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殿様の試写室

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殿が観た最新映画をいち早くお知らせ!

カテゴリ:映画( 1115 )

運命は踊る

--


FOXTROT


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(C)Pola Pandora -Spiro Films - A.S.A.P. Films - Knm - Arte France Cinema 2017



本作は3部から構成されています。

1部は父ミハエルの立場から

2部は息子ヨナタンのいる情景から

3部はダフナの表情から―――


そして

そこに通底するのはフォックストロット、

前へ、前へ、ストップ

後ろへ、後ろへ、ストップ


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ストーリー


1部 ミハエル

玄関の呼び鈴が鳴る。

「フェルドマンさんですか?」

と問いかける軍の役人が

「ご子息ヨナタンが昨夜戦死されました」

と告げる。

気を失うダフナ。

夫ミハエルもその背後で立ち尽くす。


薬を投与され、寝室に運ばれるダフナ。


「葬儀の時間は追って連絡します」

軍人の言葉を黙って受け入れるミハエル。


ミハエルの兄が駆けつける。


母が暮らす施設へ向かうミハエル。

ホールから音楽が流れてくる。

フォックストロットのステップで踊る男女。


従軍ラビが葬儀の打ち合わせにやってくる。

息子の亡骸を見せるよう要求するミハエル。

自分の一存では無理だというラビに

怒りをぶつけるミハエルを

兄がたしなめる。


しばらくして、再び、呼び鈴が鳴り、

軍の役人が語りかける。

「大変な間違いでした。

亡くなったのはご子息ではありませんでした」


「即刻息子を連れ戻せ!」

軍人たちに怒りを爆発させるミハエル…


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2 ヨナタン

イスラエル北部国境付近。

ぽつんと存在する補給路の検問所を

ラクダが通過する。

ヨナタンに同僚の兵士が話しかける。

「フォックストロットを知ってる?」

と踊ってみせながら、

その内、空想の音楽に合わせ

銃を抱いてマンボを踊り始める。


夜間、検問所に中年の男女の乗った車が。

身分証を調べる兵士。


彼らが寝泊まりするコンテナは

毎日少しずつ傾いている。


兵士がつぶやく。

「俺たちはなぜ戦っているんだろう」


夜中、検問所に車がやってくる。

慌ててライトを当てるヨナタン。

緊張感が走る。

乗っていたのはドレスアップした中年の男女。

土砂降りの雨の中、二人を立たせ、

身分証を調べる兵士。


若い男女4人を乗せた車が来た。

助手席に乗った女性が気になるヨナタン。

その視線に気づいた女性は

そっとヨナタンに微笑みかける。

身分証を調べる兵士。


検問が終り、

兵士は助手席の女性に

「スカートがドアに挟まれている」

と話しかける。


そして、スカートを直そうと

彼女がドアを開けた時、何かが転がり落ちた。

「手榴弾だ!」


咄嗟に銃を連射するヨナタン。

彼が我に帰った時

車からこぼれ出る大量の血液

転がったジュースの缶・・・


第3部 ダフナ

荷物を取りに自宅へ戻ったミハエル。

ヨナタンの20歳の誕生日を祝うため

ケーキを作っているダフナ。

そこに現れたミハエルを

「顔も見たくない!

息子をすぐに連れ戻せ、などというから…」

と責め立てるダフナ。


自宅の壁にはヨナタンのスケッチブックの

最後のページの絵が飾られている。


ダフナを抱いて囁くミハエル。

「知ってるかい?

前へ、前へ、ストップ。

後ろへ、後ろへ、ストップ。

どこへ行こうと必ず同じ場所へ

戻ってくるダンスだ」

そんなミハエルを静かに抱きしめるダフナ。


砂漠の一本道を走るトラックの中で

スケッチブックに絵を描くヨナタン。

顔を上げると目の前をラクダが歩いている。

ラクダを避けたトラックは崖へ……


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ああ・・・

運命を避けようとした道で

運命に会ってしまったんですね。


端正な構成の中

重層低音のように流れるフォックストロット。


言ってみれば結果が見えている映画を

ここまできちんと見せる作品に

鳥肌が立ちます。


単純に、反戦映画という枠にはめることには

同意できませんが、

これほど静かで端正な作品を

イスラエル右派は攻撃しました。

しかし、本作はイスラエルの賞を

8つも受賞したのです。


国内には厭戦の機運が

拡がっているのでしょうか。


そうだったらいいのだけど……


強い意志を感じさせる映画です。




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運命は踊る

監督・脚本/サミュエル・マオズ、撮影/ギヨラ・ベイハ、製作/ミハエル・ウェーバー、ヴィオラ・フゲン、エイタン・マンスーリ、チェドミール・コラール、マーク・バシェ、ミハル・マルクト

