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殿様の試写室

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故郷よ -2- Land of oblivion

故郷よ -2-
Land of oblivion

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(C)2011 Les Films du Poissons

原発事故はもう私たちにとっては他人事とはいえず、
本作を観ながら、考えるのもやはり福島のことです。

福島の事故が起きたのはミハル・ボガニム監督が本作「故郷よ」を編集しているときでした。
彼女は自作の映像と同じ映像をニュースで観ることが不思議だったといいます。
日本で起きていることを、自分が映画にしているような奇妙な感覚にもとらわれたそうです。

本作と、前回お伝えした「希望の国」(園子音監督)。
事故から25年目に作られた劇映画と、1年後に作られた劇映画という違いはありますが、
チェルノブイリと福島には大きな共通点があります。

それは、いずれも今後も事故を抱えながら生きていかなければならないということ。

両者の遭遇した事故が原発事故だったばかりに、
忘れることができない、そして、忘れてはならない事故になってしまいました。


故郷よ -2-  Land of oblivion_f0165567_6471882.jpg

ストーリー
1986年4月25日
プリピャチ―― 緑溢れる美しい街。
父と息子はリンゴの木を植え、恋人たちは愛を語っていた。
1週間後に迫ったメーデーに開園する遊園地の大観覧車も
子どもたちの歓声を乗せて回転するための準備がすっかり整えられていた。
川の向こうにそびえる発電所の煙突からは相変わらず灰色の煙が吐き出されていたが、
それはこの街の住民には日常的な風景だった。
そう、その日の真夜中までは――

4月26日
朝、街には大粒の雨が降っている。
森林警備隊のニコライが最初に異変に気付いた。
林道を走っていると軍の検問に遭ったのだ。
書類検査を受けるため、車外に出ると真っ赤に変色したブナの葉が目に入り、
その枝は少し触っただけで簡単に折れてしまった。

雨が止み、アーニャとピョートルの結婚式が行われている。
レーニン像の前で記念写真を撮る2人。
披露宴には大勢が参列し、大いに飲み食べ、幸せな2人を祝福する。
花嫁のアーニャが「百万本のバラ」を歌いだした頃、事態が一変した。
会場に森林火災があったという知らせ。
消防士の新郎・ピョートルは現場に急ぐ――

その頃ヴァレリー少年も異変に気付いた。
昨日プリピャチ川の川辺に父と植えたリンゴが一夜にして枯れていたからだ。
夕刻、少年の父アレクセイに1本の電話が。
それは原子力発電所の技師であるアレクセイに原発事故を知らせるものだった。
電話を切った後、すぐさま窓を閉め、息子にヨウ素剤を与え、放射線量を計測。
妻と息子を避難させ、事故収束のため、アレクセイはひとり街に残る。

4月27日
快晴。
森林警備隊ニコライが飼っていたミツバチは巣箱の中ですべて死に絶えていた。
ニコライの牧場に一機のヘリコプターが飛来。
降り立った乗組員は白い防護服に身を包み、
一言の説明もないまま、ニコライたちに向って退去命令を発する。
そして、無言のまま、家畜小屋に火を放った。

計測器を抱えたアレクセイは街の肉屋にいた。高い線量を発する食肉。
客に警告しても事情を知らない買い物客は聞く耳を持たない。
店を出ると雨が降り出していた。傘を大量に買い、住民に配るアレクセイ。

一晩経っても夫から連絡がないアーニャは病院へ向かう。
居合わせた看護士に問い合わせると
「ご主人は大量の放射線を浴び、モスクワへ搬送されました」――

10年後
廃墟となった建物。荒れ果てた農地。
事故があった4号炉はコンクリートで固められ、石棺と呼ばれていた。
事故後、30キロ圏内は立入制限区域となっていたが、
作業員や軍関係者、発電所の近くの食堂で働く従業員などの姿があった。
ニコライをはじめ、生まれた土地を離れたくなかった住民たちも生活を続けていた。
アーニャもまた1ヶ月の半分は「チェルノブイリ・ツアー」の観光ガイドをしながら、
プリピャチで暮らす1人だった。
事故で夫を亡くした彼女には婚約者がおり、フランスで住むことを誘われている。
だが、そんなアーニャを、 “石棺”で働く亡夫ピョートルの友人はひきとめる。
揺れるアーニャ。

今や16歳の青年になったヴァレリーは“亡父”アレクセイを弔うため、
母と共にプリピャチに戻ってきた。事故後初めての帰郷だ。
ヴァレリーは10年前のあの日以来消息を絶った父が死んだとは信じていない。
母の眼を盗み、生家の壁に、父へのメッセージを書き残すヴァレリー。

