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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

イエローキッド

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          イエローキッド

若いと呼ばれることがなくなって早や?年。
周囲の若い人といえばコンビニや○タバや○ックで
マニュアル通りに働くお行儀の良い人ばかり。
お客さんとしてチヤホヤされている内に、若い人たちが何を考え
何をほしがっているのか、わからなくなってしまっていました。

そんなご老体にガツンと喰らわせて走り去っていったのが
この「イエローキッド」です。

真利子という名前のような姓を持つ新人監督・真利子哲也さんの
初長編監督作品「イエローキッド」。
東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作作品です。
ま、卒論ですね。
あ、大学院だから修論ですか。
監督は1981年生まれの28歳。スタッフも平均年齢26歳の同大院生。
若い人たちがつくった映画です。

芸大の映像研究科というのは、学部を持たない独立大学院なのだそうです。
修士課程と博士課程を有しており、平成17(2005)年に設置された映画専攻から始まり
メディア映像専攻、博士課程の設置を経て、平成20(2008)年にはアニメーション専攻を設置しました。
http://www.fnm.geidai.ac.jp/fnm/index.html

北野武監督や黒沢清監督などを教授に迎えて発足したこの学科。
真利子哲也さんは2009年3月に2年間の修士課程を修了した第3期生にあたります。
監督・脚本・製作・撮影・美術・録音・編集の各専門分野を2年間で
実践的に学ぶとあって、カリキュラムは実作重視。
在学中の2年は映画制作に明け暮れるのだといいます。
第3期修了作品は5本制作され、今年6月ユーロスペースで上映されました。
もうご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。

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ストーリー
ボクサー志望の田村は認知症の祖母の面倒を見ながら、都会の片隅に暮らしている。
バイトもクビになり、ボクシングだけが心のよりどころという金も希望もない若者だ。
そのボクシングジムでもタチの悪い先輩榎本に抑えつけられる日々を送っている。
ある日、田村の通うジムへ服部という漫画家が現れる。
服部は「イエローキッド」という漫画のモデルとして
かつての同級生で元アマチュアボクシング世界チャンピオンの三国を
取材するためにやってきたのだ。

悪い先輩・榎本は田村に服部の財布を盗ませようとする。
ところが、田村が財布ではなく、漫画の原稿を盗んでしまったことで
榎本にこてんぱんに傷めつけられる。

原稿を盗んだことを服部に詫びる田村。
実は、田村は「イエローキッド」シリーズのファンだったのだ。
それを知り、服部は田村を「イエローキッド」の主役にすることに決める。

田村をヒーローにして漫画を描き始める服部。
そして、田村は…


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眉毛を剃ったお兄さんが怖い。
主人公は性悪な先輩にやられっぱなし。
漫画家はじと~~とした、いかにもオタクな青年。
一見、頼り甲斐のありそうなボクシングジムの会長も的外れ。

暗いトーンや横浜の夜景の中に折々展開するアメリカンコミックスの原色の世界。
「ふ~ん、さすが芸大だね」と若干引き気味に鑑賞しつつ
心中、「ここまでとことん暗い若さってなぁ」と反感をいだいた殿。

しかし、はっと気付きました。
若い時って何もかも絶望的にとらえて、自分で自分を追い詰めていくんじゃなかったっけ。
そういえば、自分もそうだったような。

それが、年齢という図々しさの鎧で身を固め、知恵もついて
だんだん逃げ道もわかるようになっていた自分。

そうだ。こんな映画、昔観たことがあるような。
ATGだ。アート・シアター・ギルドの作品です。
「初恋・地獄篇」(脚本/寺山修司、羽仁進、監督/羽仁進、‘68)とか
「あらかじめ失われた恋人たちよ」(脚本/清水邦夫、田原総一朗、監督/田原総一朗、清水邦夫、'71)とか。イエローキッド_f0165567_1434533.jpg
よく理解できないまま、背伸びして観たものでした(と、遠い目をする)。
また、「どうだ。わからんだろう」と挑戦的な映画も多かった時代でしたねぇ。


「イエローキッド」は卒業制作ですが
大きなスクリーンで上映されることを考慮に入れて撮影されました。
観客への視線も忘れてはいないところがいいです。
だからでしょう。
「New Director/New Cinema 2010」の第1回作品に選ばれました。

「New Director/New Cinema 2010 by シネマ・シンジケート」は
その年に公開される、今後の活躍が最も期待される新人監督の作品を
全国の独立系映画館の方々の推薦により選出。
映画館大賞(http://eigakantaisho.com/)を運営するシネマ・シンジケートの
加盟館を中心とした広いネットワークで全国公開していくプロジェクト。

