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殿様の試写室

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真珠のボタン
El Botón de Nácar

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(C)Atacama Productions, Valdivia Film, Mediapro, France 3 Cinema – 2015


前回、当試写室で上映した『光のノスタルジア』と同じく
パトリシオ・グスマン監督の作品です。
『真珠のボタン』。
これもまた食指をそそるタイトルですね。

監督自身2部作と考えるこの2作品。
『光のノスタルジア』の舞台がチリ最北部で
本作の舞台は最南端西パタゴニアです。

全長4300キロにも及ぶチリの海岸線の一番南にある西パタゴニア。
無数の島や小島、岩礁、フィヨルドから成る世界最大の群島です。
ここだけで海岸線は7万4000キロもあるというのですから
その形状は想像に難くありません。
いまだ人跡未踏の場所もあります。

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その海の底からボタンが発見されました。
その小さなボタンを通じて
映画は
政治犯として殺害された人々や
国と自由を奪われたパタゴニアの先住民の声を伝えてきます。

『光のノスタルジア』が宇宙と軍事独裁政権下で死んだ政治犯をつなげたように
『真珠のボタン』は太古の海とパタゴニア先住民の悲劇を結びます。
そして、軍事政権時代に
ニ度と浮かびあがってこられないようにレールをくくりつけられて
海に沈められた政治犯たちのことも描いています。
監督自身軍事政権時代に処刑の恐怖を味わったことから、
この事実を除外することはできないのでしょう。

壮大な宇宙の営みと人間社会の残虐行為は関係ないようでありながら
結びつけられ、つなげられ、含み、含まれ、
大きな円環となっていきます。

宇宙と海洋と人間の残酷さが
巨大な哲学の中でひとつになったところを示す・・・
その構成力には意味をのむばかりです。

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小さなものから大きなものへ
高いところから深いところへ
今まで経験したことのない世界観を観てしまいました。

軍事政権時代、鉄道のレールをくくりつけられ海中に沈められた無数の死体。
ヨーロッパ人によって連れ去られるパタゴニア先住民。
その末裔たちのインタビューを通して、
彼らが海と共に生き、優れた航海術を持つ海の民であったことが浮かび上がってきます。

ガブリエラ・パテリトという73歳の女性は
家族と共に6歳の時、数百マイルをカヌーで航海したことを語っていました。
少数民族のカウェスカル族の最後の末裔として
自分の人生と家族のことを語る彼女を観ると連綿とつながる家族の温かみを感じます。

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ドキュメンタリーというジャンルの幅広さや深さに開眼させられた作品でした。
とはいえ、折々に点綴される優しい風景。
例えば、柔らかい陽が射しこむ埃っぽいような妙に懐かしい冬の窓辺が
深遠な宇宙や冷たい氷の海で寒くなった観客にほっこりとした温もりを感じさせます。

それはまるでガラス玉の中に無限を封じ込め
掌の上で愛でるかのような映画でした。

プレスには“叙事詩”とありました。
なるほど。
『真珠のボタン』にはオデュッセイアに劣らない叙事詩の語り手が
小さなカヌーで荒波を越える冒険譚を語ってくれましたし、
『光のノスタルジア』には宇宙からアタカマ砂漠への星々の光の冒険が語られました。
まさに叙事詩です。

この連作叙事詩、絶対に外せません。
自分もまた宇宙の一部であることを実感して
自信と誇りを取り戻せるような気がしますから。





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☆10月7日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

真珠のボタン
脚本・監督/パトリシオ・グスマン、プロデューサー/レナーテ・ザックセ(アタカマ・プロダクションズ)、撮影・カメラ/カテル・ジアン、追加撮影/パトリシオ・グスマン、デイヴィッド・ブラーヴォ、イブ・ドゥ・ぺレッティ、パトリシオ・ランフランコ、ラウル・ベアス
10月10日(土)10月10日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
フランス、チリ、スペイン、2010年、スペイン語・英語、82分、配給/アップリンクhttp://www.uplink.co.jp/nostalgiabutton/

by Mtonosama | 2015-10-07 06:18 | 映画 | Comments(6)