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殿様の試写室

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ボーダレス
ぼくの船の国境線
-2-
Bedone Marz
Borderless

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© Mojtaba Amini


イランとイラクの国境を流れる川に
30年以上放置されたままになっている一艘の廃船が映画の舞台。

30年前、イラン・イラク戦争時に壊され、
それ以来そのままになっている船です。
映画と現実がそのまま連動しているかのようです。

この映画、主な出演者は3人だけ。
1人は廃船の中で逞しく生きる少年。
彼はペルシャ語を話します。
もう1人は図々しく乗り込んでくる少年兵。
アラビア語を話すこの子は少年と同い年くらい。
そして、最後に侵入してくるのは唯一の大人であるアメリカ兵。
彼が話すのは英語です。

観客は殆どの場合、字幕に頼って映画を観ています。
もちろん、そうではない方も大勢おられることでしょうが。

お互いの言葉がわからないということでは
観客もこの3人の登場人物と同じです。
どうぞ4人目の登場人物としてこの廃船にご入船ください。

ストーリー
古い船を住みかとし、ひとりで逞しく暮らす少年。
そこに突然国境のあちら側から少年兵が乗り込んでくる。
少年兵は甲板にロープを張り自分の領分とし、
船の備品を勝手に持ち出していく。
少年は怒るが少年の話す言葉は少年兵には通じず、
少年も少年兵の言葉がわからない。
時に銃を構えて威嚇する少年兵。
爆撃音が続いたある日、少年兵が赤ん坊を連れ込む。
赤ん坊を抱いて震える少年兵。
その日以来、2人の間に仲間意識のようなものが生まれた。
そんな廃船にまたまた1人の侵入者が……

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廃船の中で交錯するペルシャ語、アラビア語、英語。
誰も理解できず、話すこともできない言語は無力なものです。
しかし、3人の間には、最初の緊張が消えると、
平和とはいえないまでも微妙なバランスが生まれてきます。
言葉は通じないままですが。

少年兵は実は少女でした(どう見ても男の子にしか見えませんけど)。
2人の間に恋心が生まれるわけではありません。
ただ子どもたちが全力でぶつかり、生きる姿はとても鮮烈です。
唯一の大人である最後の侵入者・アメリカ兵は
故国の家族に想いを馳せながら折れそうな心を支えています。

時代はおそらくは1980年代のイラン・イラク戦争後。
イラン・イラクの国境での三人三様の生活と苦悩。
いまだ終わりを見せない中東の争い。

そこにスポンと切りぬかれたエアポケットのような廃船。
言葉は通じなくても、そこに訪れるひとときの安らぎには吐息がもれます。
少年兵の張ったロープは取り外され、言葉すら必要ないボーダレスな船の中に
癇癪持ちの神以前の世界の在り様を見ることができるような気がします。
例え、それがひとときの世界に過ぎないとしても。

3人の名優たちは全員が素人。
子どもたちは最後まで映画を撮影しているとは気づかず、
自然にふるまっていました。
撮影が終わった後に
「いつ撮影が始まるんですか?」と訊いてきたそうです。

イランにまたすばらしい監督と名作が生まれました。
そして、名優も。







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☆10月13日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

ボーダレス
監督・脚本/アミルホセイン・アスガリ、エグゼクティブ・プロデューサー/モスファ・ソルタニ、撮影/アシュカン・アシュカニ
出演
アリレザ・バレディ、ゼイナブ・ナセルポァ、アラシュ・メフラバン、アルサラーン・アリプォリアン
10月17日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2014年、イラン、102分、配給/フルモテルモ、http://border-less-2015.com/

by Mtonosama | 2015-10-13 05:10 | 映画 | Comments(10)