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タグ:キム・ギドク監督 ( 6 ) タグの人気記事


網に囚われた男
-2-
The Net

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(C)2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.


南北分断をテーマにした作品には
キム・ギドクが脚本・製作を担当した『プンサンケ』(’11)
http://mtonosama.exblog.jp/17862317/ http://mtonosama.exblog.jp/17872088/
『レッド・ファミリー』(’13)もあります。

韓国の人間なら分断に目を背けることはできない訳で
キム・ギドク監督もそれは同様です。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。

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ストーリー
韓国との国境に近い北朝鮮の村で、
妻子と共に貧しいながらも平穏な日々を送る漁師のナム・チョル。
その朝、いつものように国境警備の兵士に漁に出かけることを報告し、
唯一の財産であるモーターボートに乗って出漁。
だが、漁網がスクリューに絡まり、ボートは
チョルの意に反して韓国側に流されてしまった。

韓国の警察に連行されたチョルはスパイの疑いをかけられ、
執拗で残忍な取り調べを受ける。
だが、彼の監視にあたる青年警護官は
家族の許に帰りたいというチョルの思いを知り、彼の潔白を信じるように。

そんな時、やはりスパイ容疑で捕まった男が追い詰められ、
チョルにソウルに住む娘への伝言を託し、舌を噛み切り自死してしまう――

スパイ容疑もはっきりせず、妻子の許に戻ることしか考えていないチョル。
韓国側は彼を泳がせるよう方針転換する。
チョルはソウルの繁華街に一人放り出される。
街には商品が溢れ、人々が自由に行き交う。
だが、チョルは固く目を閉じ、何も見ようとはしない。

いつまで待っても警護官は戻らず、一人になったことを知ったチョル。
目的もなく街をさまよう内、やくざに追われる若い女を助ける。
弟を大学に入れるため身を売った女だった。
街にはまだ使えるPCが無造作に捨てられ、
彼は、ソウルには華やかだけではない部分が存在することを知る……

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韓国で厳しい取り調べを受けるチョルを見ながら、
ああ、北ではもっと酷いことをされるんだろうな。
このまま韓国にいればいいのに、
と思う観客の気持ちとは裏腹に
漁師は頑なまでに北の家族の許へ帰ることしか考えていません。

北にも南にもダークサイドが存在します。
北だけが悪く、南は良い、とは決していえません。
ついついどちらかに肩入れしたくなる観客をいなしつつ
映画はチョルが直面する運命を淡々と描き出します。
南がどんなに華やかで自由でも、
彼にとって帰るべきところは妻子の待つ北なのです。

いつものギドク作品のように「あ、痛!」と観客が目を背けることもなく、
淡々と、静かに、
不条理というしかない漁師の運命をつきつけてきます。

しばらくは声も出ない程、映画に魅せられました。
キム・ギドク監督はいったいどれだけ進化するのでしょう。






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網に囚われた男
監督・脚本/キム・ギドク、エグゼクティヴ・プロデューサー/キム・ギドク、撮影/キム・ギドク
出演
リュ・スンボム/ナム・チョル、イ・ウォングン/オ・ジヌ、キム・ヨンミン/取り調べ官、チェ・グイファ/室長、ソン・ミンソク/北朝鮮の取り調べ官、イ・ウヌ/チョルの妻
2017年1月7日(土)よりシネマカリテ他全国順次ロードショー
韓国、2016年、112分、日本語字幕/根本理恵、提供/キングレコード、配給/クレストインターナショナル、http://www.thenet-ami.com/

by Mtonosama | 2017-01-08 04:51 | 映画 | Comments(4)

網に囚われた男
-1-
The Net

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(C)2016 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.