出演

リオール・アシュケナージ/ミハエル、サラ・アドラー/ダフナ、ヨナタン・シライ/ヨナタン、ゲフェン・バルカイ/軍の司令官

929()よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー

2017年、イスラエル=ドイツ=フランス=スイス、113分、カラー、日本語字幕/大西公子、後援/イスラエル大使館、配給/ビターズ・エンド




by Mtonosama | 2018-09-21 06:52 | 映画 | Comments(6)

運命は踊る

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FOXTROT


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(C)Pola Pandora- Spiro Films - A.S.A.P. Films - Knm - Arte France Cinema 2017



『運命は踊る』というタイトルだけを見て

まず連想したのは『会議は踊る』。

「踊る」つながりでした。


でも、関係ありません。

本作の原題はフォックストロット。


フォックストロットってなんでしたっけ?

キツネの速足・・・でした?

辞書には

馬術】

trotからwalkへ、またはその逆へ移る際の

小走り歩調


もう一つは

二人で踊る4/4拍子の

比較的早いテンポのダンス

とあります。


本作にはどうも後者があてはまるようです。


ダンスといえば

管理人がまだ学生だった頃は

ダンパというものが流行っていました。

ダンパというのはダンスパーティのことです。


「あそこのダンスホールは柱が多いので

チークタイムになるとやばいよ」

などと女子の間で囁かれたりしました。

そう、チークタイムとはキスタイム。

柱の陰で唇を奪われてしまうよ、

というのです。


あ、また、しょうもないことを――



フォックストロットに戻ります。

本作の中でしばしば口にされるこのステップ。

どんなステップかというと

「前へ、前へ、右へ、ストップ、

後ろ、後ろ、左へ、ストップ」。


はい、やってみましたか?

出発地点へ戻ってきたでしょ?

いくら動いても元の場所へ戻ってきますよね。


一度動き出した運命は

どうあがいても変えることができない・・・

ということで『運命は踊る』なのでしょうか。


そう、フランスの詩人、ラ・フォンテーヌも

言っています。

「人は運命を避けようとして選んだ道で

しばしば運命に出会う」と


いきなり重いですね。


監督・脚本は本作が長編第2作目となる

イスラエルのサミュエル・マオズ。



サミュエル・マオズ監督


1962年テルアビブ出身。

20歳の時、レバノン戦争でレバノンに侵攻した

イスラエル国防軍戦車の砲撃手として従軍。

その後、撤退に伴い帰国。


戦後は演劇学校で映画を学び、1987年卒業。

自身の戦争体験を基に脚本執筆を試みるが、

戦時の生々しい記憶や匂いが蘇り、執筆中断。


デビュー作『レバノン』の発表は

構想から20年以上を経た

2009年のことだった。

その『レバノン』(09)

ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。

それから8年後に発表した本作も

同じくヴェネチアで銀獅子賞を受賞。

本国でもイスラエルのアカデミー賞

(オフィール賞)最多8部門受賞。



イスラエルが参戦する戦争の不条理や

犯罪性を描いていながら、

オフィール賞8部門受賞です。


案外イスラエルも懐が深いと思いましたら、

スポーツ・文化大臣を中心とした

右寄りの政治家達から

(本作は)イスラエルにとって有害な映画」

との攻撃を受けていました。



しかし、本作はそんな圧力を

撥ね返すだけの実力を持った作品です。


スタイリッシュな映像、

巧みな構成力、

子を喪った親の絶望、

運命のフォックストロット。


映画のワンシーン、ワンシーンが

非常に印象的です。

雨を孕んだ重い空、

広大な砂漠、

その真ん中にある小さな検問所の前を

ゆったりと通り過ぎる一頭のラクダ。


やられました。


さあ、いったいどんな映画なのでしょう。

続きは次回まで乞うご期待でございます。



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運命は踊る

監督・脚本/サミュエル・マオズ、撮影/ギヨラ・ベイハ、製作/ミハエル・ウェーバー、ヴィオラ・フゲン、エイタン・マンスーリ、チェドミール・コラール、マーク・バシェ、ミハル・マルクト

