オマールの壁 -1- OMAR
オマールの壁
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OMAR
「国境に壁をつくればいい」
と或る国の共和党大統領候補が言いました。
確か還暦はとっくに超えていると思いますが、
思い浮かんだ言葉を頭脳によって編集することも濾過することもなく
ペラペラと軽々しく話すおっさんです。
『オマールの壁』
ハニ・アブ・アサド監督がこの映画の舞台に選んだのは
壁によって分断されてしまったパレスチナの町。
イスラエルが今も造り続ける壁は
パレスチナとイスラエルの境界に沿って
建てられている訳ではありません。
壁はパレスチナ人の領地に侵入し、
パレスチナ人の財産を破壊し、
パレスチナ人の土地を接収し、
パレスチナ人の移動を制限する形で建てられています。
あのトランプ候補ですら壁は国境につくると言っているのに、です。
2005年の『パラダイス・ナウ』で自爆攻撃に向う若者たちを描き
ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞、
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたハニ・アブ・アサド監督。
本作では、分離壁によって囲まれたパレスチナの今を生きる若者たちを描き出し
カンヌ国際映画祭を始め、多くの映画祭で賞讃され、
再び、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。
スタッフはすべてパレスチナ人、
撮影もすべてパレスチナ、
100%パレスチナの資本によって製作されています。
あ、そうでした。
字幕監修には重信メイさんが当たっています。
当試写室でも上映した『革命の子どもたち』
http://mtonosama.exblog.jp/22421331 http://mtonosama.exblog.jp/22442952/
に登場した日本赤軍・重信房子の一人娘で
ジャーナリストとして活動している方です。
すみません。話が少し逸れました。
ハニ・アブ・アサド監督
1961年イスラエル・ナザレに生まれる。
イスラエルのパスポートを持つパレスチナ人。
19歳でオランダに移住し航空力学を学び、
卒業後、数年間飛行機のエンジニアとして働く。
1992年、初めての短編『Paper House』を監督。
1998年、『The 14 th Chick』で長編映画デビュー。
2000年ドキュメンタリー『ナザレ』が02年カンヌ国際映画祭・批評家週間に正式招待。
2002年ドキュメンタリー『エルサレム、いつの日か』が03年サンダンス映画祭で上映。
2002年『エルサレムの花嫁』
2005年『パラダイス・ナウ』がパレスチナ映画として初の
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、
ゴールデングローブ賞最優秀外国語賞に輝く。
2013年『オマールの壁』がカンヌ国際映画祭ある視点部門で審査員賞を受賞。
更にパレスチナ映画としては2度目のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされる。
最新作は『The Idol』
アメリカの人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』の
中東版『アラブ・アイドル』で優勝したパレスチナ人ポップシンガーの実話を描く。
いろいろ驚くことの多い映画ですが、
とのの驚いたのは主人公がよじのぼる壁の高さとその圧迫感。
高さ8mのその壁が垂直に居住区を分断しているのです。
それを身軽に登っていくオマール。
太い眉と大きな目が印象的なこの青年はじめ、
その恋人、友人を演じた俳優はみな新人なのだそうです。
パレスチナの抱える問題には胸が痛みますが、
青年達が直面する懊悩はパレスチナの問題であるだけではなく、
ある意味グローバルなものであります。
青年たちは「ハムレット」のように悩み、
「ロミオとジュリエット」のような悲恋に泣き、
「走れメロス」のように信頼を大切にします。
それら人として根源的な感情や想いは国や政治制度によって違いはありません。
とのは精悍でありながら美しいオマールにひきこまれました。
さあ、いったいどんなお話でしょう。
続きは次回で。
乞うご期待でございます。
続
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☆4月10日に更新しました。いつも応援してくださってありがとうございます☆
オマールの壁
監督・脚本・製作/ハニ・アブ・アサド、撮影/エハブ・アッサル、編集/マーティン・ブリンクラー、イヤス・サルマン
出演
アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ、サメール・ビシャラット、エヤド・ホーラーニほか
4月16日(土)より角川シネマ新宿、渋谷アップリンク他ロードショー
2013年、パレスチナ、97分、アラビア語・ヘブライ語、カラー、配給/アップリンク、http://www.uplink.co.jp/omar/