2017年第1回目の上映は
キム・ギドク監督の最新作です。

年が明けてもソウルの目抜き通りは
何万人ものデモ隊に埋められていることでありましょう。
ならぬものはならぬ
許せないものは許さない
と結集する韓国の人々のパワーに瞠目します。


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本作は二つに分断された朝鮮半島の悲劇を抉り出した
キム・ギドク監督の渾身の一作です。

漁船モーターが故障し、北朝鮮と韓国の国境線を越えてしまった
北朝鮮の平凡な漁師の身にふりかかった不条理な運命。

この半島が抱える問題点を
鬼才はあらためて私たちにつきつめてきました。

国境を描いた映画というと『JSA』(’00 パク・チャヌク監督)を思い出します。
JSA(Joint Security Area):共同警戒区域。
大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の
軍事境界線上にある約800m四方の地域を指す。

それにしても、
あらためて北朝鮮の正式国名を見ると
「民主主義ってなんだったっけ?」の感を新たにしますわねえ。

『JSA』も面白い映画でした。
微かな希望もありました。

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ところが
キム・ギドク監督作品となると
南北問題は少し趣が違ってきます。

キム・ギドク監督
これまで何度もご紹介してきましたが、
カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界三大映画祭を制覇し、
『嘆きのピエタ』
http://mtonosama.exblog.jp/19794903/ http://mtonosama.exblog.jp/19818003/
では第69回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた監督です。

鬼才という言葉がふさわしい監督でしたが、
本作『網に囚われた男』は、名匠、
もう一歩進んで巨匠という呼び名で
呼んでもいいような気がしてきました。

とのは『春夏秋冬そして春』('03)でキム・ギドク監督を知り、
その映像の美しさに仰天し、アジア的な世界観に酔いしれたのであります。
更に彼の名に惹かれて『サマリア』(‘04)、『弓』('05)なども観ましたが、
これらは正直言ってよくわかりませんでした。

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その後、久々に観たのが、
『アリラン』('11)
http://mtonosama.exblog.jp/17268231/ http://mtonosama.exblog.jp/17280223/
『嘆きのピエタ』('12)
『殺されたミンジュ』('14)
http://mtonosama.exblog.jp/24871440/  http://mtonosama.exblog.jp/24881792/

以前の作品に見られた独りよがり――
というと、ちょっと言葉が悪いですね。
そう、一人合点みたいなものがなくなって、わかりやすくなり、
作品として1ステージ高いところに来た感じがしました。

ところが、本作『網に囚われた男』は
さらに、心に直接訴えかけてきます。
国境線をめぐって翻弄される漁師の運命、
それは
政治性などでは解釈することのできないものでした。
わかりやすく、心にすとんと落ちてきました。
鬼才・奇才から名匠に進化したのだ、と思いました。

さあ、一体どんなお話でしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございます。



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網に囚われた男
監督・脚本/キム・ギドク、エグゼクティヴ・プロデューサー/キム・ギドク、撮影/キム・ギドク
出演
リュ・スンボム/ナム・チョル、イ・ウォングン/オ・ジヌ、キム・ヨンミン/取り調べ官、チェ・グイファ/室長、ソン・ミンソク/北朝鮮の取り調べ官、イ・ウヌ/チョルの妻
2017年1月7日(土)よりシネマカリテ他全国順次ロードショー
韓国、2016年、112分、日本語字幕/根本理恵、提供/キングレコード、配給/クレストインターナショナル、http://www.thenet-ami.com/

by Mtonosama | 2017-01-05 05:50 | 映画 | Comments(7)

殺されたミンジュ
-2-
One on One

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(C)2014 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.


まさに唐辛子パワー。

え、なんなの?
なんで?
と問いを発するひまもあればこそ、
どんどん引きずり込まれていってしまう映画です。

韓国の市場の中を女子高生が
何ものかの気配を感じて必死に逃げています。
なんなんだ?

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ストーリー
ある5月の夜。
ソウル市内の市場の中を必死に逃げる女子高生。
そして、彼女を追う男たち。
女子高生の名前はミンジュ。
彼女は追い詰められ、路地の片隅で顔にガムテープを巻かれ、
声を上げることもできないまま殺されてしまった。

新聞の片隅にすら載ることもなく、
その事件は誰にも知られることなく消し去られた。
・・・・・
事件から1年経った。
なにごともなく日常生活が営まれるこの街で
ミンジュの死の真相を追いかける謎の集団が蠢き始めた。

ミンジュ殺害に関わったのは7人の男たち。
謎の集団はそのうちの1人を拉致し、拷問を加える。
「去年の5月9日、お前は何をした?」
と執拗に問い詰めながら。
恐怖と自責の念に駆られた容疑者は全てを話して許しを乞うのだった。

