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殿様の試写室

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                   海洋天堂 -1-
                      Ocean Heaven
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               ©2010,Nice Select Limited.All Rights Reserved.

         試写状が届いたときから、早く観たいなとずっと気になる映画ってあります。
                      「海洋天堂」がそうでした。
           まずタイトル。それから、試写状の背景に使われている青い海と空。
      漢字4文字の中に気をひく全てが入っていたので、映画の解説部分を読んでみました。
                   そしたら、ジェット・リー出演とあります。
              そして、自閉症の息子を持つ水族館職員を演じていると―――

                    ジェット・リーといえば、武術の達人。
               1974年には中国代表としてホワイトハウスでニクソン大統領に
                  武術を披露した程の腕前の持ち主だそうでして。
               17歳でスポーツとしての武術を引退した後は映画界に進出。
            数々のカンフー映画に登場し、アジアのトップスターに登りつめた人です。
         1998年にはハリウッドへ移住し、リチャード・ドナー監督「リーサル・ウェポン4」(‘98)、
        ロブ・コーエン監督「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘密」(‘08)などにも出演しました。

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         カンフー映画はあまり観ないとのが、この人を俳優として初めて意識したのは
              チャン・イーモウ(張芸謀)監督作品の「HERO」(‘02)でした。

         でも、ジェット・リーって、格別ハンサムではないし(ファンの方、ごめんなさい)、
               ジャッキー・チェンみたいに愛想がいいわけでもないので、
             美形好みのとののリストに書きとめられることはありませんでした。
             ただ、「HERO」のラスト、黒雲のように群れをなした無数の矢が
    ジェット・リー扮する刺客に向けて飛んでくるシーンに度肝を抜かれて以来、ちょっと気になる存在です。

          そのジェット・リーが「海洋天堂」では、普通のさえないおじさんを演じていました。
                    もちろんアクションシーンなどありません。
            カンフー映画で彼を知った方はかなり意外にお思いになることでしょう。

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「海洋天堂」の監督と脚本は「北京バイオリン」(‘02)で、チェン・カイコー(陳凱歌)監督と脚本を共同執筆したシュエ・シャオルー(薛暁路)が担当。
本作が映画監督デビュー作となり、第13回上海国際映画祭ではメディア賞部門で作品賞と新人監督賞を受賞しました。

           実は、彼女、北京電影学院の研究生だった1994年から14年間にわたって
       自閉症支援施設でボランティア活動をしていて、本作はその体験から生まれた作品です。

           「海洋天堂」に登場する自閉症の息子・大福(ターフー)くんもそうですが、
   シャオルー監督が活動した施設にいた自閉症児は80后(バーリンホゥ)と呼ばれる80年代生まれ、
                そして一人っ子政策で生まれた一人っ子たちでした。

        保護者にとっては「自分が死んでしまったら、残された子どもはどうなるのだろう」
                     という心配はとても切実なものです。
        こうした現実を目の当たりにしてきたシャオルー監督が、本作の脚本を書き上げ、
      長年、自閉症児と接してきた自分が監督することこそ、映画にとって最善であると判断し、
                         初監督にも挑戦しました。

                          その心意気や、好し!
                      (ハオ)!であります。

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そして、もうひとりのな人物がジェット・リー。
彼は‘壱(ワン)基金’ http://www.onefoundation.cn/ という国際的な救済機関の創立者でもあります。
実は、2004年12月26日、休暇で訪れていたモルディブで家族もろともスマトラ沖地震で被災したジェット・リー。
その時、誰もが積極的に救助に参加する人々の姿に感動。
2007年4月、賛同者の1人1人が毎月1ドルを献金する‘壱基金’を創立したのだそうです。

この‘壱基金’は毎年、中国全土のNGO組織から最も優秀な団体を選出し、100万元を贈っています。
その第1回目に選ばれたのがシュエ・シャオルー監督がボランティアをしていた自閉症施設でした。

これが縁でジェット・リーは本作になんとノーギャラで出演。
四川大地震以来、チャリティに専念していた彼にとって
「海洋天堂」は映画復帰第1作となりました。


  同時に、彼にとっては新境地開拓ということにもなった本作、さて、さて、いったいどんなお話なのでしょう。

                                 

