オカンの嫁入り -2-
©2010『オカンの嫁入り』製作委員会
年頃の娘をさておいて、結婚するのは母親。
そして、その相手は娘との歳の差5つの30歳!
金髪!
えぇぇぇぇえ!
なんでやねん!
オカン、結婚するのは勝手だけど、ちょっと相手が若過ぎない?
それにパツキンはないっしょ。
パツキンとは金髪(きんぱつ)の倒語(註参照)で、
金髪及び金色や明るい茶色の髪の人をさす。
髪をこう した色に染めた日本人をパツキンと言うこともあるが、
多くはブロンドヘアをした白人の代名詞として使われる。
また、金髪女性の場合はパツキン美女、金髪男性の場合はパツキン野郎など、
後ろに性別を表す代名詞を付けるが、パツキンだけの場合、女性をさすことが多い。
註)倒語とは前後をひっくり返した言葉で、現代では業界用語としてよく聞かれる。
主な倒語にワイハー(ハワイの意)、まいうー(美味いの意)がある。 (「日本語俗語辞書」より)
とまあ、いきなりド肝を抜かれる設定です。
さあ、咲乃月音さんの小説を、脚本も担当した呉美保監督は
どんな風にして見せてくれるのでしょう。
ストーリー
真冬のある晩、月子の母・陽子は深夜3時に上機嫌でご帰還。(注)永遠の青年、ジェームス・ディーンが映画「理由なき反抗」で羽織った瞬間、
熟睡していた月子は「開けて~」の声にたたき起こされました。
冷たい階段を裸足で降りて玄関を開けると、へべれけの陽子。
そして、玄関のたたきには見知らぬ物体が。
いえ、人でした。月子が一度も会ったことも見たことのない金髪リーゼント、
真っ赤なドリズラージャンパー(注)を着込んだ若い男が酔いつぶれていました。
母は昨日この男にプロポーズされたというのです。
ムカっとくる月子。
なに?このダサいヤンキー。歳は30歳。それに3年も前からつきあってたぁ。
なんで何も話してくれなかったの?
月子は家族同然の大家のサクや、陽子の勤務先医院の村上先生に相談します。
ところが、味方になってくれると思ったこの2人。
月子の意に反して、母の結婚相手・研二をすんなり受け入れてしまいました。
生まれる前に父と死別した月子。以後25年間ずっと母子2人で仲良く暮らしてきました。
母だって、亡くなった父のことを「最初で最後の人やねん」と言ってたのに。
なんやねんな。
今、目の前で元板前の研二がつくった料理をぱくぱく食べてるのが同じ母親とは思えへん。
研二は研二でそんな陽子をうっとりと眺めてるし。
なんやて?今日から一緒に住むぅ?
頭にきて、庭続きの大家のサクの家にプチ家出する月子。
ある日、月子は「あの人のどこがいいのん?」と陽子に訊ねてみました。
「そやなぁ。苦労してんのに、顔に出さずヘラヘラしてるとこかなぁ」
そして、陽子さん、いきなり
「あんなぁ、白無垢着てえぇか?」…
赤いドリズラーは世界の若者の心のユニホームになった。
このドリズラーであまりにも有名な、米国のスポーツ衣料ブランドが「McGREGOR(マックレガー」。
ゴルフ ジャンパーとして今でも手放さない愛用者が多いドリズラーを着ると、不思議と襟を立てて、肩をすくめたくなる。
あのポスターのディーンのように。
「マックレガー」は1921年、「永遠のアメリカンスピリット」をテーマに米国で誕生した。
スポーツスピリットを詰め込んだ「マックレガー」のアイテムは古きよきアメリカンカジュアルを象徴するブランドと言える。
日経WagaMaga http://waga.nikkei.co.jp/comfort/fashion.aspx? i=MMWAg6002020112007
めちゃくちゃな大阪弁でごめんなさい。
オカンの白無垢姿はちょっときびしいものがあるけど、
実は、陽子、明るいだけのお気楽オカンのようでいながら、不治の病を隠していて、
そのことをどうしても月子に打ち明けられずにいたりしました。
月子は月子で会社同僚から受けた1年前のストーカー事件を乗り越えられずにひきこもり、
周囲のみんなも彼女を黙って見守ることしかできずにいました。
でも、50代のオカンのかなり無理のある白無垢姿が、病気のこと、ひきこもりのことを
いやでも表に出してしまいます。
どんなに明るく見えても、
無神経に見えても、
めちゃくちゃやってるみたいに見えても、
普通に暮らしてるように見えても、
人は生きている以上、何かを抱えています。
それがこの映画では、陽子の病気だったり、
月子の1年前のつらい経験だったりするわけですが、
生き続けて行くのなら深刻ぶってばかりはいられません。
何もかも日常性というカーテンで隠し続けていくわけにもいきません。
そのカーテンを開いて、病気や今後の生き方を明るい明かりの下にさらしたできごと。
それが、オカンの嫁入り=白無垢でした。コントラストがあっぱれ!です。
でも、
ホントは、おいしいもの食べて、
冗談言って、
日常生活を普通にのほほんと暮らしていくのが一番いいねん・・・
という本音が見えるみたいに、
森井家のおだし(出し汁)の湯気がこもる暖かい台所が印象的なラストでした。
終
ブログランキングに参加してますねん。
どうぞ、ポチッとお願いします
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
にほんブログ村
♪7月22日に更新しました。いつも応援してくださって、おおきに<(_ _)>♪
オカンの嫁入り
監督・脚本/呉美保、原作/咲乃月音(「さくら色 オカンの嫁入り」宝島社文庫、第3回日本ラブストーリー大賞ニフティ/ココログ賞受賞)
出演
宮崎あおい/森井月子、大竹しのぶ/陽子:月子の母・看護師、絵沢萌子/上野サク:大家、桐谷健太/服部研二:陽子の婚約者・板前、國村準/陽子の勤務先・村上整形外科医院院長、林泰文/本橋信也:月子のかつての同僚、斎藤洋介/佐々木義男:月子のかつての上司
9月4日(土)角川シネマ新宿他全国順次ロードショー
2010年、日本映画、カラー、110分、配給/角川映画
Okannoyomeiri.jp
50代で30歳のパツキン(こんな言葉初めて知った)のお兄さんと結婚したくない。 まぁ相手もいないけど。
不治の病とのことで 人生最後に一花咲かせるつもりかな。
それなら良いね。 ある意味憧れちゃいます。
”日常というカーテン”
にシビレましたです。
さすが殿様、名コピーライター!
日常って、そうよね、カーテンのように
襞もあり風にも揺れるし、思いがけないものが
ぬぅっと顔出すときも
あるかもね。
映画よりこのフレーズに
ノックアウトされちゃいました。
「えぇぇぇぇえ」の箇所、すっとこさんの真似っこしちゃいました。
でも、この「ぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううっ」には負ける(泣)
詩人のすっとこさんにおほめいただくとは光栄至極にて
ござりますぅ。
きっと、今、LAでの生活になじむため、カーテンのすきまから
お外を覗いている日々だから、じゃないですかねぇ。