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殿様の試写室

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女は二度決断する -1- Aus dem Nichts


女は二度決断する
-1-

Aus dem Nichts

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(C)2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production, corazon international GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH


舞台はハンブルグ。
愛する夫と幼い子どもを殺された妻。
それなのに
夫の出身国と経歴ゆえに
警察の捜査は
悲嘆にくれる妻の胸を
さらに抉ることになっただけ。

夫はトルコ人
妻はドイツ人
子どもは6歳。

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本作『女は二度決断する』を
一瞬で愛する者たちを奪われた
女の決断の物語と見るか、
誤解と偏見に満ちた警察や周囲への
怒りと見るか。
外国人差別を根幹にした
映画と見るか。
振り返って
日本でも堂々と書店に置かれている
アジアの人たちに対するヘイト本や
ネット上で飛び交う悪口雑言を
思い起こすか。

いずれにせよ
ガツンガツンとくる映画です。

女は二度決断する -1- Aus dem Nichts_f0165567_5365215.jpg


監督はファティ・アキン。
これまでにも
時代や歴史を見据えた作品を
発表してきた監督です。

この人は今まさに
映画人生の上げ潮、
人生の上り坂にいます。
そういう時期にこそ
このような問題作を発表し、
さらにさらに注目を浴びることは
非常に大切なことです。

自身トルコ移民の息子である監督。
彼はドイツで実際に起きた
ネオナチによる連続殺人事件を基に
本作を作りました。

2000年からの7年間
NSU(国家社会主義地下活動)という
極右グループが
ハンブルグ、ミュンヘン、ニュルンベルグなどで
トルコ人など9人の外国人と
ドイツ人の女性警察官1人を殺害する
連続殺人事件を起こしました。

犯人グループは2004年に
トルコ人の商店が多い地区で
800本の太い釘を詰めた
手製の爆弾を爆発させ、
22人に重軽傷を負わせてもいます。

本作は
この事件を下地にしています。


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NSUはこの他にも
2件の爆弾テロを起こし、
さらに活動資金調達のため
銀行、郵便局での強盗事件を
15件起こしました。

ネオナチによる連続テロとしては
第二次世界大戦後、最悪の事件です。

「釘の爆弾ってオモチャみたい」
と思ってしまいました。
でも、それがいかに苦痛を与え、
6歳の子どもにとっていかに残虐なものか。

無知とは罪悪です。
そして
世の中には想像力だけでは
カバーできないことが多過ぎます。

ドイツ警察もまた
2004年の爆弾テロを
トルコ人の犯罪組織内の抗争か
麻薬売買をめぐるトラブル
あるいは
トルコ人とクルド人との抗争
と思い込んで捜査しました。

そこには
ネオナチの存在を
思い浮かべもしなかった
無知と偏見と
想像力の欠如がありました。

そのため、
彼らはその後も各地で
犯罪を繰り返し、
その陰に
本作のような苦しい思いをする
多くの女性がいたのだと思います。

ドイツにはたくさんの外国人がいます。
戦後、ドイツの復興を支える
労働力としてやってきたトルコ人は多いし、
監督もその孫世代にあたります。

釘爆弾で殺されたトルコ系の夫のように
純粋なドイツ人と結婚する人も
もちろん大勢います。

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純粋なドイツ人と言ったのは
妻を演じたダイアン・クルーガーが
あまりに典型的なドイツ女性だから。

金髪、碧眼、意志の強そうな顎、
そして、広い肩幅。

このダイアン・クルーガーの
存在あってこその映画でした。

さあ、一体どんな映画なのでしょう。
続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



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女は二度決断する
監督・脚本/ファティ・アキン、共同脚本/ハーク・ボーム、
撮影/ライナー・クラウスマン
出演
ダイアン・クルーガー/カティヤ・シュケルジ、デニス・モシット/ダニーロ・ファーヴァ、ヨハネス・クリシュ/被告側弁護士ハーバーベック、サミア・ムリエル・シャンクラン/ビルギット、ヌーマン・アチャル/ヌーリ・シュケルジ、ヘニング・ペカー/レーツ警部、ウルリッヒ・トゥクール/ユルゲン・メラー、ラファエル・サンタナ/ロッコ・シュケルジ、ハンナ・ヒルスドルフ/エダ・メラー、ウルリッヒ・ブラントホフ/アンドレ・メラー、ハルトムート・ロート/裁判官グラボウ、ヤニス・エコノミデス/ニコラオス・マクリス
4月14日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー
2017年、ドイツ、106分、協力/ゲーテ・インスティトゥート東京ドイツ文化センター、後援/ドイツ連邦共和国大使館、配給/ビターズ・エンド、http://www.bitters.co.jp/ketsudan/

