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グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独 
                             -2- 
      Genius Within :The Inner Life of Glenn Gould

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                           ©John Roberts

                グレン・グールドといえば、歌いながらピアノを弾いたり、
               ピアノにかぶさるようなちょっと変わった姿勢で演奏をしたり、
                   真夏でも手袋とマフラーを手放さなかったり、
                     いつもハンチング帽をかぶっていたり、
                演奏前に指先をお湯につけて温めるため、赤い指をしていたり、
レナード・バーンスタインに「グールドより美しいものを見たことがない」と言わしめるほどの美形であったり―――
          とにかく話題には事欠かない、いわゆるアイドルともいえるピアニストだったわけです。
  映画の中でも、演奏会のたびに脚の長さが30cmのしかない特製の椅子を持ち歩く様子が映されています。
              ま、ファンなら誰でも知っているこういったエピソードはともかく、
              共同監督&プロデューサーのピーター・レイモントさんによれば、
         この映画を製作する過程で今まで知らなかったことが数多く明らかになったのだそうです。

              つまり、これまでグールドとの関係を語ったことのない親しい人々――-

                  グールドのデビュー当時の恋人フランシス・バロー、
        グールドと親しかった作曲家ルーカス・フォスの妻であり、画家でもあるコーネリア・フォス、
                     ソプラノ歌手ロクソラーナ・ロスラック
  などの映像やインタビューの他、グールドの大量の私的録音や、秘蔵ものの資料映像や未公開の写真など。

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             ©Personal photo of Christopher Foss(son of Cornelia Foss)

フランシス・バローは2009年に亡くなりましたが、この映画で初めてグールドとの関係を公表。
フランシスはグールドの指導を受け、コンクールで優勝したほどの力量の持ち主です。
それなのに、ピアニストとしての道をあきらめ、グールドからのプロポーズも断り、
エジンバラで音楽教師として生きたそうです。
グールドはフランシスの家にあったピアノをたいそう気に入っていて
デビュー盤「ゴルトベルク変奏曲」はそれで練習したというエピソードも明らかにされます。
(最終的に、グールドはそのピアノを買い取ったということです)

そして、コーネリア・フォス。
彼女は1968年頃に2人の子供を連れて、グールドの住まいの近くに移り住みました。
同居はしませんでしたが、1972年に夫の元に戻るまで、グールドと日々を過ごしたということです。
グールドとの生活を語るコーネリアの様子は
「そんなこともあったわねぇ」という感じでひどく淡々としています。
ですが、今は中年になった長男クリストファーと長女エリザが、幼かった頃、
グールドおじさんと過ごした楽しい日々を語る姿と当時の映像には、
過ぎ去った時の流れとともに一抹の寂しさを感じます。

コーネリアは別れた理由を「彼の偏執症の悪化に耐えられなくなった」と語っていますが、
デビュー当時の恋人フランシスも
「彼の強過ぎる個性に窒息させられるような気がしたの」と言っているシーンを観ると、
グールドって、一生懸命過ぎてとっても不器用な人だったんだなぁ、
と不出来な息子を想う母親のような心持になってしまいました。

コーネリアと別れた後に現れたロクソラーナ・ロスラックは、
彼女がラジオで歌っているのを聴いたグールドに指名され、共演したという関係。
その時、歌っていた曲がコーネリアの夫ルーカス・フォスの作曲になるものだったというのも皮肉な話ですね。
グールドの助手は「彼女はグールドと特別な関係を築いた女性だ」と証言しています。

    ©Jock Carroll
f0165567_652452.jpgなんか女性の話ばかりになってしまいましたが、
もちろん映画は昔の恋愛沙汰をテーマにしているのではありません。
そう聞こえてしまったら、それはとのの罪であり、
グールドのせいでも、監督たちのせいではないということを申し添えます。

グールドは50歳という若さで急逝してしまいましたが、
かつての恋人たちはもうすっかりおばあちゃんです。
(グールドも今、生きていれば79歳ですものね)
彼の真摯だけどエキセントリックな様子にとまどい、
悩んだであろう彼女たちも今では他人事を語るようにインタビューに応えています。

           カメラの前の皺だらけの彼女たちのかつての姿もスクリーンに映し出されます。
  ある意味、残酷なこの対比も、目の前にあるものがすべてではないということをあらためて教えてくれました。
          お年寄りは若造には計り知れない大変な過去を抱えて生きてきたのだと思います。
                         (おっと、とのも150歳だった)

                         眼前の年老いた彼女たちの顔は、
                        夢の実現に向かっていた少女の日々、
                             恋に燃えた30代、
                   そして、日常をなにごともなく送ることに平安を感じる日々、
                         という幾層もの時間を包み込んでいます。

             グールドはそんな時間の年層から軽々と遊離し、永遠の芸術家、夢想家として
                  空中に漂っているようです。そう、シャガールの絵のように。

                        スクリーンにはグールド本人の他に、
                         海辺に残した足跡だけのグールド、
               海辺に佇む後姿の若いグールド(役者が演じています)が登場しますが、
                    この演出が不世出の天才の人生を浮き出させます。
            ドキュメンタリーでありながら、どこか不思議な幻のようなイメージというか―――