出演

リオール・アシュケナージ/ミハエル、サラ・アドラー/ダフナ、ヨナタン・シライ/ヨナタン、ゲフェン・バルカイ/軍の司令官

929()よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次ロードショー

2017年、イスラエル=ドイツ=フランス=スイス、113分、カラー、日本語字幕/大西公子、後援/イスラエル大使館、配給/ビターズ・エンド




by Mtonosama | 2018-09-18 06:21 | 映画 | Comments(6)

三毛猫ひかちゃん

-77-



あたし、ひかちゃん。


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また、来ちゃった。



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最近、

飼い主ったら美術館づいているの。

これは横須賀美術館よ。


東京湾の入口にあるから

美術館からは行き交う船が

間近に見えるわ。



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この日は中園孔二という絵描きさんの

美術館での初個展


「中園孔二展 

外縁―見てみたかった景色」

2018714日~930日)


という展覧会を観にいったの。


彼の作品が「日曜美術館」で

紹介されていたのを見て

そのきれいな色遣いと

25歳という若さで亡くなったことに

魅かれたんだって。


中園孔二

1989年~2015

25年という短い生涯の中で

多彩かつ様々な技法で

多くの作品を遺しました。



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untitled

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untitled

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untitled


みんなuntitled「無題」なの。


可愛い顔をしているんだけれど

どこか不安で怖い感じ。

3枚目の絵なんて

中央で人が燃えているところを

女の人がスマホで撮影しているわ。


残酷さを前面に出す――

それができるのが

若さというものなのかしら。


しかし、それにしても写真が下手よね。

なんで斜めってるのよ。

中園さんに申し訳ないわ。


皆さん、まっすぐの作品を観たかったら

ぜひ横須賀美術館へ行ってみて。

素敵な場所にある

素晴らしい美術館なんだから。



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ほらね。



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あたし?

あたしはいつものようにTV鑑賞よ。

でも、画面にはとんでもないものが

写っているわ。

ポッ



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やっと涼しくなって一安心ね。


さ、

また寝るわよ。

おやすみなさい。


ひかり




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by Mtonosama | 2018-09-15 06:50 | 映画 | Comments(10)

三毛猫ひかちゃん

-76-



あたし、ひかちゃん


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あたし、目がちょっと座ってるかしら。

あのね、

マタタビってものの匂いをかいだの。

初めてじゃないのよ。


子どもの頃に一度経験したことあるの。

でも、その時はなんともなかったわ。


で、飼い主も不思議に思って

プールの博識者に訊いたのね。

そしたら

「あのね、幼稚園児にピンナップガールを

見せても何の反応もしないでしょ?

猫も同じなのよ」って

教えてくれたんだって。


もう、一体プールで何を習ってるのやら。


ま、そんな次第で

あたしとしたことが

狂態を示しちゃったって訳。



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平塚美術館よ。


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そろそろ涼しくなってきたから

季節外れ感満載なんだけどね。


深堀隆介展|平成しんちう屋

(201877日~92)

を観てきたんだって。


これねえ、全部、絵なのよ。

あたしもね、思わず手を入れて

掻き回すところだったわよ。


お水に見えるところは樹脂だし、

金魚はアクリル絵の具で描いたものなの。


どう見たって立体的な金魚よねえ。



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深堀隆介

1973年名古屋市生まれ、横浜在住。

1995年愛知県立芸術大学を卒業。

名古屋のディスプレイ会社に

デザイナーとして勤務するが

1999年退職。

本格的に創作活動を開始し、

絵画と立体を並行してさまざまな作品を制作。

だが、次第に

何をすべきかがわからなくなり

自信を失いかけていた時、

7年間ほったらかしておいた

水槽の中で金魚が生きているのを発見。

その美しさに制作意欲をかきたてられた。

その後、金魚を描き続け、

これを「金魚救い」と呼んだ。

(深堀隆介展より)


あらまあ、名古屋出身なのね。

「金魚救い」って言葉も良いわ。


飼い主なんてもうこれでいちころだで。

まあ、だちかんな。


あら?

どうしてあたしが名古屋弁を?



