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殿様の試写室

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タグ:ロベール・ゲディギャン ( 2 ) タグの人気記事

キリマンジャロの雪 -2-
Les Neiges du Kilimandjaro

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(C) AGAT Films & Cie, France 3 Cinema, 2011

ロベール・ゲディギャン監督は「マルセイユの恋」(‘97)を筆頭に、
自分が生まれ育った港町マルセイユを舞台にした作品をたくさん撮ってきました。
本作「キリマンジャロの雪」でも、なじみの俳優、スタッフと共に、
生活感あふれるマルセイユを描いています。

なじみの俳優?
それはなんといっても実生活でもパートナーである妻のアリアンヌ・アスカリッドでしょうね。
そう、組合委員長ミシェルの妻を演じた女優です。
そういえば、ミッシェル役のジャン=ピエール・ダルッサンも常連。
この俳優さん、4月に当試写室で上映した「ル・アーブルの靴みがき」の刑事役で良い味を出していた俳優です。
http://mtonosama.exblog.jp/17426967/ http://mtonosama.exblog.jp/17438978/
しかし、当たり前のことかもしれませんが、俳優というのはいろんな顔をつくることができる職業ですね。

ところで、映画の中で主人公ミシェルのヒーローとして登場するのはフランス社会党の創立者ジャン・ジョレス。
社会主義と労働運動に邁進してきた人物です。
ミシェルは、職場のロッカーの扉の裏に
ジョレスの有名な演説のフレーズを貼りつけているほど彼を尊敬しています。

労働者を主人公にした映画というと「自転車泥棒」(‘48)や「鉄道員」(‘58)を
思い出してしまいますが(古ッ)、ま、あの流れに近い作品かもしれません。
さあ、一体どんなお話でしょうか。


ストーリー
埠頭の上に青い作業服を着た男たちが並んでいます。
世の中の流れには抗しきれず、ミシェルが組合委員長をしている会社も
リストラを余儀なくされてしまいました。そこで20名の退職者をクジで選ぶことに。
次々に読み上げられる退職者。その中にはミシェルの名前も入っていました。
委員長の権限で自分の名前を外すこともできたのですが、
なんでも公平にしなくてはならないというのがミシェルの考えでしたから。
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ミシェルとマリ=クレールの結婚30周年を祝うパーティの日。
退職社員も含め、多くの仲間が招待され、
孫たちの歌う「キリマンジャロの雪」が流れる中、プレゼントが贈られました。
夫婦の夢だったアフリカ旅行のチケット。
義弟ラウルからはスパイダーマンのコミック本。
それは子どもの頃ミシェルが失くしてしまっていた想い出の本で
幼い字で記された彼の名前も残っていました。

失業してからのミシェルは孫の世話をする他は、時間を持て余すようになります。
そんな夫の姿が気にかかってならない妻のマリ=クレール。

ある夜のこと、ミシェル達が妹夫婦と4人でいつものようにトランプに興じていると、
覆面をした2人組の強盗が押し入ってきました。
強盗は、金品やアフリカ旅行のチケット、そして、スパイダーマンのコミックまで奪っていきました。
まじめに生きてきたのに、なぜこんな目に――
ショックを受けるミシェルたち。
PTSDなのか妹は日常生活を送ることができなくなり、
その夫ラウルは犯人への憎悪を募らせていくのでした。

数日後ミシェルはバスの中でスパイダーマンのあのコミックを手にした兄弟に出会います。
確かめてみるとそのコミックは確かにミシェルのもの。
この兄弟は同じ時にリストラされた元同僚の青年クリストフの弟たち。
まさにこのクリストフこそ強盗の1人であったことを、ミシェルはつきとめました。

逮捕されたクリストフに面会したミシェルは、若い彼が言い放った言葉によって、
これまで抱いてきた組合運動への信念を打ち砕かれます。
思わずクリストフを殴るミシェル。
マリ=クレールは今まで見たことのない夫の暴力に動揺し、2人の関係にも影が。

