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殿様の試写室

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タグ:ファティ・アキン監督 ( 6 ) タグの人気記事


50年後のボクたちは
-2-

tschick

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(C)2016 Lago Film GmbH. Studiocanal Film GmbH


原作者も監督も素晴らしいのですが、
なんといっても本作の素晴らしさは
2人の主人公によるところが大きいです。

いますよね。
こんな男の子。
14歳って微妙なお年頃なのに、
女の子に比べればまだまだガキ。

映画の中でも主人公が言ってました。
「この年頃って女子の方が優秀なのさ」って。

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ストーリー
マイクは同級生のタチアナに片思い。
クラスでははみ出し者で、同級生からは変人扱い。
アル中の母親を作文に書き、先生にも怒られる。
でも、マイクの頭の中は
タチアナの誕生パーティのことでいっぱいで、
夜ごと彼女の肖像画を描いている。
プレゼントのためだ。

ある日、転校生が来た。
チチャチョフという名前。
ロシアの方からやってきたらしい。
目つきが悪く、髪形も変。
おまけにどうも二日酔いのようだ。
隣の席になってしまったマイクは
目を合わせないようにした。

いよいよ夏休み。
だが、タチアナからの招待状は
マイクとチチャチョフことチックにだけ来なかった。
似顔絵を破ることもできず、
一人めそめそするマイク。

その夜
マイクは店で酔いつぶれた母親を迎えにいく。
「明日から断酒の専門病院に行くわ」
自転車を漕ぐマイクの背中に向かってつぶやく母親。

翌日、母親は病院へ。
父親は200ユーロを置いて
愛人と2週間の出張(?)に出かけた。
そこへ、突然、チックが
ボロボロのラーダ・ニーヴァに乗って出現。
「盗んだの?」
「借りただけさ。ドライブに行こうぜ!」

迷惑顔のマイクにはお構いなしで
家に上がり込むチック。
渡せなかったタチアナの似顔絵を発見し、
招待もされていない彼女のパーティへマイクを引っ張っていく。
チックに促され、似顔絵を贈るマイク。
驚くタチアナを尻目に会場を後にする2人。

その夜、2人はラーダ・ニーヴァで旅に出ることを決める。
行先はチックの祖父が住む
ワラキア(ドイツ語で未開の地を指す)。

広大な畑を見ながら進むラーダ・ニーヴァ。
マイクがスマホを出すと、
チックは取り上げて窓から放り投げる。
「ひたすら南へ進めばいいんだよ」

夜が来て、2人は風力発電機の下で寝袋に入り、
夜空を見上げながら眠りについた。

翌朝、食料調達に出かけた2人が
出会った少年についていくと子だくさんの母親に出迎えられた。
人並みの食事にありつけるぞ。
だが、デザートの前に母親は子どもたちにクイズをする。
高度なクイズに次々答える子ども達。
別れ際、チックも出題する。
「腕時計で方位をみつけるには、どうする?」
「短針を太陽に向けると12時との中間が南だよ」
「正解!」
南への行き方を知って喜ぶ2人。

ところが、車に乗り込んだチックの横を警官が通りかかると、
マイクを残したまま、慌てて発進していく。
マイクも警官の自転車を奪い、逃走。
どうなる?マイク。
どうなる?チック……

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この後も冒険は続きますよ。
そして、ひと夏を経て
少し大人になったマイクもいます。

「50年後のボクたち」が何を意味するかも
わかるんですけど、それをお話する訳にはいきません。

テンポの良さに片時だってじっとしていられない。
大人の目や女の子の目じゃなく、
14歳の少年たちの目線で笑い、びくびくしながら、
スクリーンに釘付けになってしまうことは請け合い。

アジア的な顔立ちのチックの出現には
マイクならずともびっくりし、
やがて、その魅力に吸い込まれてしまいますよ。

ああ、楽しい映画だった!

