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殿様の試写室

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もうひとりの息子 -2-
Le fils de l’Autre

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(C)Rapsodie Production/ Cite Films/ France 3 Cinema/ Madeleine Films/ SoLo Films

「そして父になる」を観た後に、本作を試写状で知った時、
これはとても政治的な映画じゃないかなぁと思いました。
それにあり得ない設定ではないかという疑問はなかなか拭いきれませんでした。

しかし、監督が語る
《人が生きてきた場所がその子ども時代や親と子の関係にどう繋がってくるのか》
という問題はきわめて普遍的ではあります。

自身ユダヤ人であり、その家族の多くを強制収容所で失った監督が
この問題を追及するためにイスラエル人とパレスティナ人の赤ん坊取り違えを背景に
映画を撮ることには日本人が考える以上に正当性があるのかもしれません。

その際、重要なのは
「わたしはユダヤ人ですが、イスラエル人ではありません。この2つは違うものです」
という言葉です。

さて、いったいどんなお話なのでしょうか。


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ストーリー
シルバーグ家はテルアビブに暮らしている。
父アロンはイスラエル国防軍大佐で両親はフランス人。母オリットは医師でフランス出身。
18歳になった長男ヨセフの将来の夢はミュージシャン。
末っ子のカレンはお人形遊びに夢中な女の子。ごく普通の家族である。
18歳のヨセフは兵役検査を迎えていた。
友人たちの多くは兵役を嫌っていたが、ヨセフは早く一人前になりたいと検査を受ける。

数日後、血液検査に手違いがあり、再検査をすることになった。
ヨセフと両親の血液型が違っていたのだ。

18年前、オリットは当時住んでいたハイファの病院でヨセフを出産。
その病院から知らされた事実に彼女は言葉を失う。
1991年湾岸戦争の頃、ミサイル攻撃を恐れた病院は新生児を安全な場所に避難させた。
保育器の中にいたのはヨセフともう一人の赤ん坊。
その翌日、オリットに戻された子どもはもう一人の赤ん坊だったかもしれないというのだ。

オリットと夫アロンはハイファの病院に向い、
取り違えられた子どもの親がパレスティナ人夫婦であることを知る――

DNA検査の結果、取り違えの事実は確定した。
アロンは部屋を飛び出し、一方のアル・べザズ夫妻もショックを隠しきれない。
妻ライラは流れる涙を抑えきれず、夫のサイードも部屋を出ていった。
部屋に残った二人の母オリットとライラは互いの息子たちの写真を見せあい、
“本当の息子”たちの姿を確認するのだった。

アル・べザズ家はイスラエルに占領されるずっと前から
ヨルダン川西岸地区に暮らすパレスティナ人である。
今は高い塀に囲まれて村を出ることもできない。
父サイードはエンジニアだったが、塀の中では車の修理工の仕事しかなかった。

ライラは18年前ハイファに住む夫の姉夫婦を訪ねた際に次男のヤシンを出産。
幼い頃から優秀なヤシンは、パリに移住した姉夫婦に頼み、高等教育を受けさせていた。
医師をめざし、バカロレアにも合格したヤシン。村に病院を建てたいと夢見るヤシン。
そのヤシンが自分たちの子ではなかった――

休暇で故郷に帰ってきたヤシン。
厳しい検問を受け、帰郷したヤシンに両親は真実を告げることができない。

一方、ハイファの病院からヨセフがパレスティナ人であると知らされた
イスラエル内務省はヨセフの兵役を取り消す。
動揺するヨセフにオリットは真実を告げる……


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取り違えの事実を知り「僕も爆弾のベルトを巻きつけるのか!」と動揺して叫ぶヨセフ。
ヤシンの本当の両親がイスラエル人であることを受け入れられない父サイードと兄ビラル。

イスラエルとパレスティナの複雑な関係を背景に、
それぞれの息子とそれぞれの家族の苦悩と葛藤が描かれていきます。

と同時に、さりげなくスクリーンに映し出される塀に囲まれた西岸地区の様子。
世界中どこにでも見られるおじいさんやおばあさんたちの路上でのおしゃべり。
そして、元気に遊ぶ子どもたちの姿。
楽しそうですし、穏やかな情景です。

ですが、ヤシンの兄ビラルのような青年たちも塀の内側で所在なげに一日を過ごすしかないのです。
分離壁に囲まれた狭い空間で無為に過ごす青年たち。
ヤシンの父サイードもエンジニアでありながら、稼ぎの少ない自動車修理工しかできない現状。
仕事もなく、本屋も、クラブもない。
となれば、若い人々のイスラエルへの敵意は増すばかりではないでしょうか。

映画は救いのあるラストを迎えますが、この塀の中の生活に思わずため息が出ました。
塀の中の砂色の空間。
一方、テルアビブの緑溢れる豊かな街並み。
政治的な背景やテーマ以外で語りかけてくる部分が大きい映画です。
なんていうか、おまけの部分の情報が豊富でした。

イスラエルとパレスティナのどちらが正しいか否か、ではなく、
生まれてから死ぬまで塀の内側で暮らすしかない日々の重さを考えなさいと言われているような気がしました。





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☆10月11日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆

もうひとりの息子
監督/ロレーヌ・レヴィ、脚本/ナタリー・ソージョン、ロレーヌ・レヴィ、ノアム・フィトシ、原案/ノアム・フィトシ、撮影監督/エマニュエル・ソワイエ、製作/ヴィルジニー・ラコンプ、ラファエル・べルドゥゴ
出演
エマニュエル・ドボス/母オリット、パスカル・エルベ/父アロン、ジュール・シトリュク/息子ヨセフ、マハディ・ザハビ/息子ヤシン、アリーン・ウマリ/母ライラ、ハリファ・ナトゥール/父サイード、マフムード・シャラビ/兄ビラル、プリュノ・ポダリデス/医師ダヴィッド、エズラ・ダカン/ユダヤ教のラビ
10月19日(土)シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー
2012年、フランス映画、105分、フランス語、ヘブライ語、アラビア語、英語、協力/ユニフランス・フィルムズ、配給/ムヴィオラ、http://www.moviola.jp/son/

by Mtonosama | 2013-10-11 06:55 | 映画 | Comments(6)