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隠された日記 ~母たち、娘たち~ -2-

隠された日記 ~母たち、娘たち~ -2-
Mères et Filles

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          © 2009 Sombrero Films - France 3 Cinema - Filmo

列車を降り立つ若い女性。
心なしかうつむきがちなのは、なにか重いものを心に抱えているようです。
ホームでは小太りの優しげな老人が今にも腕を大きく広げて彼女を抱きしめようと
待ち受けています。父親でしょうか?
ふりそそぐ太陽の光、物憂げでありながら、安らぎに満ちた波の音が響きます。
フランス南西部、大西洋に面した小さな街アルカション。
女性の名はオドレイ。カナダで仕事をする彼女が休暇を取って故郷へ帰ってきたのでした。

ストーリー
「ママは仕事が忙しくてね」。
言い訳しながら、パパは久しぶりに戻ってきた娘を優しく抱き締めます。
遠いカナダでキャリアを獲得し、仕事も恋も楽しんでいたオドレイが
突然帰郷してきたのは、実は妊娠してしまったからなのでした。
相手はカナダのボーイフレンド、トム。
トムとは良い友達ではあるけれど、結婚するつもりはありません。
母親になることも不安だし、私たちは結婚に向いていない。
それに、なによりもまず仕事を犠牲にしたくはない―――
さまざまな思いから、オドレイは子どもを産むべきかどうか悩んでいました。

実家の一角の医院で、医師として以前と変わらず忙しく働く母マルティーヌ。
オドレイは妊娠していることは打ち明けず、久しぶりの両親との再会を楽しむはずでした。
しかし、この母娘はなぜかいつもぎこちなくなってしまうのです。

翌日、海辺を散歩しているとかつて祖父が住んでいた白い家が
オドレイの目に飛び込んできました。
彼女は患者の出入りが激しい実家ではなく、今は誰も住んでいないこの家で
カナダから持ってきた仕事を片付けながら、過ごすことにします。

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ある日、オドレイはキッチンの棚の奥から1冊の古い日記帳をみつけました。
それは50年前に突然、姿を消した祖母ルイーズの日記帳でした。
そこには丁寧な字で書かれた家族のための料理レシピと、
長女マルティーヌと長男ジェラールへの深い愛、
そして、ルイーズ自身の夢が描かれていました。

    いつも素敵な洋服を着こなしていた美しいルイーズ。
    愛する子どもたちと、ルイーズのことを深く愛してくれる夫、
    何ひとつ不満のない幸せな日々。
    しかし、彼女は家庭だけに縛られるのではなく、仕事を持つことを望んでいました。
    ルイーズは洋装店を営む夫に「あなたと一緒に働きたいの」と懇願しますが、
    夫は「君は家を守っていればいいのだ」と言うばかり。
    1950年代、女性が社会に出ることは難しく、
    ルイーズの小さな望みはすべて好奇の目の対象になったのでした。
    自分らしく生きることを願うルイーズは写真撮影や英会話を習い始めましたが、
    それすらも世間体を気にする夫によって禁じられてしまいます。
    夫と子どもを送り出し、食事を作り、家族のためだけに過ごす
    子どもたちのことも、夫のことも、とても愛しているが、
    この生活が自分にとって本当に幸せなものとは思えない―――
    ルイーズは自分の夢や心に秘めた思いを日記に綴っていたのでした。

ルイーズは子どもたちを愛していたのに、なぜ何も言わずに、姿を消してしまったのか?
そして、なぜ、子どもたちに会いに戻ってこなかったのか?
オドレイには理解できませんでした。

マルティーヌに訊いても何も話してはくれません。
それどころか「家を出ていった人のことなど、どうでもいいわ」と不機嫌になり、
オドレイが家族を捨ててカナダに行ってしまったこと、
未だに独身でいることなどを責め立てるのでした。
またも、言い争いになる母と娘。
カナダに帰る日を3日後に控えたある朝、オドレイは出血します…

祖母、娘、孫娘、女3代の歴史は、そのまま女性の権利と自由獲得の歴史にも通じます。
といってしまうと、なんとも堅いお話になってしまうのですが、
50年という時間はいろいろなものを変えるのに充分過ぎる長さかもしれません。

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学問もなく、手に職をつけることもできなかったルイーズは、
長女マルティーヌには自立した女性になってほしかったであろうし、
母を突然失ったマルティーヌは、その娘オドレイと幸せな日々を送りたかったであろうに、
オドレイは「私の人生はママのものじゃないわ」と反旗をひるがえし、
カナダに行ってしまう―――
3人3様の生き方が時代意識をあらわすと同時に、
結果的には家族としてつながっているんだなぁ、
と安心感を覚えてしまう作品です。

でも、ラストが本当に意外なんです。
ただの女性映画ではありませんよ。あ、そうそう男の影が薄い映画です。
秋の夜長、映画館でお楽しみいただきたい作品です。

                           

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♪9月11日に更新しました。いつも応援をありがとうございます♪

隠された日記 ~母たち、娘たち~
監督/ジュリー・ロペス=クルヴァル 脚本/ジュリー・ロペス=クルヴァル、ソフィー・ハイエ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/マルティーヌ、マリナ・ハンズ/オドレイ、マリ=ジョゼ・クローズ/ルイーズ、ミシェル・デュショーソワ/ミシェル(マルティーヌの夫)、ジャン=フィリップ・エコフェ/ジェラール(マルティーヌの弟)、ジェラール・ワトキンス/ジル(ルイーズの夫)
10月銀座テアトルシネマほか全国順次公開
2009年、フランス・カナダ、フランス語・英語、104分
後援/フランス大使館 協力/ユニフランス
配給・宣伝:アルシネテラン
http://www.alcine-terran.com/diary/

by mtonosama | 2010-09-11 05:01 | 映画 | Comments(6)
Commented by アイスケーキ at 2010-09-11 21:20 x
50年前の女性の置かれた立場はフランスでも良妻賢母だったのね。  そんな世間から飛び出してルイーズは何処へ行ってしまったのでしょう。  「どんでん返し」でその謎が解けるのかな。    見たい。 知りたい。 映画館へ直行~!
Commented by mtonosama at 2010-09-12 05:07
♪アイスケーキさん

そうなんですよ。先日ご紹介した「ドミニク」でもそうでしたね。
女の子はおとなしく、女性は家を守る…

とてもとのにはできませぬ。
いやぁ、この映画は本当にびっくりさせられますよ♪
Commented by Tsugumi at 2010-09-13 17:56 x
良妻賢母私にもできませぬ~~。

結果はDVDで見たいと思います。

見に行けないのはもちろんですがフランス語ですよね。
Commented by mtonosama at 2010-09-13 20:16
♪Tsugumiさん

あ、おかえりなさ~~い!

そうですね。DVDが出るのを待っていてくださいね。
それにしても、Tsugumiさんは良妻ではないですか。
いつも見習わなくては、と思っています(?)

はい、この映画はフランス語です。
Commented by summersail at 2010-09-14 09:47
仕事と家庭,子育ての両立はほんと難しいですよね.それぞれの時代背景とか女性観とか,権利と自由の国と思われたフランスですら意外にも日本と同じようで興味深いですね.意外なラスト,気になります.WOWOWでやらないかな.
Commented by mtonosama at 2010-09-14 14:29
♪summersailさん

コメントありがとうございます。
WOWOWねぇ、まだ当分やらないかと…^_^;

フランスですら、ですよね。
以前、紹介した「ドミニク」のベルギーでも、
結婚すら自由にならなかった、ということを知って驚きました。



by Mtonosama