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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

収容病棟 -2-
瘋愛
TILL MADNESS DO US PART

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(C)Wang Bing and Y. Production


中国の精神病患者1億人を超える――

2009年に中国当局の精神衛生センターが発表したデータを引用し、
多くのメディアが報じました。
1億人。
これが多いのか、そうでないのか。

急激な経済の発展によって、価値観が混乱し、貧富の差も拡大したことが、
この国で精神病患者が増大した要因とも言われています。

2010年に刊行された政府系の雑誌によれば、
中国では多くの精神病院は衛生部ではなく、公安の管轄下にあるといいます。
この国の精神病院の目的は精神病者を収容隔離し、
さまざまな事件など社会問題を減らすことだからです。

治療よりも収容なのだと。

精神病という名目で陳情者や一人っ子政策の違反者など《不都合な人物》も
収容されることもあります。

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1億人。
収容者が1億人という見方をすれば、
精神病患者1億人という数がはたして多いのか、少ないのか、わかりません。

4時間に及ぶ本作には確かに病んでいる人も登場しますが、
そうでない人もいるように見えます。

しかし、誰もがなんらかの心の問題を抱えているのですから、
専門家でもない自分が、あの人は精神病だけど、この人は違うなどとは言えません。

本作の舞台となった病院は雲南省北西部にあります。
収容者は17歳から60代まで。
年長者の中には20年以上収容されている人もいます。

病院の1日は朝7時半の朝食に始まり、10時に1回目の投薬と注射。
11時半に昼食、16時半に夕食。17時に2回目の投薬と注射。
それ以降は自由で就寝時間も自由です。

映画には病院の通路を歩きまわる患者たちの姿が映し出されます。
清潔とはいえない病室にベッドが8台。
寒いからなのか、人恋しいからなのか、他の患者のベッドにもぐりこむ収容6年目の口のきけないヤーパ。
収容1ヶ月目のインはここでの生活にまだ慣れることができず、
夜間、家に電話をかけたくてドアを蹴飛ばし、手錠をかけられてしまいました。
ウーは収容3年目。文字の読み書きができず、記憶障害があるまだ10代の青年です。

カメラは患者の姿を追い、病室や病棟を映し出します。
スクリーンに向い、カメラと同じく患者の姿を追っている観客も
水のこぼれた不潔な廊下や病室に困惑しつつ、
なぜか彼らと一体化しているような気分になっていきます。
「ああ、イヤだ、イヤだ。いつまでここにいなくてはならないのか、早く出たい」と
思う頃、前編終了。

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そして、後編。
あいかわらず人のベッドにもぐりこむヤーパ。
食べ物を持って面会に来る奥さんと会話する収容12年目のマー。
階下の女性患者と鉄製の格子ドア越しに心を通わせる収容9年目のプー。

観客が待ち望んでいた病院外に出られるときがきました。
収容11年目のジューが帰宅できることになったのです…

「わーい、外だ、外だ」と光景の変化に喜ぶも、延々と続くうらさびれ荒廃した村の景色。
夕陽に向ってジューのこわばったような背中が痛々しく見えます。
久しぶりに帰宅するのだから、さぞ歓迎されるのだろうと思いきや、
ジューの母親の言葉に心が冷えます。中国の抱える闇に今さらながら気づきます。

汚い病院の壁といつも湿った回廊。
観客は4時間経てば、この絶望から解放されますが、
収容者たちはずっとこの現実に向いあっていかなければならないのですね。

2013年1月から4月まで、ワン・ビン監督は毎日もう一人のクルーと撮影しました。
終わりの見えない日常の繰り返し。退院しても暖かく迎えてくれる家族もいない現実。

精神病院という素材を通して、中国の抱える思い現実も見えてきました。





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収容病棟
監督/ワン・ビン、撮影/ワン・ビン、リュウ・シャンフイ、編集/アダム・カービー、ワン・ビン、音響/チャン・ムー、プロデューサー/ルイーズ・プリンス、ワン・ビン、共同プロデューサー/武井みゆき、ワン・ヤン、製作/Y.プロダクション、共同製作/ムヴィオラ、フォーリ・オラリオ、ライ・シネマ
6月28日(土)[シアター]イメージフォーラムにてロードショー
2013年、香港・フランス・日本、237分(前編122分、後編115分)、中国語(雲南語)、字幕翻訳/武井みゆき、監修/樋口裕子、配給/ムヴィオラ、http://moviola.jp/shuuyou/

by Mtonosama | 2014-06-19 05:53 | 映画 | Comments(8)
収容病棟 -1-
瘋愛
TILL MADNESS DO US PART