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夏の間、飼い主は近場の美術館を

あたしは高校野球を

楽しんだわ。


急に涼しくなると

夏の疲れが出るものよ。

飼い主もちょっとへばっているの。

皆さんも気をつけてね。

ひかり



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by Mtonosama | 2018-09-12 06:24 | 映画 | Comments(6)

顔たち、ところどころ

-2-


VisagesVillages



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(C)AgnesVarda-JR-Cine-Tamaris, Social Animals 2016



そもそも、この二人を結びつけたのは

この映画のプロデューサーでもある

ヴァルダの娘、ロザリー・ヴァルダでした。


ヴァルダはJRと自分との共通点を

「有名でもなく権力も持たない人々に

対して興味があることね」

と語っています。

確かに、本作に登場する被写体たちは

みんな無名の村人たちです。


妙に気の合った2人は

出会った3日目から

短い動画を撮り始めました。

しばらくしてヴァルダはJR

「都会派のあなたを田舎に連れていくわ」

と宣言。


おばあちゃん、孫と一緒に田舎へ行く!


JRも外国では小さな町を

転々としたことはあっても

「国内の田舎町には行ったことがなかったので

田舎町をめぐる旅で人生が変わった」

と言っていますよ。


さあ、出発です!


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ストーリー

映画監督アニエス・ヴァルダと

写真家でアーティストのJR

一緒に映画を作ることにした。


村人たちの顔を撮ることにした2人は

JRのスタジオ付きカメラトラックで

フランスの村々を回り始めた。


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炭鉱労働者の村にたった一人で暮らす女性、


ヤギの角を伸ばしたまま

飼育することを信条とする養牧者、


港湾労働者の妻たち、


廃墟になった村でのピクニック、


「決定的瞬間」の

アンリ・カルティエ=ブレッソンのお墓、


反逆のファッション写真家ギイ・ブルダンとの

思い出の海岸、


JR100歳になる祖母に会うこと、


J.L.ゴダールが映画『はなればなれ』で作った

ルーブル美術館の最短見学記録の更新etc.etc.


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楽しい記録を残しながらも

アニエスの眼はだんだん見えづらくなり、

JRも決してサングラスを外した顔を

見せようとはしない。


彼女はJRにプレゼントをしようと思い立つ。

JRが会いたいと言っていたゴダールに

会わせてあげようとしたのだ。

彼女は長年の友人であるゴダールに連絡し、

彼の自宅を訪ねる約束を取り付けたのだが……


当初は短期間の撮影を予定していましたが、

地方で数日撮影してはパリに戻るという旅は

18ヶ月に及び、

製作予算を大幅に上回ることに。

それだけ夢中になった撮影旅行。

楽しくない訳はないし、

映画の深みも増してきます。


そんな時の予算調達はいずこも同じ

クラウドファンディングです。

750万円を集めました。

他にもフランス国立映画映像センター、

フランスのTV局キャナル・プリュス、

ニューヨーク近代美術館(MOMA)や

パリのカルティエ財団などからも

調達したそうですよ。


アニエス・ヴァルダがいくら

「ヌーヴェルヴァーグの祖母」といわれようと

右から左へお金を自由にできませんものね。


充分な時間と人間関係とお金

そして

被写体の心をがっちりつかむ――


映画という総合芸術を支えるのは

人と情熱とお金です。


被写体の村人たちとの素敵な交流、

アニエスとJRの年齢を超えた友情。

そうしたものの醸す温かさが

観客の心もじわじわと温めてくれる映画です。


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おばあさんと

サングラスを外さない髭のおにいさんが

おかしな車に乗って旅をして

写真を撮り、壁に貼っていくだけの映画が

ここまで人の心を温かくしてくれるなんて

まるで奇跡みたいな映画です。



顔たち、ところどころ

脚本・監督・ナレーション/アニエス・ヴァルダ、JR、オリジナル・サウンドトラック/マチュー・シェディッド、製作総指揮/ロザリー・ヴァルダ、写真/クレア・ダギット(ボニュー、レイヤンヌ、工場)、ニコラ・ギシュト(パリ、工場、北部地域)、ヴァランタン・ヴィニェ(フランス国立図書館、ノルマンディー海岸)、ロマン・ル・ボニーク(ヴェクサン、ルーブル美術館、ル・アーブル、ピルー)、ラファエル・ミネソタ(ルーブル美術館)、ロベルト・デ・アンジェリス(料理、スイス)、ジュリア・ファブリー(第二カメラ)、写真貼付のアーティスティック・ディレクター/ギヨーム・カニャール

915()よりシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

2017年、フランス、89分、字幕翻訳/寺尾次郎、配給/アップリンク


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by Mtonosama | 2018-09-09 06:53 | 映画 | Comments(6)

顔たち、ところどころ

-1-


VisagesVillages



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(C)AgnesVarda-JR-Cine-Tamaris, Social Animals 2016



87歳と33歳、

祖母と孫ほども年の差のある二人が

フランスの村人の写真を撮って

工場の給水塔や

納屋のファサードや

取り残された炭鉱住宅の壁や

崖から崩れ落ちた昔の要塞に貼りつけながら

スタジオ付きカメラトラックで旅をします。


アート?

