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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

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           (C)2007 Visitor Holdings, LLC All Rights Reserved

扉をたたく人 
The Visitor


映画館でどんな人が隣に座るか、ということ。
結構、映画観賞気分に影響しますよね。
その日、殿の隣に座った人はやたらよく笑うおにいさん。
「ちょいとおにいさん、そこで笑われると興がそがれるんですけど」
と不機嫌まるだしの殿でした。

が、しかし…
「扉をたたく人」。
なんてすばらしい映画でしょう。
    〈しみじみ〉あり
    〈にんまり〉あり
    〈大笑い〉あり
    〈「こんなことあり!?」の怒り〉あり
隣のおにいさんもだんだん気にならなくなっていました。

監督は俳優でもあるトム・マッカーシー。
「父親たちの星条旗」(‘06)で、主人公の息子を演じた人です。
本作では脚本も書いていますが
このトム・マッカーシーが
「脚本を書き始めた早い時点で、私の頭の中には彼が浮かんでいました」
と言うのがリチャード・ジェンキンス。

現在ハリウッドでもっとも多く出演依頼を受ける実力俳優で
名脇役として欠かせないリチャード・ジェンキンス。
でも、とても地味な俳優で、顔と名前がなかなか結びつきません。

         「ハンナとその姉妹」(’86)、「バーバー」(‘01)、「ディボース・ショウ」(’03)
         「Shall We Dance?」(‘04)、「バーン・アフター・リーディング」(’08)など
         コーエン兄弟の作品や多くの話題作にも出演しているのですけど。

         そういえば「バーン・アフター・リーディング」で
         整形美容願望のフィットネスクラブの従業員フランシス・マクドーマンドに
         ひそかに恋するマネージャーをやってたっけ
         と思いだしました(一番最近観た映画だから覚えていなくちゃね)。
         この影の薄さこそ、彼の持ち味。
         いかなる映画においても、空気のようにそこにいて
         空気のように欠かせない存在なのです。

         56歳にして初主演した本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ
         一番驚いたのは本人だったでしょうね。
         リチャード・ジェンキンス自身、こんなエピソードを話しています。
         「『あなたは俳優でしょ?』と尋ねられて、『そうですよ』と答えると、
         『うそに決まっている!』と返されることも多いね(笑)」
   
         http://cinematoday.jp/page/N0013604

さて、「扉をたたく人」。いったい、どんなお話なのでしょうか?

2001年9月11日以来
NYは海外からの移民(この言葉、なんか冷たい感じがしてイヤですが)に
扉を閉ざしました。
それは既に国内に住む移民に対しても同じでした。
難民申請をし、アメリカの学校を卒業した人なら
以前はもっとゆるやかに合法的な存在とされたものです。
ですが、9.11以降
疑心暗鬼と不寛容と保守の空気がNYにも確実に蔓延していました。

      〈ストーリー〉
    62歳のウォルターはコネティカットの大学で経済学を教えています。
    5年前妻を亡くして以来、誰とも関わりを持たない孤独な日々を送っていました。
    ある日、彼は同僚の代理で学会に出席するためにNYへ行くことに。
    久しぶりにマンハッタンにある自分のアパートにやってきました。
    ところが、部屋の様子がどこか違います。扉をたたいては内部を確かめるウォルター。

    浴室の扉を開けたとき、そこには見知らぬ女性の姿が!
    息をのむウォルター。
    悲鳴を上げる女性。
    その悲鳴を聞きつけ、恋人が駆けつけてきました。
    殴られそうになりながらウォルターは「自分はこの部屋の持ち主だ」と必死に説明します。
    シリア出身の移民青年タレクとセネガルからの移民女性ゼイナブ。
    この若いカップルは悪い奴に騙されてウォルターの部屋とは知らず
    住み始めたばかりだったのです。
    二人は「警察だけは呼ばないでくれ」と言い残し、素直に部屋を出て行きました。
    ウォルターはなんとなく彼らのことが気になって後を追います。
    結局、途方に暮れていた二人をアパートの部屋に泊めることになりました。

    タレクはジャンべというアフリカン・ドラムの奏者でした。
    なぜかその楽器にひきつけられたウォルター。
    陽気なタレクが奏法を教えてくれました。
    親子ほども歳の離れた二人が楽器を通してだんだん友情を深めていきます。
    セントラルパークで行われたジャンべ・ライブにおずおずと加わり
    かつて味わったことのない昂揚感に酔いしれるウォルター。
    ところが、その後、とんでもないできごとが…

「9・11以降、この国が(…)不法滞在者たちをどのように扱っているのか、
という疑問が本作の物語へ導いた」

と語るトム・マッカーシー監督。
そこに、仕事への情熱も生きる目的も失い、惰性で生きている初老の大学教授
というキャラクターが結び付きました。

移民青年でパーカッショニストのタレク。そして、気難しい大学教授のウォルター。
出会いそうもない二人が出会うことによって、不協和音が協和音に変わり
さらに新しい出会いが生まれ、ジャンべのリズムが孤独な心を解きほぐします。

   ここちよい出会いやふれあいでしみじみしているところへ
   突然、国家権力の無情さがつきつけられます。
   タレクの母が叫ぶ「この国はシリアと同じ!」の声が突き刺さります。

