星の旅人たち -2- The Way
The Way
© The Way Productions LLC 2010
最近、日本人の巡礼者も多いというサンティアゴ・デ・コンポステーラ。
本作の主人公は60歳を過ぎたアメリカ人ですが、
巡礼を続ける内にオランダ人、カナダ人、アイルランド人の道連れができ、
なにやらインターナショナルで愉快な様子ではあります。
四国のお遍路で「同行二人」ということを言いますよね。
とのはまだお遍路さんをしたことはありませんが、
この二人という意味は、例え1人でお遍路していても
いつも弘法大師が一緒に歩いていてくださる、
つまり、弘法さんと二人の道中ということなのだそうです。
なるほど、だから「同行二人」なんですね。
エミリオ・エステベス監督が「同行二人」の意味を知っていたかどうかはわかりませんが、
実は、本作も「同行二人」がキーポイントになっています。
さあ、どんなお話かというと―――
ストーリー
カリフォルニアの眼科医トム・エイヴリーがゴルフを楽しんでいるところに
ショッキングな知らせが届きます。
1人息子のダニエルがピレネー山脈で嵐に巻き込まれ、不慮の死を遂げたというのです。
なぜまたピレネーに?
実は、ダニエルはスペイン北西部サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅にでかけたのです。
トムは、つい先日空港へ送っていったばかりでした。
その時の会話が彼の胸に蘇ります。
「お前と生き方は違うが、私は今の人生を選んだ」と説教口調で言うトムに
「人は人生を選べない。ただ生きるだけなんだ」と答えるダニエル。
二人は決して仲の良い父子ではありませんでした。
フランスとスペインの国境にあるサン=ジャン警察のセバスチャン警部を訪ねたトムは
ダニエルの遺品である大きなリュックを受け取ります。
最初、トムは息子の亡きがらと遺品と共にすぐに帰国するつもりでいました。
ところが、トムはダニエルを現地で荼毘に付し、その遺灰をリュックに収めました。
トムはダニエルの巡礼の旅を引き継ぐ決心をしたのです。
800キロに及ぶ旅は60歳を超すトムにとって決して生易しいものではないはず――
ダイエットのために巡礼に出たと語る陽気なオランダ人のヨスト。
なにやら秘密を抱えたヘビースモーカーのカナダ人女性サラ。
なんとなく同行者となったこの2人。
しかし、トムは彼らに心を開こうとはしないまま、ダニエルの遺灰を撒きながら旅を続けます。
サンティアゴ・デ・コンポステーラへの旅は出会いと別れの繰り返し。
言葉を交わし、同じテーブルを囲んでいても、それぞれの体調に合わせて旅をするので、そのまま別れたり、また、ばったり出会ったり。
次に出会ったのはアイルランド人のジャック。
現在スランプ中の旅行ライターです。
このジャック、オランダ人のヨストから、トムが息子の遺灰を撒きながら巡礼していることを聞き、作家魂がメラメラと燃えてきました。
おしゃべりジャックが、サラにトムの巡礼の理由をしゃべってしまったり、
本を書かせてくれ、とせがんだり――
イライラしたトムはついついワインを飲み過ぎ、留置場に入れられてしまいます。
でも、そんなトムを救ってくれるのも同行者たちでした。
そして、トムは自分が巡礼の旅に出ることになった真相と
1人息子ダニエルとのやりとりを本にする許可を与え、ジャックに話し始めるのでした……
巡礼地のそこここに佇むダニエル。息子と肩を並べ、あるいは、息子の背中を見ながら旅を続ける父親トム。
いいですねぇ。ロードムービーの魅力満載です。
風景の変化、人との出会い、自分をみつめること、そして、光明を見ること――
もうロードムービーの良いとこどりです。
こんなつらいことを人には言えない、これを話すことができる相手は神様だけ、
と思いつめながら深刻な顔をして歩き続けている内に、
ポツリポツリと語り始めているトムを始めとする同行者たち。
まさに「同行二人」なんですね。
1人息子であれ、弘法大師であれ、神様であれ、仏様であれ、
大切な存在と共にあり、守られていると感じられることは大きな救いです。
あ、巡礼映画ではありますが、相容れない父子の融和が美しいラストシーンと共に
胸に迫る作品でもあります。
ああ、旅に行きたいなぁ。
終
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☆5月25日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆
星の旅人たち
監督・脚本・製作/エミリオ・エステヴェス、製作/フリオ・フェルナンデス、デヴィッド・アレクザニアン、撮影/ラウル・ダバロス、A.C.E.、音楽/タイラー・ベイツ
出演
マーティン・シーン/トム、エミリオ・エステヴェス/ダニエル、デボラ・カーラ・アンガー/サラ、ヨリック・ヴァン・ヴァーへニンゲン/ヨスト、ジェームス・ネスピット
6月2日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
2010年、アメリカ・スペイン合作、英語、128分、後援/スペイン政府観光局、NPO法人日本カミーノ・デ・サンチアゴ友の会、提供/ニューセレクト、配給/アルバトロス・フィルム、字幕翻訳/寺尾次郎、http://www.hoshino-tabibito.com/
でも、そんなふうにただひたすら歩くことで、自分とじっくり向き合い、自分のまわりを見つめ直す時間が得られるんでしょうね。このお父さんが、どんなふうに息子と歩いたのか、聖地にたどりついて何を思ったのか、わたしも観てみたくなりました。
サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道はフランスから始まるんですよね。
「サンジャックへの道」ではフランスから出発してました。
「星の旅人たち」もフランスの警察からの出発でしたけど。
poirier AAAさんはポルトガルへいらっしゃる時、スペインを通られるんですね。
遠いですよね。
良い映画でした。
失礼しました!
ヤっちまいました、100歳越えると
こんなお馬鹿を。いや年齢のせいではなく
昔っからそそっかしいんです。
大変に失礼をば致しました。
これから気をつけますね!
スペインでは遺灰を どこにまいても良いのでしょうか。 映画見てないから分からないけれど それなりの所に撒いているんですか。 最後の最後まで全部撒いちゃうのかな?
私散骨考えているので こんな質問ばかりでゴメンなさい。 先日TVで「私の遺灰はエーゲ海に撒いて」と言っている人がいたけど「だれが行くんじゃい」った。
いえいえとんでもない。
当ブログはコメント欄が出しにくいのです。
いつもコメントをありがとうございます。
コメントを励みにしておりますので、これからもお待ちしてます。
100歳超えです。お互いに身体を大切にしましょうぞ。
パパが散骨する場所はきっと息子なら喜ぶだろう場所、
景色の良い場所、いろいろです。
骨をそっと撒く仕草が父の慈愛に満ちていてとても感動的でした。
あ、訂正の件ですが、こちらで訂正すると、
ライスケーキさんではなく私がコメントしたことになってしまうので
そのままにしました。