                          神々の愛する者は夭折する
                       をあらためて感じさせられる映画でした。

                      そして、バッハを聴きたくなってしまいました。

   

                              

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グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独
監督/ミシェル・オゼ、ピーター・レイモント、プロデューサー/ピーター・レイモント、編集/ミシェル・オゼ、撮影/ウォルター・コルベット
出演
グレン・グールド、ジョン・ロバーツ、ウラディーミル・アシュケナージ、コーネリア・フォス、ローン・トーク、ペトゥラ・クラーク、ケヴィン・バザーナ、ロクソラーナ・ロスラック、フランシス・バロー、ハイメ・ラレード、フレッド・シェリー他
10月29日(土)渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマ他、全国順次公開
2009年、カナダ、英語、カラー、108分、配給/アップリンク
http://www.uplink.co.jp/gould/
http://twitter.com/gould.movie

by mtonosama | 2011-09-30 06:42 | 映画 | Comments(4)
グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独
                            -1- 
         Genius Within: The Inner Life of Glenn Gould

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                          ©Jock Carroll

              面食いのとのとしては、グレン・グールドは要チェックです。

        といっても、その知識は、彼が鼻歌歌いながらピアノを弾いているのを不思議に思ったり、
         彼の演奏するバッハは今まで聴いてきたバッハとちょっと違うなぁと感じたり―――
                ま、ミーハーの域を超えるものではありませんが。

        中学時代、体育祭の行進でフルートを吹いていたので(音譜が読めず挫折しましたが)、
               バッハといえばフルートものばかり聴いておりました。
         そのため、余計にグレン・グールドの演奏するバッハに驚いたのかもしれません。

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                 ©Courtesy of Sony Music Entertainment

グレン・グールド
1932年、カナダ・トロントに生まれました。3歳から母親にピアノを教えられ、
(彼が歌いながらピアノを弾くのは、おかあさんからそのように教えられたからだとか。なんか可愛い!)
トロント王立音楽院でオルガンとピアノを学び、46年にピアニストとしてデビュー。
(すごいですね。14歳ですよ!)
1955年にはコロンビアレコードからアメリカデビューを果たします。
この年に録音したレコード「バッハ:ゴールドベルク変奏曲」は、
1956年、初のアルバムとして発表されると、ルイ・アームストロングの新譜を抑え、
ヒットチャートの1位に輝きました。
1957年にはソ連やヨーロッパを回り、カラヤンと共演。
1962年にはバーンスタインが、ブラームスに対するグールドとの解釈の相違を
聴衆に説明し、話題になっています。
1964年、シカゴでのリサイタルを最後にコンサート活動からの引退を宣言。
以後はレコード録音やラジオ、テレビを通じての演奏活動と
音楽とメディアをめぐる文筆活動に専念します。
カナダ放送協会ではラジオドキュメンタリーを製作。特に有名なものが「北の理念」「遅れてきた者たち」「大地の静かな人々」の通称「孤独三部作」であり、グールドの北への憧憬、カナダ北部の辺境で生活して隔絶を体験することで人生を豊かにした人々への賞賛がこめられた内容となっています。ここでは、グールド自身が採集してきた複数のインタヴューを、発言の意味や韻を考慮して、ポリフォニックに構成し直すというアイデアが使われており、対位法的ラジオとも呼ばれています。
1981年、デビュー作と同じく「ゴールドベルク変奏曲」を再録音。
1982年、脳卒中により急逝。享年50歳でした。


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                  ©Courtesy of Sony Music Entertainment

           と、まあ、グレン・グールドの生涯をざっと引用させていただきました。
  彼については、これまでも「グレン・グールド 27歳の記憶」(‘59)、「グレン・グールドをめぐる32章」(‘93)、
           「グレン・グールド ロシアの旅」(‘02)の映画がありますので、
                ご覧になった方もおられるのではないでしょうか。
                  とのは単なるミーハーゆえ、未見ですが…

                    本作がこれまでの作品と違うのは
            初めてカメラの前でグールドの思い出を語ってくれる人がいたこと。
          これまで語られることのなかった彼の人生が銀幕に映し出されたことでしょうか。
             もちろん、彼の演奏する姿も、その音楽も、楽しむことができます。

         さあ、グールド好きな方、ドキュメンタリー映画好きな方、この秋は期待できますよ。

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                             ©Jock Carroll

                               

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グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独
監督/ミシェル・オゼ、ピーター・レイモント、プロデューサー/ピーター・レイモント、編集/ミシェル・オゼ、撮影/ウォルター・コルベット
出演グレン・グールド、ジョン・ロバーツ、ウラディーミル・アシュケナージ、コーネリア・フォス、ローン・トーク、ペトゥラ・クラーク、ケヴィン・バザーナ、ロクソラーナ・ロスラック、フランシス・バロー、ハイメ・ラレード、フレッド・シェリー他
10月29日(土)渋谷アップリンク、銀座テアトルシネマ他、全国順次公開
2009年、カナダ、英語、カラー、108分、配給/アップリンク
http://www.uplink.co.jp/gould/
http://twitter.com/gould.movie

by mtonosama | 2011-09-27 07:12 | 映画 | Comments(4)