至福の高みに押し上げられ
絶望の底につきおとされ
一人の人間の心が蘇っていく過程がアフリカン・ドラムのリズムを背景に
描き出されます…
アメリカの良心が戻ってきたのかな、と思わせてくれる映画であり
《歳の差》愛ならぬ《歳の差》友情
異国出身者に対する人間としての優しさや思いやり
9.11以降アメリカが失っていたものをそっと差し示してくれる映画でもあります。

    アメリカでは封切り時わずか4館だった上映館が最終的には270館まで拡がり
    6か月にわたってロングランされたというのも納得できます。


扉をたたく人
監督・脚本/トム・マッカーシー
キャスト
リチャード・ジェンキンス/ウォルター・ヴェイル、ヒアム・アッバス/モーナ、ハーズ・スレイマン/タレク、
ダナイ・グリラ/ゼイナブ、マリアン・セルデス/バーバラ・ワトソン、リチャード・カインド/ジェイコブ、
マイケル・カンプスティ/チャールズ
6月27日(土)、恵比寿ガーデンシネマにて公開
www.tobira-movie.jp

映画の版権提示で、ジャンべ教室が割引♪(
創業78年の打楽器専門店ジャパン・パーカッション・センター エスニックシティ。
公開を記念して、映画の半券か鑑賞券を提示すれば、同店主催のジャンべ教室
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by mtonosama | 2009-06-11 06:14 | 映画 | Comments(6)
この自由な世界で
it’s a free world…


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(c) Sixteen Films Ltd, BIM Distribuzione, EMC GmbH and Tornasol Films S.A.

唐突ですが、1930年代に起こったスペイン市民戦争に夢中になっていた時期が ありました。
R・キャパの撮影した「崩れ落ちる兵士」の写真で有名な内戦です。
そのスペイン市民戦争を描いた「大地と自由」(‘95)を観たのが
ケン・ローチ監督との出会いでした。
「この人すごい。これは『カタロニア讃歌』だ。スペインの内乱をまんま映画にしてくれた!」
鼻の穴をふくらませて感動したのを思い出します。

一昨年はアイルランドの独立を描いた「麦の穂をゆらす風」で
パルムドール大賞を受賞した監督ですが、
やはりこの人の真骨頂は現代社会の片隅に生きる
名もないおじさん、おばさん、おねえさん、おにいさんを
切り取って見せてくれるところにあるような気がします。
 
「この自由な世界で」の主人公はアンジーという33歳のシングルマザー。
11歳の一人息子を両親に預け、ルームメイトのローズと暮らしています。
移民相手の職業紹介所の仕事もバリバリこなしているのだけれど、
上司のセクハラまがいの嫌がらせをかわしたら、その翌日にクビ。
頭にきたアンジーはローズを誘い、派遣業を立ち上げます。

    学歴なんかないけど、仕事はできるんだから。
    来年は中学に上がる息子だって、いつまでも両親に預けておくわけにはいかないし。
    お金だってもっと稼げるはず。
    私を使い捨てにしたやつらも見返してやらなくちゃ…

舞台はロンドン。
職を求め、あるいは命の安全を求め、世界各国から移民たちが集まってくる都市です。
EU拡大以降、東欧の新規加盟国に労働市場を開放したイギリスには
ポーランド、ウクライナなど東欧圏の移民労働者が多く、
この映画でもポーランド人の青年がアンジーに思いを寄せ、
通訳として彼女の仕事を手伝う役柄として登場しています。

ここで問題となるのが不法移民労働者の場合。
職業紹介所にとって不法移民の就労はタブー。

反体制的な本を出版したことで逮捕され、
イギリスに亡命申請したものの認められず、ロンドンに隠れ住むイラン人の元出版業者
就労ビザのないウクライナ人

彼らが働くこと、彼らを働かせること自体が犯罪です。
そこはもうマフィアが関わる危険区域。焦ったアンジーが足を踏み入れ、
映画の中でも息詰まる展開を見せるのが不法移民の問題なのです。

アンジーは自分の幸福のためにあくどいことを平気でやってしまう今時の娘ですが、
彼女を見守る父親は古き良き時代の労働者。
団結や倫理観、今ではダサいといわれる価値観の中で生きてきた人です。
父娘そして新旧世代の価値観のずれは仕方ありません。
労働をとりまく環境も変わりすぎてしまいました。

父親はただ娘を見守り続けるだけですが、
この父親が本当に良い味を出していました。
無茶をする娘を心配しながらも、余計なことは言わず、
毅然と見守る姿には無骨ながらも深い愛情があふれています。

この父親を演じたのはなんと役者未経験の元港湾労働者コリン・コフリン。
筋の通った父親は演技ではなく、彼の人生そのものなのでしょうか。
移民問題は今日的なテーマですが、
その背後には不器用な父親を通してケン・ローチの視線が感じ取れます。

手探りでがむしゃらに生きる若い人たちへの励ましとも導きともとれる視線。
やはり、この人は名匠の名に値する監督です。

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監督/ケン・ローチ、脚本/ポール・ラヴァティ
出演
アンジー/キルストン・ウェアリング、ローズ/ジュリエット・エリス、父親ジェフ/コリン・コフリン
8月、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー
www.kono-jiyu.com

by Mtonosama | 2008-07-08 16:14 | 映画 | Comments(8)