謎の集団は、ある時は兵士に、また、ある時は、ヤクザに
さまざまに変装しながら1人また1人と誘拐・拉致して
拷問を加えながら自白を迫る。

やがて、謎の集団は彼らの背後に巨大な国家権力の影を感じ、
結束と平静さを失い、崩壊に向かう。

誘拐、拉致が最後の1人に至った時、
その男が顔の見えない誰かの命令で動いたに過ぎないことを知らされる。

誰がミンジュを殺したのか。

今や仲間を失った謎の集団のリーダーは
美しいソウルの街を見下ろす丘で慟哭するのだった。

そして、そこへ……

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ミンジュは漢字で表わせば“民主”。
ミンジュを殺した男たちは会社員であったり、軍関係者であったり、
拉致が回を重ねるごとに
次第に強大な権力の一員になっていきます。
しかし、結局本当の責任者はわからないままです。

わからないといえば謎の集団のリーダーとミンジュの関係もよくわかりません。
リーダーとミンジュと2ショットの写真があることから
とても大事な存在だったのでしょう。
娘だったのかもしれません。
謎の集団を構成する人々もこれという根拠があって
ミンジュ殺し犯人を追及しているわけではありません。
みな現状に不安や不満を抱く人間です。

ここから単純に思いつくのは殺されたのがミンジュ=民主
民主主義ではないかということです。

会社員は会社に忠誠を誓い、
罪もないミンジュ=民主を殺すことになんの疑問も感じません。
軍関係者もか弱いミンジュ=民主をおしつぶすことに痛痒を覚えません。
民主主義よりも大切なのは身の保身なのでしょう。

そして、順繰りに責任逃れをしていく内に
ミンジュ=民主主義を圧殺する犯人は
最も強大な権力、あるいは体制なのではないかということが見えてくる・・・

単純な読み解きです。
もっと違った読み解きをなさる方もおいででしょう。

なんたってキム・ギドク監督です。
観る人それぞれの観方と解釈が許されるのではないでしょうか。





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殺されたミンジュ
監督・脚本・撮影・編集・製作総指揮/キム・ギドク
出演
マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン、テオ、アン・ジヘ、チョ・ジェリョン、キム・ジュンギ
2016年1月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
2014年、韓国、122分、カラー、R18、字幕翻訳/根本理恵、提供/キングレコード、太秦、配給/太秦、http://www.u-picc.com/one-on-one/

by Mtonosama | 2016-01-20 13:23 | 映画 | Comments(4)

殺されたミンジュ
-1-
One on One

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(C)2014 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.


韓国の鬼才でありながら、
自国よりむしろ海外で評判の高いキム・ギドク監督。

カンヌ・ベルリン・ヴェネチアの世界三大映画祭を制した監督が贈る
本作『殺されたミンジュ』は長編第20作目となります。

以前、当試写室でご紹介した『アリラン』
http://mtonosama.exblog.jp/17268231/  http://mtonosama.exblog.jp/17280223/
では、脚本・監督・製作・撮影・録音・編集・音響・美術・出演を全て
キム・ギドク監督一人でこなしていました。

『アリラン』の生まれた背景には
自身が監督した『悲夢』に出演した女優が首つり自殺のシーンで
本当に首が締まって、病院に運び込まれるという事件がありました。
これにショックを受け、映画を撮れなくなってしまったギドク監督。
『アリラン』は事件後、山にこもって隠遁生活を送る日々を
自身で撮影し、編集し、製作したドキュメンタリーでした。

そして
第20作目となる本作はある殺人事件をめぐる群像劇。
これまた監督・脚本・撮影・編集・製作総指揮をしたのはキム・ギドク監督一人です。

ま、実際大勢のスタッフを使えばお金もかかりますからね。
って・・・

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なんといっても奇才、そして鬼才。
彼の送りだす作品には毎回びっくりすることばかりです。

