ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

タグ:新藤兼人 ( 2 ) タグの人気記事

              一枚のハガキ -2-

f0165567_6404156.jpg


             ©2011「一枚のハガキ」近代映画協会/渡辺商事/プランダス

     邦画界を牽引してきた最長老・新藤兼人監督が自ら「映画人生最後の監督作」と呼ぶ作品。
           ならば観なくちゃいけないでしょう、と義務にも似た想いを抱いたとの。
                鼻の穴を膨らませて、勢い込んで観にいきました。
         でも、「まあまあ、お静かに。映画は楽しんでみましょうよ」と諭されました。

             立派な仕事を成し遂げてきた人ほど腰が低い、といいますが、
         直接、監督から話しかけられることはなくても作品から、それは伝わってきます。
    酸いも甘いも知り抜いた人だからこそ、苦しかったことにはあえて笑いの衣装を着せて表現するし、
                     悲しみは「型」で表せるんですね。

                    さて、どんなストーリーなんでしょうか。

ストーリー
戦争も終わる間際になって召集された100人の中年兵士たち。
彼らは自分たちよりも歳の若い上官に「貴様たちおっさん兵士にこれから指令を与える」と
告げられ、整列させられました。

そこで、上官がクジをひいて決めた戦地にそれぞれ赴任することが伝えられました。
クジです。
ある者はフィリピンへ、そして、ある者は宝塚への掃除部隊として。

クジ引きが行われた夜、松山啓太は親しくしている兵士・森川定造に
妻からのハガキを手渡されました。

そこには、
「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないので、何の風情もありません。友子」
とだけ、書かれていました。

軍の検閲が厳しいため、ハガキに返事を出せない定造。
彼はクジでフィリピン行きが決まり、生きて帰れないことを覚悟し、
宝塚行きが当たった啓太に、そのハガキを持って定造の妻を訪ね、「確かに読んだ」と
伝えてくれるように頼むのでした。

終戦。
100人いた兵士の内、生き残ったのは6人。
松山啓太はその1人でした。
はやる気持で帰郷した啓太。しかし、彼を迎える家族は誰もいません。
啓太戦死の噂が流れ、良い仲になってしまった妻と父は、
彼が生還する知らせを聞き、手に手をとって家を出てしまっていたのでした。

大阪のキャバレーで働いているという妻に会いにいく啓太。
だが、妻から発された言葉は
「戦死すればよかったんじゃ」――

生きる気力を失った啓太は家を売り払い、ブラジルへ行くことを決意。
荷物を整理していると、あの時、定造から預かった一枚のハガキが出てきました。

f0165567_69414.jpg


夫・定造を亡くした悲しみに浸る間もなく、
年老いた舅姑からこのまま一緒に暮らしてほしいと懇願された友子。
さらに、村には長男が死んだら次男が後継ぎとなるという習わしがあり、
次男の三平と所帯を持つように頼まれます。

森川の家の他に身寄りのない友子は三平と結婚し、
定造の家族と共に生きていくことを受け入れるのでした。
ところが、しばらくして三平も召集され、戦死。
その後、舅が死に、姑も自死。
1人家を守る友子の許に、あのハガキを持った啓太がやってきました……

                       クジ運の強さだけで生き残った啓太。
                   夫も家族も幸せな人生もすべてを失ってしまった友子。
          意志も希望もクジ運の良さも、人が人として手にしていた大きなものも、小さなものも
                        すべて容赦なく奪っていく戦争。

f0165567_6113696.jpg


        こんなこともあったんだろうなぁ、とことん絶望してしまうこともあったんだろうなぁ、
              でも、何があっても、とにかく生きていかなくちゃならないんだなぁ、
                        生きていけるものなんだなぁ、
                        と諭されたような思いです。

                          こんな風に思えるのも、
      監督が99年という人生の中で噛み砕いてきたものを「ほらよっ」と示してくれたからでしょうか。
                         麦畑が広がるラストシーンに、
        すべてが滅び去った後にも再生が訪れるということを感じさせられたからでしょうか。

                        新藤監督、ありがとうございます。
                         がんばっていこうと思います。

    

                                  
今日もポチッとお願いします。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆7月17日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

一枚のハガキ
監督・脚本・原作/新藤兼人、製作/新藤次郎、渡辺利三、宮永大輔、プロデューサー/新藤次郎、撮影/林雅彦
出演豊川悦司/松山啓太、大竹しのぶ/森川友子、六平直政/森川定造、柄本明/森川勇吉、倍賞美津子/森川チヨ、大杉漣/泉屋吉五郎、津川雅彦/松山啓太の伯父・利エ門、川上麻衣子/松山美枝、絵沢萌子/利エ門の妻、大地泰仁/森川三平、渡辺大/下士官、麿赤児/和尚
8月6日(土)テアトル新宿、広島・八丁座にて先行公開、8月13日(土)全国公開、
2011年、日本、カラー、114分、配給/東京テアトル
http://www.ichimai-no-hagaki.jp/

by mtonosama | 2011-07-17 06:38 | 映画 | Comments(6)
               一枚のハガキ -1-

f0165567_5535871.jpg


               ©2011「一枚のハガキ」近代映画協会/渡辺商事/プランダス

                   最初から一番良いところを発表してしまうのって、
                あんまりおりこうな書き方ではないのですが、いっちゃいます。
         (「どうせお利口じゃないし」と、つっこみの来る前に言ってしまうというこのサガが悲しい)

                              新藤兼人監督。
                         邦画界で最高年齢の映画監督です。
                       今年4月22日に99歳の誕生日を迎えました。

