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殿様の試写室

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タグ:芥川龍之介 ( 2 ) タグの人気記事

               トロッコ -2-

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                 © 2009 TOROCCO LLP

「小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事を―――といったところが、ただトロッコで土を運搬する―――それが面白さに見に行ったのである」

芥川龍之介の「トロッコ」はこんな風に始まります。

映画はもうここから違います。
しつこいようですが、小説は小説、映画は映画と、切り離して楽しみましょう。
え、うるさいって?すいません。
では、いきます。

ストーリー
幼い息子たちがぐっすりと眠るマンションの一室で、母・夕美子が電話をしています。

夏休みに入ったある日、敦(あつし)と凱(とき)の兄弟は母に連れられ
父・孟真の故郷、台湾を初めて訪れました。
急死した父の遺骨を実家に届けるためです。

敦たちを迎えに来てくれたのは叔父夫婦。孟真の弟・孟堅夫妻でした。
父の実家に着くなり、敦の抱える遺骨の箱に、老人が杖を振り下ろします。
「この親不孝者め!」

それがおじいちゃんでした。
「台湾では子どもが親に先立つのは大罪だから、叱ってから家に迎える習わしなの」
と孟堅の妻がそっと夕美子に教えます。

お父さんが亡くなる前に敦に手渡した一枚の古い写真
セピア色に変色した写真に写っている〈トロッコを押す少年〉。
おじいちゃんでした。
翌日、おじいちゃんは敦と凱を連れて写真の場所を探します。
村を歩きながら、おじいちゃんは
「この線路は山の木を日本に運ぶためのもの。子どもの頃、この線路をずっと行けば
日本に行けると思っていた」
と話してくれました。その言葉は日本語でした。
おじいちゃんは母親に叱られた敦を慰めてくれたり
一緒にお風呂に入ってくれたり、とても優しい人でした。

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村の子どもたちとも仲良くなった兄弟。
はしゃぐ2人を見て夕美子はかたわらの孟堅に
「あんな楽しそうな顔を見るのは久しぶり」と呟きます。
孟堅は言います。
「敦を見ていると子どもの頃の兄貴を思い出す。
日本人として教育されたことを誇りに思っていたおやじは終戦と同時に日本から捨てられた。
それなのに古い価値観を押し付けるおやじに兄貴は反発していたよ」。

ある日、おじいちゃんに日本から手紙が届きます。
その手紙を読んだおじいちゃんは、おばあちゃんに無言で手渡しました。
それは恩給欠格者通知――
おじいちゃんは日本兵として2年間軍役についたのですが
「現在日本国籍を有していないため、恩給の対象者にはならない」
という通知でした。

翌日、おばあちゃんが救急車で入院!
夕美子も敦と凱を留守番させ、病院に向かいます。
前夜、2人は、おばあちゃんが母に「子供たちをしばらく預かろうか」と
話すのを聞いていました。

「僕たち、ここに置いていかれるかもしれない」
と不安になった敦は凱を連れて森へ向かいます。
そこにはおじいちゃんが「日本につながっている」といったトロッコが…

日本と台湾との関わり
家族の問題――
映画「トロッコ」には新しい要素が盛り込まれています。

トロッコの疾走シーンでは
敦と凱の昂揚感が100年前の良平の興奮を思い起こさせます。
生い茂る緑。吹き出す汗。
やがて2人を襲う、人生で初めて直面する大きな不安。

小さな2人の頭上を覆い、周囲に絡み合う樹木と猛烈な湿度感に
観客も汗ばむ思いで手を握ります。

映画として心ゆくまで楽しませてもらいました。

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トロッコ
監督/川口浩史、脚本/川口浩史、ホアン・シ―ミン(黄世鳴)、音楽/川井郁子、撮影監督/リー・ピンビン(李屏賓)、美術監督/ホアン・ウェンイン(黄文英)、
出演
尾野真千子/矢野夕美子、原田賢一/矢野敦、大前喬一/矢野凱、ホン・リウ(洪流)/おじいちゃん、チャン・ハン(張翰)/叔父、ワン・ファン(萬芳)/叔母、ブライアン・チャン(張睿家)/鳥をつかまえた青年、メイ・ファン(梅芳)/おばあちゃん
5月、シネスイッチ銀座より全国順次ロードショー
116分、日本語・中国語(北京語・台湾語)、2009年、日本、配給/ビターズエンド、www.torocco-movie.com

