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殿様の試写室

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タグ:ジョナサン・トリゲル ( 1 ) タグの人気記事

                    BOY A

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               ©Cuba Pictures(Boy A)Limited2007

BOY A 。少年Aということですね。
少年Aという略語で呼ばれる以上、なにか犯罪の匂いがします。
そして、この言葉を聞いた時点で思い浮かべる少年像は
少なからず邪悪な様子をしているのではないでしょうか。

この映画は気弱そうな笑みを浮かべた青年が男性と机をはさんで話している場面から始まります。
青年は24歳、男性は50代といったところ。
柔らかな光の中で青年はサマーキャンプへ出かける少年のように
期待と興奮と不安をないまぜにした昂揚感をかろうじて抑えているようです。
男性〈テリー〉から新しいスニーカーをプレゼントされた青年は出発を前に自分に新しい名前をつけます。
           
ジャック。
ジャック、ジャック、ジャック。
新しいシャツの着心地を確かめるように何度もその名を口にして自分になじませようとします。
24歳の人生の内、思春期を含む少年期の大半を社会から隔離されて過ごした
ジャックの新しい人生が始まろうとしていました。

BOY Aはイギリスの若手作家ジョナサン・トリゲルの同名小説が原作。
マーク・オロウが脚本を書き、
それに魅了されたジョン・クローリーがすぐさま映画化したというイギリス映画です。

少年Aは邪悪な様子をしているのではないか、と言いました。
ですが、24年を生きてきて、その大半を実社会から離れて過ごし、
親代わりともいえるソーシャルワーカーのテリーとの
信頼関係を築いてきたジャックは世間を知らないままに成長しました。
だから、とてもナイーブでまだ少年のように見えます。
そこに意外感を持ちつつも「なにかをまたしでかすんじゃないか」
という恐れが映画の冒頭ずっとついて回ります。

これが先入見なのでしょう。

出所した神戸の事件の少年が近所のスーパーで働いているという噂が
まことしやかに流れたことがあります。
その噂は小さな子どもを持つ周辺の主婦たちから拡がっていきました。
とある政治家が彼の身元引受人となって、そのスーパーに彼を紹介したというのです。
それを聞いてから、そこに働く若い男性を見ると彼ではないか、と疑ってしまう自分がいました。

彼の犯した犯罪はあまりにも残虐で、被害者の身内にとって許しがたいものでしょう。
でも、私ははやし立てるマスコミの尻馬に乗っているだけで、正義の代行者じゃありません。
今、彼がひっそりと働いているのなら、「彼が酒鬼薔薇だ」と知ってなにになるのでしょう。

ジャックという名を得て、新しい人生を始めた少年A。
ジャックはテリーの甥だと紹介され、新しいアパートに暮らし始めます。
新しい職場で働き、仕事も人間関係も順調。
その上、恋人もできました。初恋です。それもどうやらうまく行きそうな感じ。
恋人ミシェルへの愛が深まれば深まるほど、
ジャックは彼女にだけは真実を告げたいと思うのでした。
しかし、テリーはジャック自身の安全のためにも
絶対に過去のできごとを口外してはいけないと言い聞かせます。

ジャックの心の波立ちに呼応するかのように、
新聞ではBoy Aが出所したことが報じられ始めました。
成長したBoy Aのモンタージュ写真に似た人の家が放火され、
インターネットではBoy Aに懸賞金までかけられています。
ある日、仕事に向かう山中でジャックは事故車を発見。
運転手はすでに死んでいましたが、助手席の少女は生きていました。
同僚と一緒に必死で少女を助けだすジャックでしたが、
命の重さを実感した彼のこの行為が
過去の忌まわしい事件を暴きだす原因になるとは思いもしませんでした…

最初に抱いていた先入見は、
生真面目なまでに初めての経験に取組むジャックへの応援に変わっていきます。
不器用そうな細くて長い手足。自信なげなそのまなざし。
「がんばって!」
「きっとうまくいくからさ」
ジャックを演じたアンドリュー・ガーフィールドがあまりにも素晴らしいので、
この恥ずかしげのない変節ぶりです。

しかし、思わずジャックに入れ込んでいた観客をとまどわせるのは
ジャックの犯した犯罪が明らかになるとき。
そのとき、「罪は罪だ」とはっきり割り切れない自分がいます。
被害者の家族の気持ちに同調しようとしている自分もいます。
       
え、なに?これは。
あたふたしつつ、脚本家と監督のはりめぐらした罠にはまってしまいました。
ジョン・クローリー監督はこの作品は社会派映画ではないといいます。
確かに白黒はっきりさせるのが社会派映画だとしたら、この映画はそうじゃありません。

監督はこうもいいます。
「映画が進むにつれて、皆さんの中にも葛藤が生まれてほしいと願っています」。

はい、しっかり葛藤していますよ。
その葛藤はまずいことにしばらく消えそうにありません。

監督/ジョン・クローリー、脚本/マーク・オロウ、原作/ジョナサン・トリゲル

キャスト
アンドリュー・ガーフィールド/ジャック、ピーター・ミュラン/テリー、ケイティ・リオンズ/ミシェル
11月15日、渋谷シネ・アミューズ他全国順次ロードショー

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by mtonosama | 2008-10-27 07:08 | 映画 | Comments(8)