その頃、父アレクセイは列車に揺られてプリピャチ駅に向っていた。
あの日以来封鎖された駅へと、永遠に果たせるはずのない帰郷を目指して……
どうしても福島と重なってしまいます。
なにも知らされないまま、無念さを抱えながら強制退去させられた住民。戻ってきた住民。
引き裂かれた夫婦、家族、責任感と無力感から心を病んだ技師。

今、避難している方々、あるいは、さまざまな事情から福島に留まる方々には
つらい映画かもしれません。

でも、再稼働を考えている政治家、経済界の方、電力会社の方には是非観ていただきたい。
そして、あの日から時間が経ち、
ちょっと遠くにいる私たちももっと想像力を持ちたい。

フィクションであることが、さらに、想像力を刺激して、
現場にいた人々の苦しみや悲しみや無念さが深く心に迫る作品です。





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☆2月12日に更新しました。いつも応援ありがとうございます☆

故郷よ
監督、脚本/ミハル・ボガニム、共同脚本/アントワーヌ・ラコンブレ、共同脚本、編集/アン・ウェイル、撮影/ヨルゴス・アルヴァニテス、アントワーヌ・エベルレ、製作/ラエティティア・ゴンザレス、ヤエル・フォギエル
出演
オルガ・キュリレンコ/アーニャ、アンジェイ・ヒラ/アレクセイ、イリヤ・イオシフォフ/ヴァレリー(16歳)、セルゲイ・ストレルニコフ/ディミトリ、ヴャチェスラフ・スランコ/ニコライ(森林警備員)、ニコラ・ヴァンズィッキ/パトリック、ニキータ・エムシャノフ/ピョートル、タチアナ・ラッスカゾファ/アーニャの母
2月9日シネスイッチ銀座他全国順次公開
2011年、仏・ウクライナ・ポーランド・ドイツ、フランス語・ロシア語・ウクライナ語、108分、後援/イスラエル大使館、字幕/川又勝利、提供・配給/彩プロ
http://www.kokyouyo.ayapro.ne.jp/

by Mtonosama | 2013-02-12 07:04 | 映画 | Comments(4)
Commented by すっとこ at 2013-02-13 00:26 x
ううーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!

いつもながらの殿様の名調子、
   <フィクションであることが、さらに、
     想像力を刺激して、
     現場にいた人々の苦しみや悲しみや
     無念さが深く心に迫る作品です。
ということなのですね。

チェルノブイリ見学ツアーがあるとは
驚きでした!
フクシマもそうなってしまうのでしょうか。

予告編で静かに流れるのはロシア語の
”百万本のバラ”なのですね。
この胸に沁みました・・・・。

簡単にはどうこうと感想を残せない映画です。
しずかにポチッを押させていただきます。

Commented by Mtonosama at 2013-02-13 06:55
♪すっとこさん

チェルノブイリ見学ツアーあるんですって。
資料によれば
「実際に旅行会社などから申し込むことが可能。日帰りコースから丸2日間かけてチェルノブイリ市、チェルノブイリ原発の周りの見学、石棺、事故後放棄された村であるオパーチチ村、クポワートイェ村、オターシェフ村、プリピャチ市、元ロハソ村の事故処理に使われた汚染機材置き場などを巡るものまでさまざま。
キエフからはバスで片道2時間半。価格の目安は、日帰りの場合、原発施設内の食堂で食べるランチ込みで150~」
だそうです。

胸の中がしーんとしてしまう映画でした。

今日もポチッをありがとうございました。
Commented by poirier_AAA at 2013-02-13 18:20
この映画、フランスでは去年の3月下旬に公開されました。
予告編を見て、行こうかどうしようかすごく迷ったことを良く覚えています。

結局見なかったんですよ。見てみたいと思う気持ちが48%くらい。とても冷静には見られないと思う気持ちが52%くらい。ドキュメンタリーではなくてフィクションだったことが、当時は耐えられなかったです。

間もなく事故から2年ですね。状況は何も変わりませんが、今ならこの映画も見られるかも、という気がしています。
Commented by Mtonosama at 2013-02-14 17:19
♪poirier AAAさん

映画というのは、時間の経過やそのできごとによってはドキュメンタリーが良かったり、劇映画が良かったり、一概には言えないものですね。

沁みてくるものが多すぎて、まだまだ観るのが辛い映画かもしれません。

by Mtonosama