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嘆きのピエタ -2-
피에타
PIETA

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© 2012 KIM Ki-duk Film All Rights Reserved.


機械油がしみこんだ狭い路地。
こわれかけたシャッターの小さな町工場が続く町並。
清渓川(チョンゲチョン)という工場地帯。
その名のような清らかな水の流れる渓谷などとうの昔に消え失せ、
毛の抜け落ちた老犬のように侘しげな町です。

打ち捨てられた貧しい工場街。
躍進を遂げる韓国の片隅にひっそりと存在しています。
古い工作道具と家族経営でやっとの思いで存続させている工場。
そんな経営者たちはつぶれそうな工場を借金で継続させようとします。

イ・ガンド30歳は、彼ら債務者たちの手足を奪い、
その保険金で借金の返済にあたらせようとする冷血非情な取り立て屋でした――

さあ、久々のキム・ギドク節。いったいどんなお話でしょうか。

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ストーリー
イ・ガンド30歳。親の顔も知らず、たったひとりで生きてきた。
貧しい債務者に重傷を負わせ、その保険金で借金を返済させるという極悪非道な取り立て屋だ。
ある日、そんなガンドの前に、母と名乗る女が現れる。
ガンドは邪険にその女を追い払うが、女は執拗に彼の後を追う。
そして、あくまで相手にしようとしないガンドのアパートのドアの前に
ウナギを1匹置いて去っていく。
その首にくくりつけられた「チャン・ミソン」という名前と携帯番号を書いたカード。
ためらいながらも、その番号に電話をかけると子守唄が聞こえてくる。
アパートのドアを開けたガンドの眼の前には涙を浮かべて子守唄を歌う女の姿があった。

「母である証拠を見せろ」と責めるガンドが非道い仕打ちを続けても離れようとしないミソン。
ガンドはそんな彼女を次第に母親として受け入れていく。
2人で出かけた繁華街。
子どものように買い物に興じるガンドを嘲った若い男に平手打ちをくらわすミソン。
ミソンはガンドにとって次第にかけがえのない存在になっていく。

母の愛を知ったガンドは取り立て屋から足を洗おうとするが……

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黒光りする古い工作機械。
そこにあてがわれる右手の指先。
黒と白。油光りする機械と血の気を失いざらついた右手。
眼前につきつけられる正反対の質感の映像。
色彩と質感の対比に痛みと恐怖を感じます。

ピエタ像から連想するものからは程遠いものです。


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右手を切られる債務者。
ビルから突き落とされ、車椅子生活になる債務者。
ホームレスになる債務者。
それぞれの元経営者にはそれぞれのドラマがありました。


最初、ガンドは残酷な狂言回しとして登場します。
どんな人生を生きていようと借りた金が返せないなら、
その身体で返してもらうしかない、と、取り立て屋は冷静に債務者に対する業務を実行します。
彼にとってなすべきことは沈着冷静な仕事のみ。
前半は痛そうなシーンの連続に目を背け、債務者の悲哀に胸をつぶしながらも、
ガンドの機械のような仕事ぶりと機械のように規則正しい生活にひきつけられます。
「韓国の直面する貧富の差も相当なものだなぁ」と的外れな客観性すら持って映画を観ていました。
ところが、この機械のようなガンドがミソンの愛を知ることによって、
クールな「ゴルゴ13」から一転して仔犬のように素直な青年に変貌を遂げます。

が、しかし、
キム・ギドク監督がそんなハッピーエンドを用意する筈がないことはおわかりでしょう。

ミソンが隠し通してきた人生。
そして、思いもよらないエンディング。
ラストに流れる早朝のハイウェーのトラックの軌跡のシーンには声を失います。

キム・ギドク監督。
観客を最後までひきつけるストーリーテリングもさることながら、
脳裏にこびりついて離れない印象的なシーンには圧倒されます。
監督であるのみならず、すぐれた映像作家でもあるキム・ギドクにあらためて
お帰りなさい。





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☆6月14日に更新しました。いつも応援してくださって本当にありがとうございます☆

嘆きのピエタ
脚本・監督/キム・ギドク、撮影/チョ・ヨンジク、美術/イ・ヒョンジュ、編集/キム・ギドク、製作/キム・ギドクフィルム、エグゼクティブ・プロデューサー/キム・ギドク、キム/ウテク、プロデューサー/キム・スンモ
出演
チョ・ミンス/チャン・ミソン、イ・ジョンジン/イ・ガンド、ウ・ギホン/フンチョル、カン・ウンジン/フンチョルの妻、チョ・ジェロン/テスン、イ・ミョンジャ/テスンの母、ホ・ジュンソク/薬物で自殺する男、クォン・セイン/ギターの男、ソン・ムンス/飛び降り自殺をする男、キム・ボムジュン/明洞の男、ソン・ジョンハク/チャン社長、チン・ヨンウク/車椅子の男、ユ・ハボク/コンテナに住む男、ソ・ジェギョン/コンテナに住む男の息子、キム・ジェロク/僧侶、イ・ウォンジャン/ミソンの息子
6月15日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
2012年、韓国、104分、カラー、日本語字幕/根本理恵、提供/キングレコード、クレスト・インターナショナル、配給/クレスト・インターナショナル
http://www.u-picc.com/pieta/

by Mtonosama | 2013-06-15 09:36 | Comments(4)
嘆きのピエタ -1-
피에타
PIETA

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© 2012 KIM Ki-duk Film All Rights Reserved.

