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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

きみの鳥はうたえる -1- 

きみの鳥はうたえる

-1-


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             ©HAKODATECINEMA IRIS

 


しかし――
 私はしかしと思ふ。

誰かゞ偶然私の作品集を見つけ出して、

その中の短い一篇を、

或は其一篇の中の何行かを

読むと云ふ事がないであらうか。


更に虫の好い望みを云へば、

その一篇なり何行かなりが、

私の知らない未来の読者に、

多少にもせよ美しい夢を見せる

といふ事がないであらうか。



 私は知己を百代の後に

待たうとしてゐるものではない。

だから私はかう云ふ私の想像が、

如何に私の信ずる所と

矛盾してゐるかも承知してゐる。
 けれども私は猶想像する。

落莫たる百代の後に当つて、

私の作品集を

手にすべき一人の読者のある事を。

さうしてその読者の心の前へ、

朧げなりとも浮び上る私の蜃気楼のある事を。


芥川龍之介「後世」


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今回、

当試写室で上映する『きみの鳥はうたえる』は

佐藤泰志の作品です。


冒頭に引用した

芥川龍之介と佐藤泰志との関係は

これといってありません。


芥川は生前から人気作家であり、

昭和2年に亡くなってから

91年も経っていますが、

未だに熱狂的なファンがいます。

試写室管理人も

彼の作品集を手にし、

彼の蜃気楼どころか彼の姿を

未だ夢見る乙女(!)であります。

しかし、佐藤泰志は

生前、売れっ子作家になるということは

ありませんでした。


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佐藤泰志は5回芥川賞の候補にあがりながら

一度も受賞しませんでした。

共通項といえば

二人とも自死を選んだということ

そして、

真摯な作家であったということです。


以前、当試写室で

『書くことの重さ~作家 佐藤泰志』という

https://mtonosama.exblog.jp/20448241/

https://mtonosama.exblog.jp/20467571/

彼のドキュメンタリー映画を上映しました。


1949年函館に生まれた佐藤は

高校時代から小説を書き始め、

有島少年文学賞を2年連続で受賞。

大学卒業後、文芸誌等で小説を発表し続け、

77年に「移動動物園」が

新潮新人賞候補となり、

81年に発表した「きみの鳥はうたえる」で

86回芥川賞候補となりました。

以降5回、同賞候補になりますが、

いずれも受賞には至りませんでした。


89年「そこのみにて光輝く」で三島賞候補に。

その後「海炭市叙景」を

文芸誌「すばる」に断続的に掲載。

90年自死。享年41歳。


死後、全作品は絶版になりましたが、

2007年「佐藤泰志作品集」が

クレインより刊行され、

10年には『海炭市叙景』が映画化。

熊切和嘉監督。

これに合わせて過去の小説作品が

次々に文庫化され、再評価されていきました。

13年『そこのみにて光輝く』

呉美穂監督

16年『オーバーフェンス』

(原作は「黄金の服」)

山下敦弘監督

18年『きみの鳥はうたえる』

三宅唱監督

と映画化されています。

13年には先に紹介したドキュメンタリー映画

『書くことの重さ~作家 佐藤泰志』

稲塚秀孝監督

も製作されました。

 

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高校時代に才能が開花したものの

その後、人生の巡り合わせがうまくいかず

41歳で命を絶ってしまった佐藤泰志。


そんな佐藤泰志の人生からふと

100年後の読者という言葉を思い出し、

芥川龍之介「後世」を

長々と引用してしまいました。


佐藤泰志は自身

死後20年でこれほど多くの読者が

現れることを予測したでしょうか。


あ、いけない!

芥川龍之介と佐藤泰志に想いを馳せていたら

映画まで辿り着けなくなってしまいました。

という訳で

続きは次回まで乞うご期待でございますよ。



きみの鳥はうたえる

監督・脚本/三宅唱、原作/佐藤泰志(「きみの鳥はうたえる」河出書房新社/クレイン刊、企画・製作・プロデュース/菅原和博、プロデューサー/松井宏、撮影/四宮英俊

出演

柄本佑/僕、石橋静河/佐知子、染谷将太/静雄、足立智充/森口、山本亜依/みずき、渡辺真起子/直子、萩原聖人/島田

825()函館シネマアイリス先行公開、91()新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

2018年、106分、カラー、配給営業/コピアポア・フィルム


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☆8月22日に更新しました。いつも応援して下さってありがとうございます☆

by Mtonosama | 2018-08-22 05:45 | 映画 | Comments(7)
Commented by アイスケーキ at 2018-08-23 10:01 x
佐藤泰志の人生に触れて、
芥川の作品を思い出すなんて、
さすが 殿様!

私は佐藤泰志の名前も
知りませんでしたが、
41歳は若すぎる。

もっと生きていて
欲しかった。

Commented by アイスケーキ at 2018-08-23 10:20 x
PS
あっ、佐藤さん以前にも
試写室で紹介されましたね。
それも 忘れてた!
最近、なんでも忘れる!
Commented by との at 2018-08-23 11:59 x
♪アイスケーキさん

なんかね、函館の暗くて寂しい感じが本からも映画からも伝わってきていいんですよね。なぜかはわからないけど、この作家が好きです。気が向いたら、本もぜひ😊
Commented at 2018-08-24 13:03 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Mtonosama at 2018-08-24 13:43
♪なえさん

150歳の私はステテコ穿いて猫をいじめてるだけの人間ではないのですよ。
私は猶想像する。落莫たる百代の後にあたって私の作品集を手にすべき一人の読者をあることを・・・なんです。

芥川が昭和2年6月に服毒自殺した時、妻は「ああ、おとうさん、これで楽になれたわね」と声をかけたんですって。精神病者の母を持ち、自分も発病するのではないかというおそれや胃弱、不眠、さまざまな病や不安の中で叔母を含む多くの家族を養わなければならない重荷に耐え切れなくなっていた部分もあったのでしょう。30代ですもんね。早過ぎるよな。佐藤泰志も精神的に耐えられなくなっていたんだろうな。この人の小説も良いですよ。

あ、そうそう。芥川の小説で「蜃気楼」というのがあるのですが、これはうちの近くの海岸を舞台にした作品です。もうひとつ。芥川が時折小説を書くために訪れた「東屋」という旅館もうちの近所。今はただ石碑があって、それをわかるだけですが。
Commented by なえ at 2018-08-24 19:13 x
あれえ!
なんで私のコメが非公開コメになってるんでしょう
か?
出掛けるのにバタバタして、慌てて送ったので
違うボタンを押したのかなあ?

その非公開を公開にできますか?
もう1回書けと言われても、きちんと思い出せない(;´∀`)
Commented by との at 2018-08-24 20:29 x
♪なえさん

非公開になってることに今気付きました。スマホだと非公開になっていることがわかるんだけど😌
後で公開に戻せるかどうか見てみますね。できるかなぁ😅