パフォーマンス?

写真芸術?

村おこし?

過去へのオマージュ?

それとも

面白い遊び?


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これらぜ~~んぶが

一体となった楽しい二人旅が

ドキュメンタリーになりました。

いえ、これが全部ではないはず。

観る人によっては

もっともっと色んなことを

感じるかもしれません。



87歳の女性は

「ヌーヴェルヴァーグの祖母」と呼ばれる

女性映画監督のパイオニア

アニエス・ヴァルダ。

といっても写真の通りの可愛いおばあちゃん。

1928年ブリュッセル生まれ。

今年で90歳です。


第2次世界大戦中の1940

家族で南仏に疎開。

戦後、ソルボンヌ大学入学。

その後、演出家ジャン・ヴィラールの

専属カメラマンになり、

2015年にはカンヌ国際映画祭で

史上6人目となるパルムドール名誉賞

2017年には

60年以上にもわたる功労が認められ、

アカデミー名誉賞を受賞。


撮影当時は87歳。

上下二色に髪を染め分けた楽しげな人です。


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一方、33歳のJR

1983年パリ近郊の生まれで

今年35歳。

10代の頃、グラフィティ・ペインティング

を始め(要するに落書き?)

17歳の時に

パリの地下鉄で拾った(!)カメラで

自分と仲間達によるストリートアートの写真を

撮って街の壁に貼り付けるようになる。

以来、ケニアのゲットー、ブラジルの貧民街、

パレスチナの分離壁、東日本大震災後の日本等

世界中の壁を展示場所として

人々の巨大ポートレートを貼っています。

2010年に非営利団体メディアの

TED Prizeを受賞、

そこで得た賞金10万ドルで個人参加型の

Inside Out」プロジェクトを開始。

2013

そのアジア初の展示が

ワタリウム美術館で開催されました。

現在はパリとニューヨークを拠点に活動中。


経歴も風貌もユニークな

二人の旅も楽しいのですが、

工場労働者の集合写真が

生き生きしたアートになり、

寂れた炭鉱住宅の壁面に

往時の炭鉱採掘人の巨大ポートレートが

貼りつけられ、

一人寂しく暮らしていた老女の

顔に泣き笑いがよみがえる様子にも

惹きつけられます。


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今さらながら

アートって楽しいなって

思ってしまいました。


70回カンヌ国際映画祭で

最優秀ドキュメンタリー賞

ルイユ・ドール(金の眼賞)、

トロント国際映画賞での

ドキュメンタリー部門最高賞受賞。

90回米国アカデミー賞、第43回セザール賞に

ノミネートされ、

「ロッテン・トマト」でも100%という

驚きの満足度をはじき出したというのも

納得の面白さなのです。


しかし、どんな賞を受賞していようと

まず皆さんのその眼とその感覚が

この映画の楽しさを認めるのではないかなあ。


いけない、いけない。

もったいぶってしまいました。


続きは次回まで乞うご期待でございます。



顔たち、ところどころ

脚本・監督・ナレーション/アニエス・ヴァルダ、JR、オリジナル・サウンドトラック/マチュー・シェディッド、製作総指揮/ロザリー・ヴァルダ、写真/クレア・ダギット(ボニュー、レイヤンヌ、工場)、ニコラ・ギシュト(パリ、工場、北部地域)、ヴァランタン・ヴィニェ(フランス国立図書館、ノルマンディー海岸)、ロマン・ル・ボニーク(ヴェクサン、ルーブル美術館、ル・アーブル、ピルー)、ラファエル・ミネソタ(ルーブル美術館)、ロベルト・デ・アンジェリス(料理、スイス)、ジュリア・ファブリー(第二カメラ)、写真貼付のアーティスティック・ディレクター/ギヨーム・カニャール

915()よりシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

2017年、フランス、89分、字幕翻訳/寺尾次郎、配給/アップリンク


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by Mtonosama | 2018-09-06 07:06 | 映画 | Comments(2)