少年と夏は永遠不滅のテーマです。やっぱり。





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50年後のボクたちは
監督・共同脚本/ファティ・アキン、脚本/ラース・フーブリヒ、原作/ヴォルフガング・ヘルンドルフ、撮影/ライナー・クラウスマン、製作/マルコ・メーリッツ
出演
トリスタン・ゲーベル/マイク・クリンゲンベルク、アナンド・バトビレグ・チョローンバートル/チック、メルセデス・ミュラー/イザ、ウーヴェ・ボーム/マイクの父、アニャ・シュナイダー/マイクの母
9月16日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ
2016年、ドイツ、93分、配給/ビターズエンド、http://www.bitters.co.jp/50nengo/

by Mtonosama | 2017-09-14 08:18 | 映画 | Comments(8)

50年後のボクたちは
-1-

tschick

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(C)2016 Lago Film GmbH. Studiocanal Film GmbH


少年、夏、冒険、旅―――

小説にとっても、映画にとっても、
永遠のテーマでありましょう。

先日シネコヤで観た
『グッバイ、サマー』(’15)もそうだったし、
懐かしいところでは『スタンド・バイ・ミー』(’87)も。

ああ、もう30年も前なんですね。
でも、いつ観ても新鮮で、
元気になれるのが少年夏物語。

原作はドイツ国内で220万部以上を売り上げ、
26ヶ国で翻訳されたべストセラー小説
「14歳、ぼくらの疾走」(原題:Tschick)。
ドイツ児童文学賞ほか多くの賞をとり、
舞台版は12、13年シーズンの
最多上演作品になる大ヒットを飛ばしました。

日本でもこの夏、
柄本時生、篠山輝信の主演で
舞台が初演されました。
この二人、14歳というには
ちょっと薹(とう)が立ち過ぎと思いますけどね。
でも、150歳が言うことではないか。

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そして、「14歳、ぼくらの疾走」を映画化したのは
若き名匠ファティ・アキン。

これは期待できますよ。
ファティ・アキン監督といえば当試写室でも
もう何度も上映していますが、
またご紹介させていただきます。

ファティ・アキン監督
1973年トルコ移民の両親のもと、
ハンブルグに生まれる。
俳優志望だったが、
移民役などステレオタイプの役柄を演じることにウンザリ。
ハンブルグ造形美術大学に進学した。
95年、監督デビュー作となる短編“Sensin-Du bist es!”で
ハンブルグ国際短編映画祭観客賞を受賞。
初の長編映画“Kurz und schmerzlos”(’98)で
ロカルノ映画祭の銅豹賞、アドルフ・グリム賞、
バイエルン映画賞など全部で9つの賞を獲得。
その後は皆さまもご存知の通り、
ベルリン、カンヌ、ヴェネチアの三大映画祭での
主要賞の受賞を果たす等、破竹の勢いの監督。

第66回ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を
受賞した『ソウル・キッチン』は
ドイツで100万人以上の観客を動員し、
ヨーロッパ各国でヒットを飛ばした。

ファティ・アキン監督のみならず
多くの読者を魅了した原作の作者は
ヴォルフガング・ヘルンドルフです。

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ヴォルフガング・ヘルンドルフ
1965年ハンブルグ生まれ。
イラストレーターとして活躍の後、作家としても活動開始。
02年“Pluschgenwitten”、
07年“Diesseits des Van-Allen-Gurtels”を出版。
10年、脳腫瘍がみつかる。
その直後から「14歳、ぼくらの疾走」執筆を開始、
同年、刊行。
世界26か国で出版され、
220万部を超える大ベストセラーに。
11年、「砂」を出版。
13年、ベルリンで死去。
翌14年、彼のブログ「仕事と構造」が書籍化。
それに続き、死の直前まで加筆していた
「14歳、ぼくらの疾走」の登場人物の一人・イザが
主人公の未完の小説
“Bilder deiner grofen Liebe”が出版された。

劇的な人生ですね。
病に挑戦するかのように書き上げた小説。
それを知るとなおさら
『50年後のボクたちは』という邦題が胸に迫ります。

さあ、いったいどんなお話なのでしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



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50年後のボクたちは
監督・共同脚本/ファティ・アキン、脚本/ラース・フーブリヒ、原作/ヴォルフガング・ヘルンドルフ、撮影/ライナー・クラウスマン、製作/マルコ・メーリッツ
出演
トリスタン・ゲーベル/マイク・クリンゲンベルク、アナンド・バトビレグ・チョローンバートル/チック、メルセデス・ミュラー/イザ、ウーヴェ・ボーム/マイクの父、アニャ・シュナイダー/マイクの母
9月16日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ
2016年、ドイツ、93分、配給/ビターズエンド、http://www.bitters.co.jp/50nengo/

by Mtonosama | 2017-09-11 05:53 | 映画 | Comments(0)

