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三姉妹 ~雲南の子  -2-
三姉妹

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(C)ALBUM Productions, Chinese Shadows

貧困とは何でしょう。もちろん日本にも貧困はあります。
日本の貧困が都市の中に小島のようにつながりを断たれて点在する貧しさだとしたら、
雲南・洗羊塘(シーヤンタン)村の貧しさは、点ではなく、面として存在する貧困です。
女の子は学校に行くな、という偏見に満ちた貧しさです。
家具といえば、すり減った木片のような椅子、
農機具は青銅時代からそのままというような感じの古いものを使っている貧しさです。
1年10元(約150円)の医療保険費を払えず、その支払いをどうするかで、
村人たちが議論する貧困です。
3200メートルの高地で暖房もない貧しさです・・・・・

ああ、キリがない。とにかく絶望的に貧しいのです。
その貧しさとその中で生きる三姉妹と村人をワン・ビン監督は淡々と撮影しました。
例のように中国政府の許可は得ていません。


ストーリー
10歳の長女インイン、6歳の次女チェンチェン、4歳の三女フェンフェン。
三姉妹は子どもたち3人だけで、泥と木片を寄せ集めてつくった家に暮らしています。
母は家を出てしまい、父は遠い街へ出稼ぎに行ってしまっているからです。
近所におじいさんと叔母さんの家族がいるので、仕事を手伝って食事を分けてもらいますが、
長女のインインが妹たちの面倒を見、家畜の世話や畑仕事をして生活しています。

小さな家の台所兼居間兼玄関兼の空間には炉が切ってあり、
そこで木片を燃やして暖をとったり、ジャガイモを焼いて食べます。
「あたしが一番上手に火を熾せるよ」と煙にむせながら、小さなフェンフェンが得意顔。
シラミも退治しないといけません。

おとうさんが出稼ぎから戻ってきました。
「おとうさんが町に行ってからずーっと身体を洗っていないんだよ」と自慢するフェンフェン。

おじいさんはおとうさんに「娘たちのために嫁をもらってはどうか」と提案します。
そのためには仲介人に2千元(約3万円)を用意しなければなりませんが。

おとうさんは子どもたちを町に連れていくことにしました。
でも、経済的な理由から連れていくのは下の2人だけ。
インインを一人残して、3人はバスに乗り込み町へ降りていきます。

学校では梅蘭芳の生涯を学びます。真剣に教科書を音読するインイン。
そんなインインにおじいさんは言います。
「娘は勉強より家の仕事が大事だ」

やがておとうさんが出稼ぎに見切りをつけ、村に帰ってきました。
妹たちの他に子守の女とその娘も一緒でした。
インイン一人だけだった家は大人2人、子ども4人の大家族に。
貧しい家に人ばかり増えても豊かにはなりません。
おまけに子守女は気性の激しいチェンチェンをいじめます。

おとうさんは畑仕事にでかけ、子守女と子どもたちは川で洗濯。
「世界で一番すてきなのは私のママ」チェンチェンが繰り返し繰り返し歌っています。
石ころばかりの山、子どもたちの頭上を激しい風が吹き抜けていきます……


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その昔、ベトナム戦争が近隣諸国にも波及したとき、
国境付近に逃れた子ども達が蹲る姿は人の子には見えず、獣のように見えた――
と何かに書かれていました。

今回、シラミが湧いたボサボサの髪の三姉妹を見て、その文章を思い出しました。
洗濯もしていない脂じみたジャージを着て、穴のあいた長靴をはき、
冷たさに足指を縮こまらせてぬかるんだ道を歩く小さな妹たちは
さながらじゃれあう小動物でした。
でも、山の家にひとり残されても泣くでもなく、無表情なまま、
ジャガイモを食べる10歳の長女。
貧困が行きつく先は人が人でなくなることかもしれない、と恐怖に似たものを感じました。

そんな無表情なインインが唯一生き生きしたのは教室で梅蘭芳の物語を音読するシーン。
しかし、古い因襲にとらわれた彼女の祖父はそれすら奪ってしまうのです。

貧困は経済の不均衡から発生するものですが、歴史や因襲もまたその原因のひとつなのでしょう。

ややこしい原因探しは脇に置いておくとして、
まずはこの子たちを、乾燥した清潔な夜具に寝かせ、もつれた髪をとかし、
新しい服を着せてあげたいと思ってしまいました。
ずっと咳をしていたインインの身体も気になります。

