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マダム・ベー 

ある脱北ブローカーの告白

-2-

Mrs.B. A North Korean Woman

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(C)Zorba Production, Su:m

脱北を映像で知ったのは
2002年、中国・瀋陽にある日本総領事館へ
当時2歳の女の子を含む北朝鮮難民5人が
逃げ込もうとした事件でした。
あれからもう15年も経つんですね。

あの映像が目に焼き付いているので
脱北には常に「必死」というニュアンスがついてまわります。

それなのに、脱北ブローカーですって。
そういう商売が成り立つほど
脱北者は増えているということなんですね。

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ユン・ジェホ監督がBのドキュメントを撮るに至ったのは
偶然と言っていいかもしれません。
もともと劇映画のシナリオをつくるため、
脱北者に会って取材しようと中国へ入った監督。

脱北ブローカーを介して何度目かの紹介で辿り着いたのが、
自身も北朝鮮から中国へと渡り、
脱北ブローカーをしている主人公Bでした。

Bから取材可能な脱北者を
紹介してもらうことになっていた監督は
ある日、
Bが中国で一緒に暮らす〈家族〉の許へ招かれ、
そこで暫く生活させてもらいました。
その間に、
なぜ北朝鮮人のBに中国人の夫と家族がいるのか、
そして、なぜ危険な脱北ブローカーをやっているのか、
次々に疑問が湧いてきました。

その疑問に答えてBは言いました。
「私を記録したら?」

それが本作の生まれた理由です。

そもそもBは中国で外貨を稼ぎ、
1年経ったら北朝鮮へ戻るつもりでいました。
ところが、騙されて中国の貧しい男に売られてしまい、
そのまま、脱北ブローカーとして働いているのです。
中国に夫とその両親という家族ができて、
北朝鮮にも夫と息子たちがいるという
二つの家族を持つことになりました。

こんなことは若い韓国人監督にとっても
私たち日本人にとっても尋常のことではありません。

映画はBが脱北者を逃がすシーンから始まります。
仕事を終え、バイクに乗って辿り着いた中国の家。
中国人の夫も献身的で
舅姑も優しい老人です。
買われてきたとはいえ、
この家にとってBは大切な存在のように見えます。

でも、彼女には北朝鮮人の夫との間にできた二人の息子がいます。
彼女は彼らの将来を案じて息子たちを一足先に韓国へ脱北させていました。

そして、
Bは息子たちの生活を安定させるため、
自らも中国の家族と別れ、脱北することを決心するのです。

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慣れた手つきで旅支度をするB
彼女を見守る中国人の夫や義父母。
バスに乗った妻をいつまでも見送る夫。
そっと涙を拭うB。
買われた女であっても
中国の家族の間に絆が、愛情が
生まれていることがわかります。
切ないシーンです。

Bの辿った脱北ルートは苛酷なものでした。
カメラは北朝鮮・会寧市からBと共にバスに乗り込みます。
鴨緑江を渡り、再び中国に入り、
天津、済南、昆明を経て、
タイに入国。
山中をシーサンパンナ・タイ族自治州、
ラオスのムアン・シング、
そしてタイのタンボンウィアン、
チェンライ、バンコクに入り、
ようやく空路ソウルへ。

総計何Kmになるのでしょう。
巨大な大陸の片隅を蟻が這うように進む恐るべき脱北ツアーです。
乳飲み子だっています。

しかし、なぜ、このシーンが撮れたか。

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2013年5月頃、
Bから韓国へ向かうという連絡を受けた監督。
彼女が出発するシーンを撮影しようとしていたら、
どさくさに紛れてBの乗った車に乗せられてしまいました。
そして、そのままバンコクへ行ってしまうことになってしまったのです。

そりゃ、リアルな筈です。

十分な水も食べ物もなく、体も洗えず、
その上、カメラや資材を持っての移動。
タイ、ラオス、ミャンマーの国境が交わる
ゴールデン・トライアングル地帯を超えるときは
1日18時間くたくたの身体と重い資材をひきずって
山を登りました。
撮影というより決死行です。

揺れる画像がリアル脱北を語っていました。

その挙句
監督はタイで密入国者として逮捕されてしまったのですから、
踏んだり蹴ったりです。

ですが、脱北者たちはタイに到着した時点で
タイ警察の保護下に置かれました。
まずはやれやれ。

しかし、韓国人の監督は
不法入国で処罰され、追放されてしまいました。
まさに体当たり取材、“電波少年”ではありませんか。

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脱北道中の緊張感もさることながら、
胸を打つのは
今、自分たちが生きる日本の隣で
望まない二重結婚をし、
家族を持ち、
家族を持てば情や絆が生まれ、
情や絆につながれば、
やむを得ぬ別れであっても
そこには言葉につくせない痛みが生じていること。