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海洋天堂
脚本・監督/シュエ・シャオルー(薛暁路)、プロデューサー/ビル・コン(江志強)、ハオ・リー(郝礪)、トーマス・チョウ(周惠坤)、撮影/クリストファー・ドイル(杜可風)、音楽/久石譲
出演
ジェット・リー(李連杰)/ワン・シンチョン(王心誠)、ウェン・ジャン(文章)/ワン・ターフー(王大福)、グイ・ルンメイ(桂綸鎂)/リンリン(鈴鈴)、ジュー・ユアンユアン(朱楥楥)/チャイ(柴)、ドン・ヨン(董勇)/水族館館長、イェン・ミンチュー(厳敏求)、
カオ・ユアンユアン(高圓圓)/ターフーの母、ヨン・メイ(泳梅)/施設の館長、チェン・ルイ(陳瑞)/施設職員
7月9日(土)シネスイッチ銀座他全国順次公開
2010年、98分、中国、中国語、配給/クレストインターナショナル
www/kaiyoutendou.com

by mtonosama | 2011-06-20 06:43 | 映画 | Comments(10)
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彼女の名はサビーヌ
Elle s’ appelle Sabine

とてもショッキングな映画です。
でも、そんな感想を漏らすこと自体、関係者にとってはまたつらいのではないかと思い、悩んでしまうのですが…

「彼女の名はサビーヌ」。
「冬の旅」(‘85)で仏セザール賞を受賞し、代表作「仕立て屋の恋」(‘89)で主役を演じたサンドリーヌ・ボネール。
「ああ、あの人」とうなずかれる方も多い、そう、あの女優の初監督作品です。
自閉症の妹サビーヌを25年かけて撮影したドキュメンタリー「彼女の名はサビーヌ」が今回ご紹介する作品。

サンドリーヌとサビーヌは仲の良い1歳違いの姉妹。
映画は、美しく才能に充ち溢れた妹サビーヌをサンドリーヌが家庭用映写機で撮りためた映像と、
5年間の入院生活を経てすっかり変わってしまった現在のサビーヌを撮影した映像から構成されています。


15歳のサビーヌの輝くような美しさ。
彼女は仲良しの姉が向けるカメラに信頼しきった笑顔を見せています。
バカンスで出かけた海で満開の微笑みを見せるサビーヌ
バッハのプレリュードを弾くサビーヌ
サビーヌは幼い頃から特別な配慮が必要な子どもでしたが、10人の兄弟姉妹に守られて穏やかな少女時代を過ごしていました。
しかし、時が経ち、兄弟姉妹も独立して家を出ていくと、母親との二人暮らしが始まります。
やがて兄の死をきっかけにサビーヌの孤独感が深まり、彼女の不安は自分と家族に対する暴力として現れました。
当時はわからなかったのですが、彼女は自閉症だったのです。
28歳のサビーヌは精神病院に入院。入院生活は5年間に及びました。
そして、退院してきたときの彼女の姿は入院前とは大きく変わっていました。

これって若い娘にとっては「死」に匹敵する変貌ではないでしょうか。

自閉症は普通思われているように「心の病」ではありません。
映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じていたように、コミュニケーションの障害、対人関係・社会性の障害、パターン化した行動やこだわりという特徴を持つ
「発達障害」のひとつが自閉症です。
専門家によれば「何らかの脳の機能的不全が根底にあり、これが原因でさまざまな因子が関与して自閉症の特性が現れる」のだとか。
なんだかよくわかりませんが、要するに、そのメカニズムはまだ解明されていません。
ただ、保護者の愛情がないから生じる障害ではないので
「親があんなふうだから、あの子は自閉症になったのよ」
などというのは言われもない誹謗中傷です。
また自閉症患者には必ずしも知的障害があるわけでもありません。

しかし、自閉症の子どもの症状はさまざま。環境や周囲の対応によって変わってきます。
知的障害のない自閉症患者は思春期になると妄想や幻覚、気分障害に似た症状を起こすこともあり、そうした場合、誤った治療を施されてしまう危険性があるわけです。
そう、サビーヌの失われた5年間のように。

以前、自閉症は大変な病気であると考えられていましたが、現在は違ってきています。
その症状は独特の特性であり、治すのではなく、社会的不適応の部分を軽くしようという考え方が主流になっているのだそうです。
「ノーベル賞級の研究をする学者は多少自閉症的要素を持つ」という話もあるほど。
この病気にとって必要なのはなるべく早く自閉症であると気づき、適切に対応することなのです。

監督がこの作品を撮ったのは
「監禁される以前のサビーヌと監禁以降のサビーヌを撮影すること」が目的でした。

とはいうものの、姉として、妹の美しくない部分、粗暴な部分を撮影するのはつらかったことでしょう。この映画を撮影した彼女の勇気には頭が下がります。
フランスも日本も、自閉症児のための早期発見態勢と対応システムを早く整えていかないと。

世の中には本当に大変なことばかり。
試写が終わったとき、大きな溜息をついてしまいました。

「彼女の名はサビーヌ」
監督・脚本・撮影/サンドリーヌ・ボネール
出演
サビーヌ・ボネール

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映画『彼女の名はサビーヌ』
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by mtonosama | 2009-02-06 05:25 | 映画 | Comments(10)