消えた声が、その名を呼ぶ
-2-
The Cut

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(C)Gordon Muhle/ bombero international


ファティ・アキン監督。
作品発表ごとにスケールが大きくなっていくようです。

本作の主人公はアルメニア人の鍛冶職人。
突然家族から引き離され、強制労働させられた上、死刑宣告。
ナイフで咽喉を切られ、声を失いながらも
地球を半周し、8年かけて愛する娘を探す男を描いた壮大なロードムービー。

主人公は8年かけて娘を追い続けましたが、
監督も7年をかけて本作を完成させました。
すごいです。

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ストーリー
1915年第一次世界大戦下ではあったが、
アルメニア人鍛冶職人ナザレットは
双子の娘ルシネとアルシネ、妻ラケルと幸せに暮らしていた。
教会で祈り、懺悔をする平凡で善良な男。
彼の宝物は娘たちが刺繍してくれたスカーフだった。

一家の夕食の話題は戦争の情勢とアルメニア人が各地から姿を消しているということ。

その夜更け、ナザレットは憲兵たちによって叩き起こされ、
着の身着のまま、ただ宝物のスカーフだけを手に連行された。

灼熱の砂漠で奴隷のように働かされる日々。
その中でナザレットはアルメニア人の老人、女性、子どもたちが
足をひきずりながら歩いていく行列を見た。
ある朝、ナザレット達は縄で手足を縛られ、谷底へ連れていかれる。
命ぜられるまま、岸壁に向って膝まづくと
「喉を切れ!」の声が。
男たちの悲鳴が響き、隣にいた父も兄も斃れ、ナザレットの首にも刃がつきつけられた。

数時間後、彼は意識を取り戻す。
処刑人の一瞬のためらいが彼を生かすことになったのだ。
しかし、首を傷つけられたことでナザレットは声を失ってしまっていた。
「死にたくない」
仲間の死体をかきわけ、逃げ出すナザレット。
砂漠をさまよい、住んでいた町の住人が連れていかれた強制収容所に向かう。
だが、そこに妻と娘の姿はなかった・・・

戦争は終わった。

身をひそめていたアレッポの町で娘の無事を聞かされる。
今は15歳になっている筈の娘たちはどこにいるのか。
レバノンの孤児院で娘たちの写真を発見するナザレット。
身ぶり手ぶりで娘たちの所在を問うた。
だが、なんと1年前にキューバへ行ったと知らされる。
決死の思いで海を渡りキューバへ。
ここでも知らされた答えは無情なものだった。
娘たちは半年前にミネアポリスに向ったというのだ。
ナザレットは旅費のために働いた。
ラム酒の密輸船に乗船し、フロリダへ。
娘たちを探し、縫製工場やアルメニア人の家を訪ね歩くナザレット。
彼を突き動かすのは娘たちを抱きしめるという執念にも似た想い。
やがて、彼はノースダコタへと辿りつく。
灼熱の砂漠から冷たく暗い北米の小さな町へ。
消えた声で彼はその名前を呼ぶことができるのだろうか……

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平凡なナザレットが歩を進めるごとに
強い意志そのもののような存在と化していきます。
愛情、執念を超えて、人としての存在の意義を確かめるために
前進する男に変わっていきます。

声を失い、神も捨て、ひたすら歩き続けるナザレットを演じたのは
タハール・ラヒム。

彼の演技に加え、映画制作と共に変化する時空も
本作にすごみと感動を加えるものになっています。

実は「アメリカ映画みたいだなぁ」と前二作との違いにとまどったとの。
監督、いよいよメジャーデビューか、とも思いました。

なんとファティ・アキン監督は「アメリカ的な脚本に直してほしい」と思っていたそうで
アルメニア系アメリカ人マルディク・マーティンが共同脚本家として参画しています。
この人スコセッシ監督の『レイジング・ブル』の脚本家です。