by Mtonosama | 2018-03-22 05:50 | 映画 | Comments(4)
Commented by すっとこ at 2018-03-24 07:46 x
うううううううううううううううううううううう!

この
【ドイツに於けるトルコ人】の立場
って きっとわれわれ日本人には
永久に分からないかも。

その環境に置かれないと どうしても
分からない事ってあると思う。

イングランドに住んでた時の
ウェールズ人やスコットランド人への
微妙な差別、どうしても自分は感じる
事が出来なかった。

NYに住んでた時の アメリカ人が持つ
全ての外国人への優位感も理解でき
なかった。

ただ【差別される側】なのだと感じた
事は一回や二回や三回ではなかった。

この映画でも きっとトルコ人故に
理不尽な扱いを受ける場面が出てくる
のだろうなあ。

悲しいなあ。
Commented by Mtonosama at 2018-03-24 14:38
♪すっとこさん

すっとこさんは外国暮らしが長いからイヤな感じあったんですよね。
私は短い滞在の間でもアジア人特有のこの顔つき故に彼らが示す違和感をビシビシ感じたなあ。
ドイツの小都市では子供に水鉄砲で水かけられたこともあるよ。
さすがに最近では露骨な差別はなかった気もしますが、以前は結構ありましたわ。

あ、あと道を訊ねたとき、すごく嫌な顔された。
日本人も外国人から声かけられると緊張することあるけど、
外国人もおんなじなんだと思った。

でも、この程度だったらまだ良いんだけどね、
本作の場合は結構つらいですわ。
Commented by hamakorian at 2018-03-24 20:02
こんばんは♬
世界のいろんな民族が、母国から離れて異国に旅行したり
住んだりすることがこれからもどんどん増える時代ですね。
ドイツとトルコの関係は、イギリスとスコットランドやウェールズの間の関係とは
全然違うものなのでしょうね?(想像ですが)
まず宗教が全く違う、言葉も言語体系からして全く違う、
そういうトルコ人がドイツで受ける差別や違和感は
深いものがあるのでしょうネ。

これからは、こういう、違う民族間の問題が
映画でも取り上げられることが多くなるのでしょうね。
異国人とお互いにお互いを認め合って、
異文化を知ったり、知らせたり、これからの時代は
子供にそういう教育をしていくことで
いまある社会の中の悲劇を良い方へ解決していくことが
できるのではないでしょうか。
子育て中の人や孫育て中の人は
心してそのために努力することが大事ですよね。
エラソウナこと申し上げました(*^^*)
でも私は努力していきますよ。


Commented by Mtonosama at 2018-03-25 06:52
♪hamakorianさん

民族が違えば、皮膚の色も顔も違うのは仕方がないことで、
そういう違いに「ママやパパと違う!」という反応をするのは
まず子供だろうと思います。ま、それは仕方がないことですよね。
周りの大人がちゃんと教えてあげればいいことです。
私を水鉄砲で攻撃したガキ、
あ、いえ、お子さんは白人以外見たことがなかったのでしょう(^-^;

ドイツ好きの人間としてドイツ人をかばわせていただきますと、
大きなトランクを引きずって歩いていると、
私よりずーっと年上のおじいさんやおばあさんが手助けしてくれます。
私の必死の遠慮にもかかわらず、
駅の階段でおばあさんが荷物を持ってくれたのには恐縮しました。
電車に乗ればおじいさんが網棚にトランクを置いてくれます。
本当に親切なのです。

ネオナチという思想や排外主義はあっていけないものなのに、
異分子を恐れる一般民衆の頭に上手な言葉でじんわり浸透していくのが怖ろしいですね。

私もhamakorianさんのように頑張りたいと思います。


by Mtonosama