ブログトップ | ログイン

殿様の試写室

mtonosama.exblog.jp

殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

アランフエスの麗しき日々 -2- Les BEAU JOURS d'ARANJUEZ


アランフエスの
麗しき日々

-2-

Les BEAU JOURS d’ARANJUEZ

アランフエスの麗しき日々 -2- Les BEAU JOURS d\'ARANJUEZ_f0165567_6553244.jpg


(C)2016-Alfama Films Production-Neue Road Movies


鬱蒼と樹々が茂る小高い山の上。
午後を回った少しけだるい陽光と
空気が漂っています。

そこは
フランス・ベルエポックを
象徴する大女優サラ・ベルナール
が住んでいた屋敷。

アランフエスの麗しき日々 -2- Les BEAU JOURS d\'ARANJUEZ_f0165567_6564528.jpg


サラ・ベルナール ナダール撮影 1864年

庭に置かれた椅子の向こうには
田園地帯のかなたに
パリの街並みが
はるかに望めます。

そこに座った男女。
男は30代後半くらいでしょうか。
女は美しいけれど
男よりはかなり年長のよう。

黄色く霞んだような午後の陽光。
だが、藤棚の下にいる二人は
山の下から吹き上げる風の
中でとりとめもない対話を
交わします。

性的な体験、
子ども時代の思い出、
それぞれの記憶、
男と女の違い・・・

唐突な対話、
見えてこない二人の関係、
この対話はゲームなのか、
真剣なのか、
最終的な合意を
得ようとしているのか、
???
不思議な夏のダイアローグ・・・

庭に向かって
大きく開かれた窓。
その奥の書斎では
作家が一人
タイプライターを前にして
庭をみつめている。

観客が
その作家の目線で
窓外を見ると
藤棚の下に男女はおらず、
遠くに霞むパリの市街地・・・

男女は
作家の創造物?

アランフエスの麗しき日々 -2- Les BEAU JOURS d\'ARANJUEZ_f0165567_6574162.jpg


場面はベルナール邸の内外のみ。
登場人物は
男女と
作家と
ニック・ケイヴ
の4人だけ。

そして、人ではありませんが
大きなジュークボックス。

どこにもぶっとんだところはないのに、
なんか不思議な映画です。
逆に
ぶっとんだところのないことが
不思議さを生み出して
いるのかもしれません。

ヴィム・ヴェンダースは
『Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』(’11)
http://mtonosama.exblog.jp/17198768/ 
http://mtonosama.exblog.jp/17210360/
『もしも建物が話せたら』(’14)
 http://mtonosama.exblog.jp/24971561/
 http://mtonosama.exblog.jp/24980390/
『誰のせいでもない』
http://mtonosama.exblog.jp/26855071/
http://mtonosama.exblog.jp/26907304/
を3Dで撮影しましたが、
3Dといっても
『アバター』なんかを想像すると
かなり違います。

“ナチュラル・デプス”といって
出来る限り正確に
二つのカメラの動きを目の動きに似せ、
何が
どうやって
目に映るのかを再現する
3Dです。

「数分もすれば
違った形で映画を観たことすら
観客は忘れるだろう」
と監督自身語っています。

このあたりで
魔法にかけられてしまったんでしょうか。

アラン・デロブという人が
発明した撮影法で、
特殊効果などは
使用していないのだそうです。

今回の作品への
ヴェンダース監督の思いは
まるで
本作が最初で最後の作品のよう、
と思ってしまいました。

彼は言います。
「自分が撮った作品を全部見てみると
二つの極端に違うカテゴリー、
もしくは信念が観てとれる。
一方は
ほぼ台本なしで
私と共にキャストとスタッフが
冒険に乗り出し、
映画を撮影する過程でのみ
具現化されたもの。
もう一方は
最初から最後まで細部に至るまで
綿密に計画され
しっかりとした
ストーリーラインに沿う
原作に基づいて作られたものだ」