寝ても覚めても

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©2018映画「寝ても覚めても」製作委員会/COMME DESCINÉMAS



脳のしわをひとつひとつまさぐっても

管理人の恋愛の記憶は

余りに奥深くしまいこまれていて

なかなか表面に浮かび上がってきては

くれませんが・・・



ストーリー

大阪、牛腸茂雄の写真展会場。

泉谷朝子はその中の双子の姉妹の写真

見入っていた。

会場には鼻歌を歌いながら

写真を見る男の姿が。

帰り道、中学生が鳴らす爆竹の音に

思わず振り返る朝子と男。

その時、目が合い、そのまま恋に落ちる二人。

男の名は鳥居麦。


麦は遠縁である岡崎の家に居候している。

花火に興じる麦、朝子、岡崎、

朝子の親友・春代と岡崎の母・栄子。

花火の途中「パンを買ってくる」と

出かけたまま、朝まで帰ってこない麦。

不安で眠れなかった朝子は

帰ってきた麦に抱きつく。

「俺は何があっても

朝ちゃんのところに帰ってくるよ」

と抱きしめる麦。

だが、半年後

「靴を買いにいく」と家を出たきり

麦はそのまま戻ってこなかった。



2年後、東京。

日本酒メーカーで働く丸子亮平は

最近大阪本社から転勤になったばかり。

会議室を片づけていると

近所の喫茶店から朝子が

珈琲ポットを引き取りにきた。

「麦・・・?」

初めて会った喫茶店の店員から

いきなり声をかけられて驚く亮平。


朝子の勤める喫茶店は亮平のオフィスから

見下ろせる場所にある。

朝、喫茶店の前を通りかかると朝子がいた。

亮平が声をかけようとすると

朝子は逃げるように店の中へ。


ある日、小さな画廊で開かれていた

牛腸茂雄の写真に

ルームメートのマヤと訪れる朝子。

閉館が迫り、入ることができないでいると

通りかかった亮平の機転で

写真展を見ることができた。

その後、お茶を飲む3人だったが、

朝子は突然席を立ち、逃げるように店を出る。

残されたマヤは朝子の非礼を詫びるために

亮平は二人の部屋へ招待するのだった。


運命のいたずらは

麦と同じ顔をした亮平を

朝子と結びつけようとしていた……


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その後、東北大震災が

二人を結びつけることになるのですが、

大阪、東京、東北、再び大阪へ、

という情景の変化が

結びつこうとする心

揺れ動く心

制御できない心

と重なります。


東日本大震災の津波の後に造設された

無機質で高く、風景を断ち切ってしまった堤防。

この場所で朝子は麦と別れます。

津波よりも人間を拒絶するような堤防の光景に

この映画のもうひとつの顔を

見たような気がしました。


恋愛感情を埋め込んでしまった150歳は

本作を震災前と後という見方で観てしまいました。


国が口にする復旧という言葉は

人と人、人と風景を断ち切る

ということだったのかな、

と思えてきました。


あ、映画の本筋とは全然関係ないんですが。



寝ても覚めても

監督/濱口竜介、原作/柴崎友香(「寝ても覚めても」河出文庫刊)、脚本/田中幸子、濱口竜介、撮影/佐々木靖之、音楽/tofubeats

出演

東出昌大/丸子亮平、鳥居麦、唐田えりか/泉谷朝子、瀬戸康史/串橋耕介、山下リオ/鈴木マヤ、伊藤沙莉/島春代、渡辺大知/岡崎信行、仲本工事/平川、田中美佐子/岡崎栄子

91()テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネクイント他ロードショー

2018年、119分、カラー、日本=フランス、日本語、配給/ビターズ・エンド、エレファントハウス


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by Mtonosama | 2018-09-03 06:11 | 映画 | Comments(6)

寝ても覚めても

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©2018映画「寝ても覚めても」製作委員会/COMME DES CINÉMAS



「寝ても覚めても」というと

寝ても覚めても肉が食べたいとか

水茄子の糠漬けが食べたいとか

どうも食い気方面に心がさまよいがちな

当試写室管理人であります。


しかし、本作は

芥川賞作家・柴崎友香の原作から

生まれた大人の恋愛映画であって

食べ物は関係ありません。


ま、

「寝ても覚めてもあなたのことを想う」

とくるのが普通ですわね。


まったく恋愛と縁遠い150歳は

しょうもないものです。


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柴崎友香(しばざきともか)

