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殿様の試写室

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大地を受け継ぐ
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(C)「大地を受け継ぐ」製作運動体


2011年3月24日。
福島県須賀川市。
福島原発から65km離れた一軒の農家。
その家で一人の農民が庭の樹木で首をくくって自死しました。

「あの日、父を探しに庭へ出た時、最初、父は木の下に立っているのかと思いました…」

息子の樽川和也さんは16歳から23歳までの若者を前に訥々と語ります。
父親が亡くなったのは
原発事故を受けて地元の農業団体から農作物出荷停止の
ファックスが届いた翌朝のことです。
父の遺した言葉は
「お前に農業を勧めたのは間違っていたかもしれない」
でした。

それから4年経った今、息子は母と二人同じ場所で農業を続けています。
福島の米や野菜は今までの値段では売れませんし、
農業だけで生きていくことは難しい日々です。

しかし、
亡くなった父や先祖が受け継いできた土地を棄てることはできないと
母子は耕し続けています。
「福島県はどこよりもしっかり検査をしています」
と言いつつも
放射能に汚染された土地で育てた作物を流通させることに
罪悪感がつきまといます。

生産者ゆえの罪の意識と代々受け継いできた土地への思いの狭間で
和也さんは苦悩します。

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東京電力の賠償金の支払い方は
事故によって売上が減少した差額を賠償として支払うというものです。
つまり、出荷したけれど事故のせいで売れなかった。
そういう「実績」を作らないと賠償金は支払われません。
自分自身の判断で出荷しなかった分については
賠償されないのです。

賠償のため、そして、生きていくために
樽川さん母子は汚染された土地で作物を作り続けなければなりません。

和也さんは若者たちに淡々と穏やかに語ります。
でも、ただ一度言葉を荒げました。
高市早苗衆院議員の
「原発事故による死者は出ていない」
という発言に触れた時です。

和也さんの父、樽川久志さん(死亡当時64歳)は
原発事故後初の福島県内の自殺者でした。
まるで木の下に立っているようだったという父の姿。
その姿を目の当たりにし、母と二人で父の体を木から降ろした和也さんは
高市議員の無神経な言葉に激昂しました。

東京電力、国の冷淡さに今またあらためて胸が塞がる思いです。

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上映時間86分、映し出されるほぼ全編が樽川家の居間であり、
和也さんの独白であります。
時々美津代さんが言葉をはさみ、
飼い猫が大勢のお客さんの前でくつろいでいます。

真剣に、時には、涙を拭きながら
和也さんの話に聞き入る学生たち。

樽川さん母子のこの言葉と心の奥に沈殿した思いは若い人たちにどう響いたでしょうか。
それは彼らの中に持続する志として息づいていくのでしょうか。
それは誰にもわかりません。

わたしは観客として本作に向った時、
自分もまた無垢ではあるかもしれませんが
無知な若者と同じであることを認めざるを得ませんでした。

でも、無恥ではありたくないものです。





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☆2016年2月16日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

大地を受け継ぐ
監督/井上淳一、企画/馬奈木厳太郎、プロデューサー/小林三四郎、撮影/鍋島淳裕、桑原正祀、堀部道将、西佐織、照明/堀口健、録音/光地拓郎、整音/臼井勝、編集/蛭田智子、助監督/植田浩行、製作進行/長谷川和彦、海外窓口/中西佳代子
出演
樽川和也、樽川美津代、井樫彩、井澤美采、石田佳那、一万田若葉、内田夏奈子、金子鈴幸、樽見隼人、千葉航平、野月啓佑、宮田俊輝、矢部涼介、白井聡、馬奈木厳太郎
エンディング曲:フラワーカンパニーズ「日々のあぶく」(Sony Music Associated Records)
2月 20日(土)よりポレポレ東中野ほかロードショー(2月6日(土)よりフォーラム福島にて限定1週間先行上映決定)
2015年、日本、カラー、86分、協力/東放学園映画専門学校、河合塾COSMO、明治大学駿台映画製作研究部、「大地を受け継ぐ」製作運動体/馬奈木厳太郎、井上淳一、太秦株式会社、配給/太秦、http://daichiwo.wordpress.com/

by Mtonosama | 2016-02-16 06:40 | 映画 | Comments(10)

