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明日の空の向こうに -2-
JUTRO BEDJIE LEPIEJ

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(C)Kid Film 2010

ちょっと前なら、ソ連から衛星国ポーランドへと逃げ出していく映画など考えられなかったかもしれません。
今ではその逆にフランス人からロシア人になろうという時代ですしね。
(それにしてもドパルデューさん、立派な体格になられました)

あ、ソ連といっても旧ソ連、本作ではロシア共和国の小さな村からの脱出です。
150歳のとのとしては、時代は変わったんだなぁ、としみじみ思わされる映画でした。
といっても、暗く厳しい映画ではありません。

確かに、親のない子ども達が、住む家もなく、行政の保護も受けず、
鉄道の駅舎に寝泊まりし、物乞いしたり、ちょっとばかりのものをくすねたりしながら生活するなど、
ヌクヌクと暮らす私たちから見れば、とても厳しい状況に思えます。

でも、何から何までガチガチに管理され、
学校やら塾やら習い事で一日がつぶされ、原っぱで駆けまわることも知らない
日本の子どもたちや、昔は子どもだった人たちから見れば、
自分でものごとを決め、冒険ともいえる国境越えを決行する
ペチャ、ヴァーシャ、リャパの生き方は希望に満ちているように見えることでしょう。
そして、とても羨ましいことかもしれません。

ちっちゃなペチャはお兄ちゃんたちとの冒険が楽しかっただけかもしれませんけどね。
でも、ペチャだってただのおねだり上手なだけじゃないんですよ。

さあ、一体どんなお話なんでしょうか。


ストーリー
時代は現代。場所はポーランドと国境を接する旧ソ連の貧しい田舎町。
そんな町の古臭い駅舎を走り回り、楽しそうに遊んでいる少年たち。
6歳のペチャと10歳のヴァーシャの兄弟。
身寄りも家もない2人は駅員たちに見つからないように駅舎の中で寝泊まりしています。

ある日、同じ境遇の11歳のリャパと兄のヴァーシャは以前から計画していた冒険を
実行に移すことにしました。
その計画とは、
貨物列車に乗り込み、国境近くの町に移動。
歩いて国境を越え、ポーランドに行く、というもの。
彼らは外国に行けば良い暮らしができると信じていました。
当初、ヴァーシャは足手まといになる弟をおいていくつもりでした。
でも、兄たちの様子に何かを察したペチャはしっかり2人を追いかけます。
ヴァーシャもまた泣きながら後を追っかけてくる小さな弟を放ってはおけず、
連れていくことに――

国境近くの町に着いた3人。
まずは、おねだり上手で可愛いペチャを朝市のおばさんに言い寄らせ、食べ物を入手。
その後、町外れで炭焼きをしているリャパの知りあいのおじいさんを訪ね、泊めてもらいます。
おじいさんはリャパたちが越境することも知っていました。
その上で、ペチャに「お前には危険だ。俺とここで一緒に暮らそう」と言ってくれるのですが、
ペチャは「3人で行くんだ」と、断固として言い張るのでした。

とうとう国境まで辿り着きました。
高圧電流が流れている金網の下を空き缶で掘り、身体が通れるだけの穴を開けます。
警備兵の隙をついて、金網をくぐり抜ける練習を重ねる3人。
そして、深夜、ついに越境に成功。

朝日の中、ポーランドの草原を駆け、川の水で道中の汚れを落とします。
高く、青い空を見上げ、「お空はどこも同じだね」とつぶやくペチャ。
ヴァーシャは「これからは僕たちの空さ」――

ところが、ポーランドは3人が想い描いていた場所とは少し違っていました。
言葉は通じないし、村の子どもたちも見知らぬ3人に意地悪だったり。
3人は警察に出向き、保護を申し出ることにしました。
しかし、法律では越境者は収容所に送られ、本国に送還されることになっているのです。
警察の担当者は、幼い3人が必死の思いで越境したことに心を動かされ、
なんとか送還せずにすませる方法はないものかと思案します。
ペチャも精いっぱいのおねだりをするのですが……

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3人は結局護送車に乗せられ、苦労して来た道を逆戻り。
空は青く、高く、優しい風も吹いています。
護送車が田舎道をゴトゴト走り、
“これぞロシア”という感じの懐かしい曲がバックに流れます。
今は亡きロシアの人気歌手アルカディ・セヴェルヌイの歌声です。
今回は残念な結果に終わったけれど、この次は明るい明日を迎えるに違いない――
そんなエンディングでした。

