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殿様の試写室

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少年は残酷な弓を射る -2- We Need To Talk About Kevin

少年は残酷な弓を射る -2-
We Need To Talk About Kevin

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(C) UK Film Council / BBC / Independent Film Productions 2010


高級住宅の一室。大きな窓に白いカーテンがかかっていて、夜風に揺れています。
そして、
膨大な数のトマトが路上にあふれ、つぶれ、群衆も真っ赤に染まっています。
白と赤。映画の冒頭からこんなヴィヴィッドな色彩の対比に幻惑されます。
そして、
いずれも一抹の不安感を予想させます――

という次第で始まる「少年は残酷な弓を射る」。
リン・ラムジー監督の細腕(細くないかもしれないけど)でむんずと襟首つかまれました。


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ストーリー
郊外の古くて小さな一軒家に暮らすエヴァ。
赤いペンキが家の壁にぶちまけられても、近所の人は一言も声をかけてくれない。
見知らぬ女性が街を歩くエヴァの頬をいきなり張り飛ばしていく――

それというのも息子ケヴィンがひきおこした事件のためだった。
雑用係として旅行代理店で働き、少年刑務所に収容されている息子に会いにいく日々。
睡眠薬が手放せない夜を過ごしながら、エヴァは少しずつ過去の記憶に向き合っていく。

若かった頃、エヴァは世界中を飛び回る旅行作家だった。
恋人のフランクリンは旅先まで彼女を追ってきた。
彼は家庭を作り、落ち着いた日々を送ることを望んだ。
エヴァもそれを受け入れ、結婚。やがて妊娠。ひどいつわりに苦しむ。
生まれた子はケヴィンと名づけらたが、彼との生活は苦労の連続だった。

赤ん坊の頃は一日中泣き通し、3歳になっても一言も言葉を話さず、おむつも取れない。
6歳の頃の激しい反抗期。まるで母親への強烈な悪意に満ち満ちているかのようである。
でも、どの時期も夫フランクリンが抱けば泣きやみ、夫が帰宅すれば満面の笑顔で出迎えるケヴィン。
「男の子なんてこんなものさ」。フランクリンはエヴァの訴えを理解しようとしない。

そんな時、2人目の子どもを授かるエヴァ。娘セリアは明るい少女に育つ。
ケヴィンも美しく賢い少年に成長するが、思春期ともあいまってエヴァとの関係は悪化するばかり。
難しい息子との関係に疲れたエヴァにとって娘の存在は大きな救いだった。

ある日のこと、セリアが可愛がっていたハムスターがいなくなり、
キッチンのディスポーザーの中で死んでいるのが発見された。思わずケヴィンを疑うエヴァ。
それからしばらくしてエヴァたちの留守中、セリアが強い薬品を顔にかぶり、
片目を失明するという事故が起きた。エヴァの疑いは確信に変わる。

エヴァの言葉を聞いたフランクリンは妻に失望し、ふたりの関係は冷めていく。
言い争いを耳にしたケヴィンは「僕のせいなんだろ」と言い残し、自室へ。
何度も話し合った結果、もう少しこの生活を続けていくことにする夫婦――

その朝、セリアははしゃぎ、夫も彼女と楽しげに遊んでいた。
起きてきたケヴィンにエヴァは「あと3日で16歳ね。お祝いしましょう」。
「さあ、どうかな。忙しいかもしれない」とケヴィン。
仕事にでかけるエヴァ。それが家族の最後の記憶だった……

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思いもよらない衝撃のラストが待ち構えています。

小説では、エヴァが夫フランクリンに宛てた手紙という形式をとっているそうですが、
映画では手紙ではなく、エヴァの視点と記憶が中心になった構成です。
息子ケヴィンとの関係をどう捉えるか、エヴァなりに苦しみ抜いた結論を出しています。
でも、観客がそれを受け入れられるかどうか。
そして、ケヴィンの心の底にあるものは本当にそれだったのか・・・・・
はっきりいってかなりしこりが残ります。

映像の美しさと少年の美しさ。象徴性に満ちたシーンと構成。
愛に満ちた家庭と少年の内部に溢れる処理しがたい衝動。
一歩先の展開を予測させつつ、じらせる心憎い演出。
家族映画であり、犯罪映画であり、絶妙な心理映画で、恐怖映画であると言いました。
映画としては心ゆくまで満足させられます。

しかし、観終わった後もいつまでも残るこのしこりをどうにかしたいのですが。





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☆6月30日に更新しました。1年の半分がもう終わってしまいますね。いつも応援ありがとうございます☆