1973年大阪生まれ。

99年、短編「レッド、イエロー、

オレンジ、オレンジ、ブルー」でデビュー。

00年初の単行本「きょうのできごと」刊行、

03年に行定勲監督により映画化。

07年「その街の今は」で

57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、

23回織田作之助賞大賞、

24回咲くやこの花賞を受賞。

10年「寝ても覚めても」で

32回野間文芸新人賞を受賞。

14年「春の庭」で

151回芥川賞を受賞。


さて、人生の盛りを迎え、

おそらくは恋愛現役時代でもある作家の原作

(もちろん誰でもいくつになっても

本来、生涯現役が望ましいのでしょうが)

を映画化した監督は濱口竜介。

本作が商業映画デビューです。


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濱口竜介監督

1978年神奈川県出身。

2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の

修了制作『PASSION』が

サン・セバスチャン国際映画祭や

東京フィルメックスに出品され

高い評価を得る。

その後も日韓共同制作『THE DEPTHS

を東京フィルメックスに出品、

東日本大震災被害者へのインタビューから成る

『なみのおと』『なみのこえ』

東北地方の民話の記録『うたうひと』

(共同監督/酒井耕)

4時間を超える長編『親密さ』

染谷将太主演『不気味なものの肌に触れる』

を監督。

15年、映像ワークショップに参加した

演技経験のない4人の女性を主演に起用した

5時間17分の長編『ハッピーアワー』を発表。

ロカルノ、ナント、シンガポール他

国際映画祭で主要賞を受賞。

自らが希望した小説「寝ても覚めても」を

映画化した本作で商業デビュー。

71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門

選ばれ、注目を集める監督。


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同じ顔をした二人の男を愛した一人の女。

中身は変わらず、

顔だけ変えた男を描いた小説は

読んだことはありますが、

本作の場合、顔は同じで中身はまるで違う。

最初の男とは出会いの瞬間、直観で恋に落ち、

二人目の男とは用心深く恋に落ちる女。


男を演じるのは東出昌大。

一人目の男・鳥居麦は優しいけれど

正体不明の自由人。

二人目の男・丸子亮平は

真面目なサラリーマン。

顔は同じでもまったく違う二人を

一人二役で演じています。


性格は違ってもイケメンで優しい男に

愛されるおいしい役を演じる女は

本作で初めてヒロインを演じ、

本格的デビューを果たす唐田えりか。


4年前バイト先のマザー牧場でスカウトされ

芸能界入りしたそうです。

ちょっと変わり種?


恋愛には縁遠いため

若干薄情なご紹介になってしまいました。


さあ、

一体どんな展開を見せてくれるのでしょう。

続きは次回まで乞うご期待でございます。



寝ても覚めても

監督/濱口竜介、原作/柴崎友香(「寝ても覚めても」河出文庫刊)、脚本/田中幸子、濱口竜介、撮影/佐々木靖之、音楽/tofubeats

出演

東出昌大/丸子亮平、鳥居麦、唐田えりか/泉谷朝子、瀬戸康史/串橋耕介、山下リオ/鈴木マヤ、伊藤沙莉/島春代、渡辺大知/岡崎信行、仲本工事/平川、田中美佐子/岡崎栄子

91()テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネクイント他ロードショー

2018年、119分、カラー、日本=フランス、日本語、配給/ビターズ・エンド、エレファントハウス


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by Mtonosama | 2018-08-31 06:02 | 映画 | Comments(6)

三毛猫ひかちゃん

-75-



あたし、ひかちゃん


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あら、ごめんなさい。

夏はお腹が痒くなるのよ。



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え~っと・・・

なんのお山だったかしら。

平湯というところからロープウェーに

乗っていったのよ。

飼い主も中学生の時以来

140年ぶりに再訪したから忘れちゃったんだって。



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中学生の時は自分の脚で登り、

150歳の今はロープウェイ。

ふ、飼い主も歳をとったのね。

あたしまで遠い目になっちゃうわよ。



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麓にはノウゼンカズラのお花も咲いてるのね。




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あら!これはなに?



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な、なに?

めっちゃ輝いているじゃない!!

まあ、ティアラっていうの?

