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殿様の試写室

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          (c)2008 The Weinstein Company, LLC All Rights Reserved.
正義のゆくえ
I.C.E.特別捜査官

Crossing Over


殿様の試写室、初の超大物スターの登場です。
ハリソン・フォードです。
ハリソン・フォードが主役の社会派映画。
ハリソン・フォードがインディ・ジョーンズ以外の貌を見せる作品。
ハリソン・フォードが出演する移民問題を扱った作品です。
ハリソン・フォードが(って、しつこい)。

6月に当試写室で上映した「扉をたたく人」が
捕まる側を描いた映画だとすると
「正義のゆくえ」は捕まえる側を描いた映画。

     ひとつの現象を両面からとらえる。
     なんと学究的な態度でありましょう(笑い)。
     ものごとには裏もあれば表もある。影もあればひなたもありますから。

というわけで、本作は妻と別れ、一人娘ともしばらく会っていないという
初老のI.C.E.特別捜査官が主人公です。
この捜査官。少しばかり情が濃すぎて、本来の任務以外の親切心を
起してしまったりするところがかえって罪つくりな人物。

そんな彼の周囲で起きる移民問題を
7つのエピソード(!)に分けて描いた作品。
7つですよ。7つ。
それだけアメリカの抱える移民問題は多いんですね。

そうそう、監督のウェイン・クラマー自身、映画監督をめざして
南アフリカ共和国から渡米後、グリーンカード(永住許可証)を取得。
アメリカに帰化した人です。

映画の中にも南アフリカ出身のユダヤ系移民が登場します。

     エピソード1
     グリーンカードを入手したいミュージシャン志望のギャビン。
     永住権申請のための「特殊移民(司祭・宗教関係者)」という項目に目をつけ
     なんとかユダヤ人学校の講師として働き始めます。

ギャビンはユダヤ教徒でもないし、ヘブライ語も話せないんですけどね。
このエピソードのラストはなかなか粋で二ヤリとさせられます。

     I.C.E.というのはImmigration and Customs Enforcementの略。
     移民・関税執行局のことです。
     2003年のアメリカ連邦政府の全面的再編に伴って新たに編成された組織。
     まだ新しい組織です。
     連邦政府の再編は2001年9月11日の同時多発テロがきっかけとなって行われたもので
     その目的はやはりテロ対策。
     一応、縦割り行政の弊害をなくし、効率的に業務を遂行する
     という大義名分はありますが。

現在1,100万人以上の不法滞在者がいるといわれるアメリカ。
カリフォルニア州はかつてメキシコ領だったこともあり
ロスアンゼルス市の人口400万人のうち25%以上がメキシコ系住民です。

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     エピソード2
     マックスたちI.C.E.の捜査官は市内の縫製工場で不法就労者を一斉逮捕。
     その中に、メキシコから幼い息子を連れて越境してきたミレヤがいた。
     彼女は「息子を人に預けているの。住所を書くから助けて」とマックスにすがるが
     彼はそれを断る。その結果、ミレヤは息子をアメリカに残したまま強制送還され…

アメリカにはカナダ、オーストラリアなどを祖国とする移民もいます。
彼らは在来のアメリカ人と区別しにくいところから「目に見えない移民たち」と呼ばれることも。

     エピソード3
     女優志望のクレアはオーストラリア出身。
     念願の映画出演のチャンスが到来するが、その条件は労働許可をとること。
     なんとしても役がほしいクレアはとんでもない屈辱的な条件を受け入れることに…

マックスの同僚ハミードはイラン系アメリカ人。
彼らはLAに40万人以上が生活し、全米最大のコミュニティを形成しています。
イラン系アメリカ人は移民の中では裕福な層に属し
ビバリーヒルズ34,000世帯中6,000世帯がイラン系という調査結果があります。

