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殿様の試写室

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海の沈黙 -2-
Le Silence de la mer

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© 1948 GAUMONT

フランスは善玉で、ドイツはいつも悪玉か。
ナチの中にも良い人はいるんじゃないか…
前回、そんな疑問を持った殿です。

「海の沈黙」は疑問を解いてくれるでしょうか。

ストーリー
1941年、冬。
ドイツ占領下のフランスの地方都市。
姪と暮らす老人の家に2人のドイツ兵がやってきました。
その家の一部屋をドイツ軍将校に提供させるためです。

数日後、将校ヴェルナー・フォン・エーブルナックが到着。
彼は流暢にフランス語を操り、部屋を提供してもらった礼を述べます。
そして「自国を愛する人を尊敬します」と丁重に挨拶しました。
姪はひとことも言葉を返さず、笑顔も浮かべず
かといって、表情を強張らせることもなく
まるで、そこには誰もいないように、将校の先に立って2階の部屋へ案内します。

将校は老人と姪に礼儀正しくフランス語で話しかけ続けますが
彼らはそこには自分たちしかいないように振る舞います。
毎夜、将校が「おやすみなさい」とその場を去った後も
2人はいつものように無言のまま静かな夜を過ごします。

2階から響いてくる将校の少し不自由な片足をひきずる音だけを耳にしながら。

ある寒い晩、将校は私服に着替えて、2人の居間へ下りてきました。
彼は暖炉の火に手をあぶりながら、仕事は作曲家であること
幼い頃からフランス文化に憧れていたこと、などを語り始めました。
そして、この戦争はドイツとフランスの結婚であり、そのことによって
2つのすぐれた文化が融合し、両国にとって良い結果をもたらすだろうと語るのでした。
ある夜は、居間のオルガンでバッハを弾き、フランス文学を賛美する将校。
老人と姪は沈黙したまま、読書や編み物を続けます。

それから、将校は休暇で、初めてパリを訪れます。
憧れのパリ。しかし、将校クラブで久しぶりに仲間と会い
彼らの口から語られる戦争の現実を聞いて、彼は…


静かな映画です。
銃撃戦があるわけでもなく、人が殺されるわけでもない。
静かな海の底のように声のない、沈黙の抵抗。

ドイツ将校も悪魔ではありませんでした。
しかし、少しバランスが崩れたら、絶叫が溢れだすかもしれない。
3人の間で保たれる、静かではあるけれど、緊張に満ちた世界。

戦争さえなければ、この品格と教養に満ちたドイツ人と美しい姪との間には
恋が芽生えていたかもしれません。
戦争さえなければ、この将校は自分の国の人間があれほどの蛮行をするとは
知らないまま、死んでいくことができたかもしれません

戦争…
抵抗…

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監督はこれが長編処女作となるジャン=ピエール・メルヴィル。
彼自身レジスタンスに身を投じたことがあるといいます。
そんな監督の説得力に素直に耳と眼をゆだねたい気持ちになります。
海のように深く、海のように静かな抵抗。
これが63年も前の映画です。映画って本当にすごいですね。




海の沈黙 デジタルリマスター版
監督・脚本/ジャン=ピエール・メルヴィル、原作/ジャン・ヴェルコール、撮影/アンリ・ドカ、
音楽/エドガー・ビショフ、製作/ピエール・ブロンベルジェ、
製作主任/エドモン・ヴァクスレール、製作総指揮/マルセル・カルティエ
出演
ハワード・ヴェルノン/ヴェルナー・フォン・エーブルナック、二コル・ステファーヌ/姪、
ジャン=マリー・ロバン/叔父
2月20日(土)より、岩波ホール他でロードショー
1947年、86分、モノクロ、フランス映画、配給/クレストインターナショナル
公式サイト:http://www.crest-inter.co.jp/selection/index.html


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by mtonosama | 2010-01-25 06:00 | Comments(6)
海の沈黙  -1-
Le Silence de la mer

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© 1948 GAUMONT

レジスタンス――抵抗運動。特に第二次大戦中のフランスにおける対独抵抗運動を指す。 (「広辞苑」)
記憶と歴史のかなたに飛んでいってしまった言葉です…

しかし、分厚い記憶の地層を掘り起こしていくと

墨のように黒い地下水道の中を、身体を屈め、
その視線の先にある仄明るい光に向かって進むパルチザン(*)の
緊張した白い顔が、昭和の映画館の雰囲気とともに、浮かび上がってきます。
(*)労働者・農民などで組織された非正規軍

映像の記憶が、なつかしい湿り気とともに白から黒へのグラデーションで色分けされて
浮上してくるのも、モノクローム映画の持つ魅力のひとつですね。

フランスは善玉で、ドイツは悪玉。
レジスタンス映画ほど黒白はっきりしたものはないし
その昔、どこかの名画座で観たときも、パルチザンに肩入れ---
というより、パルチザンになりきって、観ていたような記憶があります。

それから幾星霜。
昔の元気が影をひそめる昨今では
ナチの兵士にも個人的には良い人だっていたんだろうなぁ、と思うようになりました。
みんながみんな、ゴリゴリのファシストだったわけではないでしょう、と。

ま、それは元気がないというよりは大人になったということにしておきます。

第2次世界大戦終了後、ヨーロッパでは
物資も資金も人も少ない時代に、すぐれたレジスタンス映画がいくつもつくられました。
多くの犠牲を払い、歳月を費やして闘ってきたレジスタンスの日々を
遺しておきたいと考えるのは必然です。
フィルムの不足、限られた予算、何よりも、俳優はじめ多くの映画関係者たちも
戦禍に飲み込まれていたでしょう。

そんな中で作られた作品は、すばらしい芸術であり、歴史の大いなる遺産です。

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戦争が終わって65年。
制作後、半世紀を超えるこれらの作品がデジタル処理を施され、
再度、登場のときを待っています。

そして

あの岩波ホールが「名作映画は普遍的なものであり、映画を通して時代と文化を考える」
という高邁なヴィジョンのもと
今年から、旧作も含めた上映プログラムを立てていくことになったのだそうです。

その第1回が「抵抗と人間」をテーマにしたレジスタンス映画です。
岩波ホールでは「海の沈黙」(‘47 仏)と「抵抗」(’56 仏)の2作品が連続上映されます。

さあ、前説はここまで。
当試写室、次回は「海の沈黙」を上映いたします。
上映まで、しばしのお待ちを。

To be continued.

海の沈黙 デジタルリマスター版
監督・脚本/ジャン=ピエール・メルヴィル、原作/ジャン・ヴェルコール、撮影/アンリ・ドカ、
音楽/エドガー・ビショフ、製作/ピエール・ブロンベルジェ、製作主任/エドモン・ヴァクスレール、製作総指揮/マルセル・カルティエ
出演
ハワード・ヴェルノン/ヴェルナー・フォン・エーブルナック、二コル・ステファーヌ/姪、ジャン=マリー・ロバン/叔父
2月20日(土)より、岩波ホール他でロードショー
1947年、86分、モノクロ、フランス映画、配給/クレストインターナショナル
公式サイト:http://www.crest-inter.co.jp/selection/index.html


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by mtonosama | 2010-01-22 06:08 | Comments(7)