ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

タグ:人間爆弾「桜花」-特攻を命じた兵士の遺言- ( 1 ) タグの人気記事


人間爆弾「桜花」
-特攻を命じた兵士の遺言- 
-2-
Palore de Kamikaze

f0165567_4412513.jpg

(C)Comme des Cinémas


特攻というとパイロットが自ら飛行機を操縦し、
海上の敵艦に向かって飛んでいき、
飛行機もろとも衝突するものだと思っていました。

それが、この「桜花」は
搭載するのは爆弾だけで、エンジンがないというのです。
搭乗する兵士は「桜花」のパーツに過ぎない訳です。

本作に登場する林富士夫氏(撮影当時92歳)は「桜花」の第一志願兵でした。
「桜花」が実戦に投入される1945年3月
林氏は海軍学校を首席で卒業した海軍大尉。
第一志願兵でありながら22歳の若き海軍大尉は上官から命令され、
隊員の中から出撃隊員を選び出し、人間爆弾とする役目を担わされました。

林富士夫
1922年 栃木県宇都宮市生まれ
1935年 下野中学校に入学し、在学中に受洗
1939年 海軍兵学校(71期)入学
1941年12月 太平洋戦争勃発
1942年11月 海軍兵学校を首席で卒業、霞ケ浦航空隊に着任
1944年5月 筑波航空隊に着任
同年10月 神雷部隊(筑波)に転勤
1945年1月 神雷部隊、鹿屋に移転
同年8月15日 終戦

戦後
今市付近で開墾
笠間中野酒造に就職
佐賀で瓦屋、饅頭屋など
宇都宮に戻り、再び開墾
1951年4月 旧軍人出身者の公職追放解除、映画会社“民映”入社
1953年 結婚
1954年 長女誕生
同年11月 航空自衛隊に入隊
1958年2月 長男誕生
第五航空団防衛部長、飛行点検隊長、救難団副指令、
西部航空方面隊防衛部長、輸送航空団入間航空隊司令などを歴任
1975年2月 航空自衛隊を退職、住友海上火災保険に入社
1985年12月 住友海上火災を退社

筑波航空隊OB及び遺族の組織“つくば会”設立

2015年 永眠(享年93歳)

f0165567_443449.jpg

父親が軍人だったため、
当時は東京帝国大学よりも難関だといわれた海軍兵学校に入学しましたが、
本当はバイオリニストか声楽家になりたかったという林氏。
本作でも静かに歌うシーンがありましたが、
そのしっかりとした歌声に驚きました。
戦争さえなければまったく違う人生を送っていたのでしょう。

林氏は監督の質問に対し、真摯に耳を傾け、きちんと答えます。
訊かれたことには答えを返しますが、
自分から話そうとはしません。
映画の中に出てきた唯一の当時の写真。
軍隊時代の集合写真を見せられても
自分の顔さえわからないということでした。

淡々と
「生きるといっても死ぬために生き延びているだけだから・・・」
と語る林氏。
彼が唯一激しい口調で語ったのは
「一言くらい「すまん」ということが人間天皇の務めではないか」

f0165567_4491567.jpg

この言葉以外、彼は声を荒げることはなかったし、
自分から戦争について「桜花」について
積極的に語ろうとはしていないように見えました。
几帳面な性格を表すように模型飛行機で戦闘の様子を説明します。
そして、ぽつりと
「お前さんを殺すぞ(出撃隊員を選び出した)と言った後は、
草むらに身をひそめて泣きました」
と話すのでした。

せっかくこのような生き証人を撮影する機会を得ながら
なぜもっと証言を引き出すことはできないのだろうか、
と正直落胆もしました。

でも、訊く側にとっても答える側にとっても
これが限界だったのかもしれません。

彼の戦後の人生を見てください。
公職追放され、荒れ地を開墾し、饅頭屋をやり、
結婚し、娘が生まれ、航空自衛隊に入隊し、生活が多少安定し、
息子が生まれ、子供たちを育て上げるまでは必死だったのでしょう。

本作で見られるのは既に肉体的な限界を迎えつつあった92歳の老人。
インタビューのために監督に与えられた時間は8日間。

林氏から存在そのものを吸い出すようなカメラ。
執拗なまでに林氏を追ったその映像の中に
愚かな戦争とBAKA BOMBによって押し流されていった人生を読み取っていくことが
遺言であるこの映画の観方なのかもしれません。



 

今日もポチッとお願いできればうれしゅうございます。
↓↓↓↓↓

にほんブログ村
☆8月20日に更新しました。いつも応援してくださって本当にありがとうございます☆

人間爆弾「桜花」-特攻を命じた兵士の遺言-
監督/澤田正道、取材/澤田正道、ベルトラン・ボネロ、プロデューサー/澤田正道、アンヌ・ぺルノー、撮影/ジョゼ・デエー、挿入歌/ロベルト・シューマン「二人の擲弾兵」
出演
林富士夫
8月27日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
2014年、フランス、74分

by Mtonosama | 2016-08-20 04:55 | 映画 | Comments(14)