アメリカでは「21歳以上のアメリカ市民の親」は永住権が取得可能で
さらに5年経つと市民権を申請できます。

     エピソード4
     バラエリ家の家長サンジャールが市民権を得て
     「アメリカ人になること」を祝うパーティを開く。
     華やかな人々が豪華な邸宅に集まっていた。
     ハミードに招待されたが、ひとり浮いているマックス。
     同様に、場にそぐわないバラエリ家の娘ザーラと気が合った。
     彼女はまじめで優秀な兄たちとは違い、この家では鼻つまみ的な存在。
     そのザーラがある晩、無残な姿で発見され…

韓国系移民は今や日系移民を超え、全米総数は約108万人。
コリアンタウンのあるLAには全米最大の韓国系コミュニティが形成されています。

     エピソード5
     ヨンは18歳。市民権取得を目前にした高校生だ。
     両親はクリーニング店を営んでいる。
     ある日、コリアンの不良グループがヨンを商店襲撃に誘い…

国民の90%がイスラム教徒であるバングラデシュ。
彼らは出稼ぎ労働者となって世界中で働いています。

     エピソード6
     15歳のタズリマは敬虔なイスラム教徒。
     ある日、学校の授業で
     「9.11の実行犯を怪物や殺人鬼と決めつけず、人間扱いすべきだ」
     と発言し、非難を浴びる。
     その晩、彼女の家はICEとFBIの強制捜査を受ける(!)。
     アメリカで生まれた彼女の弟と妹は市民権を持つが、
     3歳で渡米したタズリマは両親ともども不法滞在者である。
     そして、彼女だけが拘置されてしまう。
     移民弁護士デニスが彼女の弁護を担当するが、FBIの提示した選択肢は…

アメリカに占めるアフリカ系米国人の比率は12.1%。
アメリカ人の8人に1人はアフリカ系です。
移民・関税執行局などといっても、そもそもアメリカは、先住民族と
望まずして移民にさせられたアフリカ系一世の多くを除けば
自由意志による移民たちによって成り立つ国です。

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     エピソード7
     アリークはナイジェリア出身の7歳の孤児。
     市民権はないので、出生地はアメリカではない。
     ナイジェリア在住の父親は彼女を認知しない。
     養護施設に保護され、里親を待ちながら2年近くも施設に暮らしている。
     担当の移民弁護士デニスは彼女をひきとろうとするが…

7つのエピソードはアメリカが抱える移民問題の多様性を語っています。
バングラデシュ出身のタズリマのケースは
9.11以降の魔女狩りにも似たアメリカのヒステリックな対応を象徴していますし
メキシコ出身の不法移民は、その近さと、彼らの貧しさゆえに
長い間繰り返されている問題です。
今ではLAの生産現場では彼らなしではたちゆかないという現実も。

そして、印象的なシーンは最後の最後に訪れます。

インディ・ジョーンズだって、こんな現実を目の前にしたら、逃げ出すしかないかもしれません。
少しおじいさんになったハリソン・フォードですが
任務と人情の間で揺れ動く姿に心そそられる殿です。

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正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官
監督・脚本/ウェイン・クラマー、製作/フランク・マーシャル、ウェイン・クラマー
キャスト
ハリソン・フォード/マックス・ブローガン、レイ・リオッタ/コール・フランケル、アシュレイ・ジャッド/デニス・フランケル、ジム・スタージェス/ギャビン・コセフ、クリフ・カーティス/ハミード・バラエリ、アリシー・ブラガ/ミレヤ・サンチェス、アリス・イヴ/クレア・シェパード、ジャスティン・チョン/ヨン・キム、サマー・ビシル/タズリマ・ジャハンギル
9月19日(土)、TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショ-
配給/ショウゲート
http://www.seiginoyukue.jp/

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by mtonosama | 2009-08-15 05:51 | 映画 | Comments(20)
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ロルナの祈りLe Silence de Lorna


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誰にでも何度も観たい大事な映画があるでしょう?
両の掌でそっと転がしていたいような映画。「ロルナの祈り」はそんな映画になるかもしれません。

