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殿様の試写室

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消えた声が、その名を呼ぶ
-2-
The Cut

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(C)Gordon Muhle/ bombero international


ファティ・アキン監督。
作品発表ごとにスケールが大きくなっていくようです。

本作の主人公はアルメニア人の鍛冶職人。
突然家族から引き離され、強制労働させられた上、死刑宣告。
ナイフで咽喉を切られ、声を失いながらも
地球を半周し、8年かけて愛する娘を探す男を描いた壮大なロードムービー。

主人公は8年かけて娘を追い続けましたが、
監督も7年をかけて本作を完成させました。
すごいです。

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ストーリー
1915年第一次世界大戦下ではあったが、
アルメニア人鍛冶職人ナザレットは
双子の娘ルシネとアルシネ、妻ラケルと幸せに暮らしていた。
教会で祈り、懺悔をする平凡で善良な男。
彼の宝物は娘たちが刺繍してくれたスカーフだった。

一家の夕食の話題は戦争の情勢とアルメニア人が各地から姿を消しているということ。

その夜更け、ナザレットは憲兵たちによって叩き起こされ、
着の身着のまま、ただ宝物のスカーフだけを手に連行された。

灼熱の砂漠で奴隷のように働かされる日々。
その中でナザレットはアルメニア人の老人、女性、子どもたちが
足をひきずりながら歩いていく行列を見た。
ある朝、ナザレット達は縄で手足を縛られ、谷底へ連れていかれる。
命ぜられるまま、岸壁に向って膝まづくと
「喉を切れ!」の声が。
男たちの悲鳴が響き、隣にいた父も兄も斃れ、ナザレットの首にも刃がつきつけられた。

数時間後、彼は意識を取り戻す。
処刑人の一瞬のためらいが彼を生かすことになったのだ。
しかし、首を傷つけられたことでナザレットは声を失ってしまっていた。
「死にたくない」
仲間の死体をかきわけ、逃げ出すナザレット。
砂漠をさまよい、住んでいた町の住人が連れていかれた強制収容所に向かう。
だが、そこに妻と娘の姿はなかった・・・

戦争は終わった。

身をひそめていたアレッポの町で娘の無事を聞かされる。
今は15歳になっている筈の娘たちはどこにいるのか。
レバノンの孤児院で娘たちの写真を発見するナザレット。
身ぶり手ぶりで娘たちの所在を問うた。
だが、なんと1年前にキューバへ行ったと知らされる。
決死の思いで海を渡りキューバへ。
ここでも知らされた答えは無情なものだった。
娘たちは半年前にミネアポリスに向ったというのだ。
ナザレットは旅費のために働いた。
ラム酒の密輸船に乗船し、フロリダへ。
娘たちを探し、縫製工場やアルメニア人の家を訪ね歩くナザレット。
彼を突き動かすのは娘たちを抱きしめるという執念にも似た想い。
やがて、彼はノースダコタへと辿りつく。
灼熱の砂漠から冷たく暗い北米の小さな町へ。
消えた声で彼はその名前を呼ぶことができるのだろうか……

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平凡なナザレットが歩を進めるごとに
強い意志そのもののような存在と化していきます。
愛情、執念を超えて、人としての存在の意義を確かめるために
前進する男に変わっていきます。

声を失い、神も捨て、ひたすら歩き続けるナザレットを演じたのは
タハール・ラヒム。

彼の演技に加え、映画制作と共に変化する時空も
本作にすごみと感動を加えるものになっています。

実は「アメリカ映画みたいだなぁ」と前二作との違いにとまどったとの。
監督、いよいよメジャーデビューか、とも思いました。

なんとファティ・アキン監督は「アメリカ的な脚本に直してほしい」と思っていたそうで
アルメニア系アメリカ人マルディク・マーティンが共同脚本家として参画しています。
この人スコセッシ監督の『レイジング・ブル』の脚本家です。

アメリカ映画的なドラマ展開と起承転結をまとった本作。
歴史の暗黒部分からスタートした父子愛と人としての誇りをかけた
とてつもなく規模の大きな作品です。





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消えた声が、その名を呼ぶ
監督/ファティ・アキン、脚本/ファティ・アキン、マルディク・マーティン、プロデューサー/ファティ・アキン、カール・バウムガルトナー、レインハード・ブランディグ、ヌルハン・シュケルジ・ポルスト、ファミニホ・ザドラ、撮影/ライナー・クラウスマン、美術/アラン・スタースキー
出演
タハール・ラヒム/ナザレット・マヌギアン、セヴァン・ステファン/バロン・ボゴス、ヒンディ・ザーラ/ラケル、ジョージ・ジョルジョー/ヴァハン、アキン・ガジ/フラント、アレヴィク・マルティロシアン/アニ、バートゥ・クチュクチャリアン/メフメト、マクラム・J・フーリ、シモン・アブカリアン/クリコル、トリーネ・ディアホルム/孤児院院長、アルシネ・カンジアン/ナカシアン夫人、モーリッツ・ブライプトロン/ピーター・エーデルマン
12月26日(土)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開
2014年、ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・カナダ・ポーランド・トルコ、シネマスコープ、138分、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/kietakoe/

by Mtonosama | 2015-12-21 05:12 | 映画 | Comments(11)