少年は残酷な弓を射る
監督/リン・ラムジー、脚本/リン・ラムジー&ローリー・スチュワート・キニア、原作/ライオネル・シュライバー、製作/リュック・ローグ、ジェニファー・フォックス、ロバート/サレルノ、製作総指揮/スティーヴン・ソダーバーグ、クリスティーン・ランガン、ポーラ・アルフォン、クリストファー・フィッグ、ロバート・ホワイトハウス、マイケル・ロビンソン、アンドリュー・オル、ノーマン・メリー、リサ・ランバート、リン・ラムジー、ティルダ・スウィントン、撮影/シーマス・マッガーヴェイ
出演
ティルダ・スウィントン/エヴァ、ジョン・C・ライリー/フランクリン、エズラ・ミラー/ケヴィン
6月30日(土)TOHOシネマズシャンテ他全国順次ロードショー
2011年、イギリス、112分、字幕/佐藤恵子、提供/クロックワークス、東宝、配給/クロックワークス、http://shonen-yumi.com/

by Mtonosama | 2012-06-30 06:57 | 映画 | Comments(8)
Commented by すっとこ at 2012-06-30 21:40 x
うっわぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!

これは・・・

これはキツイ映画となりそうです。



というのも自分は 美しくも息子でもありませぬが
母との確執にもう疲れきっているからです。

母からみたら自分は「理解できない娘」でありましょう。
あるいは「悪意に満ちた娘」でもありましょう。

映画のような事件こそ 実際には起こさなかったけれど
事件起こしたい、と思ってました
甘い悪夢に空想のなかで酔いしれたものでした・・・。


なんちて。


殿様の試写室、怖いなあ。
おのれの闇を観ることになってしまうんだから。

はぁ~。
あ、ポチっと押してから帰りますね。
次号UPも楽しみにしています!!
Commented by Mtonosama at 2012-07-01 10:13
♪すっとこさん

ああ、すっとこさんの触れてはいけない部分に触れてしまったのでしょうか・・・・・

お気楽な子ども時代を送り、触れてはならない闇の部分としては
ダンゴムシ殺戮事件しか起こしていないとのは無神経でありました。

う~ん、でも、そんなとのにもやはり母との確執、父への反目は
それなりにあったかなぁ。

何もないまま150歳まで生きてくることもないですよね。

ポチッとしてくださってありがとう。
またよろしくお願いしま~す。
Commented by ライスケーキ at 2012-07-01 21:40 x
「思いもよらない衝撃のラスト」 この言葉に弱いです。

結婚は夫、妻を自ら選ぶーー押しつけられる時もあるーーけど、
親や兄弟は自分では選べません。
子供も親の好みで育てようと思っても 思うようにはいきません。

日々の生活の中で 愛情は少しずつ育てるものなんでしょうね。
それでも、愛情が受け入れられないこともあります。
誰にでも 「心の闇」があると思います。

さて、この親子の「衝撃のラスト」は如何に?

 
Commented by Mtonosama at 2012-07-02 08:49
♪ライスケーキさん

生きていくということは大変なことでございます。

でも、起きたときがカラリと晴れていれば、また気の持ちようが違うんですけどね。

衝撃のラスト、一見の価値ありですよ~。
Commented by poirier_AAA at 2012-07-02 22:57
怖いですね〜。

何が怖いって、はっきりした理由もわからないままに息子に嫌われてしまう母親、というシチュエーションが無茶苦茶に怖いです。自分のこととしては想像したくないです。

この主人公の女性の途方に暮れた感じが痛々しくて、わたしはそれだけで彼女に感情移入してしまうんですけれど、さて、本当のところは(真実?は)如何に。

やっぱり見ておくべきでした〜。
Commented by Mtonosama at 2012-07-03 07:06
♪poirier AAAさん

つわりのひどさはともかくとして、赤ん坊時代は一日中泣き、
もう少し大きくなると断固としてオシッコやウ●チは教えない。
そして、反抗期・・・・・

ティルダ・スウィントンが声を荒げることもなく、ひたすら
母親として、めちゃくちゃな我が子(赤ん坊というのは時に
訳のわからない存在に化すものではありますが)に接する様
――苛立っているのだろうに、冷静に、母親らしく――
に尊敬の念を持ってしまいました。

私にはあの状況に耐えることはとてもできないでしょう。

「真実」。それをどこに求めるか、難しいところです。
どうも、そこがしこりになって残ってしまいました。
Commented by Tsugumi at 2012-07-04 05:52 x
今私達の周りでこれと似たことが(犯罪はないですが)あちこちで起こっています。
なのでこの映画を正視して見れるか自信ないです。
Commented by Mtonosama at 2012-07-04 06:41
♪Tsugumiさん

私も口と眼をおさえ、映画を観てました。
口をおさえたのは叫び声を漏らさないため。
眼をおさえたのは隙間から覗くため^_^;

怖いんだけど、素晴らしいシーンの多い映画でした。

by Mtonosama