政治的な迫害から逃げるためとか、より豊かな生活を求めて、とかいうのではなく、
3人が国境の向こうに夢見たものは希望だったのですね。

ちょうど「大脱走」でスティーブ・マックィーンがスポーツを楽しむみたいに脱走したように、
「スタンド・バイ・ミー」で少年たちが死体を探す冒険旅行に出たように。
みんな目的を達成することはできなかったけれど、希望を持っていました。

例え、今日は苦い結果に終わったとしても、明日に希望をつなぐことは可能なんですよね。
この3人のように若くなくたって。





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☆2013年1月25日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

明日の空の向こうに
監督・脚本/ドロタ・ケンジェジャフスカ、撮影監督/アルトゥル・ラインハルト、編集/ドロタ・ケンジェジャフスカ、アルトゥル・ラインハルト、美術/アルトゥル・ラインハルト、音楽/ミハル・パイディヤク、ホンザ・マルティヌク、歌/「鶴は翔んでゆく」(1974・78年録音)アルカディ・セヴェルヌイ、製作/キッド・フィルム、アルトゥル・ラインハルト、共同出資/ポーランド映画芸術協会、アグニシェスカ・オドロヴィッチ、共同製作/丹羽高史、ズビグニェフ・クラ、チャレフ・リソフスキ
出演
オレグ・ルィバ/ペチャ、エウゲヌイ・ルィバ/ヴァーシャ、アフメド・サルダロフ/リャパ、スタニスワフ・ソイカ/警察官、ズィグムンド・ゴロドヴィエンコ/老人、アレクサンドラ・ビッレヴィチ/花嫁、キンガ・ヴァレンキェヴィチ/かわいらしい少女、スタニスワフ・ザヴァツキ、アントニ・ワンチュコフスキ/国境警備隊、アンゲリカ・コジェ/パンを持った少女
2013年1月26日(土)より新宿シネマカリテ他全国順次ロードショー
2010年、ポーランド・日本合作、118分、後援/ポーランド大使館、配給/パイオニア映画シネマディスク、配給協力/シナジー、http://www.pioniwa.com/ashitanosora/ 

by Mtonosama | 2013-01-25 06:51 | 映画 | Comments(4)
明日の空の向こうに -1-
JUTRO BEDJIE LEPIEJ

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(C)Kid Film 2010

3人の子どもが主人公の映画です。なかでも一番小さなペチャくんの可愛いことといったら。
最近、子どもが気になるとの。
150歳になり子ども還りしてしまったのか?と、ちょっと不安ではあります。

古くは「禁じられた遊び」(‘52)、「鉄道員」(‘56)、
昨年末、当試写室でも上映した「駆ける少年」、
子どもの登場する映画には記憶に残る名画が多いのですが、
本作も子ども映画の傑作に加えたいと思います。

最近、日本でも子役が人気です。
彼らは彼らで可愛いし、演技も上手ですけれど、
達者な子役さん程、妙にこまっしゃくれていて、実はちょっと苦手。
ヘンにお芝居しない方がいいのに、と思うのですが。

その点、ペチャはじめヴァーシャ、リャパを演じた3人は、
いわゆる子役という玄人俳優ではありません。
実の兄弟であるウクライナ出身の10歳のエウゲヌイ・ルィバと6歳のオレグ・ルィバ、
チェチェン出身の11歳、アフメド・サルダロフはオーディションの末に選ばれたまったくの素人。
でも、だとしたら、彼らこそ天性の俳優です。

おねだり上手なレディキラーのペチャ。
小さくて足手まといな弟ペチャが、邪魔くさくって仕方なくて
かまったりいじめたりしながらお兄ちゃんとしてキメるときはバシッとキメるヴァーシャ。
そして、リーダー格のリャパ。
演技初体験の彼らは、原っぱのバッタや小川の魚、頭上を吹き抜ける風が自然である以上に自然です。
大地の子どもたちでした。

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本作「明日の空の向こうに」はドロタ・ケンジェジャフスカ監督の
「木漏れ日の家で」(‘07)以来4年ぶりとなる新作。
「カラス達(Wrony)」(‘94)、「僕がいない場所」(‘05)等でも描いた子どもたちの世界を
母親あるいは近所のおばさんのように優しくさりげない視線でみつめた作品です。


