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ミリキタニの猫《特別篇》
猫とアートと戦争と…(そして尊厳)

ミリキタニの記憶

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希代の風雲児、ジミー・ミリキタニは2012年10月21日
ニューヨーク、ルーズベルト病院で92歳の人生を終えました。
枕辺にはリンダ・ハッテンドーフ(『ミリキタニの猫』監督)など
親しい人々が集まり、この破天荒な人生を送った男を見送ったということです。

亡くなるまでの10年間は高齢者マンションで
飼い猫のミコと暮らした(ミコは誰よりも長く彼と暮らした存在です)
ジミー・ミリキタニこと三力谷勤は
1920年6月15日カリフォルニア州サクラメントに生まれた日系2世です。
父・市太郎の兄弟は多くがアメリカに移民したため、
日本では珍しい三力谷姓がアメリカに多く存在します。
ジミーの生後間もなく一家は日本に帰国、
父の故郷、広島に住みますが、母は若くして病死。

幼い頃から絵心があったジミー。
映画の中でも自らをグランドマスター(巨匠)と呼んでいますが、
青少年期には日本画の師にもついていました。

「優れた日本の芸術を世界に紹介する」と大望を抱いて帰米した彼は
当時結婚してシアトルに移住していた姉の許に寄留。
ところが1941年12月7日、真珠湾攻撃。
翌8日、日米開戦。
翌年2月19日、ルーズベルト大統領が大統領行政令9066号に署名。
この結果、アメリカ西海岸一帯に暮らす日系人は強制収容されることになるのです――

と、これがジミー・ミリキタニの前々半生です。

・・・・・

本作『ミリキタニの記憶』は
『ミリキタニの猫』の撮影が始まった
2001年以前のジミーを知る人々の証言や
当時のジミーの写真や
ジミーの描いた絵などで綴られたジミーの過去をめぐる作品です。

監督・製作はMasa。
『ミリキタニの猫』でプロデューサーを担当した人です。
21分という短編ながらNYの奇妙なじいさんを
より身近に感じさせてくれます。

面白いじいさんですよ。

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東京篇

2001年の春、松崎美紀子はニューヨークで写真を学んでいた。
その頃、彼女はチャイナタウンの公園でベンチに寝ていたミリキタニと出会う。
彼は一緒にいて居心地がいいので、
何度も彼のところに通って写真を撮っていた。
写真を撮りながら癒されていたという。

松崎美紀子
セラピスト、アートコミュニケーター。
2000年、東南アジアへバックパッカーの旅。
その時、写真の魅力に目覚めた。そして、あらためて写真を学ぶためNYへ。
現在は「アート×社会」の可能性を探求する。
「BOOK×ART」「耳の聞こえない方と聞こえる方との香りを使ったワークショップ」
などのプロジェクトを企画・実施。
ニックネームはMIKO。ジミーの飼い猫の名前はそこからとられている。

坂本ジョージは日本企業の駐在員としてNYに赴任していた1995年頃、
ある教会が主催するホームレスに無料のランチを提供する活動のボランティアに参加。
そこでランチを食べに来たジミーと出会う。
「私のアトリエに遊びに来なさい」と誘われて行ってみたら
チャイナタウンの公園で描いていた。
その後も公園に通い、交流が続いた。
その時もらった十数点の絵は全部日本に持ち帰っている。

坂本ジョージ
東京生まれの米国育ち。米国滞在通算20年。
1995年当時は大手総合商社の広報部部長としてNY在住。
現在は趣味のサーフィンを極めるため日本とハワイを往復する生活。

佐藤哲郎は90年代半ば冬のNYに飛んではホームレスの写真を撮っていた。
ジミーには94年1月に会う。
200人程撮ったホームレスの中の一人だったが、
気が合い、その後ほぼ毎日会っていた。
悲しそうな眼をしながら、どこか強がっているという印象を受けた。
10年前、東京でホームレスの写真展を開いた時、
ジミーの写真を見た客が「この人の映画が公開されている」と
教えてくれ、驚いた。

佐藤哲郎
カメラマン。ロックやジャズのアーティストを中心に撮っている。


広島篇

三力谷家(本家)には第27代当主の一弘氏がいる。
代々伝わる三力谷家の家系図が保管されている。
その中にジミーの父・市太郎とその兄妹全員の名前がある。
市太郎の末の弟が一弘氏の祖父。

日野家の兄妹の父・達見がジミーの兄として一緒に育った。
年長の満寿江さん、隆さんは戦前ジミーを見た記憶があるという。
50年代ジミーはNYから達見に絵を送り、
広島で表装してもらい送り返してもらっていたこともある。
その頃、ジミーからコーヒーや靴などを送ってきてくれた想い出もある。
10数年前、その頃ジミーが送ってきた絵が十数点物置からみつかったという。