本作はこのどちらにも
属していない作品だと彼は言います。
これまでの作品に共通するところは
音楽へのこだわりでしょうか。

唐突とも思える
ニック・ケイヴの登場には
驚きました。

ちょっとばかり
これまでのヴェンダース作品とは違います。

男女の会話と音楽と
ナチュラル・デプスに
耳と目を傾けるため
もう一度
映画館に行ってきたいと思います。



今日もポチッとお願いできれば嬉しゅうございます♪
↓↓↓↓↓

にほんブログ村
☆12月17日に更新しました。いつも応援して下さってありがとうございます☆

アランフェスの麗しき日々
監督・脚本/ヴィム・ヴェンダース、プロデューサー/パウロ・ブランコ、ギアン=ピエロ・リンゲル、
撮影/ブノワ・デビ
出演
レダ・カテブ、ソフィー・セミン、イェンス・ハルツ、ニック・ケイブ
12月16日(土)EBISU GARDEN CINEMA他全国順次ロードショー
2016年、フランス、ドイツ、ポルトガル、フランス語、ドイツ語、英語、97分

by Mtonosama | 2017-12-17 07:05 | 映画 | Comments(8)
Commented by ヨモギ at 2017-12-18 21:07 x
とても美しいけれど、難解そうな映画ですね!?
それよりも、サラ・ベルナールの写真がすごいなと思いました。
ギリシャ神話の神のような横顔、衣装のひだの陰影の美しさ、
レンブラントの絵を見るような気がします。
ナダールという方は、有名な写真家さんなのでしょうね。
100年以上前のかたですか。
時代を超えた美しさですね。

。。。映画じゃない部分に感動、お許しくださいませ。
Commented by すっとこ at 2017-12-19 04:48 x
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

これがサラ ベルナールですか!

アール ヌーボーの女神、稀代の踊り子。
そして長い白いマフラーが 風になびき
それが乗っていた車の車輪に巻き込まれて
絶命したサラ ベルナール。

と記憶してるけど思い違いでしょうか。

ヨモギさんと同じで 彼女の写真に
強烈に惹かれてしまいました。

ワシには無彩色のラファエル前派に
見えるんですがのう❣️
Commented by Mtonosama at 2017-12-19 08:30
♪ヨモギさん

ねえ、本当に美しいですよね。この写真は彼女が20歳の時だから、特に綺麗な時かもしれませんね。ナダールという肖像写真家の腕がものすごく良かったということもあるでしょうし、あるいは写真家が恋に落ちたのかも。
とまあ、いろいろな想像をさせるほど美しい♡
ああ、できれば私もこんなに美しく生まれていたかった。

あ、私も映画から離れてしまいました(^-^;
Commented by Mtonosama at 2017-12-19 08:42
♪すっとこさん

美しい人ってどこか中性的な感じがしますけど、彼女もそうですね。
ウィキってみると、ハムレットなど男役も何度も演じたといいますから、なるほどなって感じです。
かのジャン・コクトーには「聖なる怪物」と言われた、世界最初の国際スターなんですって。
本当に綺麗!

でも、本作に登場するのは彼女の屋敷だけです。
Commented by ライスケーキ at 2017-12-19 10:40 x
何だか難しそうな映画。
それを紹介する殿様の文章が
スバラしい。

マフラーが車の車輪に巻き込まれて
亡くなったのは
イサドラ ダンカンだったのでは?
モダンダンスの祖と呼ばれた彼女も
ステキでしたよね。
映画もありましたね。
Commented by Mtonosama at 2017-12-19 16:39
♪ライスケーキさん

サラ・ベルナールが亡くなったのは70歳を過ぎていました。
イサドラ・ダンカンは49歳ですって。残念な亡くなり方の代表みたいな死ですね。
まさに「神々に愛されるものは夭折する」でしょうか。
サラもこの美貌であることが既に神に愛されている証拠だと思いますが、
70歳過ぎなら、ま、長生きですよね。
私は神々に愛されていないから、150歳まで生きています(^-^;
Commented by すっとこ at 2017-12-19 21:35 x
ライスケーキさん

ああああああああああああああああああ!
そうですそうですイサドラ ダンカンでした。
ありがとうございました☺️

記憶に霧のかかる自分です😭
Commented by Mtonosama at 2017-12-20 06:13
♪すっとこさん

記憶に霧や靄のかかるお年頃はお互い様です。
神様に愛されなかったがために長生きしてしまった者の宿命でございましょう(-_-;)

イサドラ・ダンカン。以前、当試写室でフラーというダンサーの映画を上映した時、
天才ダンサーとしてフラーの嫉妬の対象として登場しました。
なのにねえ、49歳の若さでねえ。


by Mtonosama