大地を受け継ぐ
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(C)「大地を受け継ぐ」製作運動体


もうすぐ5年目のあの日がやってきます。
とのは3月13日が誕生日なので、
1歳年齢が増える3月が来るたびに
あの日の地震と原発事故を思い出さざるを得ません。
あの日から毎年、誕生日を迎えることがいけないことのように思えて仕方ありません。

今回ご紹介するのは『大地を受け継ぐ』です。

2015年5月、東京。
バス発着所に16歳から23歳までの11人の学生たちが集まりました。
ほとんどの学生たちは初対面で、多少緊張しているようですが、
遠足に出かけるような雰囲気も漂わせています。

バスが東京から離れるにつれて窓外には5月の爽やかな緑が拡がり、
田圃には田植えがすんだばかりの苗が青々と風になびいています。
学生たちはのどかな風景を撮影したり、
SNSに書きこみをしたり、
隣り合った新しい友人とおしゃべりしたり、
和やかな空気に包まれています。

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やがて、バスが到着しました。
福島県須賀川市。
福島原発からおよそ65km離れた一軒の農家です。
若者たちを笑顔で迎える息子・樽川和也さんと母・美津代さん。
飼い猫も皆が集まった座卓の脇に寝そべっておもてなししています。

これは、樽川和也さんと美津代さんが
11人の若者たちに
2011年3月から本作が撮影された2015年までの日々を語った
5月のある一日を記録したドキュメンタリー映画です。

監督は井上淳一さん。

井上淳一
1965年生まれ。愛知県出身。
大学入学と同時に若松孝二監督に師事。
若松プロ作品に助監督として参加。
2011年『アジアの純真』(脚本)で北朝鮮による拉致問題を
2013年『戦争と一人の女』(監督)で加害者からの戦争を
2013年『あいときぼうのまち』(脚本)で原発と人の営みを、
描いてきた社会派監督。
本作は自身初めてのドキュメンタリー映画。

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『大地を受け継ぐ』の企画・制作にあたったのは馬奈木厳太郎弁護士。
馬奈木弁護士は4,000人の原告団を抱える
「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟団の事務局長を務め、
学生たちの引率者・インタビュアーとしても本作に登場しています。

「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟
福島原発事故を公害としてとらえ、国と東京電力を被告として、
福島地方裁判所で原状回復と慰謝料を求めている裁判。
2013年に提訴。
原告団(滞在者と避難者)は約4,000名。
福島県全市町村とその隣接県に原告を擁する全国最大規模の訴訟。
国と東京電力の責任を明らかにし、
原状回復・被害の全体救済・脱原発を目的に掲げている。
本作で学生たちが訪れた樽川美津代さんと和也さん母子は原告団の一員。

樽川さん母子と福島原発訴訟団事務局長のご紹介で前編はおしまいです。
さあ、学生たちはどんな話を聴き、どんな体験をするのか。

それは次回までのお楽しみ。
乞うご期待でございます。



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大地を受け継ぐ
監督/井上淳一、企画/馬奈木厳太郎、プロデューサー/小林三四郎、撮影/鍋島淳裕、桑原正祀、堀部道将、西佐織、照明/堀口健、録音/光地拓郎、整音/臼井勝、編集/蛭田智子、助監督/植田浩行、製作進行/長谷川和彦、海外窓口/中西佳代子
出演
樽川和也、樽川美津代、井樫彩、井澤美采、石田佳那、一万田若葉、内田夏奈子、金子鈴幸、樽見隼人、千葉航平、野月啓佑、宮田俊輝、矢部涼介、白井聡、馬奈木厳太郎
エンディング曲:フラワーカンパニーズ「日々のあぶく」(Sony Music Associated Records)
2月 20日(土)よりポレポレ東中野ほかロードショー
(2月6日(土)よりフォーラム福島にて限定1週間先行上映決定)
2015年、日本、カラー、86分、協力/東放学園映画専門学校、河合塾COSMO、明治大学駿台映画製作研究部、「大地を受け継ぐ」製作運動体/馬奈木厳太郎、井上淳一、太秦株式会社、配給/太秦、http://daichiwo.wordpress.com/

by Mtonosama | 2016-02-13 05:30 | 映画 | Comments(2)