幼い弟2人を養っていたクリストフ。
リストラを受けた彼が生活に行き詰った末の犯行だったことが明らかになりました。
長ければ15年の実刑判決です。
ミシェルの心にはクリストフへの同情が。
ミシェルは告訴を取り下げようとしましたが、既にクリストフの身柄は司法の手に。

一方、マリ=クレール。
彼女はミシェルには黙ってクリストフの弟たちの世話をしていました。
実の母親のネグレクトにあっていた兄弟は、マリ=クレールの暖かい愛情に包まれて
次第に心を開いていきます。
手元に戻ってきたアフリカ旅行のチケットを換金したミシェルも
兄弟のためにその金を役立てようとクリストフのアパートに向うのでした……

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良かれと思ってしたことが若い労働者の反感を生んでしまったり、
定年間近なおやじ労働者の組合至上主義的な思い込みがないとはいえなかったり・・・・・
小さな町とはいえ波風の立たない生活などあるわけはありません。
でも、やがて波はおさまって、マルセイユの明るい太陽のもと、
平穏で平凡な生活がいつも通りに始まります。ああ、ありがたいことです。

落語にも、寅さん映画にも、通じるものがある、人の暖かさ。なんだかホッとします。
マルセイユの海もよそゆきを着た観光地のそれではなく、普段着の顔をしています。
そこに暮らす人の目を通した海であり、街でした。

マルセイユ発の人情映画。
「勇気とは、習慣、モラルとして日々の生活の中に息づくものである」
ジョレスの言葉。しみますねぇ。





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☆6月12日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

キリマンジャロの雪
監督/ロベール・ゲディギャン、脚本/ジャン=ルイ・ミレジ、ロベール・ゲディギャン、撮影/ピエール・ミロン(AFC)
出演
アリアンヌ・アスカリッド/マリ=クレール、ジャン=ピエール・ダルッサン/ミシェル、ジェラール・メイラン/ラウル、マリリン・カント/ドゥニーズ、グレゴワール・ルプランス=ランゲ/クリストフ、アナイス・ドゥームスティエ/フロ、アドリアン・ジョリヴェ/ジル、ロビンソン・ステヴナン/刑事、キャロル・ロシェ/クリストフの母
6月9日(土)より岩波ホールにてロードショー、全国順次公開
2011年、107分、フランス、フランス語、提供/クレストインターナショナル、NHKエンタープライズ、協力/東京日仏学院、ユニフランス・フィルムズ、配給/クレストインターナショナル、http://www.kilimanjaronoyuki.jp/

by Mtonosama | 2012-06-12 06:40 | 映画 | Comments(8)
キリマンジャロの雪 -1-
Les Neiges du Kilimandjaro

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(C) AGAT Films & Cie, France 3 Cinema, 2011

「キリマンジャロの雪」と言ったら、パパ・ヘミングウェーのあの名作です。

キリマンジャロの山頂近くに凍りついた豹の死体があった――

とても印象的な脳内シーンを与えてくれた小説でした。
だって、なにゆえ草原を駆けているべき豹が山頂の雪の中で凍りついていなくてはならなかったのでしょう。

がっ、しかし――

本作「キリマンジャロの雪」はあの短編小説とはまったく関係ありません。
この映画タイトルはヘミングウェイのあの作品ではなく、
フランスで1966年に大ヒットしたパスカル・ダネルの歌から来ています。
こちらの「キリマンジャロの雪」は1953年生まれの本作監督ロベール・ゲディギャンの青春時代の思い出の歌。
映画の中では、主人公の結婚記念日のパーティで孫たちがこの歌を歌う微笑ましい場面もあります。

キリマンジャロ。
アフリカ大陸の最高峰、独立峰としては世界最高峰を誇る5895メートルの孤高の山――
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ではなく、
本作では陽光きらめくマルセイユが舞台です。
家々の窓からは海と共にクレーンも見えていますよ。
そういえば、とのが昔住んでいた横浜の家からも港のクレーンが見えたものです。

