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殿様の試写室

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オマールの壁
-2-
OMAR


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走るオマール。
その前にそそり立つ高いコンクリート塀。
塀にはロープが下がっていて、オマールはそれを伝い
器用によじ登っていきます。

ストーリー
ヨルダン川西岸地区。
長大な壁が町を分断するパレスチナ人居住区に
オマールは両親、妹弟と共に暮らしている。
彼はイスラエル兵の監視の隙を見ては、
壁をよじ登り、向こう側に住む親友タレクとアムジャドに会いにいく。
3人は“自由の戦士”を目指し、武装組織から銃を入手し、
イスラエル軍への襲撃作戦を練っていた。
オマールはタレクの妹ナディアを恋しており、彼女との結婚を夢見ていた。

ある日、イスラエル兵の気まぐれで不当な暴行を受け、侮辱されたオマール。
彼はタレクとアムジャドに作戦の決行を持ちかける。
タレクが司令塔、オマールが車の運転、アムジャドが狙撃担当だ。
検問所のイスラエル兵に向けてアムジャドが発砲、一人の兵士が倒れる。
数日後、オマールがイスラエル秘密警察に拘束された。
どれだけひどい拷問を受けても黙秘し続けるオマール。
証拠がなければ3人とも無罪の筈だった。

だが、オマールは罠にはまった。
パレスチナ人の囚人を装い、オマールに接近した男に
「絶対に自白などしない」と言ってしまったのだ。
こっそり録音されたこの発言をイスラエル軍事裁判所は自白とみなし、
懲役90年の刑が科せられる。
更にイスラエル秘密警察のラミ捜査官から
恋人ナディアにも秘密警察の手が伸びると暗示されたオマール。
ラミから提示された、タレクの逮捕に協力せよ、という
交換条件をのんだふりをして釈放される。
何者かから狙撃犯はタレクだという偽情報が伝わっていたのだ・・・

釈放されたオマールはタレクとアムジャドに会い、
イスラエル秘密警察を襲撃する計画を立てる。
作戦は失敗、4人の味方も犠牲になる。
再び拘束されるオマール。
その時、彼はラミの言葉からアムジャドがスパイだったことに気づく。

一方、「裏切者はオマールだ」というアムジャドの嘘を信じたナディアは、
オマールを避けるように……

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アムジャドのスパイ行為をなじるオマールが聞いた言葉は耳を疑うものでした。
秘密警察に「アムジャドがナディアを妊娠させたことを暴露する」と脅された・・・というのです。
(あ、蛇足ですが、イスラムの戒律では婚前交渉はタブーなのです)

えーっ!
オマールは最愛の人ナディアを失ったのみならず、
アムジャドには二重に裏切られていたことになるではありませんか。

そして、観客が目にする思いもかけないラスト。

アラブ世界の映画は政治的に深刻なテーマを抱えていたり、
メッセージ性の高い作品が多かったりします。
観客もまた眉間に皺を寄せて、腕を組みながら鑑賞する
という態度をとらざるを得ません。

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ところが、本作のスリリングな展開といったらどうでしょう。
もちろんパレスチナ人の置かれた状況は悲惨ではありますが、
まず観客に迫ってくるのは
自分がオマールの立場に置かれたら
どうする?どうなる?ということ。
この盛り上げ方、観客の心の掴み方。

そして、あのラストです。
ハニ・アブ・アサドという人、
ドラマツルギーの天才じゃないでしょうか。

監督はこんなことを言っています。

「映画を作る際、リアリティは信憑性ほどには重要ではない
この作品に関してはどのシーンも実態に即していて、現実味がある
偶然が重なるドラマチックな架空の話のように見えるかもしれないが、
実際にドラマ的な効果を狙って物語から逸れるのは一度だけだ
それ以外はすべて今日の占領パレスチナの実態を反映していると思う」


作劇術じゃないって!?
としたらパレスチナが抱える現実ってどれだけ?
だから、素人の俳優4人がこれだけの演技ができるのでしょうか。
彼ら4人は本当に
パレスチナのオマールであり、ナディアであり、タレクであり、アムジャドなんですね。





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オマールの壁
監督・脚本・製作/ハニ・アブ・アサド、撮影/エハブ・アッサル、編集/マーティン・ブリンクラー、イヤス・サルマン
出演
アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ、サメール・ビシャラット、エヤド・ホーラーニほか
4月16日(土)より角川シネマ新宿、渋谷アップリンク他ロードショー
2013年、パレスチナ、97分、アラビア語・ヘブライ語、カラー、配給/アップリンク、http://www.uplink.co.jp/omar/

by Mtonosama | 2016-04-13 06:15 | 映画 | Comments(10)

