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ロルナの祈りLe Silence de Lorna


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誰にでも何度も観たい大事な映画があるでしょう?
両の掌でそっと転がしていたいような映画。「ロルナの祈り」はそんな映画になるかもしれません。

カンヌ国際映画祭でパルムドール大賞を受賞した「ある子供」(‘05)に次いで
2008年同映画祭最優秀脚本賞を受けた「ロルナの祈り」。
ジャン・ピエールとリュック。
3歳違いのダルデンヌ兄弟はカンヌで2度のパルムドールを含む4作連続主要賞を受賞したベルギーの名匠です。
本作「ロルナの祈り」はそんな兄弟監督が初めて撮ったラブストーリー。
しかし、ダルデンヌ兄弟。ただの恋愛映画では終らせません。

ヨーロッパに(日本でも)増えつつある不法移民。
より良い暮らしを夢見て、やってきた不法移民はさまざまな手段を弄してその国に住みつこうとします。
それに手を貸し、黒い金を手にするブローカー。この珠玉のラブストーリーの背景は不法移民問題なのです。

ロルナは若いアルバニア女性。故郷の恋人ソコルと、ベルギーでバーを開く夢を持っています。
彼女はこの国の国籍を得て暮らすため、ブローカーの手引きでベルギー人のクローディと偽装結婚をします。
クローディは麻薬中毒患者ですが、一生懸命に生きる健康な彼女を間近に見る内、
麻薬を断ち、人生をやり直したいと思うようになりました。

しかし、ロルナにはクローディに知られてはならない重大な秘密が。
彼女はブローカーにとっては客であるだけではなく、国籍売買の道具。
ロルナがベルギー国籍を取得できたら、彼女を《未亡人》にして、
国籍を欲しがっているロシア人と結婚させるという計画があるのです。
麻薬中毒のクローディはその計画のための恰好の素材でした。

ある日、クローディは麻薬を断とうと自ら入院を決意。
ロルナに手助けを求めます。入院手続きを終え、帰ろうとするロルナに「一緒にいて」とすがるクローディ。
ロルナが自分の抱える残酷な秘密を重苦しく感じた最初の瞬間でした。
〈離婚できれば、彼は殺されずにすむ〉

ロルナは離婚を成立させるため、彼に暴力を振るわれたとみせかけ、わが身を傷つけ、警察へ。
「証人がいないとダメだ」。警官の返した答えでした。
再び自らを傷つけ、看護師を証人にして、警察に訴え出るロルナ。
しかし、そんなロルナをブローカーが黙って見ているはずはありませんでした……

ダルデンヌ兄弟の撮るベルギーの街並みには華がありません。
海外旅行でふと目にする駅裏にたたずむ所在無げな若者や無造作に打ち捨てられた注射器に似た印象です。
人生にはハレとケの部分があるのに、
彼らの映画にはケの部分が圧倒的に多いというか、ケだけで成り立っていて、
淡々とした日々の営みを観ている感じがします。
にもかかわらず、観客をのめりこませてしまうところがダルデンヌ兄弟の並々ならぬ力量。
彼らは映画音楽を使いません。映画の背景に聞こえる音は生活音やノイズだけ。
観客は俳優のせりふや息遣い、演技だけに集中することができます。
少なくとも、これまでの作品ではそうでした。

ところが、「ロルナの祈り」でダルデンヌ兄弟は初めて音楽を用いました。
ベートーヴェンのピアノソナタです。
ブローカーから逃れて、ひとりで森に逃げ込んだロルナ。
ピアノソナタは絡みつくように、導くように、そして、守るように流れます。
このシーンで映画が転調したかのようです。ケがハレになります。

監督の言葉です。
「観客が、このたった一人になってしまった女性と直接向き合ったままに放置しておきたくはなかったのです。
観客と彼女の間に、何か二者をつなぐもの、彼女と共有できる何かを生み出そうと思いました」


ダルデンヌ兄弟、やはりただものではありません。
「ロルナの祈り」もただのラブストーリーじゃありません。
あの穏やかな風貌のふたりのなかに内蔵された映像世界は毎回進化していくようです。


「ロルナの祈り」
監督・脚本/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
キャスト
アルタ・ドブロシ/ロルナ、ジェレミー・レニエ/クローディ、ファブリツィオ・ロンジョーネ/ファビオ、アルバン・ウカイ/ソコル
1月31日恵比寿ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
http://lorna.jp

by mtonosama | 2009-01-23 06:41 | 映画 | Comments(13)