アメリカ映画的なドラマ展開と起承転結をまとった本作。
歴史の暗黒部分からスタートした父子愛と人としての誇りをかけた
とてつもなく規模の大きな作品です。





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消えた声が、その名を呼ぶ
監督/ファティ・アキン、脚本/ファティ・アキン、マルディク・マーティン、プロデューサー/ファティ・アキン、カール・バウムガルトナー、レインハード・ブランディグ、ヌルハン・シュケルジ・ポルスト、ファミニホ・ザドラ、撮影/ライナー・クラウスマン、美術/アラン・スタースキー
出演
タハール・ラヒム/ナザレット・マヌギアン、セヴァン・ステファン/バロン・ボゴス、ヒンディ・ザーラ/ラケル、ジョージ・ジョルジョー/ヴァハン、アキン・ガジ/フラント、アレヴィク・マルティロシアン/アニ、バートゥ・クチュクチャリアン/メフメト、マクラム・J・フーリ、シモン・アブカリアン/クリコル、トリーネ・ディアホルム/孤児院院長、アルシネ・カンジアン/ナカシアン夫人、モーリッツ・ブライプトロン/ピーター・エーデルマン
12月26日(土)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開
2014年、ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・カナダ・ポーランド・トルコ、シネマスコープ、138分、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/kietakoe/

by Mtonosama | 2015-12-21 05:12 | 映画 | Comments(11)

消えた声が、その名を呼ぶ
-1-
The Cut

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(C)Gordon Muhle/ bombero international


いやはや世の中には知らないことがたくさんあります。
とのが無知なのか、世界には公にされていない歴史が多いのか。
恐らくはその両方ではありましょうが、
重い史実に驚嘆しました。

え、ファティ・アキンがこういう映画をつくるのか?!
ということでも驚きました。

ご存知とは思いますが、アキン監督はドイツに暮らすトルコ移民の2世。
教育もドイツで受けています。
しかし、根っこはトルコ人です。
その監督が、かつてトルコ人監督は誰も描かなかった
オスマン・トルコ国内でのアルメニア人虐殺を背景にした映画を撮りました。

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アルメニア人虐殺
1915年4月24日、オスマン帝国。
当時の首都コンスタンティノープルで200人あまりの知識人グループを率いていた
アルメニア人詩人ダニエル・ヴァルジャンが強制連行された。
当時、既に崩壊しつつあったオスマン帝国。
帝国内に住むアルメニア人の間では独立の気運が高まっていた。
その中で特に詩人、画家、作家、書店、政治家は帝国にとっては脅威となっていた。

ほどなくして、オスマン帝国内のアルメニア人キリスト教徒の多くが標的となり、
ロシアと結託して帝国への対抗を企てたと非難され、ほぼ殲滅されることになる。
同年8月、何十万ものアルメニア人がシリア砂漠へ向かって容赦ない死の行進を強制された。
当時の目撃者によると、アルメニア人詩人ダニエル・ヴァルジャンは拷問の末殺害されたという。
しかし、彼もまた命を落とした多くの男性、女性そして子供の中の一人に過ぎなかった。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/24/armenian-genocide-controversy_n_7140572.html

ちょうど100年前、オスマン・トルコ国内で起こったアルメニア人虐殺事件。
その犠牲者数は100万人とも150万人ともいわれ、
今なおアルメニア政府とトルコ政府の間で
決着がついていないという歴史的な事件であり、
ヒトラーがこれにならってユダヤ人を虐殺したというとんでもない事件です。

この事件についてはアトム・エゴヤン監督(『アララトの聖母』)など
アルメニア系の映画監督による作品はありましたが、
ファティ・アキン監督は自分が帰属する国の犯した犯罪を背景に
こうした映画をつくった訳です。

これが日本だったら「自虐史観だ」と問題になり、
街宣車がやってきたり、
上映館がみつからなかったりと、
大騒動になることでしょう。

ファティ・アキン監督は本作を
ベルリン交際映画祭金熊賞を受賞した『愛より強く』(‘04)
カンヌ国際映画祭脚本賞『そして、私たちは愛に帰る』(‘07)
に続く「愛・死・悪に関する三部作」の最終章と位置付けました。

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アルメニア人虐殺事件は
本作にとっての出発点であり、背景であります。
死、そして、悪
忌わしい出発点であり、背景でありながら、
それは壮大な愛のドラマにつながっていきます。

作品の全体像はマーティン・スコセッシ監督、
壮大なドラマの撮影方法はロマン・ポランスキー監督、
アルメニア人の物語をいかに描くかはアルメニア系カナダ人のアトム・エゴヤン監督
にアドバイスを求めたというファティ・アキン監督。

本作製作には7ヶ国が関わり、
ドイツ、キューバ、カナダ、ヨルダン、マルタ5ヶ国にわたってロケーションを行い、
7年の歳月をかけて完成しました。
「愛・死・悪に関する三部作」の最終章にふさわしい壮大な作品です。

