事があまりにも多いです。

1989年、ベルリンの壁が崩壊し、
ルーマニアではチャウシェスク大統領夫妻が処刑され、
東欧諸国は次々にソ連のくびきから解き放たれます。
そして、1991年
地球上の全陸地面積1/6弱から構成された巨大な国家
ソヴィエト社会主義共和国連邦=ソ連が崩壊しました。

1991年
1917年の10月革命によって生まれた世界初の社会主義国家が
その74年の歴史の幕を閉じました。
冷戦時代が終わりを告げたのです――――

と、ここまではかなりの数の人が知っています。

f0165567_5585968.jpg


今回、当試写室で上映する作品は現代史の大きなエポック=ソ連崩壊のきっかけとなった
ひとりのソ連諜報部員の起こした事件=フェアウェル事件を描いたフランス映画です。

フェアウェル事件―――
知りませんでした。

あの大きな歴史のうねりの背後にこんなできごとがあったのか、と驚きました。
同時に、世界を変えることを真剣に考えた人間的なひとりの諜報部員の生き方に
感じ入ってしまいました。
これが実話というのですから、事実は映画よりも奇なり、です。

人間的な諜報部員って矛盾した表現です。
でも、ほんとに、今まで見たことも聞いたこともないスパイ像でした。
あのエミール・クストリッツァ監督がこの人間的なスパイを演じています。
今回は監督ではなく俳優です。主役です。

事件の主・諜報部員グリゴリエフ大佐(コードネーム:フェアウェル)は
巨大な国家の中枢部分にいたからこそ、この事件を起こし得たわけですが、
逆に、彼のような地位にあったら「ふつう、そんなこと考えないよな」
というようなことに手をつけたともいえるわけです。

f0165567_604117.jpg


バランス・オブ・パワー。
その昔、大学の現代史の講義で、講師は何度もこの言葉を口にしました。
バランス・オブ・パワー。
それはこの言葉ひとつで〈歴史〉を解明できるかのような魔法の言葉でした。

当時、世界はソ連とアメリカの勢力のバランスの上に成り立っていました。
世界は、どちらかが少しでも前に出たら、一挙に、右へ、あるいは左へ、
大きくはねあがる巨大なシーソーみたいなものでした。

グリゴリエフ大佐の行動はからくも平衡を保っている巨大なシーソーの上で
一歩前に踏み出したようなものです。
でも、その結果、シーソーが跳ね上がったのはどちら側だったのでしょうか。
それは、わたしたちもよく知っているあの興奮に満ちた出来事でした。

さて、グリゴリエフ大佐は一体何をしたのでしょう?
ソ連、アメリカ。
バランス・オブ・パワーのはざまでフランス・ミッテラン政権はどう動いたか。
ソ連、アメリカ、フランス。
なんとも規模の大きい、フランス映画には珍しいジャンルの映画です。

と、期待と好奇心が膨らんだところで、続きは後編で。See you.

To be continued.

ブログランキングに参加しています。
今日もクリックをひとつお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
♪6月24日に更新しました。いつも応援ありがとうございます♪

フェアウェル さらば,哀しみのスパイ
クリスチャン・カリオン/監督・脚本、クリストフ・ロシニョン、ベルトラン・フェーブル、フィリップ・ボファール/プロデューサー、エリック・レイノー/原案脚本、「ボンジュール・フェアウェル」/原作、クリント・マンセル/音楽、ウォルター・ヴァン・デン・エンデ/撮影
出演
エミール・クストリッツァ/グリゴリエフ大佐、ギヨーム・カネ/ピエール・フロマン、アレクサンドラ・マリア・ララ/ジェシカ、インゲボルガ・ダプコウナイテ/ナターシャ、アレクセイ・ゴルブノフ/ショーホフ、ディナ・コルズン/アリーナ、フィリップ・マニャン/ミッテラン大統領、ニエル・アレストリュプ/ヴァリエ、フレッド・ウォード/レーガン大統領、デヴィッド・ソウル/ハットン、ウィレム・デフォー/フィニーCIA長官、エフゲニー・カルラノフ/イゴール、ヴァレンチン・ヴァレツキー/アナトリー
7月31日(土)、シネマライズほか全国順次ロードショー
2009年、フランス映画、113分、提供/ロングライド + マイシアター、配給/ロングライド
www.farewell-movie.jp

by mtonosama | 2010-06-24 06:19 | 映画 | Comments(6)