カンヌ国際映画祭でパルムドール大賞を受賞した「ある子供」(‘05)に次いで
2008年同映画祭最優秀脚本賞を受けた「ロルナの祈り」。
ジャン・ピエールとリュック。
3歳違いのダルデンヌ兄弟はカンヌで2度のパルムドールを含む4作連続主要賞を受賞したベルギーの名匠です。
本作「ロルナの祈り」はそんな兄弟監督が初めて撮ったラブストーリー。
しかし、ダルデンヌ兄弟。ただの恋愛映画では終らせません。

ヨーロッパに(日本でも)増えつつある不法移民。
より良い暮らしを夢見て、やってきた不法移民はさまざまな手段を弄してその国に住みつこうとします。
それに手を貸し、黒い金を手にするブローカー。この珠玉のラブストーリーの背景は不法移民問題なのです。

ロルナは若いアルバニア女性。故郷の恋人ソコルと、ベルギーでバーを開く夢を持っています。
彼女はこの国の国籍を得て暮らすため、ブローカーの手引きでベルギー人のクローディと偽装結婚をします。
クローディは麻薬中毒患者ですが、一生懸命に生きる健康な彼女を間近に見る内、
麻薬を断ち、人生をやり直したいと思うようになりました。

しかし、ロルナにはクローディに知られてはならない重大な秘密が。
彼女はブローカーにとっては客であるだけではなく、国籍売買の道具。
ロルナがベルギー国籍を取得できたら、彼女を《未亡人》にして、
国籍を欲しがっているロシア人と結婚させるという計画があるのです。
麻薬中毒のクローディはその計画のための恰好の素材でした。

ある日、クローディは麻薬を断とうと自ら入院を決意。
ロルナに手助けを求めます。入院手続きを終え、帰ろうとするロルナに「一緒にいて」とすがるクローディ。
ロルナが自分の抱える残酷な秘密を重苦しく感じた最初の瞬間でした。
〈離婚できれば、彼は殺されずにすむ〉

ロルナは離婚を成立させるため、彼に暴力を振るわれたとみせかけ、わが身を傷つけ、警察へ。
「証人がいないとダメだ」。警官の返した答えでした。
再び自らを傷つけ、看護師を証人にして、警察に訴え出るロルナ。
しかし、そんなロルナをブローカーが黙って見ているはずはありませんでした……

ダルデンヌ兄弟の撮るベルギーの街並みには華がありません。
海外旅行でふと目にする駅裏にたたずむ所在無げな若者や無造作に打ち捨てられた注射器に似た印象です。
人生にはハレとケの部分があるのに、
彼らの映画にはケの部分が圧倒的に多いというか、ケだけで成り立っていて、
淡々とした日々の営みを観ている感じがします。
にもかかわらず、観客をのめりこませてしまうところがダルデンヌ兄弟の並々ならぬ力量。
彼らは映画音楽を使いません。映画の背景に聞こえる音は生活音やノイズだけ。
観客は俳優のせりふや息遣い、演技だけに集中することができます。
少なくとも、これまでの作品ではそうでした。

ところが、「ロルナの祈り」でダルデンヌ兄弟は初めて音楽を用いました。
ベートーヴェンのピアノソナタです。
ブローカーから逃れて、ひとりで森に逃げ込んだロルナ。
ピアノソナタは絡みつくように、導くように、そして、守るように流れます。
このシーンで映画が転調したかのようです。ケがハレになります。

監督の言葉です。
「観客が、このたった一人になってしまった女性と直接向き合ったままに放置しておきたくはなかったのです。
観客と彼女の間に、何か二者をつなぐもの、彼女と共有できる何かを生み出そうと思いました」


ダルデンヌ兄弟、やはりただものではありません。
「ロルナの祈り」もただのラブストーリーじゃありません。
あの穏やかな風貌のふたりのなかに内蔵された映像世界は毎回進化していくようです。


「ロルナの祈り」
監督・脚本/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
キャスト
アルタ・ドブロシ/ロルナ、ジェレミー・レニエ/クローディ、ファブリツィオ・ロンジョーネ/ファビオ、アルバン・ウカイ/ソコル
1月31日恵比寿ガーデンシネマ他全国順次ロードショー
http://lorna.jp

by mtonosama | 2009-01-23 06:41 | 映画 | Comments(13)