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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

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(c)2005 Teddy Bear Films 
女工哀歌(じょこうエレジー)
China Blue

   一昨年、中国の新興工業団地・恵州という街に行きました。
   経済特区・深圳に近い都市です。
   そこで印象的だったのは景勝地・杭州の観光名所である西湖を模して造った人造湖
   (湖岸から湖の中ほどにある四阿に行く橋を渡るには通行料を払わねばなりません)と、
   運転席が檻になったタクシー(治安が悪いからだそうです)。
   そして、工場寮の窓という窓には満艦飾の洗濯物がぶらさがっていたことでした。

       「女工哀歌(じょこうエレジー)」は四川省の農村で暮らしていた
      ジャスミン・リーという16歳の少女が家計を助けるため、
      何日もかけ、船や汽車を乗りついで、
      広東省の都会へ出稼ぎに出てくるところから始まるドキュメンタリー映画です。

     現在、中国では1億3千万人が田舎から都会に働きに出てきているといいます。
         映画の中に「女の子はおとなしいから、条件が悪くても文句をいわなくていい」
      と発言する経営者が出てきます。
     ジャスミンたちは都市生活者なら決して引き受けないような
         低賃金と悪条件で働き続けます。

     給料は日本円にして3,120円~7,800円(月給です!)
     残業手当なし
      社内食もシャンプーするためのバケツ1杯のお湯の代金も
     すべて乏しい給料の中から支払わなければなりません。
     残業続きの毎日、洗濯をしていると睡眠時間がなくなるため、
      彼女たちはお昼休みに洗濯をします(もちろん洗濯機などありません)。
     寮の窓は12人の少女たちの洗濯物でいっぱいになります
         (寮は12人の相部屋です)。

     恵州で見た満艦飾の洗濯物もこんなふうにわずかな休み時間に
         洗って干したのか、 と今更ながら寮の住人たちがいとおしくなりました。

   ジャスミンが働くことになったのは
   欧米諸国や日本へ輸出するジーンズを作る工場です。
   経営者は元警察署長のラムさん。
   大躍進を遂げる中国経済の典型的な起業家です。
   熾烈な同業者間の競争を勝ち抜くため、
   従業員の労働管理、西側諸国の工場視察団の接待や価格交渉と毎日忙しく働きながら、
   趣味の書道も欠かしません。
   達筆な書がオフィスに飾られていれば
   経営者としてのイメージアップにもつながりますから。

     でも、温和で人の良さそうなラムさんがことあるごとに口にするのは
     「従業員はすぐに怠けるから、厳しくしないと」です。
     ジャスミンや同室の14歳のリービンたちは
     安全も法の保護もない十分に厳しい状況で働いているんですけど。

   今日もラムさんは欧米企業と価格交渉です。
   先方の言い値より高い額で交渉は成立しましたが、
   ジャスミンたちはまた明日から夜も眠らず、
   休みを返上して、大量のジーンズを納期に間に合わせないとなりません…

        この映画を撮ったミカ・X・ペレドは1952年生まれのドキュメンタリー映画監督。
        グローバリゼーションこそ、現代が抱える諸悪の根源であるとして
        それをテーマにした3部作の製作を続ける映像作家ですが、
        「女工哀歌」(’05)は
        ”STORE WARS:When Wal-Mart Comes to Town”(’01)に次ぐ第2作。
        3作目は現在製作中ということです。

    「女工哀歌」には「蟹工船」やハケンにも通じる若年労働者の厳しい状況が
    映し出されていますが、
    そこには極悪非道な経営者、虐げられる労働者という従来の構図では片付けられない
    より深刻な問題が横たわっています。

        市場・企業などの国際化=グローバリゼーション
        辞書にはこうあります。

        「グローバルな観点が必要」とか以前は良い意味で使われていました。
        坂本竜馬など、今でいえばグローバルな視野の持ち主ですよね。
        でも、いつしかグローバルの持つ意味合いは変わってきました。
        多国籍企業の利害はいまや全世界にまたがっています。
        その矛盾が噴き出すのは法の保障などない未成熟な国の貧しい人々。