キム・ギドク監督
1960年生まれ。
パリでアートを学んだ後、韓国に戻り、脚本家としてキャリアをスタート。
1996年『鰐~ワニ~』で監督デビュー。
2004年第54回ベルリン国際映画祭で『サマリヤ』が銀熊賞受賞。
同年第61回ヴェネチア国際映画祭で『うつせみ』銀獅子賞受賞。
2011年カンヌ国際映画祭で『アリラン』が〈ある視点部門賞〉受賞。
2012年第69回ヴェネチア国際映画祭で『歎きのピエタ』金獅子賞受賞。
http://mtonosama.exblog.jp/19794903/  http://mtonosama.exblog.jp/19818003/

うわあーーーっ!と悲鳴を上げて目を覆いたくなるシーンもあれば、
キャラクターの個性に目を奪われることもあり、
映画の背景が心象風景として目と心を支配することもあり、
「おっと、この展開はなんなんだ!」と目を瞠ることもあり、
キム・ギドク監督には驚かされることばかりです。

本作を観るとき、ちょっとイヤなことがあったのですが、
怖くて痛そうなシーンになると、
タオルハンカチを握りしめ、体全体に力を入れて観ている内に
イヤなことなどどこかへ行ってしまいました。

拷問や痛い場面を見入る自分が特殊なのか、
映画の持つエネルギーなのか。

断固、
作品の持つエネルギー、力強さだと思います。

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監督からのメッセージがあります。

「映画の冒頭で殺される女子高生オ・ミンジュとは誰なのか?
観客それぞれの“殺されたオ・ミンジュ”が存在するだろう。
それがどんな人物であれ、観客はこの映画を見終えるために
自分自身のオ・ミンジュを存在させなければならない。
それから結末を受け入れるか、あるいは、否定することになるだろう。
もし殺された者の気持を知っているなら、この映画を観る必要はない。
きっと理解してくれる人がいるだろうと信じて、この映画を撮った。
理解してもらえなくてもどうすることもできない。
これが現状で、現在の私たちの姿なのだから」


なんか・・・
こんなメッセージを送られると構えてしまいますよね。
そう、本作は十二分に構えてご覧ください。

そしてミンジュとはなにか・・・

続きは次回で。
乞うご期待でございます。



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殺されたミンジュ
監督・脚本・撮影・編集・製作総指揮/キム・ギドク
出演
マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン、テオ、アン・ジヘ、チョ・ジェリョン、キム・ジュンギ
2016年1月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
2014年、韓国、122分、カラー、R18、字幕翻訳/根本理恵、提供/キングレコード、太秦、配給/太秦、http://www.u-picc.com/one-on-one/

by Mtonosama | 2016-01-17 06:57 | 映画 | Comments(6)
嘆きのピエタ -2-
피에타
PIETA

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© 2012 KIM Ki-duk Film All Rights Reserved.


機械油がしみこんだ狭い路地。
こわれかけたシャッターの小さな町工場が続く町並。
清渓川(チョンゲチョン)という工場地帯。
その名のような清らかな水の流れる渓谷などとうの昔に消え失せ、
毛の抜け落ちた老犬のように侘しげな町です。

打ち捨てられた貧しい工場街。
躍進を遂げる韓国の片隅にひっそりと存在しています。
古い工作道具と家族経営でやっとの思いで存続させている工場。
そんな経営者たちはつぶれそうな工場を借金で継続させようとします。

イ・ガンド30歳は、彼ら債務者たちの手足を奪い、
その保険金で借金の返済にあたらせようとする冷血非情な取り立て屋でした――

さあ、久々のキム・ギドク節。いったいどんなお話でしょうか。

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ストーリー
イ・ガンド30歳。親の顔も知らず、たったひとりで生きてきた。
貧しい債務者に重傷を負わせ、その保険金で借金を返済させるという極悪非道な取り立て屋だ。
ある日、そんなガンドの前に、母と名乗る女が現れる。
ガンドは邪険にその女を追い払うが、女は執拗に彼の後を追う。
そして、あくまで相手にしようとしないガンドのアパートのドアの前に
ウナギを1匹置いて去っていく。
その首にくくりつけられた「チャン・ミソン」という名前と携帯番号を書いたカード。
ためらいながらも、その番号に電話をかけると子守唄が聞こえてくる。
アパートのドアを開けたガンドの眼の前には涙を浮かべて子守唄を歌う女の姿があった。