ドロタ・ケンジェジャフスカ監督
1957年、ポーランドのウッチ生まれ。母親が映画監督のヤドウィガ・ケンジェジャフスカ。76年にウッチ大学で文学を学び、78年からはモスクワで映画演出法を学んだ。その後、ウッチの国立映画大学で映画製作をより専門的に学び、81年に卒業。82年に短編劇映画「卵Jajko」を発表し、ミュンヘンでのヨーロッパ学生映画賞で1位。数多くの映画賞を受賞して注目される。91年に発表した初長編映画「ディアブリィ・悪魔(Diably, diably)はダディニャ・ポーランド映画祭で最優秀監督賞・審査員特別賞をはじめ、数々の映画祭で受賞。94年「カラス達(Wrony)」では国際的に高い評価を受け、同作で撮影を担当したアルトゥル・ラインハルトと結婚。以後、98年「何もない(Nic)」、05年「僕がいない場所(Jestem)」、そして2011年に日本で公開されミニシアター系最大のヒット作品となった「木漏れ日の家で(Pora Umirac)」(‘07)と、彼女が監督と脚本、アルトゥル・ラインハルトが製作と撮影を担当している。

ポーランドはどちらかといえば地味な印象、それに、歴史的にはいつも虐げられてきた国。
でも、伝説的な映画監督を大勢輩出している国であります。
アンジェイ・ワイダしかり、
ロマン・ポランスキーしかり、
クシシュトフ・キェシロフスキーしかり。
そのアンジェイ・ワイダに指導を受けたアグニェシュカ・ホランド監督(「ソハの地下水道」)。
http://mtonosama.exblog.jp/17961754/ http://mtonosama.exblog.jp/17971415/
そして、本作のドロタ・ケンジェジャフスカ監督。
いずれもポーランド映画が世界に誇る優れた女性監督です。

幾多の名作を世に送り出してきたポーランド映画界。
地味などと言ったらしかられてしまいます。

しかし、どんな名画も先立つものがなければ始まらないというのがこの世の非情なる現実。
当試写室のラストにポーランド・日本合作とあることにお気づきでしょうか。
実は、資金不足で難航していた本作の企画に出資者として参画、製作を実現したのが、
今回、配給会社として名を連ねているパイオニア映画シネマディスクの丹羽高史さん。
「カラス達(Wrony)」(近日日本公開予定)でケンジェジャフスカ監督の才能に着目、
「僕がいない場所」「木漏れ日の家で」などを日本に紹介してきた人物です。

親のいない小さな子ども達が自分たちの知恵と勇気と愛嬌と、
持てる力のすべてを出して国境を超えるロードムービー。
こんな名画の誕生に日本が関わっているとは、なんとも嬉しいことです。

さて、どんなお話かは次回のお楽しみということで。乞うご期待でございます。



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☆2013年1月22日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

明日の空の向こうに
監督・脚本/ドロタ・ケンジェジャフスカ、撮影監督/アルトゥル・ラインハルト、編集/ドロタ・ケンジェジャフスカ、アルトゥル・ラインハルト、美術/アルトゥル・ラインハルト、音楽/ミハル・パイディヤク、ホンザ・マルティヌク、歌/「鶴は翔んでゆく」(1974・78年録音)アルカディ・セヴェルヌイ、製作/キッド・フィルム、アルトゥル・ラインハルト、共同出資/ポーランド映画芸術協会、アグニシェスカ・オドロヴィッチ、共同製作/丹羽高史、ズビグニェフ・クラ、チャレフ・リソフスキ
出演
オレグ・ルィバ/ペチャ、エウゲヌイ・ルィバ/ヴァーシャ、アフメド・サルダロフ/リャパ、スタニスワフ・ソイカ/警察官、ズィグムンド・ゴロドヴィエンコ/老人、アレクサンドラ・ビッレヴィチ/花嫁、キンガ・ヴァレンキェヴィチ/かわいらしい少女、スタニスワフ・ザヴァツキ、アントニ・ワンチュコフスキ/国境警備隊、アンゲリカ・コジェ/パンを持った少女
2013年1月26日(土)より新宿シネマカリテ他全国順次ロードショー
2010年、ポーランド・日本合作、118分、後援/ポーランド大使館、配給/パイオニア映画シネマディスク、配給協力/シナジー、http://www.pioniwa.com/ashitanosora/

by Mtonosama | 2013-01-22 06:09 | 映画 | Comments(8)