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未来よ こんにちは
-2-

L’avenir

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(C)2016 CG Cinema・Arte France Cinema・DetailFilm・Rhone-Alpes Cinema

受験に失敗してしまった人、
デートをすっぽかされてしまった人、
交通事故に遭ってしまった人、
担当を外されてしまった人――
もうこの世の終わりと思える程つらいとお思いでしょうね。

でも、どんなに泣いても喚いても死んだ方がましだと思っても
朝は訪れます。

例えば、本作の主人公ナタリーのように
夫に浮気され、離婚し、母を亡くし、
よりどころとしていた専門分野でも流行遅れと言われ、
どこかで春めいた気持ちを抱いていた教え子も去っていき、
いきなり迎えることになった一人暮らし。

結構きつい日々です。
さあ、彼女はいったいどんな風に生きるのでしょうか。

ストーリー
パリの高校で哲学を教えるナタリー。
同じく哲学教師の夫ハインツと2人の子どもとの4人家族である。
数年前のバカンスには家族とブルターニュを訪れた。
退屈した子どもたちには構わず、
文学者シャトーブリアンの墓前でゆったりと対話を続ける仲の良い夫婦だ。

今や子どもたちも成長し、家を離れ、
ナタリーはパリ市内に一人暮らしをする母の介護に追われる。
深夜にも授業中にも構わず電話をかけてくる母。

その頃、ナタリーの勤務する高校はストで揺れていた。
かつて五月革命では学生運動に参加した彼女も今は政治とは関わらず、
スト中の学生からなじられようとも授業を続ける。
その日の授業はルソー。
自分で考えることのできる生徒を育てることが彼女の目標だった。

そんな生徒がかつての教え子ファビアン。
彼女の授業で哲学に目覚め、教師になった青年だ。
彼女の監修で哲学書も出している。

一方、母は認知症の症状が進行していた。
1週間に3度も救急隊を呼び出しているという。
これ以上、母を1人にしておくことはできなかった。

更に思いもよらなかった事態が。
結婚25年目を迎えた夫ハインツが好きな人ができたから、と
家を出ていってしまったのだ。

やがて母はあれほど嫌がっていた老人ホームに自ら入居。
そんな母を悲しみ、近づく死の気配をそっと受け入れるのだった。
施設に入居した母の家の整理をし、
母が愛した黒猫を猫アレルギーのナタリーが飼うという
皮肉な事態も待ち受けていた……

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次から次へと巻き起こる出来事に追いまくられて
ナタリーはいつもせかせかと歩いています。

そんな彼女に慣れていた目には
教え子ファビアンとその仲間たちが暮らすコミューンがあるアルプスで
山々をみつめるナタリーの姿に違和感を覚えてしまう程でした。

考える時間がない程、予期せぬ事態に追われていれば
せかせかと動き回り、生き急ぐことが事態を乗り切る手立てなのかもしれません。

え、これって老いに向かう自分自身の姿かしらん。

数か月後、娘が子どもを産みます。
去っていった家族もいれば新しく加わった家族もあり、
穏やかな笑みを浮かべるナタリーの背後に流れるアンチェインドメモリーの調べ。
ああ、なんか大きなDNAの螺旋がゆっくりゆっくり回転しているような
不思議な感覚に包まれました。

みんないろんな問題を抱えながら生きているんですよね。

あ、あと黒猫のパンドラがおりこうさんでした。
アルプスに向かう列車に乗っていてもケージの中で大人しくしているんです。
華奢な体のイザベル・ユペールがこの大柄なパンドラを重そうに抱えているのが
羨ましかったです。





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未来よ こんにちは
監督・脚本/ミア・ハンセン=ラブ、撮影/ドニ・ルノワール、
製作/シャルル・ジリベール
出演
イザベル・ユペール、アンドレ・マルコン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブ
3月25日(土)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ・有楽町ほか全国順次ロードショー
2016年、フランス・ドイツ、102分、カラー、日本語字幕/寺尾次郎、配給/クレストインターナショナル、http://crest-inter.co.jp/mirai/

by Mtonosama | 2017-03-21 05:37 | 映画 | Comments(6)

未来よ こんにちは
-1-

L’avenir

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(C)2016 CG Cinema・Arte France Cinema・DetailFilm・Rhone-Alpes Cinema