消えた声が、その名を呼ぶ
-1-
The Cut

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(C)Gordon Muhle/ bombero international


いやはや世の中には知らないことがたくさんあります。
とのが無知なのか、世界には公にされていない歴史が多いのか。
恐らくはその両方ではありましょうが、
重い史実に驚嘆しました。

え、ファティ・アキンがこういう映画をつくるのか?!
ということでも驚きました。

ご存知とは思いますが、アキン監督はドイツに暮らすトルコ移民の2世。
教育もドイツで受けています。
しかし、根っこはトルコ人です。
その監督が、かつてトルコ人監督は誰も描かなかった
オスマン・トルコ国内でのアルメニア人虐殺を背景にした映画を撮りました。

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アルメニア人虐殺
1915年4月24日、オスマン帝国。
当時の首都コンスタンティノープルで200人あまりの知識人グループを率いていた
アルメニア人詩人ダニエル・ヴァルジャンが強制連行された。
当時、既に崩壊しつつあったオスマン帝国。
帝国内に住むアルメニア人の間では独立の気運が高まっていた。
その中で特に詩人、画家、作家、書店、政治家は帝国にとっては脅威となっていた。

ほどなくして、オスマン帝国内のアルメニア人キリスト教徒の多くが標的となり、
ロシアと結託して帝国への対抗を企てたと非難され、ほぼ殲滅されることになる。
同年8月、何十万ものアルメニア人がシリア砂漠へ向かって容赦ない死の行進を強制された。
当時の目撃者によると、アルメニア人詩人ダニエル・ヴァルジャンは拷問の末殺害されたという。
しかし、彼もまた命を落とした多くの男性、女性そして子供の中の一人に過ぎなかった。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/24/armenian-genocide-controversy_n_7140572.html

ちょうど100年前、オスマン・トルコ国内で起こったアルメニア人虐殺事件。
その犠牲者数は100万人とも150万人ともいわれ、
今なおアルメニア政府とトルコ政府の間で
決着がついていないという歴史的な事件であり、
ヒトラーがこれにならってユダヤ人を虐殺したというとんでもない事件です。

この事件についてはアトム・エゴヤン監督(『アララトの聖母』)など
アルメニア系の映画監督による作品はありましたが、
ファティ・アキン監督は自分が帰属する国の犯した犯罪を背景に
こうした映画をつくった訳です。

これが日本だったら「自虐史観だ」と問題になり、
街宣車がやってきたり、
上映館がみつからなかったりと、
大騒動になることでしょう。

ファティ・アキン監督は本作を
ベルリン交際映画祭金熊賞を受賞した『愛より強く』(‘04)
カンヌ国際映画祭脚本賞『そして、私たちは愛に帰る』(‘07)
に続く「愛・死・悪に関する三部作」の最終章と位置付けました。

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アルメニア人虐殺事件は
本作にとっての出発点であり、背景であります。
死、そして、悪
忌わしい出発点であり、背景でありながら、
それは壮大な愛のドラマにつながっていきます。

作品の全体像はマーティン・スコセッシ監督、
壮大なドラマの撮影方法はロマン・ポランスキー監督、
アルメニア人の物語をいかに描くかはアルメニア系カナダ人のアトム・エゴヤン監督
にアドバイスを求めたというファティ・アキン監督。

本作製作には7ヶ国が関わり、
ドイツ、キューバ、カナダ、ヨルダン、マルタ5ヶ国にわたってロケーションを行い、
7年の歳月をかけて完成しました。
「愛・死・悪に関する三部作」の最終章にふさわしい壮大な作品です。

さあ、いったいどんなお話でしょうか。
乞うご期待でございます。



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消えた声が、その名を呼ぶ
監督/ファティ・アキン、脚本/ファティ・アキン、マルディク・マーティン、プロデューサー/ファティ・アキン、カール・バウムガルトナー、レインハード・ブランディグ、ヌルハン・シュケルジ・ポルスト、ファミニホ・ザドラ、撮影/ライナー・クラウスマン、美術/アラン・スタースキー、衣装/カトリーン・アッシェンドルフ
出演タハール・ラヒム/ナザレット・マヌギアン、セヴァン・ステファン/バロン・ボゴス、ヒンディ・ザーラ/ラケル、ジョージ・ジョルジョー/ヴァハン、アキン・ガジ/フラント、アレヴィク・マルティロシアン/アニ、バートゥ・クチュクチャリアン/メフメト、マクラム・J・フーリ、シモン・アブカリアン/クリコル、トリーネ・ディアホルム/孤児院院長、アルシネ・カンジアン/ナカシアン夫人、モーリッツ・ブライプトロン/ピーター・エーデルマン
12月26日(土)角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開
2014年、ドイツ・フランス・イタリア・ロシア・カナダ・ポーランド・トルコ、シネマスコープ、138分、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/kietakoe/

by Mtonosama | 2015-12-18 05:48 | 映画 | Comments(18)