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シリア・モナムール
-1-

Eau Argentee,Syrie autoportrait

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シリア・モナムール。
痛みとつらさと悲しみが凝結した映画です。

同じ時代、同じ地球に生きる人達の上に
このようなことが起こり、
それをスマホで伝える人達がいて
そして、それらの動画を映画にする人がいることに
時代の進歩を感じます。
と同時に
1000年前、100年前となんら変わらない
殺戮の歴史と人の残虐さに吐き気がします。

シリア。
既に23万人もの人々が死に、
難民は400万人を超えています。

本作『シリア・モナムール』の監督はオサーマ・モハンメド。
殺戮の現場であるシリアからフランスに亡命を余儀なくされた映画作家。

モハンメド監督は2011年のカンヌ国際映画祭のパネルディスカッションで
シリア政府軍に拘束され政治犯にされた市民の釈放を訴えたため
当局からの脅迫を受け、現在はフランスに亡命しています。

紛争の状況は時々刻々You Tubeにアップされます。
ネット上は殺す者、殺される者双方の記録に溢れ、
映画作家はただそれを繋ぎ合せることしかできませんでした。

だから、本作を作ったのは名も知らぬ1001人のシリア人です。
1001人。
アラビア語の“1000”と“1”という数字は“無数”を意味します。
You Tubeに画像をアップした無数のシリア人。
今は生きているのか死んでしまったのか――

本作は、原題にある通り
無数のシリア人による自画像なのです。

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オサーマ・モハンメドは
ネット画面に映し出される無名の市民によるシリアの映像を見ながら
自身は安全な地にいることへの罪悪感に深く苛まれています。

そして、
ひとつの映像が彼の眼を射ました。

それはシリア政府軍に捕らえられ拷問を受けている少年の姿。
そう、16歳か17歳くらいでしょうか。
You Tubeに投稿されたものです。
少年は裸にされ、政府軍兵士の靴に口づけさせられていました。
蹴りあげられ、銃をつきつけられていました。
その後、彼がどうなったかはわかりません。
この映像はシリア革命の引き金となった重要な映像でした。

本作の冒頭に映し出される映像でもあります。

23万人が死に、400万を超える人々が難民となっているシリア。
さまざまな宗教や民族がモザイクのように組み込まれたこの国は
北にトルコ、東にイラク、南にヨルダン、西にレバノン、
北西は地中海に面する日本の約半分の面積の国です。
2011年の世界銀行の調査では2082万人が住んでいました。

その国がなぜこのような状態になってしまったのでしょう。

2008年のリーマンショックで急激なインフレが始まり、
物価が高騰しているところへ
2010年12月 チュニジアのジャスミン革命で
アラブの春が始まったためという見方があります。

チュニジアからエジプト、リビア、シリアへと伝播したアラブの春。
チュニジアやエジプトでは大統領が退任し、
リビアではカダフィ大佐が処刑されましたが、
強権支配を続けるアサド政権を頂くシリアでは
そのまま混迷を極める内戦へと
発展してしまいました。

さあ、いったいどんなお話なのでしょう。
眼を閉じないで、次回に進みたいと思います。



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シリア・モナムール
監督、脚本/オサーマ・モハンメド、ウィアーム・シマヴ・べデルカーン、オリジナル音楽・ヴォーカル/ノマ・オルマン、写真/ウィアーム・シマヴ・べデルカーン、1001人のシリアの人々、オサーマ・モハンメド、編集/アサド・メゾン、追加編集/ダニ・アボ・ロー、レア・マッソン、音楽編集/ラファエル・ジラルド、ミキサー/ジャン=マルク・シック、エグゼクティブ・プロデューサー/セルゲイ・ラウル、カミーユ・レムレ、オルワ・ニラビワ、ダイアナ・エル・ジョルデ、協力/ルチアーノ・リゴリーニ
6月18日(土)シアターイメージフォーラムほか全国順次公開
2014年、シリア・フランス映画、アラビア語、96分、カラー、日本語字幕/中沢志乃、配給宣伝/テレザとサニー

by Mtonosama | 2016-06-12 05:03 | 映画 | Comments(4)
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シリアの花嫁
The Syrian Bride

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中東映画が多い最近の当試写室です。
中東の映画には良い作品が多いのですが、ひとつ問題が。
そうなんです。
地理的にも、政治的にも、宗教的にも、歴史的にもあまりに複雑でわかりにくい。
アラブ人とユダヤ人。イスラム教とユダヤ教。
さらにイギリス、フランス、旧ソ連、アメリカも加わった
シッチャカメッチャカな状態が100年も続いています。
さらに聖書の時代にまで遡ったら、もう訳がわかりません。

