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殿様の試写室

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タグ:シリア・モナムール ( 2 ) タグの人気記事


シリア・モナムール
-2-
Eau Atgentee,Syrie autoportrait

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邦題は『シリア・モナムール』
原題は“Eau Argentee,Syrie autoportrait”
「銀の水、シリアの自画像」という意味でしょうか。

「銀の水」Eau Argenteeはクルド語では「シマヴ」。
このシマヴこそ殺戮と残虐さに満ちた映像に
詩と愛を注ぎかけて
ほのかに輝く銀色に染め上げる女性です。

SNSの悲惨な映像を見ながら罪悪感にうちひしがれていた
オサーマ・モハンメド監督は
同じくSNSの洪水の中でそのシマヴという女性に出会いました。

シマヴは破壊されつくした街ホムスに留まり
カメラを回し続ける女性です。

彼女は監督に“ハヴァロ”(クルド語で「友」の意)と呼びかけ、
罪悪感に沈んだ彼を救い出しました。
「ハヴァロ、もしあなたがシリアにいたとしたら何を撮る?」と。

シマヴは監督の目となり、耳となり、手となってカメラを回します。
例え、自身が銃弾に倒れても、
その身を病院のベッドに横たえながらも、
撮影し続けます。

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血まみれの男が斃れています。
彼は前日『ヒロシマ・モナムール』の上映で知り合い、
言葉を交わした男でした。
また、亡くなった小さな少女を抱いて泣き叫ぶ父の姿もあります。
最初、お人形を抱いているのかと思ってしまったほど
小さな愛らしい遺骸でした。
道路に横たわる犬、
片目と片足をなくした猫もカメラをみつめています。

You Tubeから取り出したデモや瓦礫や遺体や歎きの動画
そして
シマヴが撮影する映像。

シマヴはまた瓦礫となったホムスに残る子どもたちのための学校も作っていました。
どんな状況に置かれても友達と会い、学校に来るのは楽しいのでしょう。
にこやかな笑顔が観客の目に焼きつきます。

――次のシーン――

小さな硬直した遺体が横たわっていました。
眼を背けたくなるようなシリアの現実。

ときおり挟みこまれるシマヴとオサーマの声が
愛の睦言のように聞こえます。
それは残虐なシーンに曝された眼と耳には救いとなると同時に
手の施しようもないシリアの現状を際立たせるのですが――

オサーマ・ムハンメド
1954年ラタキア生まれ。1979年全ロシア映画大学卒業。
1988年に長編デビュー作『Stars in Broad Daylight』を発表。
現代シリア社会を痛烈に批判する作品として国内上映禁止されるが、
カンヌ国際映画祭‘88”監督週間“で公式上映、
同年開催バレンシア国際映画祭では最高賞を受賞。
長編2作目『The Box of Life,2002』は
カンヌ国際映画祭‘02「ある視点部門」に公式出品。
2014年『シリア・モナムール』は
カンヌ国際映画祭‘14“スペシャルスクリーニング“部門でワールド・プレミア上映。
山形国際ドキュメンタリー映画祭‘15で優秀賞を受賞。

カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、アブダビ国際映画祭、
ドバイ国際映画祭、MoMAドキュメンタリー・フォートナイトなど
世界中の映画祭で審査員やワークショップの講師を務める。

ウィアーム・シマヴ・べデルカーン
シリア・ホムス市出身のクルド人女性。
シリア国内で身の安全を確保するため別名で活動していたが、
近年シリアとトルコの国境付近の難民キャンプに移動、
子どもたちのための学校を開いた。

いや、はっきり言って観ることが辛い映画です。
観たからといってシリアにとって何の力にもなれないかもしれません。
でも、観ることから始まるものがあるのも確かでしょう。

本作を観ることは蝶の羽のひとそよぎのようにか細い行為かもしれません。
でも、その蝶の羽が大きな風となって
何かを変える奇跡が起こってくれますように。






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シリア・モナムール
監督、脚本/オサーマ・モハンメド、ウィアーム・シマヴ・べデルカーン、オリジナル音楽・ヴォーカル/ノマ・オルマン、写真/ウィアーム・シマヴ・べデルカーン、1001年のシリアの人々、オサーマ・モハンメド、編集/アサド・メゾン、追加編集/ダニ・アボ・ロー、レア・マッソン、音楽編集/ラファエル・ジラルド、ミキサー/ジャン=マルク・シック、エグゼクティブ・プロデューサー/セルゲイ・ラウル、カミーユ・レムレ、オルワ・ニラビワ、ダイアナ・エル・ジョルデ、協力/ルチアーノ・リゴリーニ
6月18日(土)シアターイメージフォーラムほか全国順次公開
2014年、シリア・フランス映画、アラビア語、96分、カラー、日本語字幕/中沢志乃、配給宣伝/テレザとサニー

by Mtonosama | 2016-06-15 04:30 | 映画 | Comments(4)

