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殿様の試写室

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ゲッベルスと私 -2- A German Life

ゲッベルスと私

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AGerman Life


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(C)2016 BLACKBOX FILM & MEDIENPRODUKTION GMBH



真っ暗な背景に浮かび上がる

ブルンヒルデ・ポムゼルの顔と

そこに刻まれた皴。

氷河の紋様のようなその深い皴が

彼女が生きてきた

103年という年月の長さを伝えます。


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「ゲッベルスは見た目のいい人だった」

元上司について語る

彼女の言葉は明瞭で、記憶も鮮明だ。

「私は自分の人生で

ずいぶん失敗してきたけれど

常に義務は果たそうとしてきた」


「抵抗する勇気はなく、臆病でもあった」

と認めた彼女。

だが、

〈自分があの時代にいたら

虐殺されるユダヤ人を助けた筈〉

と言う現代人に対しては

「彼らも私たちと同じことをしていたと思う」

と語る。


反ナチス運動の“白ばら”活動家の

ショル兄妹が19432月に反戦ビラを配布し、

反逆罪で処刑された。

彼女はその裁判記録を取り扱ったことがある。



裁判記録を金庫に入れて

絶対に中身を見るなと言われた。

見たくて仕方なかったが、

彼女の忠誠心は好奇心に打ち勝った。

「金庫を開けなかったことを

誇りに思う」と振り返る。


宣伝省に勤める前、

ユダヤ人のゴルトベルグ博士のもとで

働いていた彼女は

いつか仕事がなくなることを予感していた。

事実、彼女の仕事は半日だけになった。



そんな中、恋人から

作家のブライ氏を紹介される。

彼は第一次世界大戦で航空隊少尉として

活躍した作家だが、

タイプライターが使えない。



彼女はタイピストの職を得た。

午前はゴルトベルグ博士のもとで

午後はナチ党員ブライ氏のもとで

働くポムゼル。

間もなくナチスが政権につき

その重鎮となったブライ氏の勧めで

彼女はなけなしの10ライヒスマルクを支払い、

ナチスに入党する。


31歳の時、ブライ氏の紹介を受け、

地元の放送局で秘書として勤務。高給だった。

1942年、ナチの宣伝省に転職。

ラジオ局での優秀な速記技術を

評価されてのことだ。



それについて彼女は運命だったと語る。

「あの激動の時代に

運命を操作できる人はいない」と。

ヒトラーが権力を持ち、

ユダヤ人の友人エヴァの人生も

困難なものになった。

また、勤務先の放送局には

アナウンサーの先駆けだった男性がいた。

その人物が強制収容所に

収容されたことを知り、彼女は驚く。

彼は同性愛者だった。


情報が制限されていたため、

強制収容所の実態は知らなかった。

「皆は私たちは知っていたと思っている」が

ユダヤ人は人口が減少したズデーデン地方に

移されたと彼女たちは信じていた。


スターリングラードの攻防戦を境に

物資の供給も減り、

刑罰が厳しくなっていった。


1945年、ヒトラーの誕生日の翌日

ポムゼルと同僚たちは防空壕へ避難した。

防空壕では多くの人が

不安を和らげるため、酒を飲んでいた。

そこへヒトラーが自殺したという一報。

防空壕にいる全員が

戦争の終わりと敗戦を知る。

その翌日ゲッベルスの自殺も報告された。


「悪は存在するわ。神も正義も存在しない」

「私に罪があったとは思わない。

ただし、ドイツ国民全体に罪が

あるとするなら話は別。

結果的に

国民はあの政府が権力を握ることに加担した。

そうしたのは国民全員よ。

もちろん私もその一人だわ」……



この撮影の3年後、

ブルンヒルデ・ポムゼルは亡くなりました。

106歳でした。


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「私たちは知らなかった」

「あの時代に運命を操作できる人はいない」


これをも凡庸な悪というのでしょうか。

後世の人間が時代の渦中にいた人たちを

責めることは簡単です。


家計を支えたしっかり者のブルンヒルデが

より収入の良い職場を求めて転職することを

現代に生きる私たちに

咎めることができるでしょうか。


私たちは彼女の生きた時代を知識として

知っているから、

彼女を責めることができます。

でも、

私たちは自分が生きている時代を知らないし、

それがどのような未来に向かっているかも

知りません。


「私たちは知らなかった」と

明日の私たちも口走っているかもしれません。


103歳の深い皴が語るものを

しっかりこの目と耳で

確認しなければなりません。

重い映画です。


ゲッベルスと私

監督/クリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー、オーラフ・S・ミュラー、ローラント・シュロットホーファー

出演

ブルンヒルデ・ポンゼル、ヨーゼフ・ゲッベルス、ウルフ・ブライ、クルト・フローヴァイン、フーゴ・ゴルトベルク博士、ハンス・フリッチェ、白いバラ

616日(土)より岩波ホール他全国順次ロードショー

2016年、オーストリア映画、113分、ドイツ語、日本語字幕/吉川美奈子、ハイビジョン、モノクロ、撮影ロケーション:ドイツ、製作期間:2013-2016、配給/サニーフィルム

https://www.sunny-film.com/a-german-life


by Mtonosama | 2018-05-06 06:03 | 映画 | Comments(6)
Commented at 2018-05-06 12:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Mtonosama at 2018-05-06 16:00
♪鍵コメさん

ありがとうございました。
Commented by ライスケーキ at 2018-05-06 18:47 x
私も その時代に
生きていたら、
彼女と同じように
「臆病で抵抗する勇気」も
無いと思う。

でも、
私達は知らなければならないし、
どんな考えでも
思っていることを
自由に言える世の中を
大事にしなくちや。

大事にするのは
私達ひとりひとりの
責任だと思います。
Commented by Mtonosama at 2018-05-07 05:49
♪ライスケーキさん

いま、生きているのが”その時代”なのかもしれない・・・
なんとまあ怖くて責任重大なことでしょう。

知らずにいることは楽かもしれませんが、
いま痛みを感じている人々や子々孫々のことを考えたら
無責任ではいられません。

ポムゼルさんは私たち自身でもあります。

真面目になってしまう映画です。
Commented by すっとこ at 2018-05-07 07:22 x
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!

「ポムゼルさんは私だ」

の映画なのですね。
そうですよね、たった今現在の日本に
起こっていることが
むざむざ我ら衆愚が放置したことが
未来の子々孫々に どれだけの影響を
与える事になるのか

正確に理解している人はいるのでしょうか。

に、してもポムゼルさん、認知症は
なかったのですね!

そこにも感嘆です❣️
Commented by Mtonosama at 2018-05-07 10:24
♪すっとこさん

ポムゼルさんの発音の明瞭なことと記憶の鮮明なことといったら。
106歳まで一人で生きた人は本当にしっかりしています。

何をなすべきか見据えながら生きるということは本当に大変ですよね。
生きるということは本当に責任重大です。