NY編

ジミーと誰よりも長く過ごした存在にも取材を試みたが、
それはアクビで応えてくれた…

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どうでしょう。
ジミーに妙な親近感を覚えませんか?
2012年には東京藝術大学美術館を皮切りに
仙台、福島、広島、沖縄と巡回して評判になった「尊厳の芸術展」。
日系人が強制収容所で作った日用品・美術工芸品を集めたこの展覧会には
ジミー・ミリキタニの絵も展示されていました。
その作品も本作に登場しますよ。

本当にいろいろな人生があるものです。
そして、出会いは人生の拡がりにも通じていくものなのですね。





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ミリキタニの記憶
監督・製作/Masa(マサ・ヨシカワ)、編集/出口景子、石田優子、杉田協士、撮影・スチール/御木茂則、芦沢明子、音楽/スカンク
出演
松崎美紀子、坂本ジョージ、佐藤哲郎、三力谷一弘、日野家
8月27日(土)ユーロスペースにてロードショー
21分、配給/湖畔八丁目

by Mtonosama | 2016-08-08 06:16 | 映画 | Comments(8)

ミリキタニの猫《特別篇》
猫とアートと戦争と…(そして尊厳)

ミリキタニの猫
The Cats of Mirikitani

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(C) lucid dreaming inc.

実は『ミリキタニの猫』は
2006年に既に上映された映画です。
初公開から今年で10年。
10周年記念アンコールで上映されます。

10年前に本作を観る時、
ミリキタニというのはギリシャの人の名前か
あるいは地名かと思いました。
ミリキタニって、
テッサロニキとかその手のギリシアの言葉を連想させますよね。

ところがどっこい
ミリキタニというのは三力谷という日本の名字でした。
三力谷勤。

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当時80歳だったジミー・ツトム・ミリキタニ。
アメリカはサクラメントに生まれ、広島に育った日系アメリカ人画家です。
なかなか味わいのある猫の絵などを描いてNYの路上で暮らしていました。
路上は彼の住処でもあり、アトリエでもあった訳です。
2001年9月11日もあの世界貿易センターが間近に見える路上にいました。

変わったおじいさんがいるもんだなあ、と思って観ていましたが、
9.11世界貿易センターが崩れ落ちた日、
じいさん、もといジミー・ミリキタニの人生も映画の展開も大きく変わりました。
観客もその展開にとまどいながらもひきつけられていったのです。

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まずは定宿としていた路上に住めなくなって
本作の監督であるリンダ・ハッテンドーフの狭いアパートに
転がり込むことになりました。

9.11テロがきっかけとなってジミー・ミリキタニの波乱の人生をあぶりだしていくことになります。

彼が路上で描くのは
猫に日系人強制収容所、そして原爆。

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思わぬ過去がリンダ・ハッテンドーフ監督との共同生活から
ポロポロ見えてくるところがなんともドラマチック。

子供の頃、故郷の広島で行ったピクニック。
侍だった祖先。
抽象表現主義の画家ジャクソン・ポロック、
真珠湾攻撃、
大戦時、強制収容所に入れられた何千人にも及ぶ日本人の顔をした「アメリカ人」、
収容所内でジミーを慕っていた猫好きだった男の子・・・

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お気楽に見えるミリキタニの人生には大変な歴史がありました。
そして、彼の描く絵はその人生の証言でもあった訳です。

彼とサンフランシスコの詩人ジャニス・ミリキタニが親戚だということが判明したり、
ツールレイクの収容所を出て以来、会っていなかった姉が生存していたり、
監督と共に過去をめぐる旅にでかけたミリキタニの周囲に起こる奇跡。

2002年ツールレイク強制収容所への巡礼ツアーで
元収容者達と跡地で再び接したミリキタニには
いつものお調子者の気配はありませんでした。

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そして60年ぶりの姉との再会。
なんという人生だったことでしょう。

2001年9月11日のテロが60年前の戦争の影を引きずり出し、
埋もれる筈だった一人の老人の歴史を
改めて学ばせてくれた稀有なドキュメンタリー映画でした。

人生の不思議さを思わせるのはミリキタニと監督との出会いが
この映画を生み出したこと。
そして彼にとっても監督にとっても本作が大きな転機になったであろうということ――

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10年ぶりに本作を観ましたが、
人生ってすごいなあと今回も思いました。

『ミリキタニの猫』はこれでおしまいですが、
なんと今回はおまけの二本上映。

当試写室では前編後編にわけてのご紹介ですが、
リアル映画館では『ミリキタニの記憶』という新作短編と同時上映です。

さ、次回は『ミリキタニの記憶』を上映しますよ。
どんなお話かは乞うご期待でございます。



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ミリキタニの猫
監督・プロデューサー・撮影・編集/リンダ・ハッテンドーフ、プロデューサー・撮影/マサ・ヨシカワ、編集/出口景子
出演ジミー・ツトム・ミリキタニ(三力谷勤)、ロジャー・シマムラ、ジャニス・ミリキタニ、カズコ・ナガイ
8月27日(土)ユーロスペースにてロードショー
74分、配給/湖畔八丁目

by Mtonosama | 2016-08-05 05:40 | 映画 | Comments(6)