煌めく上海や北京の繁栄と、その影に暮らす貧しい人々。
なんとも絶望的な悲しさに胸がふさいでしまいました。





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三姉妹 ~雲南の子
監督/ワン・ビン、撮影/ホアン・ウェンハイ、リー・ペイフォン、ワン・ビン、録音/フー・カン、編集/アダム・カービー、ワン・ビン、製作/シルヴィー・ファグエ、マオ・ホイ
5月25日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードーショー
仏・香港合作、2012年、153分、配給/ムヴィオラ、字幕/樋口裕子、http://moviola.jp/sanshimai/

by Mtonosama | 2013-05-14 06:44 | 映画 | Comments(4)
三姉妹 ~雲南の子  -1-
三姉妹

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(C)ALBUM Productions, Chinese Shadows

数年前、中国を訪れました。
九寨溝に行く途中のことだったと思います。
三蔵法師ご一行が歩いたような風景の中を進むバスの窓から、
いくつかの穴をうがった岩山が見えました。
ガイドさんは「あの穴に住んでいる人たちがいるんですよ」と説明してくれました。

この荒野に入る最後に見た街が、煌びやかな上海だったこともあって、その落差に驚きました。
中国では、行くたびになにかしらのカルチャー・ショックを体験させられます。

しかし、この映画では更に驚かされました。
2年前、当試写室で上映した「無言歌」の王兵(ワン・ビン)監督の
http://mtonosama.exblog.jp/16898004/ http://mtonosama.exblog.jp/16910634/
最新ドキュメンタリー映画「三姉妹 ~雲南の子」のことです。

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雲南といわれて連想するのは、
昆明、麗江、鄙びた街の風情、トンパ文字、少数民族のあでやかな衣装――
そんなイメージが先行し、一度行ってみたいものだと憧れていました。

本作「三姉妹 ~雲南の子」が撮影されたのは雲南省の海抜3200メートルに位置する
洗羊塘(シーヤンタン)村というわずか80戸の家族が暮らす寒村。
中国で最も貧しい地域のひとつです。
雲南省はここ10数年の間に開発が推進されていますが、
洗羊塘村は高地のため、インフラも整備されず、電気が通ったのも中国で一番遅かったという村。

3200メートルという高地ゆえ、ジャガイモだけが、収穫できる唯一の食物です。
村の真ん中には、この近辺の唯一の飲み水である小さな川が流れ、
ジャガイモを植えたり、わずかばかりの家畜を放牧するくらいしか産業はありません。
何千年も前からほとんどその暮らしは変わっていないように見えます。
もちろん空気はきれいですし、山々も雄大です。
聞こえる音は吹き抜ける風の音くらいのもの。
環境破壊もなく、なにもかも昔のままが良いというなら、最高の土地でしょう。

しかし、壮大な自然は人を拒むものです。

雲南では、高地に暮らす人々の貧困を解決するため、低地への全村移住計画が進められています。
洗羊塘(シーヤンタン)村も既に移住が決まっているのですが、
どこへ、いつ、移住するのかは誰も知らされていません。

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本作で描かれるのは
10歳のインイン(英英)、6歳のチェンチェン(珍珍)、4歳のフェンフェン(粉粉)の三姉妹。
姉妹ですから女の子です。
おねえちゃんのインインは女の子に見えますが、下の二人も女の子なんですよ。

でも、中国は一人っ子政策をとっているのに三姉妹って?

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農村部や少数民族の地域では例外もあるということ。
漢民族の伝統に従うと、男子が親の面倒を見ることになるので、
特に農村部においては、労働力として、また、家の跡継ぎとして男児の出産を希望する農民が多いのです。
(革命を経てなお、このような考えが根付いているというのは!)
この三姉妹の家でも、上2人が女の子だったので、3人目こそは男子を、と願ったのに
またも女の子が生まれたということなのでしょう。

一人っ子政策の国に生まれた三姉妹。
さあ、この子たちはいったいどんな生活を送っているのでしょうか。
続きは次回に。
しばしお待ちくださいませ。



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三姉妹 ~雲南の子
監督/ワン・ビン、撮影/ホアン・ウェンハイ、リー・ペイフォン、ワン・ビン、録音/フー・カン、編集/アダム・カービー、ワン・ビン、製作/シルヴィー・ファグエ、マオ・ホイ
5月25日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードーショー
仏・香港合作、2012年、153分、配給/ムヴィオラ、字幕/樋口裕子、http://moviola.jp/sanshimai/

by Mtonosama | 2013-05-11 06:55 | 映画 | Comments(2)