猫に小判とはいうけど、

あたしの場合、光り物も好きよ。

だって綺麗じゃないの。

なんといっても

あたしはヒカリーヌ王女なのよ。


三菱一号美術館で917日まで開かれている

「ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界

――1780年パリに始まるエスプリ――」

に展示されてたんだって。


夫の人も一緒だったんだけど

「そんな買えないもの見てどうする」

と憎々しいことを言ったので

美術館の中庭に待たせておいて

飼い主一人で鑑賞したらしいわ。



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ま、ホントのこと言えば

あたしはこれさえあればいいんだけど。



まだまだ残暑は続くのかしら。


皆さん、お外に出かける時には

日傘か帽子をお忘れなくね。


ひかり



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by Mtonosama | 2018-08-28 05:48 | 映画 | Comments(11)

きみの鳥はうたえる

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©HAKODATE CINEMA IRIS



佐藤泰志が死後再び世に出る

きっかけを作ったのは死後17年経って

クレインという出版社の出した

「佐藤泰志作品集」でした。


そして

それを読んだ函館の映画館経営者

菅原和博さんが

函館を舞台にした「海炭市叙景」を映画化。

映画『海炭市叙景』は内外で高い評価を受け、

興行的にも成功を収めました。


佐藤泰志の小説は

全て文庫として復刊されます。


2016年、開館20周年を迎えた

菅原さんの映画館

函館アイリスは記念事業として再び

佐藤泰志の作品を映画化しました。

それが本作『きみの鳥はうたえる』です。


映画の舞台は

小説の舞台だった70年代の国立・国分寺から

現代の函館へ移りましたが、

さあ、一体どんなお話なのでしょう。


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ストーリー

函館郊外の書店で働く「僕」と失業中の静雄は

小さなアパートで共同生活を送っている。


ある日「僕」は

同じ書店で働く佐知子と関係を持った。


彼女は店長の島田とも関係があるようだが、

その夜から毎晩のように

二人のアパートへ遊びに来るようになった。


一抹の不確かさの予兆をはらみながらも

三人は夜通し酒を飲み、クラブへ行き、

ビリヤードをして夏の夜を遊び明かす。


「僕」は佐知子と恋人同士のように

ふるまいながら、お互いを束縛せず、

佐知子と静雄に二人で出かけることを勧める。


夏の終わり、

静雄は3人でキャンプに行こうと提案する。

だが、「僕」は誘いを断り、

静雄と佐知子の二人だけで

キャンプに行くことに。


二人きりのキャンプで

次第に気持ちが近づく佐知子と静雄。

函館でけだるく過ごす「僕」。

三人の幸せな時間も夏も

終わりの時が近づいていた……


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不器用で意地っ張りな青春。

友情も愛情もコントロール不能な青春。

青春という言葉は気恥ずかしくて

嫌いですが、

先走りする気持ちと身体、

このなんとも不器用なところが

青春なんですね。


青春の良さというのは

一晩中、飲み明かしても

踊り明かしても

疲れが残らないということくらいでしょうか。


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函館

坂道や異人館、港町というお洒落な

キーワードに飾られていながら

どこかうら寂しい雰囲気もまとう町です。


そんな函館と

未消化な愛や人生を抱え、

どこか薄暗い青春時代には

(キャッ、この言葉も恥ずかしい!)

相通ずるところがあるのでしょう。


歳を重ねたからといって

達観することもできず、

人生には裏切られ続けるばかりの150歳も

若い獣のような3人と夜明けの街を

肩を並べて歩きたいような気分になりました。


とはいえ、

一緒になって夜通し飲んだり踊ったりしたら

翌日は確実に死にますけどね。


思い通りにならない人生の方が多いし、

わかったふりをして

かっこよくしたつもりでも空振り。


いちいちへたっていたら

生きてはいけないけれど

やっぱり凹みます。


ああ、こんな日もあったな。

でも、よく考えたら今もそうか・・・


本作は

やはり青春映画と呼ばなくちゃいけない

映画なのでしょうね。



きみの鳥はうたえる

監督・脚本/三宅唱、原作/佐藤泰志(「きみの鳥はうたえる」河出書房新社/クレイン刊、企画・製作・プロデュース/菅原和博、プロデューサー/松井宏、撮影/四宮英俊

出演

柄本佑/僕、石橋静河/佐知子、染谷将太/静雄、足立智充/森口、山本亜依/みずき、渡辺真起子/直子、萩原聖人/島田

825()函館シネマアイリス先行公開、91()新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

2018年、106分、カラー、配給営業/コピアポア・フィルム


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by Mtonosama | 2018-08-25 06:14 | 映画 | Comments(6)