シリア・モナムール
-1-

Eau Argentee,Syrie autoportrait

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シリア・モナムール。
痛みとつらさと悲しみが凝結した映画です。

同じ時代、同じ地球に生きる人達の上に
このようなことが起こり、
それをスマホで伝える人達がいて
そして、それらの動画を映画にする人がいることに
時代の進歩を感じます。
と同時に
1000年前、100年前となんら変わらない
殺戮の歴史と人の残虐さに吐き気がします。

シリア。
既に23万人もの人々が死に、
難民は400万人を超えています。

本作『シリア・モナムール』の監督はオサーマ・モハンメド。
殺戮の現場であるシリアからフランスに亡命を余儀なくされた映画作家。

モハンメド監督は2011年のカンヌ国際映画祭のパネルディスカッションで
シリア政府軍に拘束され政治犯にされた市民の釈放を訴えたため
当局からの脅迫を受け、現在はフランスに亡命しています。

紛争の状況は時々刻々You Tubeにアップされます。
ネット上は殺す者、殺される者双方の記録に溢れ、
映画作家はただそれを繋ぎ合せることしかできませんでした。

だから、本作を作ったのは名も知らぬ1001人のシリア人です。
1001人。
アラビア語の“1000”と“1”という数字は“無数”を意味します。
You Tubeに画像をアップした無数のシリア人。
今は生きているのか死んでしまったのか――

本作は、原題にある通り
無数のシリア人による自画像なのです。

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オサーマ・モハンメドは
ネット画面に映し出される無名の市民によるシリアの映像を見ながら
自身は安全な地にいることへの罪悪感に深く苛まれています。

そして、
ひとつの映像が彼の眼を射ました。

それはシリア政府軍に捕らえられ拷問を受けている少年の姿。
そう、16歳か17歳くらいでしょうか。
You Tubeに投稿されたものです。
少年は裸にされ、政府軍兵士の靴に口づけさせられていました。
蹴りあげられ、銃をつきつけられていました。
その後、彼がどうなったかはわかりません。
この映像はシリア革命の引き金となった重要な映像でした。

本作の冒頭に映し出される映像でもあります。

23万人が死に、400万を超える人々が難民となっているシリア。
さまざまな宗教や民族がモザイクのように組み込まれたこの国は
北にトルコ、東にイラク、南にヨルダン、西にレバノン、
北西は地中海に面する日本の約半分の面積の国です。
2011年の世界銀行の調査では2082万人が住んでいました。

その国がなぜこのような状態になってしまったのでしょう。

2008年のリーマンショックで急激なインフレが始まり、
物価が高騰しているところへ
2010年12月 チュニジアのジャスミン革命で
アラブの春が始まったためという見方があります。

チュニジアからエジプト、リビア、シリアへと伝播したアラブの春。
チュニジアやエジプトでは大統領が退任し、
リビアではカダフィ大佐が処刑されましたが、
強権支配を続けるアサド政権を頂くシリアでは
そのまま混迷を極める内戦へと
発展してしまいました。

さあ、いったいどんなお話なのでしょう。
眼を閉じないで、次回に進みたいと思います。



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シリア・モナムール
監督、脚本/オサーマ・モハンメド、ウィアーム・シマヴ・べデルカーン、オリジナル音楽・ヴォーカル/ノマ・オルマン、写真/ウィアーム・シマヴ・べデルカーン、1001人のシリアの人々、オサーマ・モハンメド、編集/アサド・メゾン、追加編集/ダニ・アボ・ロー、レア・マッソン、音楽編集/ラファエル・ジラルド、ミキサー/ジャン=マルク・シック、エグゼクティブ・プロデューサー/セルゲイ・ラウル、カミーユ・レムレ、オルワ・ニラビワ、ダイアナ・エル・ジョルデ、協力/ルチアーノ・リゴリーニ
6月18日(土)シアターイメージフォーラムほか全国順次公開
2014年、シリア・フランス映画、アラビア語、96分、カラー、日本語字幕/中沢志乃、配給宣伝/テレザとサニー

by Mtonosama | 2016-06-12 05:03 | 映画 | Comments(4)