娘は戦場で生まれた -1- FOR SAMA
娘は戦場で生まれた
-1-
FOR SAMA
(C)Channel 4 Television Corporation MMXIX
世界で起こっている出来事を見ると
無力感でいっぱいになります。
コロナウィルスも気味が悪いですが、
今回は中東へ向かいます。
シリア問題では推移がよくわからないまま
多くの難民が生まれ、
数えきれない人々が亡くなっています。
第二次世界大戦後、
史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦――
何かをしなくてはならない、
でも、何をすればいいのかわからないままに
メディアでは何も報道されず、
情報のないまま。
起こっていないことのように
見なされてはいないでしょうか。
2010年から12年にかけて
チュニジアに始まり、
アラブ世界に広がっていった民主化運動
アラブの春――
当時ワアド・アルカティーブは
シリア・アレッポに暮らし、
マーケティングを専攻する大学生でした。
2011年4月15日
アサド大統領の一党独裁が続くシリアでも
大規模な民主化要求運動が発生。
首都ダマスカスでは
治安当局と参加者との間の衝突で
デモ隊20名が負傷しました。
この時にワアドは
戦争の脅威を記録することを決意。
市民ジャーナリストになりました。
撮影方法を独学で学び、
アサド政権軍がアレッポの反政府勢力に
弾圧と攻撃を加えていた時、
彼女は市民の苦しみや絶望を撮影。
アレッポがアサド政権に制圧された2016年
彼女が家族と共にアレッポから避難した時、
その映像も運び出しました。
彼女とその夫、そして娘は
現在ロンドンに住んでいます。
彼女は必死の脱出劇の後、英国で
このドキュメンタリー映画を制作。
本作の監督・撮影・製作をこなした
ワアド・アルカティーブ。
彼女は2016年「チャンネル4ニュース」※の
“Inside Aleppo”という
ドキュメンタリーシリーズで
アレッポの悲劇を記録し始めました。
※数多くの受賞歴を誇る英国のニュース番組
彼女が撮影したシリアの紛争の映像は
イギリスのニュース番組で
最も注目された作品となり、
フェイスブックとユーチューブを合わせて
5億分再生という視聴時間を記録。
また、
2016年の国際エミー賞・ニュース情報部門
を含む24の賞を受賞することとなりました。
シリア内戦は
アラブの春に共感し、
平和を願うワアドの思いに逆らうように
激化しました。
本作は内戦の記録には留まりません。
瓦礫と化したアレッポで
愛する人と出会い、結婚し、
新しい命も生み出した
ワアドの人生そのものの記録です。
戦火の中で生まれた子どもの名はサマ。
それはアラブ語で「空」を意味します。
砲撃音の絶えない中で母となった彼女は
自分たちの生きた証を
映像として残すことを決意し、
カメラを回しました。
さあ一体どんな映像を
ワアドは見せてくれるのでしょうか。
続きは次回まで乞うご期待でございます。
続
いつも応援してくださってありがとうございます♡
娘は戦場で生まれた
監督/ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ
出演
ワアド・アルカティーブ、サマ・アルカティーブ、ハムザ・アルカティーブほか
2月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
2019年、イギリス、シリア、アラビア語、100分、日本語字幕/岩部いずみ、字幕監修/ナジーブ・エルカシュ、配給/トランスフォーマー