             本作「一枚のハガキ」では自身の戦争体験を主人公に演じさせています。
          運の良い男と運の悪い女を登場させ(とはいえ、この区別も設定しにくいのですが)、
                      「生きる」ということの、間の悪さ、厄介さ、
                     あるいは、やってみたらなんとかなっちゃった――
                        みたいな、ある種、達観にも似た部分を
                99年生きてきた監督ならではの映画作法で描きだしてくれました。

f0165567_5583178.jpg

新藤兼人監督
1912年4月22日、広島県に生まれる。
34年、京都・新興キネマの現像部で働き始める。
後に美術部に移り、シナリオを書き始め、溝口健二監督に師事。
44年、松竹大船撮影所の脚本部に移籍。同年4月召集。呉海兵団に二等水兵として入隊。
45年、宝塚海軍航空隊で終戦を迎える。
終戦後、吉村公三郎監督と組んだ「安城家の舞踏会」(‘47)「わが生涯のかゞやける日」(’48)などで脚本家としての評価を決定づける。
50年、松竹退社。吉村公三郎、殿山泰司達と独立プロ「近代映画協会」を設立。
51年、「愛妻物語」で監督デビュー。
以降、「原爆の子」「第五福竜丸」など創作活動を開始。
60年、全編まったくセリフのない「裸の島」がモスクワ国際映画祭グランプリを受賞。
その独創的な姿勢は「鬼婆」、「本能」(‘66)などの作品にも貫かれている。「ある映画監督の生涯・溝口健二の記録」は記録映画の傑作として絶賛された。
95年、「午後の遺言状」が日本アカデミー賞最優秀作品賞はじめ、あらゆる映画賞を独占。
2011年、監督自身が「映画人生最後の監督作」と語る本作「一枚のハガキ」で第23回東京国際映画祭審査員特別賞を受賞。

脚本執筆作品には「源氏物語」(‘51 吉村公三郎監督)、「しとやかな獣」(‘62 川島雄三監督)、「刺青」(‘66 増村保造監督)、「けんかえれじい」(‘66 鈴木清順監督)、「ハチ公物語」(‘87 神山征二郎監督)、「完全なる飼育」(‘99 和田勉監督)などがあり、その数は230本を超える。
97年、文化功労者に選ばれる。
02年、文化勲章授与。
青い部分は「一枚のハガキ」に反映されている体験です) 

        と、まあ、戦後の日本映画史を映画作家として生き抜いてきた邦画界を代表する監督。

               「原爆の子」(‘52)、「裸の島」(‘60)、「午後の遺言状」(‘95)は
            モスクワ、ベルリン、メルボルンなど海外の映画祭でも高く評価されました。
 受賞作を中心に選び抜いた全19作品は「一枚のハガキ」公開記念~映画監督:新藤兼人の軌跡~と題して、
                     テアトル新宿で特集上映されますよ。

「一枚のハガキ」公開記念~映画監督:新藤兼人の軌跡~ 
                         7/23(土)~8/5(金
「一枚のハガキ」公開を記念して、新藤兼人作品19本をテアトル新宿にて特集上映!
http://www.ttcg.jp/theatre_shinjuku/
「愛妻物語」(‘51)、「原爆の子」(‘52)、「縮図」(‘53)、「狼」(‘55)、「第五福竜丸」(‘59)、「裸の島」(‘60)、「人間」(‘62)、「母」(‘63)、「鬼婆」(‘64)、「藪の中の黒猫」(‘68)、「裸の19歳」(‘70)、「ある映画監督の生涯・溝口健二の記録」(‘75)、「竹山ひとり旅」(‘77)、「北斎漫画」(‘81)、「さくら隊散る」(‘88)、「濹東奇譚」(‘92)、「午後の遺言状」(‘95)、
「生きたい」(‘98)、「三文役者」(‘00)
料金:一般・大専・シニア1300円、小中高:500円

         「一枚のハガキ」は監督自身が《映画人生最後の監督作》と語った渾身の一作!
         と結びたいところですが、そんなにガチガチになって鑑賞することはありません。 

f0165567_665058.jpg

    99歳、さまざまな実験映画も撮影し、ご本人も泥沼の愛憎人生を過ごしたこともおありの新藤監督。
           過ぎてきた人生を、飄々と、また、淡々とふりかえることのできるお歳です。
                      余分な力がかかっていないんですねぇ。

                  でも、監督が、ご自分の人生をふりかえることは、つまり、
            観客にとっては人生を教えられることであり、今後への勇気を与えられること。
           その描き方はまさに長い映画人生の中から、身につけてこられたものなんですね。
                 年齢を重ねるということは素晴らしいことだと思います。

               さて、監督にとっての人生とはいかなるものなのでありましょうか。
                        続きは次回で。乞うご期待であります。

                                 

今日もポチッとお願いできれば、嬉しいです。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村 映画ブログ 新作映画・試写会へ
にほんブログ村
☆7月14日に更新しました。いつも応援ありがとうございます。

一枚のハガキ
監督・脚本・原作/新藤兼人、製作/新藤次郎、渡辺利三、宮永大輔、プロデューサー/新藤次郎、撮影/林雅彦
出演
豊川悦司/松山啓太、大竹しのぶ/森川友子、六平直政/森川定造、柄本明/森川勇吉、倍賞美津子/森川チヨ、大杉漣/泉屋吉五郎、津川雅彦/松山啓太の伯父・利エ門、川上麻衣子/松山美枝、絵沢萌子/利エ門の妻、大地泰仁/森川三平、渡辺大/下士官、麿赤児/和尚
8月6日(土)テアトル新宿、広島・八丁座にて先行公開、8月13日(土)全国公開、
2011年、日本、カラー、114分、配給/東京テアトル
http://www.ichimai-no-hagaki.jp/

by mtonosama | 2011-07-14 06:39 | 映画 | Comments(8)