そう、この映画の舞台は、リゾートとしてのマルセイユではなく、
港町であり、庶民の町であるマルセイユです。

主人公はミシェルとマリ=クレール。2人は結婚30年目を迎えた夫婦。
ミシェルは実直な労働組合の委員長で、
マリ=クレールはそんな夫を誇りに思い、支え続けてきた妻。
子どもたちは独立し、孫にも囲まれ、絵に描いたように幸せな熟年夫婦です。

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監督ロベール・ゲディギャンは、1953年マルセイユ近郊の小さな港町に生まれました。
父は本作の主人公と同じく港湾労働者。
学生時代は「労働運動の歴史における国家の概念」と題した博士論文を書き、
労働運動にも積極的に関わってきました。ま、そんな時代でもありましたし。

このちょっとおかたい(多分)ゲディギャンを映画へと誘ったのがルネ・フェレ監督。
昨年3月、当試写室で上映した「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」の監督です。
http://mtonosama.exblog.jp/15689906/  http://mtonosama.exblog.jp/15704699/
地方を舞台にして、自分の製作会社で映画をつくるというフェレの流儀がゲディギャン監督に影響を与えました。

フランスで半年以上のロングラン上映を記録し、
300万人を動員した大ヒット作「マルセイユの恋」(‘97)もそうでしたが、
17作目となる本作も地元マルセイユ発信の映画になっています。
労働組合の委員長が主人公と聞くと「社会派の映画か?」と思ってしまいますが、
人情味と、魚を焼く匂いが流れてくるような生活感にあふれた人情映画です。
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監督は、ヴィクトル・ユーゴー(1802~85)とジャン・ジョレス(1859~1914)
――社会主義者であり、政治家であり、雄弁家として民衆から愛された人物――
を敬愛しており、本作「キリマンジャロの雪」はこの2人の偉大な人物に負うところが大きいようです。

まず、ヴィクトル・ユーゴーの「哀れな人々」という詩
―― 19世紀のブルターニュの貧しい漁師が隣家の2人の遺児をひきとる決心をする ――
が本作の下敷になっていますし、
ジョレスの演説
「勇気とは組織の中にだけ存在するものではなく、習慣、モラルとして日々の生活の中に息づくものである」
という言葉が主人公夫婦の行動を支えています。

ジョレスの言葉は今となっては古臭く思えるかもしれません。
っていうか、こんな考えは今の時代からはとっくに失われていると思っていました。
だけど、改めて目で追ってみると実に深い言葉ですね。

人情といい、勇気といい、忘れていた大切なものを思い出すかもしれません。
さあ、いったいどんなお話でしょうか。乞うご期待でございます。



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☆6月9日(土)に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

キリマンジャロの雪
監督/ロベール・ゲディギャン、脚本/ジャン=ルイ・ミレジ、ロベール・ゲディギャン、撮影/ピエール・ミロン(AFC)
出演
アリアンヌ・アスカリッド/マリ=クレール、ジャン=ピエール・ダルッサン/ミシェル、ジェラール・メイラン/ラウル、マリリン・カント/ドゥニーズ、グレゴワール・ルプランス=ランゲ/クリストフ、アナイス・ドゥームスティエ/フロ、アドリアン・ジョリヴェ/ジル、ロビンソン・ステヴナン/刑事、キャロル・ロシェ/クリストフの母
6月9日(土)より岩波ホールにてロードショー、全国順次公開
2011年、107分、フランス、フランス語、提供/クレストインターナショナル、NHKエンタープライズ、協力/東京日仏学院、ユニフランス・フィルムズ、配給/クレストインターナショナル、http://www.kilimanjaronoyuki.jp/

by Mtonosama | 2012-06-09 05:46 | 映画 | Comments(6)