さあ、いったいどんなお話でしょうか。
乞うご期待でございます。



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消えた声が、その名を呼ぶ
監督/ファティ・アキン、脚本/ファティ・アキン、マルディク・マーティン、プロデューサー/ファティ・アキン、カール・バウムガルトナー、レインハード・ブランディグ、ヌルハン・シュケルジ・ポルスト、ファミニホ・ザドラ、撮影/ライナー・クラウスマン、美術/アラン・スタースキー、衣装/カトリーン・アッシェンドルフ
出演タハール・ラヒム/ナザレット・マヌギアン、セヴァン・ステファン/バロン・ボゴス、ヒンディ・ザーラ/ラケル、ジョージ・ジョルジョー/ヴァハン、アキン・ガジ/フラント、アレヴィク・マルティロシアン/アニ、バートゥ・クチュクチャリアン/メフメト、マクラム・J・フーリ、シモン・アブカリアン/クリコル、トリーネ・ディアホルム/孤児院院長、アルシネ・カンジアン/ナカシアン夫人、モーリッツ・ブライプトロン/ピーター・エーデルマン
12月26日(土)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開
2014年、ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・カナダ・ポーランド・トルコ、シネマスコープ、138分、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/kietakoe/

by Mtonosama | 2015-12-18 05:48 | 映画 | Comments(18)
トラブゾン狂想曲 
-小さな村の大きなゴミ騒動 - -2-

Der Müll im Garten Eden

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世界中どこでも、国は中央を遠く離れた地方のことなど真剣に考えてはくれません。
これって、自分の生まれ育った土地や生活を守るには自分たちが声を上げるしかない、ってことですわね。

そんなわけでファティ・アキン監督、
自分の父祖の地であるチャンブルヌ村の事件をドキュメンタリー映画に仕上げました。

さあ、トラブゾン・チャンブルヌ村で起こったゴミ問題。どんな経緯を辿るのでしょう。


1990年代半ば黒海周辺地区に生じるゴミを処理するため、トラブゾン地方にゴミ埋め立て施設建築計画が持ち上がる。
1997年1月、トラブゾンの村チャンブルヌにある廃鉱となった銅山が、ゴミ廃棄場の候補に。
1998年5月、地域の環境コミッションは、環境への影響の研究と計画の実行とは無関係と決定。
この頃、既に銅山はゴミ施設には適当ではないという証拠が出ていたが、処理場建設が始まる。
村人たちが抗議行動を組織、作業を妨害。だが、作業は警察の保護下で続行される。

2006年5月、チャンブルヌ市当局はゴミ処理場建設許可申請を却下。
ところが、政府は市長を提訴。結局、市長は建設許可を出さざるを得なくなる。
12月、処理場建設続行。
建設条件として示されていた民家と処理場間の最低距離も守られてはいなかった。
2007年4月、ファティ・アキンはオスマン・ぺぺ環境大臣にゴミ処理場建設について
インタビューを申し込むが、大臣は拒否。

当初、ゴミは梱包して輸送されるという説明だったが、ゴミ廃棄はザツそのもの。
ゴミが運び込まれて5日目には処理場のゴムシートの破れ目から汚水が運河と小川に流れ込んだ。

ファティ・アキンはドイツ緑の党党首クラウディア・ロートをチャンブルヌに招待。
メディアを通じてこの問題への関心を喚起。

2008年1月、悪臭の発生。
住民の不平を受け、ゴミは土で覆われたが、土の圧力によって汚水が上昇し、悪臭は消えない。

トラブゾン工科大学海洋調査学科は、チャンブルヌの森林を通って流れる水を使った水産試験場を運営している。
2010年1月、この水に混入したゴミ処理場からの汚水によって試験場の250種の魚が汚染される。
海洋調査学科は処分場を告訴。
7月18日、大雨により、処理場の水が溢れだし、村の斜面を流れ落ちる。悪臭の拡大。
村人たちは処理場までデモ。そこで地方政府の環境担当官僚に面会する。その模様がテレビ放映。

