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殿様の試写室

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タグ:トマス・ヴィンターベア ( 1 ) タグの人気記事

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        デンマークは福祉制度の整った国だから、みんな豊かで幸福に暮らしているのだろうな、
                       とお気楽な印象を持っていました。
  でも、「光のほうへ」は人は福祉やお金だけでは幸福になれない、という事実もつきつけてきた映画でした。

                        デンマークの福祉については、
                   「教育と福祉の領域で実践の場に関わって働く傍ら、
           デンマークでの民主主義意識と市民形成の過程について研究を続けている」
       というデンマーク在住の鈴木優美さんのお書きになったものを読ませていただきました。
  (彼女、「デンマークのうちがわ」というブログhttp://denjapaner.seesaa.net/ も書いていらっしゃいます)

                   デンマークには約5千人のホームレスがいるそうです。
 その大半はアルコールや薬物の問題を抱えていたり、刑務所から出たばかりで住む所がないという人たち。
                 「光のほうへ」に登場する兄・ニックもまさにそういう人です。

      ただ、ホームレスと聞いて、日本の場合を思い浮かべると違和感を覚えるかもしれません。
             そこのところこそ、デンマークが高福祉国家たる所以なのですが。
デンマークのホームレスの多くは障害年金手当(月額26万5千円:課税前)や生活保護(月額約16万円:課税前)などを受給しています。そして、自治体が提供するシェルターに格安(月額約5万円)で宿泊する場合が多いので、
                  いわゆる路上生活者はあまりいないのだそうです。

 そうなんです。登場人物はこざっぱりとした身なりで、北欧風のシンプルで清潔な住まいに暮らしていました。

                   しかし、「人はパンのみにて生くるにあらず」。

    人は生活が保障されていても、心に抱え込んだ闇を消し去ることはなかなか難しいのであります。

ストーリー
兄弟はアルコール依存症の母と貧困の内に暮らしています。
しかし、2人は仲の良い兄弟でした。2人にとっての唯一の希望はまだ赤ん坊の小さな弟。
育児放棄の飲んだくれの母親に代わり、万引したミルクをランドセルに隠し、
くわえタバコで赤ん坊の面倒を見る2人。
電話帳の中から探して、名前もつけてあげました。
「この子に洗礼を授けないと」。
赤ん坊の小さな額に指先で水をつけ、洗礼のまね事をする兄弟。
室内は明るい陽光に満ち、2人は幸せでした。

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ところが、ある日、小さな弟は突然死んでしまいます―――

兄は―――
大人になった兄のニックは臨時宿泊施設で暮らしています。
彼の日々を埋めるのはアルコールと筋肉トレーニング。
同じ階に住む女性ソフィーが声をかけてきますが、心を開こうとはしません。

ある日、街中で、男がニックに声をかけてきました。
別れた恋人アナの兄・イヴァンです。

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実は、ニックはアナに去られたショックで暴力事件を起こして刑務所から出てきたばかり。
そして、イヴァンは精神を病み、病院に通院する身でした。

ニックとイヴァンとソフィーは宿の部屋で酒をあおっています。
イヴァンに誘いをかけるソフィーを見て、気を遣い、部屋を後にするニック。
久々に訪ねた弟は留守でした。
そして、宿に戻ったとき、そこには変わり果てたソフィーの姿が…

弟は―――
大人になった弟は、妻を交通事故で亡くし、息子マーティンをひとりで育てていました。
ある日、ソーシャルワーカーに「自力で息子を育てられないなら、施設で預かる」
と言われた弟は生活保護を断り、「自分には息子しかいないから」とその場を立ち去ります。

帰宅後、バスルームで薬物を注射する弟。
そのまま、失神していた彼はあわてて起き上がり、リビングへ戻ります。
眠っているマーティンをベッドへ抱いていく弟。

ある晩、母の死を告げる電話が。
「兄はどこにいるかわかりません」と答える弟。

朝、息子・マーティンに起こされ、朝食をつくろうと冷蔵庫を開けるとカラッポ。
昼、在宅ケアを装い、老人の住まいで強盗をはたらく弟。生活はどん底…

大人になった兄弟は、憎んでいた母親の葬儀で久々に再会しますが……

            これでもかというばかりに暗いエピソードから構成された映画です。
                           なんかなぁ…       
      コペンハーゲンの石造りの街並みを颯爽と歩く立派な顔立ちの長身の人々なのに、
                  どうして悪い方へ、悪い方へ、と行くんだろう。
               それがSubmarinoのSubmarinoたる所以なんでしょうけど。

でも、2人の兄弟がもがきながらも生きてこられたのは、かつて、赤ん坊の弟を慈しみ愛した日々があったから。
             長い人生においては一瞬にしか思えない僅かな甘美なひとときが
                 2人を支える新鮮な空気だったんだな、と納得しました。

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             キャストにも「ニックの弟、マーティンの父」としか、記されない弟。
  もし、息子マーティンがいなければ、とうの昔に薬物の過剰摂取で、のたれ死にしていたに違いない弟。
 彼も、あの幸せだった日々にいた赤ん坊の弟と息子を重ね合わせて生きる糧にしていたに違いありません。
                  
                      「人はパンのみにて生きるにあらず」。
            
             光と希望を暗示するラストシーンに、ふーっと大きな息をつきました。

                                 

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☆5月14日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

光のほうへ
監督/トマス・ヴィンターベア、脚本/トビアス・リンホルム&トマス・ヴィンターベア、原作/ヨナス・T・ベングトソン「SUBMARINO」(AC Books刊)、撮影/シャーロッテ・ブルークス・クリステンセン、プロデューサー/モーテン・カウフマン
出演
ヤコブ・セーダーグレン/ニック、ペーター・ブライボー/ニックの弟・マーティンの父、パトリシア・シューマン/ソフィー、モーテン・ローセ/イヴァン、グスタウ・フィッシャー・ケアウルフ/マーティン、セバスチャン・ブル・サーニング/少年時代のニック、マッス・ブロー/少年時代のニックの弟、ヘレーネ・ラインゴード・ノイマン/アナ
6月4日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2010年、デンマーク、114分、配給/ビターズ・エンド、www.bitters.co.jp/hikari/

by mtonosama | 2011-05-14 06:17 | 映画 | Comments(10)