オマールの壁
-1-
OMAR

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「国境に壁をつくればいい」
と或る国の共和党大統領候補が言いました。
確か還暦はとっくに超えていると思いますが、
思い浮かんだ言葉を頭脳によって編集することも濾過することもなく
ペラペラと軽々しく話すおっさんです。

『オマールの壁』
ハニ・アブ・アサド監督がこの映画の舞台に選んだのは
壁によって分断されてしまったパレスチナの町。

イスラエルが今も造り続ける壁は
パレスチナとイスラエルの境界に沿って
建てられている訳ではありません。

壁はパレスチナ人の領地に侵入し、
パレスチナ人の財産を破壊し、
パレスチナ人の土地を接収し、
パレスチナ人の移動を制限する形で建てられています。

あのトランプ候補ですら壁は国境につくると言っているのに、です。

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2005年の『パラダイス・ナウ』で自爆攻撃に向う若者たちを描き
ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞、
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたハニ・アブ・アサド監督。

本作では、分離壁によって囲まれたパレスチナの今を生きる若者たちを描き出し
カンヌ国際映画祭を始め、多くの映画祭で賞讃され、
再び、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。
スタッフはすべてパレスチナ人、
撮影もすべてパレスチナ、
100%パレスチナの資本によって製作されています。

あ、そうでした。
字幕監修には重信メイさんが当たっています。

当試写室でも上映した『革命の子どもたち』
http://mtonosama.exblog.jp/22421331 http://mtonosama.exblog.jp/22442952/
に登場した日本赤軍・重信房子の一人娘で
ジャーナリストとして活動している方です。

すみません。話が少し逸れました。

ハニ・アブ・アサド監督
1961年イスラエル・ナザレに生まれる。
イスラエルのパスポートを持つパレスチナ人。
19歳でオランダに移住し航空力学を学び、
卒業後、数年間飛行機のエンジニアとして働く。
1992年、初めての短編『Paper House』を監督。
1998年、『The 14 th Chick』で長編映画デビュー。
2000年ドキュメンタリー『ナザレ』が02年カンヌ国際映画祭・批評家週間に正式招待。
2002年ドキュメンタリー『エルサレム、いつの日か』が03年サンダンス映画祭で上映。
2002年『エルサレムの花嫁』
2005年『パラダイス・ナウ』がパレスチナ映画として初の
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、
ゴールデングローブ賞最優秀外国語賞に輝く。
2013年『オマールの壁』がカンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞を受賞。
更にパレスチナ映画としては2度目のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる。
最新作は『The Idol』
アメリカの人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』の
中東版『アラブ・アイドル』で優勝したパレスチナ人ポップシンガーの実話を描く。

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いろいろ驚くことの多い映画ですが、
とのの驚いたのは主人公がよじのぼる壁の高さとその圧迫感。
高さ8mのその壁が垂直に居住区を分断しているのです。

それを身軽に登っていくオマール。
太い眉と大きな目が印象的なこの青年はじめ、
その恋人、友人を演じた俳優はみな新人なのだそうです。

パレスチナの抱える問題には胸が痛みますが、
青年達が直面する懊悩はパレスチナの問題であるだけではなく、
ある意味グローバルなものであります。

青年たちは「ハムレット」のように悩み、
「ロミオとジュリエット」のような悲恋に泣き、
「走れメロス」のように信頼を大切にします。
それら人として根源的な感情や想いは国や政治制度によって違いはありません。

とのは精悍でありながら美しいオマールにひきこまれました。

さあ、いったいどんなお話でしょう。
続きは次回で。
乞うご期待でございます。



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オマールの壁
監督・脚本・製作/ハニ・アブ・アサド、撮影/エハブ・アッサル、編集/マーティン・ブリンクラー、イヤス・サルマン
出演
アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ、サメール・ビシャラット、エヤド・ホーラーニほか
4月16日(土)より角川シネマ新宿、渋谷アップリンク他ロードショー
2013年、パレスチナ、97分、アラビア語・ヘブライ語、カラー、配給/アップリンク、http://www.uplink.co.jp/omar/

by Mtonosama | 2016-04-10 05:29 | 映画 | Comments(0)