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(C)Wang Bing and Y. Production


邦題は『収容病棟』。
オリジナルタイトルは『瘋愛』、そして、英語タイトル『Till madness do us part』。
「瘋」の字と”madness”から想像はつきますが、
中国雲南省にある精神病院とそこに収容された人々を描いたドキュメンタリー映画、
ワン・ビン(王兵)監督の最新作です。

ワン・ビン監督といえばものすごく長いドキュメンタリー映画を撮る監督です。


1999~2003年『鉄西区』
545分。三部構成で9時間5分という超大作です。
山形国際ドキュメンタリー映画祭2003大賞
2002年リスボン国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ
2003年マルセイユ国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ
      ナント三大陸映画祭ドキュメンタリー部門最高賞

2007年『鳳鳴(フォンミン)―中国の記憶』
183分。
2007年カンヌ国際映画祭コンペ部門公式出品
2007年 山形国際ドキュメンタリー映画祭2007大賞

2007年『暴虐工廠』
16分
オムニバス『世界の現状』(101分)の1編
2007年カンヌ国際映画祭コンペ部門公式出品

2008年『原油』
840分
2008年ロッテルダム国際映画祭公式出品
2007年香港国際映画祭出品
2007年トロント国際映画祭出品

2009年『石炭の金』
53分
2009年シネマ・ドゥ・リール国際映画祭出品

2009年『名前のない男』
96分

2010年『無言歌』
109分
2010年ヴェネチア国際映画祭特別招待
2010年トロント国際映画祭公式出品
2011年ラスパルマス国際映画祭観客賞、特別審査員賞、カトリック映画賞
2011年キネマ旬報外国映画ベスト・テン第4位
2011年キネマ旬報外国映画監督賞

2012年『三姉妹~雲南の子』
153分
2012年ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門グランプリ
2012年ドバイ国際映画祭アジアアフリカ・ドキュメンタリー部門最優秀監督賞
2012年リスボン国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ
2013年ナント三大陸映画祭グランプリ(金の気球賞)、監督賞
2013年フリブール国際映画祭グランプリ、国際映画連盟賞、全キリスト協会賞、青年審査員賞
2013年キネマ旬報外国映画ベスト・テン第5位

2013年『収容病棟』
237分
2013年ヴェネチア国際映画祭特別招待
2014年ナント三大陸映画祭準グランプリ(銀の気球賞)

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本作『収容病棟』は『原油』840分や『鉄西区』545分には及ばなくとも、
237分、ほぼ4時間ですから相当な長尺です。

とのはワン・ビン監督作品としては彼の初の劇映画『無言歌』と
http://mtonosama.exblog.jp/16898004/  http://mtonosama.exblog.jp/16910634/ 
『三姉妹~雲南の子』を
http://mtonosama.exblog.jp/19368187/  http://mtonosama.exblog.jp/19386308/ 
観ましたが、彼の3時間越えのドキュメンタリーは初挑戦です。
エイヤッの勢いで観てきました。

いやいや、長い上に精神病院が舞台。
これは覚悟が必要でした。

しかし、『無言歌』では埋もれた歴史を掘り起こし、
『三姉妹~雲南の子』で悲惨な貧困を伝えてくれたワン・ビン監督です。

例え、どんなに上映時間が長くても、暗く重い内容でも、観せていただかねばなりません。

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精神病院がテーマの作品といえば、以前、当試写室でもご紹介した
想田和弘監督の『精神』や 
http://mtonosama.exblog.jp/11123248/ 
世界に先駆けて精神病院を廃止したイタリアの実話に基づいた映画「人生、ここにあり!」http://mtonosama.exblog.jp/16327490/  http://mtonosama.exblog.jp/16340981/
などがあります。

『精神』は患者さんの名前も顔もはっきりとわかり、「え、いいの?」と
観客として深く考えさせられる作品でした。
新しい形の精神病院の紹介であると同時に、
私たちが知らず知らずの内に抱いている偏見への大きな問題提起でもありました。