海水浴をした子どもたちが下痢、高熱などの症状を訴えて通院。
役人たちはその原因を調査せず、汚水に含まれた重金属や化学物質の影響も一切調査してこなかった。

8月25日。チャンブルヌに再び豪雨。
川が決壊し、処理場から溢れだした汚水は町の中心部に。

12月6日、処分場の容量を増やすための壁が作られている間に、汚水処理場の壁が倒壊。
住民が提訴。
その後、汚水が高濃度で汚染されていること、畑が収穫不能となっていることが証明される。
法廷は汚染された土の撤去を命じた。

この過程でチャンブルヌの住民は3500人から1200人に減少。
処理場はさらに2年間稼働を続ける……

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と、こんな経緯を足掛け5年にわたって撮りためたドキュメンタリー。ま、ファティ・アキン監督の言ってみればきわめて個人的ともいえる作品です。監督の想い出の地でのゴミ処理場問題を撮影したものですから。

でも、これ、どうしても日本で起こっている福島や東北の問題と結びつけたくなってしまいます。監督の動機は個人的なものであっても、かなり普遍的な問題です。黙っていたら、臭いものや危険なものは小さな田舎の村に押し付けられてしまいます。

処理場は2~3年後に閉鎖される予定ですが、
それも、ほんとかなぁ?
閉鎖時にはゴミの上に土がかぶせられますが、ゴミが完全に分解されるには相当な年月がかかるんですよね。
これだって、あの問題を思い出させます。
放射能が消えるには10万年かかるというあれです。

例え、村の処分場を閉鎖したとしても、当局は違う場所に処分場を建てるでしょう。
そして、そこでも同じような問題が起きることでしょう。

今後のことを考えると、ちょっとばかり、いえ、かなり、絶望的な気分になります。
でも、監督のコメントを聞くと諦めてちゃいけないかも、と思えてもきます。

監督は言います。
「この作品は少なくとも、責任者に対し国際基準に合致した焼却施設を建築するよう
説得する材料になるかもしれません。
というのも、彼らの単純な解決法は、友人よりも敵を作る、
ということが彼らにもわかり始めているからです


ファティ・アキン監督。ヨーロッパ三大映画賞を制覇したあなたのような監督が
映画を武器に闘えば、少しは希望が見えてくるかもしれませんね。

今までの監督のものとは色合いの違う映画を楽しませてもらいました。





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トラブゾン狂想曲 -小さな村の大きなゴミ騒動 -
監督/ファティ・アキン、撮影/ブンヤミン・セレクバサン、エルヴェ・デュー、音楽/アレクサンダー・ハッケ、編集/アンドリュー・バード
8月17日[シアター]イメージフォーラム他順次ロードショー
2012年、ドイツ、98分、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/kyousoukyoku/

by Mtonosama | 2013-08-18 06:30 | 映画 | Comments(6)
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SOUL KITCHEN

今回は試写室ではなく、映画館からの上映です。
新宿バルト9。http://wald9.com
先日初めて足を運びました。
もうびっくり!
東京の新しい映画館はこんなに立派で、椅子の配置も良いのですね。
これなら前に大きな人が座っても、スクリーンが見えます。
う~ん、すばらしい。皆さん、映画は映画館で観ましょう!
(って、まず自分がそうしろ!ですよね。はい)

なぜ、立派な映画館へ行ったかというと、ドイツ映画祭をやっていたからです。
「ドイツ映画祭2009」。10月15日~18日、新宿バルト9で開催されました。

ドイツ映画というと、暗くて、理屈っぽい…。そんなイメージありますよね。
今年上映された、ドイツ赤軍の誕生から幹部の自殺までを描いた
「バーダー・マインホフ 理想の果てに」とか
「ヒトラー、最期の12日間」(‘04)とか
「白バラの祈り ゾフィー・ショル最期の日々」(‘05)とか
暗くて、まじめ。

10月15日、ドイツ映画祭初日に鑑賞しましたが
今年のオープニング作品ファティ・アキン監督の「SOUL KITCHEN」はコメディでした。
当試写室で昨年12月に上映した「そして、私たちは愛に帰る」
(原題Auf der anderen Seite )http://mtonosama.exblog.jp/9988444/
はこの監督の作品です。

ファティ・アキン監督はトルコ系移民の息子でハンブルグに生まれた移民第2世代。
前作は親子の関係を通じて、トルコ人としての出自を問いかける作品。
どちらかといえば理屈っぽい系の映画でした。

