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                        (c)ドキュメンタリー・ドリームセンター
長江に生きる 秉愛(ビンアイ)の物語
秉愛

一昨年、青蔵鉄道でチベットへ行きました。西寧からラサまで車内で一泊しての列車旅行です。
西寧を出てしばらくすると空が夕陽に染まり、広大な大地に大きくうねる河が見えてきました。
長江です。長江の源流です!
それは、巨大な龍が金色に染まった大地を這い、今にも空へ駆けあがろうとしているかのようでした。

その龍はさらに成長し、滔々と流れ続けます。
周囲には何千万の民が豊かな水の恩恵を受けつつ、
貧しくとも地を耕すものの誇りを胸に刻み、数千年も暮らしていました。
でも、それは三峡ダムができるまでのこと。

総工費300億ドルをかけた国家プロジェクトである三峡ダムは2009年、いよいよ今年、完成します。
ダム建設によって、140万人の住まいと田畑がダムの底に沈みました。
この映画の主人公秉愛(ビンアイ)も140万人の内のひとり。

三峡ダムの底に沈む話はすでにいくつもの映画になっています。
この映画もそうした作品のひとつではあるのですが、主人公は一人の普通の農婦・秉愛(ビンアイ)。
監督は彼女に七年間密着して撮影し続けました。
秉愛は中国国家プロジェクトにのみこまれてはしまいますが
農地を失うという不条理に最後まで逆らい続けます。
偉そうな村の小役人に必死にくらいつきます。
早口にまくしたて、あるいは哀願し、抵抗します。

「長江に生きる 秉愛(ビンアイ)の物語」は長江の雄大な流れを背景に
七年にわたる秉愛一家の日々を綴ったドキュメンタリー映画です。

撮影したのは馮艶(フォン・イェン)。
天津の大学で日本語を学んだ後、日本に留学、京大大学院博士課程で農業経済学を研究した女性です。
そんな人が何故映画を?
そうなんです。
実は、彼女、1993年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で小川紳介に出会ってしまったのです。

             小川紳介。ある世代の方々にはとても懐かしい名前のはず。
             三里塚闘争を記録したドキュメンタリー映像作家です。
             あ、三里塚というのはあの成田空港の成田のことですが。

        馮艶(フォン・イェン)監督が出会ったのは彼の語りを収録した
        『映画を穫る――ドキュメンタリーの至福を求めて』(山根貞男編集・筑摩書房)
        これに感銘を受け、中国語に翻訳し、台湾で出版。
        その後、写真とビデオ制作を学び、ドキュメンタリー製作を始めました。
        人の人生って、なにがきっかけで変わるか、わからないものです。

秉愛(ビンアイ)は長江のほとりで二人の子どもと病弱な夫と暮らす働き者の元気なかあさん。
生活は楽ではないけれど雄大な長江はいつも彼女の眼の前を流れています。
若い頃、秉愛にも恋人がいました。
でも、父親にいわれて今の夫と結婚。
その時の父の言葉を彼女はよく覚えています。
「ビンアイや、畑仕事に必要なのは水だよ。あいつと一緒になれば一生水に苦労することはないさ」
なのに、突然の移住命令。
秉愛の家はダムの底に沈むから出ていけ、というのです。
村の役人たちがやってきて、脅したりすかしたりして秉愛たちを追い出しにかかります。
補償金をもらって早々と都会に出て行った村人たちもいますが
秉愛は、この地の、この畑を耕し、二人の子どもを育ててきたのです。
そうそう国のいいなりにはなっていられません。
そんな姿勢を七年間貫き通してきたのですが…

        秉愛(ビンアイ)は典型的な中国農村部のおっかさん。
        14年前に馮艶(フォン・イェン)監督が初めて彼女に出会ったとき、
        「カメラなんか持ってないで畑仕事を手伝ってよ」と言われてしまったそうです。
        監督はそんな秉愛と長い時間をかけて信頼関係を築きあげてきました。
        今の私たちにとっては少し不思議なのですが、
        秉愛という人は、お金のためとか、楽な暮らしをするためとかのために
        働いているのではありません。
        「なぜそんなに働くの?」などという質問は彼女には無意味です。
        働くことが生きること。小賢しい理屈なんておかしくって、というところです。
        頑なだけど、中国4000年の歴史の心棒が、長江の雄大な流れが、
        彼女の中にはまっすぐ通っています。
        秉愛と知り合いになりたいなって思ってしまいました。


「長江に生きる」
制作・監督/馮艶(フォン・イェン)
出演
秉愛(ビンアイ)
3月7日(土)より27日(金)渋谷ユーロスペースにてロードショー
www.bingai.net
by mtonosama | 2009-02-20 06:27 | 映画 | Comments(8)