が、しかし、
本作『収容病棟』は――

2010年に《中国の精神病患者が1億人を越えた》と新華社系列の週刊誌が報道しました。
この数字をどう見ればいいのか――

上映時間4時間の内に中国の抱える問題がなんとなく見えてきたような気がします。

続きは次回までお待ちくださいませ。



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収容病棟
監督/ワン・ビン、撮影/ワン・ビン、リュウ・シャンフイ、編集/アダム・カービー、ワン・ビン、音響/チャン・ムー、プロデューサー/ルイーズ・プリンス、ワン・ビン、共同プロデューサー/武井みゆき、ワン・ヤン、製作/Y.プロダクション、共同製作/ムヴィオラ、フォーリ・オラリオ、ライ・シネマ
6月28日(土)[シアター]イメージフォーラムにてロードショー
2013年、香港・フランス・日本、237分(前編122分、後編115分)、中国語(雲南語)、字幕翻訳/武井みゆき、監修/樋口裕子、配給/ムヴィオラ、http://moviola.jp/shuuyou/

by Mtonosama | 2014-06-16 06:08 | 映画 | Comments(6)
三姉妹 ~雲南の子  -1-
三姉妹

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(C)ALBUM Productions, Chinese Shadows

数年前、中国を訪れました。
九寨溝に行く途中のことだったと思います。
三蔵法師ご一行が歩いたような風景の中を進むバスの窓から、
いくつかの穴をうがった岩山が見えました。
ガイドさんは「あの穴に住んでいる人たちがいるんですよ」と説明してくれました。

この荒野に入る最後に見た街が、煌びやかな上海だったこともあって、その落差に驚きました。
中国では、行くたびになにかしらのカルチャー・ショックを体験させられます。

しかし、この映画では更に驚かされました。
2年前、当試写室で上映した「無言歌」の王兵(ワン・ビン)監督の
http://mtonosama.exblog.jp/16898004/ http://mtonosama.exblog.jp/16910634/
最新ドキュメンタリー映画「三姉妹 ~雲南の子」のことです。

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雲南といわれて連想するのは、
昆明、麗江、鄙びた街の風情、トンパ文字、少数民族のあでやかな衣装――
そんなイメージが先行し、一度行ってみたいものだと憧れていました。

本作「三姉妹 ~雲南の子」が撮影されたのは雲南省の海抜3200メートルに位置する
洗羊塘(シーヤンタン)村というわずか80戸の家族が暮らす寒村。
中国で最も貧しい地域のひとつです。
雲南省はここ10数年の間に開発が推進されていますが、
洗羊塘村は高地のため、インフラも整備されず、電気が通ったのも中国で一番遅かったという村。

3200メートルという高地ゆえ、ジャガイモだけが、収穫できる唯一の食物です。
村の真ん中には、この近辺の唯一の飲み水である小さな川が流れ、
ジャガイモを植えたり、わずかばかりの家畜を放牧するくらいしか産業はありません。
何千年も前からほとんどその暮らしは変わっていないように見えます。
もちろん空気はきれいですし、山々も雄大です。
聞こえる音は吹き抜ける風の音くらいのもの。
環境破壊もなく、なにもかも昔のままが良いというなら、最高の土地でしょう。

しかし、壮大な自然は人を拒むものです。

雲南では、高地に暮らす人々の貧困を解決するため、低地への全村移住計画が進められています。
洗羊塘(シーヤンタン)村も既に移住が決まっているのですが、
どこへ、いつ、移住するのかは誰も知らされていません。

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本作で描かれるのは
10歳のインイン(英英)、6歳のチェンチェン(珍珍)、4歳のフェンフェン(粉粉)の三姉妹。
姉妹ですから女の子です。
おねえちゃんのインインは女の子に見えますが、下の二人も女の子なんですよ。

でも、中国は一人っ子政策をとっているのに三姉妹って?

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農村部や少数民族の地域では例外もあるということ。
漢民族の伝統に従うと、男子が親の面倒を見ることになるので、
特に農村部においては、労働力として、また、家の跡継ぎとして男児の出産を希望する農民が多いのです。
(革命を経てなお、このような考えが根付いているというのは!)
この三姉妹の家でも、上2人が女の子だったので、3人目こそは男子を、と願ったのに
またも女の子が生まれたということなのでしょう。

一人っ子政策の国に生まれた三姉妹。
さあ、この子たちはいったいどんな生活を送っているのでしょうか。
続きは次回に。
しばしお待ちくださいませ。



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三姉妹 ~雲南の子
監督/ワン・ビン、撮影/ホアン・ウェンハイ、リー・ペイフォン、ワン・ビン、録音/フー・カン、編集/アダム・カービー、ワン・ビン、製作/シルヴィー・ファグエ、マオ・ホイ
5月25日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードーショー
仏・香港合作、2012年、153分、配給/ムヴィオラ、字幕/樋口裕子、http://moviola.jp/sanshimai/

by Mtonosama | 2013-05-11 06:55 | 映画 | Comments(2)