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悼む人
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©2015「悼む人」製作委員会 天童荒太


高良健吾演じる坂築靜人の祈りの、いえ、悼みの姿勢が目をひきました。
原作ではどう表現されているのか知りませんが、
靜人は、誰かが亡くなった場所にくると膝まづき、右手を大きく上げます。
そしておもむろにその手を胸にあてます。
それから左手を下げ、地面に触れるように厳かともいえる様子で回し、
胸の上の右手に重ね、頭を下げ、つぶやきます。

「あなたは、あなたを慕う多くの人たちに愛され、そして愛していました。
そんなあなたが確かに生きていたということを私は憶えておきます」

はい、正直いって「こいつ、変」と思いました。
おとなしそうだけど危ないやつ、とすっかり思い込んでしまいました。

しかし、とても象徴的な姿勢であることは確かです。

さあ、いったいどんなお話なのでしょう。

ストーリー
坂築靜人は、不慮の死を遂げた人々を悼むため、日本中を旅している。
「悼む」ということは亡くなった人の「愛」にまつわる記憶を心に刻みつけること。
「死者が生前誰に愛され、愛したか、
どんなことをして人に感謝されていたか、
その姿を覚えておく」
そのための彼なりの儀式をとりおこなう靜人を周囲は胡散臭げに眺める。

山形の事故現場で靜人に出会った雑誌記者・蒔野抗太郎には間もなく死を迎える父親がいる。
子どもの頃からの確執によって、見舞いにさえ行こうとしない。
悪意に満ちたゴシップ記事を書き続ける蒔野は靜人に目をつけ、取材を始める。

同じく山形。産業廃棄物を埋め立てた場所で靜人と出会った奈義倖世。
彼女はそこで夫・甲水朔也を殺していた。
夫の亡霊に苦しむ彼女は救いを求めて靜人の旅についていく。

横浜の靜人の実家。末期癌の母・巡子は在宅ケアを選び、自宅にいた。
靜人の妹・美汐は妊娠していながら、その婚約者から別れを切り出される。
その理由には靜人の「悼み」への偏見も含まれていた。
ふたりを支えるのは父・鷹彦と従弟の怜司。

靜人の取材を始めた矢先、蒔野は父の愛人・理々子から父の訃報を受ける。
葬式に列席した彼は父の自分への想いを知り、心が揺れる。
その帰り、これまでのツケが回ったかのようにチンピラに命を狙われることに。

一命はとりとめたが視力を失った蒔野は靜人の実家を訪れる。
そこで巡子から聞いた靜人の「悼み」にこめられた真実。
息子に対する母としてのただひとつの願いは「誰かを心から愛してほしい」ということ。

旅を続ける靜人と倖世。
二人は次第にひかれあうものを感じるようになるが、
それぞれが過去に背負った罪の意識から素直に心を開くことができない。

靜人は死期が迫った母のもとに帰れるのか、
そして、靜人は誰かを心から愛することができるのだろうか…

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最初は変なやつと思った靜人の「悼む」姿ですが、
この姿、あるいはこの様式こそ悼みの象徴かもしれないと思えてきました。
祈りは宗教者や信者が日々行っているのでしょうが、
悼みは信仰がなくてもできる行為なのかもしれません。

人は死んだからといっていなくなってしまう存在ではありません。
3.11でなにが起こっているかわからないうちに津波にのまれた方たちを悼むこと。
悼みとは死者の痛みに心を寄せ、
私はあなたを忘れません、とつぶやくことなのですね。

そして砂漠のあのおふたりをわたしはわすれません。

優しい映画でした。





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☆2015年2月3日に更新しました。いつも応援してくださって本当にありがとうございます☆

悼む人
監督/堤幸彦、原作/天童荒太「悼む人」(文春文庫刊)、脚本/大森寿美男、撮影/相馬大輔、製作代表/木下直哉、主題歌/熊谷育美「旅路」(テイチクエンタテインメント)
出演
高良健吾/坂築靜人、石田ゆり子/奈義倖世、井浦新/甲水朔也、大竹しのぶ/坂築巡子、椎名桔平/蒔野抗太郎、貫地谷しほり/坂築美汐、山本裕典/福埜怜司、麻生祐未/沼田響子、山崎一/沼田雄吉、戸田恵子/比田雅恵、秋山奈津子/尾国理々子、平田満/坂築鷹彦
2015年2月14日(土)ロードショー
2015年、日本、138分、配給/東映
http://www.itamu.jp/

by Mtonosama | 2015-02-03 06:46 | 映画 | Comments(6)
悼む人
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©2015「悼む人」製作委員会 天童荒太


天童荒太という作家の名前を知ったのは「永遠の仔」を読んでからです。
荒太などというやんちゃそうな名前ながら
深い傷を負った人々が登場するこの静かな作品にのめりこみました。
舟越桂の木彫で飾られたカバー装丁も印象的でしたし。

