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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

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    (c)2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会   写真/瀧本幹也

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     その昔、ダッコちゃんというお人形がはやりました。
     体長30センチ位の黒いビニール人形です。
     大きな丸い目は見る方向によってウィンクしたり、開いたり。
     両手両足はコアラのように前につきだし、腕にしがみつきます。
     これだけのことなのに、なぜか爆発的に大流行。
     なかなか手に入らないほどでした。

     ダッコちゃんは子どものおもちゃ屋さんで売られていた空気人形でしたが
     是枝裕和監督の新作に登場する「空気人形」は
     大人のおもちゃ屋さんで販売されるお人形。

     ギリシャ時代、ピグマリオンの昔に戻るまでもなく、
     人形愛好者って結構多いようです。
     昨年も「ラースとその彼女」なんて映画が公開されました。
     (正直、これはちょっとひいてしまいましたが)

     本作主人公の「空気人形」は
     ピグマリオンの愛した象牙の像のように、アフロディテによって命を吹き込まれるまでもなく
     一人で歩き始めます。
     そして、一人でいろいろな人間と接点を持とうとするけなげな人形です。

待望の最新作「空気人形」。
昨年6月「歩いても 歩いても」
12月に「大丈夫であるように-Cocco終わらない旅~」
と、当試写室でも、是枝監督作品は2本上映しています。

「Cocco」以来、9ヶ月ぶり。
是枝監督はとても早いペースで映画を作っているのだなぁ、と思ったら
なんと本作は9年もかけて大切に磨いてきた作品でした。

原作は業田良家の傑作短編集「ゴーダ哲学堂 空気人形」(‘00)の表題作です。

長編2作目の「ワンダフルライフ」(‘98)以降
オリジナルストーリーだけを発表してきた監督にとっては珍しく、原作のある映画。
わずか20ページの短編漫画を9年かけて2時間6分の作品に完成しました。

さて、そのお話ですが、これがまた今まで是枝監督作品に抱いていたイメージを
見事にひっくり返してくれるものです。
是枝監督といえば
ドキュメンタリー風の作品あり、時代劇あり、ホームドラマあり、もろドキュメンタリーあり。

映画にも文体というものがあるとしたら、監督は実に多くの文体を持っています。
今回は、う~ん、なんといったらいいのでしょう。
〈生きる〉ということ、〈誰かを求める〉ということ、〈孤独な心〉ということを描くための文体。
メルヘンのような文体とでもいいましょうか。

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     《ストーリー》
     開発の波から取り残された都会の片隅。
     小さな家々が並ぶ町。
     通りに面した古いアパートの窓から、朝の光がたっぷりと射し込んでいます。
     部屋の住人・秀夫は勤務先のファミリーレストランへ出勤。

     ベッドの上には昨夜の名残をうっすらと漂わせる空気人形が
     大きな目を見開いて横たわっています。
     その人形がかすかにまばたきをし、ゆっくりと窓辺へ歩き出しました。

     ビニールの体を透過した日の光が半透明の影を床に落とします。

     クローゼットから選び出したメイド服を着て
     人形は外へ出ました。

     空気人形はいろんな人に出会います。
     日が落ちる頃、人形はレンタルビデオ店の店員・純一に興味をひかれ
     次の日からその店で働き始めます。

     仕事にも慣れてきたある日のこと
     人形は棚から突き出した釘で手を傷つけてしまいました。
     人形の体から勢いよく噴出する空気に驚いた純一は…

空気感…。
というより、映画の中の人形の動きはまさに空気そのもの。
ゆるやかな風のように歩み、蝶の翅のまきおこす微かなゆらぎのように微笑みます。
だって、空気人形ですからね。

次第に言葉を覚え、心を持つ人形を演じるのは韓国の女優ぺ・ドゥナ。
彼女のたどたどしい日本語は言葉を覚え始めた人形のそれとリンクして
とても自然です。

空気って、どこか優しげで、たよりなげで
それでいて私たちの生存を確実に保証してくれるもの。
なのに、いつか消えてしまうかもしれない。

そんなかろうじて存在しているような空気の中で
人はいつも何かを求めて生きています。
若さとか愛とか生とか性とか。
それは必ずしも本物を手にすることはできないのかもしれません。
で、代用品で我慢することを覚えるのですね。
赤ちゃんがママの代わりにバスタオルの切れ端を吸うみたいに。
恋人のいない男が空気人形を愛玩するように。

映画の最後に吉野弘の「生命は」という詩が出てきます。
   
     

     生命は
     自分自身だけでは完結しないようにつくられているらしい
     花も
     めしべとおしべが揃っているだけでは
     不充分で
     虫や風が訪れてめしべとおしべを仲立ちする
     生命は
     その中に欠如を抱き
     それを他者から充たしてもらうのだ
     ……(後略)

    
 
    
うん、うんと頷いてしまいます。人間って寂しい生き物ですね。
大人を泣かせるメルヘンです。

空気人形
監督・脚本・編集/是枝裕和、原作/業田良家「ゴーダ哲学堂 空気人形」(小学館ビッグコミックスペシャル刊)、撮影監督/李屏(リーピン)賓(ビン)
キャスト
ぺ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、高橋昌也、余貴美子、岩松了、星野真理、丸山智己、
オダギリジョー、富司純子
9月26日(土)シネマライズ、新宿バルト9他全国ロードショー
http://www.kuuki-ningyo.com/index.html

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by mtonosama | 2009-08-25 06:40 | 映画 | Comments(14)