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by mtonosama | 2010-03-28 04:36 | 映画 | Comments(8)
               トロッコ  -1-
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© 2009 TOROCCO LLP

3月初めに、当試写室で川端康成原作「掌の小説」を上映しましたが
その時、芥川龍之介原作「トロッコ」が映画化されたことをお知らせしました。

5月、その「トロッコ」がいよいよ公開されます。
この小説は学校の教科書で読んだ方が多いと思います。
本作で監督デビューする川口浩史さんもそうなんですって。

殿は貸本漫画の世界を卒業した中学生になってから
自分で買って読んだのですが、感動しました。
そして、漫画ではなく、文章によって、こんな感動を呼び起こしてくれた芥川龍之介
という作家に心酔してしまいました。
子どもですから、思いつめると、ただただ一途(いちず)。
芥川龍之介に出会った日から数百年は経ちましたが
いまだに芥川・いのちです。

だから、この作品が映画化されると聞いて、不安を感じたのは事実。

まず、初恋の人が変わり果てた姿で姿を現したらどうしようという不安。
次に、自分のイメージを思いっきり崩されてしまったら…という不安。

怖いもの見たさと芥川への執着から「トロッコ」の試写へ足を運びました。

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        すると
        なんということでしょう!

        「トロッコ」はすっかり変わっていました。

でも、これ正解です。

原作は2段組でわずか4ページ強の短編。
それも芥川の圧倒的な筆力で読ませる作品。
これに映画で太刀打ちしようたって、はなっから無理な話です。

舞台は、小田原熱海間から台湾へ
時代は、大正時代から現代へ
トロッコを押すのは、8歳の良平から敦(8歳)と凱(6歳)の兄弟へ
と、原作とは大きく設定を変えていました。

その理由は、日本にトロッコの線路が最早なく
台湾にはあったという、極めて映画的な事情です。
しかし、「なんで台湾が舞台なんだ?」と言わせないだけの説得力を
この映画が持つに至ったのは撮影監督リー・ピンビンの存在でしょう。

ホウ・シャオシェン監督の「花様年華」(‘00 )
「ホウ・シャオシェンのレッド・バルーン」(‘07)http://mtonosama.exblog.jp/8401953
トラン・アン・ユン監督の「夏至」 (’00 )、「ノルウェイの森」(‘10)
是枝裕和監督の「空気人形」 (’09)http://mtonosama.exblog.jp/11800043
などで撮影監督をつとめ、これらの名だたる監督たちから絶大な信頼を寄せられている
台湾出身のリー・ピンビン撮影監督。

したたる緑とあらゆるものをうるおす豊潤な湿度を描きだすことでは
彼にかなう人はいないのではないかと思っています。
川口浩史監督とリー・ピンビン撮影監督は
川口さんが助監督をつとめた行定勲監督の「春の雪」(‘05)で出会いました。
監督に、台湾に残るトロッコ線路の存在を教えたのも実はこのリーさん。

自分自身の「トロッコ」の心象風景はそれぞれ心の中にしっかり封印し
川口「トロッコ」を楽しむのも悪くないと思います。これもあり、です。

って、殿も大人になったものだ…
ということで、ストーリーのご紹介は後編で。

続く

トロッコ
監督/川口浩史、脚本/川口浩史、ホアン・シ―ミン(黄世鳴)、音楽/川井郁子、
撮影監督/リー・ピンビン(李屏賓)、美術監督/ホアン・ウェンイン(黄文英)、
出演
尾野真千子/矢野夕美子、原田賢一/矢野敦、大前喬一/矢野凱、
ホン・リウ(洪流)/おじいちゃん、チャン・ハン(張翰)/叔父、ワン・ファン(萬芳)/叔母、
ブライアン・チャン(張睿家)/鳥をつかまえた青年、メイ・ファン(梅芳)/おばあちゃん
5月、シネスイッチ銀座より全国順次ロードショー
116分、日本語・中国語(北京語・台湾語)、2009年、日本、配給/ビターズエンド、
www.torocco-movie.com

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by mtonosama | 2010-03-25 06:57 | Comments(6)