「悼む人」は未だ読んでいません。
主役を演じた高良健吾くんはハンサム過ぎるし、
え~、また大竹しのぶが出てるの?
などと、あまり期待することもなく試写に向いました。
しかし、行って正解でした。

地球上では多くの人が死んでいきます。
一見、無意味と思える死もあります。
死は禁忌のベールを被っていますから、
人はあからさまにそれを軽視することはありませんが、
だからといって日々ニュースに登場する見知らぬ人々の死に深い追悼の思いを寄せ、
祈ることはないかもしれません。
人は生まれ、死んでいくものですから、
見知らぬ死者にいちいち思いを寄せているわけにはいかないのでしょう。

でも、東北の人々や砂漠の国で人質になっている人を想う時、
その人たちの人生や生活や家族を想像せざるをえません。

悼むということ。
その悼みを映像化した作品が本作「悼む人」です。

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天童荒太が「悼む人」を書いたのは9.11アメリカ同時多発テロがきっかけでした。
そのとき、死者を悼んで旅をする人という着想が生まれたのだそうです。
実際に天童荒太は各地で亡くなった人を悼んで旅をし、
3年にわたって悼みの日記を書き続けました。
その体験を基に2008年に書きあげたのが「悼む人」でした。
そして、その3年後、
またもあの大震災で多くの人が亡くなっていくのを見てしまったのです。


天童荒太
1960年生まれ。愛媛県出身。93年に「孤独の歌声」で第6回日本推理サスペンス大賞優秀作を受賞。96年に「家族狩り」で第9回山本周五郎賞、00年にはベストセラーとなった「永遠の仔」で第53回日本推理作家協会賞、13年に「歓喜の仔」で毎日出版文化賞を受賞。その他の著作に「包帯クラブ」、「あふれた愛」、対談集「少年とアフリカ」(坂本龍一と共著)など。小説以外にも画文集「あなたが想う本」(画・舟越桂)、絵本「どーしたどーした」(絵・荒井良二)など執筆活動は多岐にわたる。本作「悼む人」は08年に発表し、第140回直木賞を受賞。09年には、主人公・坂築靜人の日記という形を取った「静人日記」を発表。

見知らぬ人を悼むために旅をするのは奇妙なことです。
主人公も「なぜ悼む旅を続けているのかぼくにもわからない」といいます。
自分の人生を悼むことに捧げたら、その人の人生は死者のものになってしまうではないですか。

自分にはできません。
でも、自分が車にはねられて予期せぬ死をとげるとき、あるいは溺れて死んでいくとき、
あるいは「一度ひとを殺してみたかった」という人に殺されるとき、
こんなふうに自分を悼んでくれる見知らぬ人がいたら、
もしかしたら嬉しいかもしれません。

この簡単に答えのみつかりそうにない悼みという行為を映像化したのは堤幸彦監督です。


堤幸彦
1955年生まれ。88年に故・森田芳光プロデュースのオムニバス映画『バカヤロー!私怒ってます』内『英語がなんだ』で映画監督デビュー。NTV『金田一少年の事件簿』(‘95)以降、『ケイゾク』(‘99/TBS)『池袋ウエストゲートパーク』(‘00/TBS)『TRICK』(‘00/TBS)、『SPECK』(‘10/TBS)などの話題作を送り出す。一方、若年性アルツハイマーをテーマにした『明日の記憶』(‘06)、ホームレスを描いた『MY HOUSE』(‘12)、ドキュメンタリードラマ『Kesennuma,Voices.東日本震災復興特別企画~堤幸彦の記録~』(‘12/CS・TBSチャンネル)、知的障害者のグループホームを描いた『くちづけ』(‘13)などの社会派作品もてがけている。12年「悼む人」を舞台化、そして本作で監督。

皆さんの目に「悼み」はどのような形にうつるでしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございます。



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☆2015年1月31日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

悼む人
監督/堤幸彦、原作/天童荒太「悼む人」(文春文庫刊)、脚本/大森寿美男、撮影/相馬大輔、製作代表/木下直哉、主題歌/熊谷育美「旅路」(テイチクエンタテインメント)
出演
高良健吾/坂築靜人、石田ゆり子/奈義倖世、井浦新/甲水朔也、大竹しのぶ/坂築巡子、椎名桔平/蒔野抗太郎、貫地谷しほり/坂築美汐、山本裕典/福埜怜司、麻生祐未/沼田響子、山崎一/沼田雄吉、戸田恵子/比田雅恵、秋山奈津子/尾国理々子、平田満/坂築鷹彦
2015年2月14日(土)ロードショー
2015年、日本、138分、配給/東映
http://www.itamu.jp/

by Mtonosama | 2015-01-31 05:49 | 映画 | Comments(2)