キム・ギドク監督が戻ってきました。
なんと今回は、第69回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞をひっさげて、です。

カンヌ、ヴェネチア、ベルリンという世界三大映画祭の全てで受賞という韓国映画史上初の快挙であります。
ヴェネチアでは2004年にも「サマリア」で銀獅子賞を受賞しています。

さて、キム監督。
彼は先日当試写室で上映したウディ・アレン監督と同じく
ほぼ毎年のように映画を撮る監督でした。
1996年「鰐~ワニ~」で監督デビューして以来、
毎年たてつづけに作品を発表し続けていましたが、
2008年「悲夢」の後、3年間も作品が途絶えました。

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というのも、「悲夢」撮影の際、主演女優が死にかかるという事故があったからです。
彼女に事なきは得たものの、いっさい制作活動ができなくなってしまった監督。
その後3年間、彼は山中にこもっていました。
その間の山ごもりの日々を撮ったのが「アリラン」(‘11)。
http://mtonosama.exblog.jp/17268231/ http://mtonosama.exblog.jp/17280223/
脚本も監督も製作も撮影も録音も編集も音響も美術も、そして、出演も
キム・ギドク一人というセルフ・ドキュメンタリーです。
この作品もまたカンヌ国際映画祭で<ある視点>部門最優秀作品賞を獲得しました。

同年「プンサンケ(豊山犬)」で劇映画に復帰。
http://mtonosama.exblog.jp/17862317/ http://mtonosama.exblog.jp/17872088/
これも手に汗握る映画でした。
本作では監督としてではなく脚本・製作総指揮担当でしたが、
きれのよいスリリングな展開に瞠目しました。


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そして、いよいよ満を持しての劇映画への監督復帰作が
「嘆きのピエタ」です。
「ピエタ」。
イタリア語で「哀れみ」「慈悲」。

バチカンのサン・ピエトロ大聖堂にミケランジェロ作の「ピエタ」像があります。
聖母マリアが十字架から降ろされたイエスを抱いている彫刻です。

監督はこの彫刻から映画のヒントを得たそうです。


以前、当試写室で「アリラン」を上映したときにもご紹介しましたが、
監督は牧師をめざしたことがあります。
そんな訳で、本作を含め、キリスト教を思わせるタイトルの作品が多いです。
しかし、「サマリア」(‘04)にせよ、「嘆きのピエタ」にせよ、
私たちがキリスト教に描いているイメージとその映画とはうまく合致しません。
思わずハンカチを握りしめたくなるような暴力的なシーンがあったり、
作品のどこかに聖書と該当する部分があるのではないかと求めても
空振りに終わったり――

やはり鬼才とよばれる人は違うなぁと脱帽するしかありません。

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本作「嘆きのピエタ」も目をそむけたくなるような痛いシーンがあります。
生まれてすぐに親に捨てられ、天涯孤独に生きてきた30歳の主人公。
債務者の指を切断し、足を折り、その保険金で借金を支払わせるという
情け容赦のない消費者金融の取り立て屋です。
気の弱い人はもうこの段階で拒絶反応を起こしそうですね。
ですが、主人公の母だと名乗る不思議な女が登場すると、
思わず知らず、のめりこんでいくに違いありません。

ギドク監督、3年の隠遁生活の間にさらに映画表現を深めたように思います。

さあ、いったいどんなお話なのでしょうか。
続きは次回までお待ちくださいませ。



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☆6月11日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

嘆きのピエタ
脚本・監督/キム・ギドク、撮影/チョ・ヨンジク、美術/イ・ヒョンジュ、編集/キム・ギドク、製作/キム・ギドクフィルム、エグゼクティブ・プロデューサー/キム・ギドク、キム/ウテク、プロデューサー/キム・スンモ
出演
チョ・ミンス/チャン・ミソン、イ・ジョンジン/イ・ガンド、ウ・ギホン/フンチョル、カン・ウンジン/フンチョルの妻、チョ・ジェロン/テスン、イ・ミョンジャ/テスンの母、ホ・ジュンソク/薬物で自殺する男、クォン・セイン/ギターの男、ソン・ムンス/飛び降り自殺をする男、キム・ボムジュン/明洞の男、ソン・ジョンハク/チャン社長、チン・ヨンウク/車椅子の男、ユ・ハボク/コンテナに住む男、ソ・ジェギョン/コンテナに住む男の息子、キム・ジェロク/僧侶、イ・ウォンジャン/ミソンの息子
6月15日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
2012年、韓国、104分、カラー、日本語字幕/根本理恵、提供/キングレコード、クレスト・インターナショナル、配給/クレスト・インターナショナル
http://www.u-picc.com/pieta/

by Mtonosama | 2013-06-11 06:30 | 映画 | Comments(4)