    「ナイロビの蜂」「ダーウィンの悪夢」(いずれも‘06公開)ではアフリカの人々が
    6月にご紹介した「いま、ここにある風景」でも中国やバングラデシュの人々が
    グローバリゼーションによる急激な経済開発の結果、生じた貧困や環境破壊の中で
    苦しんでいました。

        中国はグローバリゼーションの結果、世界の工場になり、経済大国になりました。
        そして、その工場にやってくる多国籍企業。
        彼らはコストを最低限にまで抑えるよう要求します。
        工場経営者たちも法で定められた労働条件も最低賃金も
        見ないふりをして、労働者を働かせます。
        睡魔に襲われた労働者がケガをしようが(画像はジャスミンたちが目を開けたま 
        ま、眠る方法を教わっているところです)
        病気になろうが知ったことじゃない。
        広大な中国の農村からはいくらでも働き手がやってくるのですから。

    多国籍企業が悪い、中国が悪い、工場経営者が悪い。
    だけど、私たちは?
    メガストアで「安い、安い」と喜んでジーンズや日用品を買っている私たちは?

    とはいえ、買わないわけにもいかないし。

         ディレンマと答えの見えない難問をつきつけられながらも、
         押しつぶされずにこの作品を観ていられたのは
         ジャスミンたちが明るくて、健気だから。
         外国人にカメラを向けられるという、おそらくは生まれて初めての体験に
         一生懸命に応えている昂揚感が伝わってくるから。
         そして、こんなに厳しい状況でも希望や夢を持ってたくましく生きているから。

監督・撮影・製作/ミカ・X・ペレド
編集/マニュエル・ツィンガリス、ミカ・X・ペレド 
9月27日、渋谷シアター・イメージフォーラム他にてロードショー
http://www.espace-sarou.co.jp/index/films/top.htm
by mtonosama | 2008-09-15 07:01 | 映画 | Comments(8)
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              COPYRIGHT EDWARD BURTYNSKY

いま ここにある風景
エドワード・バーティンスキー:マニュファクチャード・ランドスケープ「CHINA」より
Edward Burtynsky;Manufactured Landscapes

    中国福建省の巨大な工場。カナリア・イエローでコーディネートされた
    建物と労働者たちの作業着。
    カナダ・オンタリオ州の朱色に染まった川。
    正直言って、きれい!と感じてしまいます。
    というのも、カナダを代表する国際的な写真家エドワード・バーティンスキーの
    写真そのものが素晴らしいから。
    そして、彼が被写体として捉えた〈産業の風景〉が映像として動き出したのが
    この映画だから。
    「いま、ここにある風景」はジェニファー・バイチウォル監督が
    写真家バーティンスキーとともに旅し、
    その自然破壊の光景を撮影したドキュメンタリー映画です。

    Curiosity killed the cat.ということわざもありますが、
    好奇心からつい観てしまった映画。そこにあった悲鳴をあげる地球の惨状。
    知ってしまった想像を超える自然破壊。
    きれい、と感じたその映像の奥から恐ろしい現実が見えてしまいました。
    絶望のあまり、気の小さい猫ならほんとに死んでしまうかもしれません。

    「長江哀歌」(賈樟柯監督)でも見た三峡ダムの底に沈む街。
    それがここではもっと破壊が進み、すべてが瓦礫と化していました。
    それでも砂塵や煙の中で人々が働いています。
    中国だけではありません。
    バングラデシュでは痩せた若者が解体されるタンカーから
    船底に残った原油を手でかき出していました。
    消費者であり、生産者であり、被害者であり、加害者である私たちにとって
    目をそむけているわけにはいかない
    いまここにある風景です。

スタッフ
監督:ジェニファー・バイチウォル、撮影監督:ピーター・メトラー

7月12日東京都写真美術館ホール、シアター・イメージフォーラムにて公開、全国主要都市にて順次公開

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by Mtonosama | 2008-06-23 14:45 | 映画 | Comments(2)