あの国が今の状態のままでは
今後もまた引き裂かれるような別離が起こり続けます。

すごいドキュメンタリーです。





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 ☆6月9日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆
マダム・ベー
監督/ユン・ジェホ、撮影/ユン・ジェホ、タワン・アルン、プロデューサー/ギョーム・デ・ラ・ブライユ、チャ・ジェクン、音楽/マシュー・レグノー、編集/ナディア・ベン・ラキド、ポーリーン・カサリス、ソフィー・ブロー、ジャン=マリー・ランジェル
2016年、韓国・フランス、72分、ドキュメンタリー
6月10日(土)よりシアター・イメージ・フォーラムにて上映
配給/33 BLOCKS(サンサンブロックス)、http://www.mrsb-movie.com/



by Mtonosama | 2017-06-09 05:51 | 映画 | Comments(7)
かぞくのくに -1-

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(C)2011 Star Sands, Inc.

日本は単一民族国家、と発言した大臣がいましたが、
この映画を観ると、改めて日本にはいろいろな国の人が住んでいるのだなぁ、
ということに気づかされます。

普段、国を意識して暮らすことはありませんが、
在日コリアンのこの家族にとって国は意識せずに暮らすことなどありえない存在のようです。

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はい、「かぞくのくに」という映画のことです。
1950年代から始まった北朝鮮の帰国事業を背景に、
兄はあの北朝鮮で暮らし、両親と妹は日本に暮らしている家族を描いた映画です。

監督は在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ(梁英姫)さん。1964年大阪出身です。
「ディア・ピョンヤン」(‘05)、「愛しきソナ」(‘09)のドキュメンタリー映画で注目され、
今回「かぞくのくに」で初めてフィクション映画の監督に挑みました。
いずれも北朝鮮がそのテーマになっています。
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監督の3人の兄達は1971年秋から72年の春にかけて新潟から船で北朝鮮へ向かいました。
その年齢は18歳、16歳、14歳。
まだ6歳だった監督は両親とともに日本に残りました。

彼女の両親は韓国・済州島出身なのですが、
日本に来た後、北朝鮮を祖国として選びました。
現在の北朝鮮しか知らないとのとしては、
どうして韓国出身でありながら北を選んだのだろうかと思ってしまいますが、
当時、北朝鮮は“地上の楽園”と呼ばれていたのだそうです。

しかし、それにしても両親はなぜ3人の息子を見たこともない北朝鮮に送ったのでしょう。
そこにあったのは彼らが日本で受けていた差別でした。
両親は、当時、民族差別のため日本での進学や就職の道が閉ざされていた息子たちを、
北朝鮮で高等教育を受けさせ、職に就かせるということが
最善の選択と考えたからなのです――

「かぞくのくに」は、監督が自身の実体験を基にオリジナル脚本を執筆。
初のフィクション映画となります。

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映画は、
病気治療のために3ヶ月間だけの帰国を許されて帰国した10歳年上の兄が帰ってくるところから始まります。

同じ血を持つ家族でありながら、1人は自由に生き、
もう1人は自分で決断することなど許されない国に暮らす――

一時的な帰国を心待ちにする家族の日々を描いた作品で、
それ自体はどこにでもある家族愛の物語なのですが、
やはり、それだけではないところが実体験の迫力ということでしょうか。

どこにでもある家族をここまで苦しめる国家の存在は怖ろしいなぁと思ってしまいました。

さ、どんなお話かは次号までお待ちください。



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かぞくのくに
脚本・監督/ヤン・ヨンヒ、企画・エグゼクティヴ・プロデューサー/河村光庸、プロデューサー/佐藤順子、越川道夫、音楽/岩代太郎、撮影/戸田義久
出演
安藤サクラ/リエ、井浦新/ソンホ、ヤン・イクチュン/ヤン同志、京野ことみ/スニ、大森立嗣/ホンギ、村上淳/ジュノ、省吾/チョリ
8月4日(土)テアトル新宿他全国順次ロードショー
2012年、日本、100分、配給/スターサンズ
http://kazokunokuni.com/

by Mtonosama | 2012-08-02 06:12 | 映画 | Comments(7)