「母である証拠を見せろ」と責めるガンドが非道い仕打ちを続けても離れようとしないミソン。
ガンドはそんな彼女を次第に母親として受け入れていく。
2人で出かけた繁華街。
子どものように買い物に興じるガンドを嘲った若い男に平手打ちをくらわすミソン。
ミソンはガンドにとって次第にかけがえのない存在になっていく。

母の愛を知ったガンドは取り立て屋から足を洗おうとするが……

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黒光りする古い工作機械。
そこにあてがわれる右手の指先。
黒と白。油光りする機械と血の気を失いざらついた右手。
眼前につきつけられる正反対の質感の映像。
色彩と質感の対比に痛みと恐怖を感じます。

ピエタ像から連想するものからは程遠いものです。


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右手を切られる債務者。
ビルから突き落とされ、車椅子生活になる債務者。
ホームレスになる債務者。
それぞれの元経営者にはそれぞれのドラマがありました。


最初、ガンドは残酷な狂言回しとして登場します。
どんな人生を生きていようと借りた金が返せないなら、
その身体で返してもらうしかない、と、取り立て屋は冷静に債務者に対する業務を実行します。
彼にとってなすべきことは沈着冷静な仕事のみ。
前半は痛そうなシーンの連続に目を背け、債務者の悲哀に胸をつぶしながらも、
ガンドの機械のような仕事ぶりと機械のように規則正しい生活にひきつけられます。
「韓国の直面する貧富の差も相当なものだなぁ」と的外れな客観性すら持って映画を観ていました。
ところが、この機械のようなガンドがミソンの愛を知ることによって、
クールな「ゴルゴ13」から一転して仔犬のように素直な青年に変貌を遂げます。

が、しかし、
キム・ギドク監督がそんなハッピーエンドを用意する筈がないことはおわかりでしょう。

ミソンが隠し通してきた人生。
そして、思いもよらないエンディング。
ラストに流れる早朝のハイウェーのトラックの軌跡のシーンには声を失います。

キム・ギドク監督。
観客を最後までひきつけるストーリーテリングもさることながら、
脳裏にこびりついて離れない印象的なシーンには圧倒されます。
監督であるのみならず、すぐれた映像作家でもあるキム・ギドクにあらためて
お帰りなさい。





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嘆きのピエタ
脚本・監督/キム・ギドク、撮影/チョ・ヨンジク、美術/イ・ヒョンジュ、編集/キム・ギドク、製作/キム・ギドクフィルム、エグゼクティブ・プロデューサー/キム・ギドク、キム/ウテク、プロデューサー/キム・スンモ
出演
チョ・ミンス/チャン・ミソン、イ・ジョンジン/イ・ガンド、ウ・ギホン/フンチョル、カン・ウンジン/フンチョルの妻、チョ・ジェロン/テスン、イ・ミョンジャ/テスンの母、ホ・ジュンソク/薬物で自殺する男、クォン・セイン/ギターの男、ソン・ムンス/飛び降り自殺をする男、キム・ボムジュン/明洞の男、ソン・ジョンハク/チャン社長、チン・ヨンウク/車椅子の男、ユ・ハボク/コンテナに住む男、ソ・ジェギョン/コンテナに住む男の息子、キム・ジェロク/僧侶、イ・ウォンジャン/ミソンの息子
6月15日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
2012年、韓国、104分、カラー、日本語字幕/根本理恵、提供/キングレコード、クレスト・インターナショナル、配給/クレスト・インターナショナル
http://www.u-picc.com/pieta/

by Mtonosama | 2013-06-15 09:36 | Comments(4)
嘆きのピエタ -1-
피에타
PIETA

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© 2012 KIM Ki-duk Film All Rights Reserved.