〈理屈っぽいぞ〉と刷り込まれた頭で「SOUL KITCHEN」を観ました。
だから、ぶっとんだシーンや卑猥な(たぶん)ハンブルグ・スラングの連続に
うれしい意味で裏切られました。
主役を演じ、脚本も書いたアダム・ボウスドウコス(彼はギリシャ系移民二世です)
は監督の子供時代からの親友です。

この人、ふられても、踏んづけられても、騙されても、ギックリ腰になっても
めげずに立ち上がる気のいい食堂オーナーを演じて良い味を出していました。

そのアダム・ボウスドウコスが舞台挨拶をしたのですが
紹介者が彼の名前を発音できず
自分で名乗りながらステージに上がってきたのは
まるで本作の1シーンを再現したようでした。

さあ、どんなお話かというと

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ハンブルグの港近くの倉庫を改造して「ソウル・キッチン」を営業するジノス。
恋人のナディーンが上海に行ってしまって、店の経営に身が入りません。
そんな心のすきをねらうかのように
悪徳不動産仲買人が店をのっとろうと接近してくるわ
仮釈放中の弟イリアスが雇ってくれと頼み込んでくるわ
ギックリ腰になるわ
もうトラブルの大盤振るまいです。

しかし、ここに凄腕のシェフがやってきました。
(このシェフ、かなり変人です)
おかげで店は評判になり、行列のできる有名店に。
一安心のジノス。と同時に、上海のナディーンの様子が気になってきました。
遠く離れた男女の気持のすれ違いは洋の東西を問いません。

矢も楯もたまらず、店は弟イリアスに任せ、ハンブルグ空港へと走ります。
ところが、あれ?ナディーンがハンブルグ空港にいるではありませんか!
見知らぬ中国人男性も一緒です。
一方、イリアス。
賭けごとに目のない彼は悪徳不動産屋の罠にはまり
今や「ソウル・キッチン」の運命は風前のともしび…

一歩間違えたら、スラップスティックになるところなのに
その寸前で抑制がきいています。

   ハンブルグが一番ハンブルグらしい風景と雰囲気。

   ソウル・キッチンの窓を通して見えるハンブルグ港
   その逆に、窓を通して見える店内の様子。
   そこにはロウソクの灯りに照らされてクリスマスの正餐を取るジノスと女性…

このあたりの静と動のめりはりのきかせ方、秀逸です。
脇を固める俳優陣も個性的。
(ソウル・キッチンに間借りするソクラテスじいさん、良かったです)
そして、映画もまた思わぬ展開を見せてくれます。

〈ファティ・アキン監督といえば移民映画〉と、なんでも枠におさめたがる
型にはまった日本人。これって楽しくないんですけど
あえて、型にはめるなら、
主役を演じたボウスドウコスさんもステージ上で語っていた「ハイマート・フィルム」
( der Heimatfilm:ふるさと映画)なのでしょう。
トルコにルーツを持つファティ・アキン監督
そして、ギリシャ系移民2世のボウスドウコスさんですが
2人とも生まれ育ったのはハンブルグ。
出自はともかく、彼らが現在生活するハンブルグこそ
自分たちのふるさとなんだと腰を据え、宣言してるような映画です。

「暗さ」がキャッチフレーズ(?)だったドイツ映画で
映画祭の顔ともいえるオープニング作品にコメディが選ばれたというのは意外でした。

一般公開されること熱望してます。

監督/ファティ・アキン、脚本/ファティ・アキン、アダム・ボウスドウコス
出演
ジノス・カザンツァキス/アダム・ボウスドウコス、イリアス・カザンツァキス/モーリッツ・ブライプトロイ、シェフ“シェイン”/ビロル・ユーネル、ナディーン/フェリーヌ・ロッガン、ルチア/アンナ・ベデルケ、ソクラテス/デミール・ゲクゲル

ドイツ映画祭2009 in Yokohamaのお知らせ

日程:10月19日(月)~31日(土)火曜定休
時間:19:50~20:50レイトショー
会場:ブリリアショートショートシアター www.Brillia-sst.jp

「41秒」(41 Sekunden)3分45秒
「朝の浮気心」(Morgenschwarm)9分
「おもちゃの国」(Spielzeugland)13分52秒
「さよならを伝えに…」(FRAGILE)20分
「3列目の女」(Das Maedchen in der dritten Reihe)1分25秒


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by mtonosama | 2009-10-24 05:39 | 映画 | Comments(16)