タイトルから想像がつくように、「シリアの花嫁」はアラブ人の抱える問題を描いた作品です。
ですが、この映画のエラン・リクリス監督はエルサレム生まれのユダヤ人。
戦争は嫌、というのはたやすいけれど、
ここまでこじれてしまった関係は、絡んだ糸目をほどくように
すぐれた映像芸術によって根気よく矛盾点をあぶりだしていくことも必要なのかもしれません。

ユダヤ人監督、アラブ人監督
民族や国の利害だけでなく、
人としてどう生きていきたいかを訴える映画監督が
出始めていることはちょっと良い傾向でしょうか。

映画の舞台はゴラン高原。
第一次世界大戦以来、フランスの委任統治領の一部だった地域です。
ゴラン高原はシリア・アラブ共和国に属していますが、
1967年の第三次中東戦争でイスラエルによって占領されました。
(今問題になっているガザもこの戦争の時に占領されました)
シリアは、ゴラン高原を自国領と考え、イスラエルという国家の存在も認めていません。
それなのに、イスラエル政府は1981年にゴラン高原を一方的に併合してしまいました。

そこに、「シリアの花嫁」が生まれた背景があります。

ゴラン高原がイスラエルによって併合されてしまったので、
住民はイスラエル国籍と市民権を取得できます。
でも、ほとんどの住民はシリア人としての民族意識が強く、イスラエル国籍を選びません。
ということは無国籍!?
ゴラン高原北部の村マジュダルシャムス村に住むモナも、そんな住民の一人。

モナは今日シリアに住むタレルに嫁いでゆきます。
人生で一番うれしい日なのに、浮かない顔をしているのはなぜ?
ウェディングドレスを手に、姉のアラムと連れだって村の美容院へ向かうモナ
道々、村人たちが「おめでとう」と声をかけてくれます。

イスラエルのホテルに、モナの兄・長男で弁護士のハテムが家族と泊まっています。
彼は父やイスラム教ドゥルーズ派長老たちに逆らってロシア人と結婚したため、勘当された身。
結婚式に出席するため8年ぶりに故郷のゴラン高原へ戻る途中です。
テルアヴィヴ空港には二男のマルワンも。
各国に散っていた兄弟たちが妹の結婚を祝福するため、集まってきました。

その日、モナの村ではシリアの新大統領を支持するデモが行われる予定。
イスラエルの警察署は警戒態勢をはります。
同時に「シリア側に嫁ぐ花嫁がいるが、花嫁の父・ハメッドは軍事境界線に行かせるな」との命令も。
ハメッドは親シリア派。投獄経験もある要注意人物なのです。

ゴラン高原の国連事務所では
国際赤十字のスタッフ・ジャンヌが同僚とモナの結婚について話しています。
「花嫁は境界線を越えたらシリア国籍が確定し、イスラエルへの入国は不可能になってしまうのね」

花嫁姿のモナは姉のアマルに結婚への不安を打ち明けます。
境界線を越えたら最後、
何が起ころうと二度と故郷へは戻れず、家族に会うこともできないのですから……

シリア側とゴラン高原側に別れた親子、兄弟、親戚が会う方法はないのか、というと、
ないわけではありません。
どうするか、というと、叫ぶのです。

シリアとイスラエル領となったゴラン高原を隔てる地雷が埋まった谷越しに
「叫びの丘」と呼ばれる丘から、親が子に、弟が兄に叫びます。
「げんきかー!」「げんきだよー!」。

映画の中でもシリアで勉強する弟が両親や兄弟に向かって叫ぶシーンがあります。
花婿のタレルも叫びます。
結婚式でありながら、ゴラン高原側の親族は花婿と花嫁が並んだ姿すら見ることができないなんて…

昔、ベルリンが西と東に別れていたころ、
壁越しに会う肉親たちの様子を撮影したドキュメンタリーを見ました。
暗く重いベルリンの冬空の下、涙をおさえる老婆の姿が印象的でした。
暑く照りつけるゴラン高原の太陽の下でも同じことが今も起こっています。

しかし―――
花嫁は勇敢でした。姉のアマルも強い女性でした。
女は一旦決断すればやります。

希望という言葉を信じたくなる作品です。
ちなみにアマルとはアラビア語で「希望」という意味なのだそうです。



「シリアの花嫁」
監督/エラン・リクリス、脚本/エラン・リクリス、スハ・アラフ
キャスト
ヒアム・アッバス/アマル、マクラム・J・フーリ/ハメッド、クララ・フーリ/モナ、アシュラフ・バルホウム/マルワン、エヤド・シェティ/ハテム、ジュリー=アンヌ・ロス/ジャンヌ、
ディラール・スリマン/タレル
2月21日(土)より岩波ホールにてロードショー
http://www.bitters.co.jp/hanayome/

by mtonosama | 2009-02-13 06:34 | 映画 | Comments(6)