キム・ギドク監督が戻ってきました。
なんと今回は、第69回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞をひっさげて、です。

カンヌ、ヴェネチア、ベルリンという世界三大映画祭の全てで受賞という韓国映画史上初の快挙であります。
ヴェネチアでは2004年にも「サマリア」で銀獅子賞を受賞しています。

さて、キム監督。
彼は先日当試写室で上映したウディ・アレン監督と同じく
ほぼ毎年のように映画を撮る監督でした。
1996年「鰐~ワニ~」で監督デビューして以来、
毎年たてつづけに作品を発表し続けていましたが、
2008年「悲夢」の後、3年間も作品が途絶えました。

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というのも、「悲夢」撮影の際、主演女優が死にかかるという事故があったからです。
彼女に事なきは得たものの、いっさい制作活動ができなくなってしまった監督。
その後3年間、彼は山中にこもっていました。
その間の山ごもりの日々を撮ったのが「アリラン」(‘11)。
http://mtonosama.exblog.jp/17268231/ http://mtonosama.exblog.jp/17280223/
脚本も監督も製作も撮影も録音も編集も音響も美術も、そして、出演も
キム・ギドク一人というセルフ・ドキュメンタリーです。
この作品もまたカンヌ国際映画祭で<ある視点>部門最優秀作品賞を獲得しました。

同年「プンサンケ(豊山犬)」で劇映画に復帰。
http://mtonosama.exblog.jp/17862317/ http://mtonosama.exblog.jp/17872088/
これも手に汗握る映画でした。
本作では監督としてではなく脚本・製作総指揮担当でしたが、
きれのよいスリリングな展開に瞠目しました。


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そして、いよいよ満を持しての劇映画への監督復帰作が
「嘆きのピエタ」です。
「ピエタ」。
イタリア語で「哀れみ」「慈悲」。

バチカンのサン・ピエトロ大聖堂にミケランジェロ作の「ピエタ」像があります。
聖母マリアが十字架から降ろされたイエスを抱いている彫刻です。

監督はこの彫刻から映画のヒントを得たそうです。


以前、当試写室で「アリラン」を上映したときにもご紹介しましたが、
監督は牧師をめざしたことがあります。
そんな訳で、本作を含め、キリスト教を思わせるタイトルの作品が多いです。
しかし、「サマリア」(‘04)にせよ、「嘆きのピエタ」にせよ、
私たちがキリスト教に描いているイメージとその映画とはうまく合致しません。
思わずハンカチを握りしめたくなるような暴力的なシーンがあったり、
作品のどこかに聖書と該当する部分があるのではないかと求めても
空振りに終わったり――

やはり鬼才とよばれる人は違うなぁと脱帽するしかありません。

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本作「嘆きのピエタ」も目をそむけたくなるような痛いシーンがあります。
生まれてすぐに親に捨てられ、天涯孤独に生きてきた30歳の主人公。
債務者の指を切断し、足を折り、その保険金で借金を支払わせるという
情け容赦のない消費者金融の取り立て屋です。
気の弱い人はもうこの段階で拒絶反応を起こしそうですね。
ですが、主人公の母だと名乗る不思議な女が登場すると、
思わず知らず、のめりこんでいくに違いありません。

ギドク監督、3年の隠遁生活の間にさらに映画表現を深めたように思います。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。
続きは次回までお待ちくださいませ。



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嘆きのピエタ
脚本・監督/キム・ギドク、撮影/チョ・ヨンジク、美術/イ・ヒョンジュ、編集/キム・ギドク、製作/キム・ギドクフィルム、エグゼクティブ・プロデューサー/キム・ギドク、キム/ウテク、プロデューサー/キム・スンモ
出演
チョ・ミンス/チャン・ミソン、イ・ジョンジン/イ・ガンド、ウ・ギホン/フンチョル、カン・ウンジン/フンチョルの妻、チョ・ジェロン/テスン、イ・ミョンジャ/テスンの母、ホ・ジュンソク/薬物で自殺する男、クォン・セイン/ギターの男、ソン・ムンス/飛び降り自殺をする男、キム・ボムジュン/明洞の男、ソン・ジョンハク/チャン社長、チン・ヨンウク/車椅子の男、ユ・ハボク/コンテナに住む男、ソ・ジェギョン/コンテナに住む男の息子、キム・ジェロク/僧侶、イ・ウォンジャン/ミソンの息子
6月15日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
2012年、韓国、104分、カラー、日本語字幕/根本理恵、提供/キングレコード、クレスト・インターナショナル、配給/クレスト・インターナショナル
http://www.u-picc.com/pieta/

by Mtonosama | 2013-06-11 06:30 | 映画 | Comments(4)