「人生は欲望があれば幸福でなくても
期待で生きられます。
幸福を手に入れる前こそ幸福なのです」

とまあ、これは映画の中で主人公の哲学教師が
生徒たちに読み聞かせる言葉ですが、
ジャン=ジャック・ルソーの小説「ジュリーあるいは新エロイーズ」の
一説だそうです。

わかったような、わからないような――
でも、確かに幸福になりたいなあ、と思っている時が
一番幸せな時なのかもしれません。
幸せを手にしてしまったら、
今度はそれを失うことが怖くて不安になってしまいますものね。

いえ、今回上映する『未来よ こんにちは』は
哲学のお話でも、幸福論のお話でもなく、
人生には何が起こるかわからないよ、というお話。
って、
それじゃあ身も蓋もないか・・・

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主人公は50代後半でパリの高校で哲学を教えているナタリー。
教科書や哲学書も執筆しており、
夫も哲学の教師で、独立した二人の子どもがいます。
高齢の母の世話をしながらも充実した日々を送っていた彼女ですが――

そんな彼女がバカンスを前に突然
「好きな女性ができたから」と夫から離婚を告げられました。
母は亡くなり、
彼女の著作も時代遅れとなり、
出版社から次回の出版は無いと言われ、
目をかけていた教え子にも去られました。

はっと気づけばもう若くはないし――
それって、悲しいし、辛いし、惨めだし、
彼女もうろたえ、怒り、泣きました。

でも、これ、言ってみれば、誰にでも訪れる人生の日陰の部分。
人生の日向から日陰に足を踏み入れても
とにかく前へ向かって歩き続けるナタリーを演じたのはイザベル・ユペールです。

監督・脚本はミア・ハンセン=ラブ。
本作でベルリン国際映画祭銀熊 (監督) 賞を受賞しました。

ミア・ハンセン=ラブ監督
1981年ドイツ観念論の哲学者を父に、ルソー派の哲学者を母に持ち、パリに生まれる。
科学的認識に基づいた真理を尊重する教育を受け、
それは映画作家となった今も重要視しているものだという。
17歳の時、リセの演劇教師から映画オーディションがあることを知らされ、
受けにいったのがオリヴィエ・アサイヤス監督の『8月の終わり、9月の初め』(’98)。
アサイヤス監督こそ後に彼女のパートナーとなる人物だった。
2000年アサイヤス監督作品『感傷的な運命』に出演し、
本格的に演技を学ぼうとフランス国立高等演劇学校に進学。
だが、映画を作る側を選び、3年後には同校を止め、
映画批評を執筆しつつ、短編映画を発表。
2007年には『すべてが許される』で長編デビュー。
2009年第2作『あの夏の子供たち』は
http://mtonosama.exblog.jp/13454680/ http://mtonosama.exblog.jp/13485853/
カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品され、審査員特別賞を受賞。
2011年第3作『グッバイ・ファーストラブ』はロカルノ国際映画祭で特別賞を受賞。
フランス映画界における新たな才能としてあらためて評価された。
2014年第4作『EDEN/エデン』では実兄でありDJのスヴェンと共に
1990年代のフランスのクラブ・シーンを描いた。
本作ではベルリン国際映画祭銀熊(監督)賞を受賞し、フランスを代表する監督になった。

そっか。両親が哲学の先生だったんですね。
本作の主人公夫婦が哲学教師という設定が腑に落ちました。
『あの夏の子供たち』は映画プロデューサーが主人公の映画でしたし、
自分の体験をどこかに織り込む監督なのでしょう。

それにしても35歳にしてフランスを代表する監督ですからね。
すごいなあ。

続きは次回まで乞うご期待です。



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未来よ こんにちは
監督・脚本/ミア・ハンセン=ラブ、撮影/ドニ・ルノワール、製作/シャルル・ジリベール
出演
イザベル・ユペール、アンドレ・マルコン、ロマン・コリンカ、エディット・スコブ
3月25日(土)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ・有楽町ほか全国順次ロードショー
2016年、フランス・ドイツ、102分、カラー、日本語字幕/寺尾次郎、配給/クレストインターナショナル、http://crest-inter.co.jp/mirai/

by Mtonosama | 2017-03-18 07:23 | 映画 | Comments(4)