いってみれば「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」みたいなものでしょうか。

映画会社に入って、一から映画づくりを学ぶことは難しい今
こんな風にして若い映画人が育っていくというのはいいことですねぇ。
でも、その前に、観客として、もっともっと映画館に足を運びたいものです。

殿の地元から映画館が消え、隣接の街にあった映画館も最早風前のともしび。
昔から街に密着してあった映画館、どうぞがんばってください。

イエローキッド
監督/真利子哲也、プロデューサー/原尭志、撮影監督/青木穣、漫画製作/大脇勇亮、川崎秀和
出演
遠藤要/田村(ボクサー志望の青年)、岩瀬亮/服部(漫画家)、波岡一喜/三国(元チャンピオン)、町田マリー/麻奈(服部の元恋人)、玉井英棋/榎本(田村の先輩)、三浦力/橋本(田村の先輩)、でんでん/ボクシングジムの会長、小野敦子/澄代(田村の祖母)
2010年1月30日(土)ユーロスペースほか全国順次ロードショー
2009年、日本、106分、配給/ユーロスペース


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by mtonosama | 2009-12-13 06:50 | Comments(9)
Commented by mtonosama at 2009-12-13 19:25
すいません。試写室の主です。
一番上の怖い顔したおにいさんは2枚目の黄色いグローブを
つけた人の良さそうなおにいさんと同一人物です。
一番上の怖い顔に変わっていくシーンが凄かったですよ~。
Commented by ライスケーキ at 2009-12-13 21:34 x
何かオタクっぽい暗い映画ですね。  「若いときは何もかも絶望的にとらえていた」のですか。  私などノーテンキに過ごして参りましたので、将来は暗くても若い時くらい明るく生きたいと思うのです。
今の若者にはムリなのかな。  田村クン、ヒーローになってどうなったのでしょうね。
Commented by すっとこ at 2009-12-14 04:03 x
若い時はなにもかもが絶望へ長い放物線を
描いていました。自分を持て余してどうしていいか
わかりませんでした。

絶望という名の青春、
同感同感同感同感!もひとつおまけに同感なり!!
「青春が美しいって誰が言った?」な辛い時期でした。
どこまで行ってもどっちへ行ってもまっくら闇でした。

そのことを とんと最近忘れておりました。
ATG・・・・懐かしや。

あ、これは絶対に他の誰かとは行きたくない。
もし連れがあるとすれば
”あの頃の淋しい後ろ姿の自分”だな。
そんな自分とふたりなら観に行きたいな~。

殿様、ありがとう。
青春を忘れていた今の私に平手ウチ喰らわせてくれて。
Commented by mtonosama at 2009-12-14 06:05
ライスケーキさん

楽しい青春時代だったんですね。

青春は春ですが、青いんですよね。
蒙古斑の青さもあるかもしれませんが
影の青さもあるのかもしれません。
「青春の光と影」プロコルハルムですよ(ふるっ)。
Commented by mtonosama at 2009-12-14 06:09
すっとこさん

おお、ご同輩!

若いころは自分の若さにもいらだっていたのでしょうか。

自分をいためつけることで、
生きている実感を得ようとしていたような。

なんかMな時代でもありました。
Commented by TSUGUMI at 2009-12-14 10:43 x
私学生のころ貧乏だったのでアルバイトにせいだし、あまり勉強してなかった。。
何もかも絶望的にとらえて、自分で自分を追い詰めていくなんて考えもしなかった能天気な若者でした(爆)
Commented by mtonosama at 2009-12-14 14:31
Tsugumiさん

わたしも薬の箱詰めアルバイトしました。
これは楽チンな上に、結構稼げてよかったなぁ♪

でも、神様が「もう一回18歳に戻らせてあげようか」って
言ってくれても、「もういいです」と答るだろうなぁ…
Commented by すっとこ at 2009-12-14 21:34 x
おお!「あらかじめ失われた恋人たちよ」
の写真だ!清水邦夫の脚本だよね。
これ、わざわざ英語副題もついてて
Long Lasting Loversだったんだよ。
当時一生懸命辞書引いて
「永遠に続く恋人達」みたいな意味なんじゃないの?
それを「あらかじめ失われた」とは
そこまでヒネ(くれる)の?と思った覚えがあるよ。
今、書いていてLLLなんだなあ・・・それだどーしたよ、
と改めて思っちゃいました。

すっとこももう一度18歳にはnever ever戻りたくないな。
やっとこすっとこ、この年まではるばる来たんだよ。あはは。
Commented by mtonosama at 2009-12-15 05:25
あはは、すっとこさん。おんなじだね。
ほんと、LLLだ。

画像、向かって右から加納典明、桃井かおり、石橋蓮司。
みんな若いよね。
石橋蓮司なんて今、一刻者の爺さん役とかやってるけど
この写真かわいい。
桃井も若いね。

by Mtonosama